[太字][大文字]ギルド[/大文字][/太字]
ギルドのカウンターで、リリカさんが手際よく書類を処理している。
『はい、これで登録完了です!ランクはGからスタートとなります!』
「Gって…一番下ですか……?」
『来たばかりなんですから当ったり前ですよ!クエストをこなしていけばランクは上げられるので!頑張ってくださいね!』
リリカさんはニコニコしながら、依頼書の束を差し出す。分厚い…
「ちなみにどんなクエストがあるんですか?」
『そうですねー。初心者向けだと、草むしりとか、街の清掃とか、魔物の素材集めとか…』
「く、草むしり…」
俺はゲーマーだ。日本で初めてラスボスを倒した男だというのに。草むしりから始まるのか…。当然っちゃ当然だけど。
【マスター。現実を受け入れましょう。あなたの戦闘力は一般市民以下です】
カイシの容赦ないテキストが視界に浮かぶ。
「うるさいわ…」
『え?何か言いました?』
「いえ、なんでもないです!」
仕方ない。草むしりからコツコツと…。
そう思った、その時だった。
[太字]バンッ![/太字]
ギルドの扉が勢いよく開かれた。
『依頼を受けるわ!』
入ってきたのは、一人の少女だった。
銀色の長髪をポニーテールにした、俺と多分同い年くらいの女の子。白い騎士風の装束に身を包み、腰には美しい剣を携えている。
そして何より――目が、すごくキラキラしていた。
『お、アリサちゃん!今日も元気だねぇ!』
リリカさんが手を振りながら挨拶している。
少女はカウンターへ一直線に歩いてくる。周りの冒険者たちが、道を開ける。なんだろう、このオーラ…。
俺は無意識に、カイシを起動していた。
【対象:アリサ=クロフォード】
称号:日本一の剣姫
聖遺物:英雄級『白銀の誓約剣』
ステータス:剣技S/魔力C/耐久B
備考:最年少で剣聖の称号を得た天才。
現在の状態:やる気に満ちている
「日本一の…剣姫…?」
思わず呟く。
その声が聞こえたのか、少女がこっちを向いた。
『ん?あんた、誰?』
「あ、えっと…さっき来たばかりの…」
『ふーん。新入りか』
少女は興味なさそうに、またリリカさんに向き直る。
『リリカ!今日こそはBランクのクエストを頂くわ!』
『えーっとね、アリサちゃん。まだCランクのクエストを3つこなしてないよね?ランクアップの条件は…』
『そんなの関係ない!私は天才だって誰もが認めてるのよ!?Bランクくらい楽勝に決まってる!』
『でもねー…規則だから…』
リリカさんが困った顔で一瞬俺を見る。助けを求められても困るんだけど。
「あの…」
気がついたら、口が動いていた。
『何よ』
「その…Cランクのクエストをこなせば、自然とBランクになれるんじゃないですか?ゲームと同じで、経験値が足りてないと次のレベルには行けないというか…」
少女がジロリと俺を睨む。
『ゲーム?あんた、この世界をゲームと一緒にしないでくれる?この世界はゲームなんかじゃない。真面目に話して』
「あ、えと、はい、すみません…」
即座に謝った。怖い。この人、めっちゃ怖い。
【マスター。彼女の才能は本物です。刺激しない方が良いでしょう】
「わかってるよ…」
小声で呟く。
『アリサちゃん、ユウトくんの言う通りだよ。まずはCランクを3つクリアしよう?そうしたらBランクのクエスト、一緒に選んであげるから!』
リリカさんのナイスフォロー。
少女は一瞬ムッとしたが、やがて『…わかったわ』と渋々うなずいた。
『じゃあさっさとCランクのクエスト決めましょうよ』
『はいはい…これなんてどう?「東の森の魔物討伐」。ゴブリンが数匹出る程度だし、アリサちゃんには物足りないかもしれないけど』
『ゴブリン?そんなの一瞬よ!ナメないでくれる!?』
少女は依頼書をひったくるように受け取ると、クルリと反転した。
