[太字][大文字]ギルド[/大文字][/太字]
なんやかんやでアリサとパーティーを組んでから、一週間が経った。
俺たちは毎日のようにクエストをこなし、俺のギルドランクもいつの間にかGからFに上がっていた。といっても、アリサが魔物を倒して、俺は後ろで指示を出すだけ……。戦闘力は相変わらずゼロだ。
『おはようございます、二人とも!』
ギルドに入ると、リリカさんが元気に声をかけてくる。
『おはよう、リリカ!』
アリサも元気だ。今日もテンション高いな…。
『今日はどんなクエストが届いてる?』
『そうねぇ…「北の洞窟のコボルト退治」なんてどう?ランクはF 。二人なら余裕でしょうけど……』
『コボルトぉ?あんなの雑魚じゃない!手応えがないわ!』
アリサが依頼書を受け取る。
【マスター。コボルトは集団行動する傾向があります。油断は禁物です】
「アリサ、一応気をつけよう。コボルトって群れで行動するって聞くし」
とりあえずカイシが言ったことをそのまま言っておく。
『そんなことわかってるわよ!私がいる時点で負けるわけないし!』
……怒られた。やっぱり今日もドヤ顔だ。
と、その時だった。
ギルドの扉が、勢いよく開かれた。
『おらっ!今日も元気にクエストだぜ!』
入ってきたのは、筋骨隆々の少年だった。短髪の茶髪に、ジャージみたいな動きやすい服装。そして、やたらテンションが高い。
『お、新入りか?がんばってるかー?』
いきなり俺に声をかけてくる。初対面なのに、めちゃくちゃフレンドリーだ。
「え?あ、はい…」
『何してんだ?クエスト探しか?いいなー!オレもクエストやりてぇ!』
【マスター。彼のステータスを表示します】
【対象:タケル】
称号:日本一の脳筋
聖遺物:達人級『剛腕のグローブ』(通称:ゴンちゃん)
ステータス:筋力S/魔力E/耐久A/敏捷D/知力E
スキル:怪力(極)、素手格闘(中)、詩作(秘)
現在の状態:やる気満々。
「…は?脳筋?」
思わず声に出てしまった。
『お、オレの称号知ってるのか?そう!オレは日本一の脳筋!タケルだ!』
誇らしげに胸を張る。いや、隠す気はないのか…。
『脳筋って…』
アリサが引きつった顔をしている。お嬢様にマッチョはまだ早かったみたいだ。
『筋肉バカって意味よね…?それが称号でいいの?嬉しいわけ?』
『いいも何も、これがオレの称号なんだから仕方ないだろ!』
タケルはゲラゲラ笑っている。全然気にしてない様子だ。
『で、お前ら、様子を見るにこれからクエストだろ?オレも連れてってくれよ!』
「え?でも…」
『いいだろー!オレ、強いんだぜ!見せてやる!』
タケルが腕まくりをする。確かに筋肉がすごいのは分かる。
【マスター。彼の筋力は戦力として十分な価値があるかもしれません】
「アリサ、どう思う?」
『…まあ、人数多い方が安全だしね。指示はちゃんと聞きなさいよ!』
『おう!任せろ!』
[水平線]
[太字][大文字]北の洞窟[/大文字][/太字]
三人で北の洞窟に向かう道中、タケルはずっとしゃべりっぱなしだった。
『なあなあ、お前ら、どんな称号なんだ?』
『私は剣姫よ』
『おお!すげえ!かっけえな!で、そこのメガネのお前は?』
「…眼精疲労です」
一瞬、タケルの動きが止まった。
『…は?』
「日本一の眼精疲労」
『それで日本一になれるのか?すげえな!』
目をキラキラさせているタケル。バカにするどころかむしろ純粋にすごいと思っているらしいが、だいぶ珍しい部類の人だと思う。
「いや、すごくないから…」
『そんなことないぞー!だって日本一だろ?それだけで十分すごいんだよ!』
そう言って笑うタケルを見て、なんだか変な気分になった。初めて、「眼精疲労」をバカにされなかった気がする。
『それで、そのメガネ、何ができるんだ?』
「相手の情報が見えるんです。称号とか、ステータスとか、弱点とか…」
『へえ!すげえな!それでアリサに指示とか出してるのか!』
「そういうことになりますね」
『じゃあ、オレのことも見てみてくれよ!』
タケルがグイッと顔を近づけてくる。
「ちょ、近い!」
『いいからいいから!何て書いてある!?』
仕方なく、カイシを起動する。
【対象:タケル】(詳細モード)
称号:日本一の脳筋
聖遺物:達人級『剛腕のグローブ』
ステータス:筋力S/魔力E/耐久A/敏捷D/知力E
スキル:怪力(極)、素手格闘(中)、詩作(秘)
弱点:繊細な作業(卵を割るときに潰しがち)、騙されやすい
攻略のヒント:褒めると伸びる。単純な指示が一番通じる。
「えっと…筋力Sで耐久A。……あっ、知力はE…」
『知力E!ははは!そうだろー!』
本人はゲラゲラ笑っている。
「それに、繊細な作業が苦手って…」
『あー、卵とか割るときにいつも潰しちゃうんだよな!なんでだろーな!』
笑い話にするのか…もしかしなくても鋼のメンタルだったり?
そんな会話をしながら、俺たちはコボルトの目撃情報があった場所へと歩いていった。
[太字][大文字]コボルト退治[/大文字][/太字]
洞窟の中は薄暗く、ひんやりとした空気が流れている。
『気をつけてね。コボルトは雑魚だけど不意をつかれて飛びかかられたら危ないわよ』
【前方50mに魔物を感知。個体数:5。種族:コボルト】
カイシの警告が表示される。
「多分もうすぐ来ます。5匹まとまってるみたいです」
『へへっ、任せろ!』
タケルが前に出る。
『待ちなさいよ!作戦立ててからよ!』
『作戦なんていらねえ!!筋肉がありゃあ十分だ!』
タケルはそう叫ぶと、一人で突っ込んでいった。
『あ、バカぁぁぁ!』
アリサが追いかけようとするが、もう遅い。
『うおおおおお!』
タケルが迷わずコボルトの群れに飛び込んでいく。
一匹目を吹き飛ばし、二匹目も吹き飛ばし、三匹目も――
『食らえ!』
渾身のパンチ。コボルトが岩壁に激突して消えていく。
『どうだ!これがオレの筋肉だ!』
「すご…」
思わず声が出る。一瞬で三匹も倒してしまった。
でも、残りの二匹がタケルの後ろに回り込んでいた。
『タケル、後ろ!』
アリサが叫ぶ。タケルが振り返るが、もう一匹が飛びかかっている。
『うおっ!』
タケルは間一髪でかわす。でも、体勢が崩れた。
『くそっ!もう一匹どこだ!』
「右!」
俺が叫ぶ。タケルが右を見ると、コボルトが棍棒を振りかぶっていた。
『そんなの…』
タケルは棍棒を素手で受け止めた。
[太字]バキッ![/太字]
棍棒が折れる。
『…オレの筋肉の前には無力だぁぁ!』
コボルトがたじろぐ。その隙に、アリサが飛び込んだ。
『シルヴィ!』
一閃。コボルトが倒れる。
最後の一匹も、タケルが軽く殴って終わった。
『ふう…』
アリサが剣を収める。
『脳筋、無茶しすぎよ!一人で突っ込んだら危ないでしょ!?何考えてるの!?』
『へへっ、でも勝ったし、いいだろ?』
『よくないわよ!』
「……俺も、もっと連携を考えた方がいいと思います」
俺も言う。するとタケルは、意外なことを言った。
『でもよ、お前が『右』って叫んでくれたから、避けられたんだぜ?』
「え?」
『オレ、ソロだったらあの棍棒、食らってたかもな。お前がいてくれて助かったわー!』
そう言って、タケルは笑った。
『これがパーティーの良さってやつだな!』
その言葉に、アリサも表情を緩める。
『…そうね。一人より、三人の方が安全だものね』
『んじゃ、そういうわけで!これからもよろしくな、メガネ!』
「メガネ…」
『あ、嫌か?オレ、あだ名で呼ぶの好きなんだよなー。アリサは……まあアリサでいいか。メガネはメガネで!』
「…別にいいですけど……」
『よし!じゃあ改めてよろしくな、メガネ!』
俺の肩がバシバシ叩かれる。普通に力が強い。痛い。
[太字][大文字]ギルド[/大文字][/太字]
クエストの報告を終え、リリカさんから報酬を受け取る。
『お疲れ様でした!コボルト5匹、見事な討伐です!』
『へへっ、楽勝だったぜ!』
タケルは得意げだ。
『それにしても、三人でパーティー組むんですか?』
『そうなるかもね』
アリサが答える。
『こいつ、脳筋だけど戦力になるし』
『へへ、だろ?さて、じゃあ次のクエストに行くか!』
タケルが立ち上がる。
『はぁ!?もう行くの!?休憩は!?』
『休憩なんてあるわけないだろ!筋肉は使わないと衰えるんだ!』
『今日はもういいでしょ!?』
『いーや!もっと行くぜ!』
『この脳筋…』
アリサがため息をつく。
でも、その顔は笑っていた。
こうして、俺たちのパーティーにタケルが加わった。
日本一の剣姫と、日本一の脳筋と、日本一の眼精疲労。
奇妙な三人組の旅は、まだ始まったばかりだ。
なんやかんやでアリサとパーティーを組んでから、一週間が経った。
俺たちは毎日のようにクエストをこなし、俺のギルドランクもいつの間にかGからFに上がっていた。といっても、アリサが魔物を倒して、俺は後ろで指示を出すだけ……。戦闘力は相変わらずゼロだ。
『おはようございます、二人とも!』
ギルドに入ると、リリカさんが元気に声をかけてくる。
『おはよう、リリカ!』
アリサも元気だ。今日もテンション高いな…。
『今日はどんなクエストが届いてる?』
『そうねぇ…「北の洞窟のコボルト退治」なんてどう?ランクはF 。二人なら余裕でしょうけど……』
『コボルトぉ?あんなの雑魚じゃない!手応えがないわ!』
アリサが依頼書を受け取る。
【マスター。コボルトは集団行動する傾向があります。油断は禁物です】
「アリサ、一応気をつけよう。コボルトって群れで行動するって聞くし」
とりあえずカイシが言ったことをそのまま言っておく。
『そんなことわかってるわよ!私がいる時点で負けるわけないし!』
……怒られた。やっぱり今日もドヤ顔だ。
と、その時だった。
ギルドの扉が、勢いよく開かれた。
『おらっ!今日も元気にクエストだぜ!』
入ってきたのは、筋骨隆々の少年だった。短髪の茶髪に、ジャージみたいな動きやすい服装。そして、やたらテンションが高い。
『お、新入りか?がんばってるかー?』
いきなり俺に声をかけてくる。初対面なのに、めちゃくちゃフレンドリーだ。
「え?あ、はい…」
『何してんだ?クエスト探しか?いいなー!オレもクエストやりてぇ!』
【マスター。彼のステータスを表示します】
【対象:タケル】
称号:日本一の脳筋
聖遺物:達人級『剛腕のグローブ』(通称:ゴンちゃん)
ステータス:筋力S/魔力E/耐久A/敏捷D/知力E
スキル:怪力(極)、素手格闘(中)、詩作(秘)
現在の状態:やる気満々。
「…は?脳筋?」
思わず声に出てしまった。
『お、オレの称号知ってるのか?そう!オレは日本一の脳筋!タケルだ!』
誇らしげに胸を張る。いや、隠す気はないのか…。
『脳筋って…』
アリサが引きつった顔をしている。お嬢様にマッチョはまだ早かったみたいだ。
『筋肉バカって意味よね…?それが称号でいいの?嬉しいわけ?』
『いいも何も、これがオレの称号なんだから仕方ないだろ!』
タケルはゲラゲラ笑っている。全然気にしてない様子だ。
『で、お前ら、様子を見るにこれからクエストだろ?オレも連れてってくれよ!』
「え?でも…」
『いいだろー!オレ、強いんだぜ!見せてやる!』
タケルが腕まくりをする。確かに筋肉がすごいのは分かる。
【マスター。彼の筋力は戦力として十分な価値があるかもしれません】
「アリサ、どう思う?」
『…まあ、人数多い方が安全だしね。指示はちゃんと聞きなさいよ!』
『おう!任せろ!』
[水平線]
[太字][大文字]北の洞窟[/大文字][/太字]
三人で北の洞窟に向かう道中、タケルはずっとしゃべりっぱなしだった。
『なあなあ、お前ら、どんな称号なんだ?』
『私は剣姫よ』
『おお!すげえ!かっけえな!で、そこのメガネのお前は?』
「…眼精疲労です」
一瞬、タケルの動きが止まった。
『…は?』
「日本一の眼精疲労」
『それで日本一になれるのか?すげえな!』
目をキラキラさせているタケル。バカにするどころかむしろ純粋にすごいと思っているらしいが、だいぶ珍しい部類の人だと思う。
「いや、すごくないから…」
『そんなことないぞー!だって日本一だろ?それだけで十分すごいんだよ!』
そう言って笑うタケルを見て、なんだか変な気分になった。初めて、「眼精疲労」をバカにされなかった気がする。
『それで、そのメガネ、何ができるんだ?』
「相手の情報が見えるんです。称号とか、ステータスとか、弱点とか…」
『へえ!すげえな!それでアリサに指示とか出してるのか!』
「そういうことになりますね」
『じゃあ、オレのことも見てみてくれよ!』
タケルがグイッと顔を近づけてくる。
「ちょ、近い!」
『いいからいいから!何て書いてある!?』
仕方なく、カイシを起動する。
【対象:タケル】(詳細モード)
称号:日本一の脳筋
聖遺物:達人級『剛腕のグローブ』
ステータス:筋力S/魔力E/耐久A/敏捷D/知力E
スキル:怪力(極)、素手格闘(中)、詩作(秘)
弱点:繊細な作業(卵を割るときに潰しがち)、騙されやすい
攻略のヒント:褒めると伸びる。単純な指示が一番通じる。
「えっと…筋力Sで耐久A。……あっ、知力はE…」
『知力E!ははは!そうだろー!』
本人はゲラゲラ笑っている。
「それに、繊細な作業が苦手って…」
『あー、卵とか割るときにいつも潰しちゃうんだよな!なんでだろーな!』
笑い話にするのか…もしかしなくても鋼のメンタルだったり?
そんな会話をしながら、俺たちはコボルトの目撃情報があった場所へと歩いていった。
[太字][大文字]コボルト退治[/大文字][/太字]
洞窟の中は薄暗く、ひんやりとした空気が流れている。
『気をつけてね。コボルトは雑魚だけど不意をつかれて飛びかかられたら危ないわよ』
【前方50mに魔物を感知。個体数:5。種族:コボルト】
カイシの警告が表示される。
「多分もうすぐ来ます。5匹まとまってるみたいです」
『へへっ、任せろ!』
タケルが前に出る。
『待ちなさいよ!作戦立ててからよ!』
『作戦なんていらねえ!!筋肉がありゃあ十分だ!』
タケルはそう叫ぶと、一人で突っ込んでいった。
『あ、バカぁぁぁ!』
アリサが追いかけようとするが、もう遅い。
『うおおおおお!』
タケルが迷わずコボルトの群れに飛び込んでいく。
一匹目を吹き飛ばし、二匹目も吹き飛ばし、三匹目も――
『食らえ!』
渾身のパンチ。コボルトが岩壁に激突して消えていく。
『どうだ!これがオレの筋肉だ!』
「すご…」
思わず声が出る。一瞬で三匹も倒してしまった。
でも、残りの二匹がタケルの後ろに回り込んでいた。
『タケル、後ろ!』
アリサが叫ぶ。タケルが振り返るが、もう一匹が飛びかかっている。
『うおっ!』
タケルは間一髪でかわす。でも、体勢が崩れた。
『くそっ!もう一匹どこだ!』
「右!」
俺が叫ぶ。タケルが右を見ると、コボルトが棍棒を振りかぶっていた。
『そんなの…』
タケルは棍棒を素手で受け止めた。
[太字]バキッ![/太字]
棍棒が折れる。
『…オレの筋肉の前には無力だぁぁ!』
コボルトがたじろぐ。その隙に、アリサが飛び込んだ。
『シルヴィ!』
一閃。コボルトが倒れる。
最後の一匹も、タケルが軽く殴って終わった。
『ふう…』
アリサが剣を収める。
『脳筋、無茶しすぎよ!一人で突っ込んだら危ないでしょ!?何考えてるの!?』
『へへっ、でも勝ったし、いいだろ?』
『よくないわよ!』
「……俺も、もっと連携を考えた方がいいと思います」
俺も言う。するとタケルは、意外なことを言った。
『でもよ、お前が『右』って叫んでくれたから、避けられたんだぜ?』
「え?」
『オレ、ソロだったらあの棍棒、食らってたかもな。お前がいてくれて助かったわー!』
そう言って、タケルは笑った。
『これがパーティーの良さってやつだな!』
その言葉に、アリサも表情を緩める。
『…そうね。一人より、三人の方が安全だものね』
『んじゃ、そういうわけで!これからもよろしくな、メガネ!』
「メガネ…」
『あ、嫌か?オレ、あだ名で呼ぶの好きなんだよなー。アリサは……まあアリサでいいか。メガネはメガネで!』
「…別にいいですけど……」
『よし!じゃあ改めてよろしくな、メガネ!』
俺の肩がバシバシ叩かれる。普通に力が強い。痛い。
[太字][大文字]ギルド[/大文字][/太字]
クエストの報告を終え、リリカさんから報酬を受け取る。
『お疲れ様でした!コボルト5匹、見事な討伐です!』
『へへっ、楽勝だったぜ!』
タケルは得意げだ。
『それにしても、三人でパーティー組むんですか?』
『そうなるかもね』
アリサが答える。
『こいつ、脳筋だけど戦力になるし』
『へへ、だろ?さて、じゃあ次のクエストに行くか!』
タケルが立ち上がる。
『はぁ!?もう行くの!?休憩は!?』
『休憩なんてあるわけないだろ!筋肉は使わないと衰えるんだ!』
『今日はもういいでしょ!?』
『いーや!もっと行くぜ!』
『この脳筋…』
アリサがため息をつく。
でも、その顔は笑っていた。
こうして、俺たちのパーティーにタケルが加わった。
日本一の剣姫と、日本一の脳筋と、日本一の眼精疲労。
奇妙な三人組の旅は、まだ始まったばかりだ。