そして、出口に向かいながら、振り返らずに言った。
『あんた、新入りでしょ。勉強したいなら、見学に来てもいいわよ。私の華麗な剣技、目に焼き付けなさい!』
「え?あ、はい…」
気がついたら返事してた。
少女は満足そうにうなずくと、颯爽とギルドを出て行った。
「…なんだったんだ、今の」
【どうやら、マスターは彼女のお守り役を任されたようです】
「お守り役って…あんな強い人の?」
【戦闘力は高いですが、他は…その…】
「言おうとするなよ」
[水平線]
[太字][大文字]東の森[/大文字][/太字]
結局、俺はアリサ(という名前らしい)についていき、気づけば東の森まで来ていた。
『遅い!』
森の入り口で、彼女が腕を組んで立っている。
「す、すみません…」
『まったく。で、あんた名前は?』
「ユウトです。桐谷ユウト」
『ユウトね。私はアリサ=クロフォード。称号は日本一の剣姫よ』
さっきカイシで見たから知ってるけど。そうとは知らないアリサはドヤ顔だ。完全にドヤ顔だ。
「あの、さっきギルドでも聞こえたんですけど…日本一の剣姫って、どういう…」
『文字通りよ。日本で一番若くして剣聖の称号を得たの。15歳の時ね』
「15歳!?」
『今は16よ。で、こっちに来て3年目。つまり、この世界ではめっちゃベテランってわけ!』
なるほど。だからあの自信満々な態度か。
【マスター。彼女の称号は本物です。ただし…】
「ただし?」
【プライドが高そうです。扱いに注意してください】
カイシの忠告がなければ、今頃もっと嫌な思いをしてたかもしれない。
『で、あんたの称号は何なの?まさか、無称号で来たわけないでしょ?』
「えっと…」
言いにくい。
『何よ、はっきり言いなさいよ』
「…眼精疲労です」
『………は?』
「日本一の、眼精疲労、です…」
アリサが固まった。
数秒の沈黙の後――
『はっ!あははははは!』
盛大に笑われた。誰かに称号を言うと毎回爆笑されるものだから結構心に来る。
「やっぱり笑われた…」
『眼精疲労!?それで日本一!?ダサくない!?』
「…言い返せない」
『あははは!面白い!初めて会ったわ、そんな称号の人!』
笑いすぎて涙まで出てる。確かに笑い話だけど、本人の前でそこまで笑わなくても…。
『で、聖遺物は?眼精疲労に相応しいものが出たわけ?ひんやりタイプの目薬?』
「それが…」
俺はカイシを取り出した。
『なによこれ、メガネ?』
「はい。神話級らしいんですけど」
アリサの動きがピタリと止まった。
『…は?神話級?』
「みたいです。よくわかんないですけど」
『ちょっと貸しなさい!』
アリサがメガネをひったくる。力が強すぎてカイシがへし折れそうだ。耐えてくれカイシ。
『…確かに、それなりのオーラは感じるわね。本物だったりして』
「本物なんですか?」
『はっきりとは私にも分からないけどね。でも、なんで眼精疲労が称号の奴なんかに…』
「んなこと俺が知りたいです」
アリサがメガネを返す。その目つきが、さっきまでのバカにするようなものから、少し変わっているような気がする。
『…ちょっとかけてみなさいよ。何が見えるのか気になるの。さっさと教えて』
俺はカイシをかけた。
視界に、アリサの情報が浮かぶ。
さっきと同じだ。でも、もっと詳しく見たりも出来るかもしれない。
【詳細表示モードに切り替えますか?】
カイシの問いかけに、心の中で〖はい〗と答える。
【対象:アリサ=クロフォード】(詳細モード)
称号:日本一の剣姫
聖遺物:英雄級『白銀の誓約剣』(通称:シルヴィ)
ステータス:剣技S/魔力C/耐久B/敏捷A/精神D(プライドが高いため、精神攻撃に弱い)
スキル:剣術(極)、気配察知(中)、料理(壊滅的)
現在の状態:やる気に満ちている。ユウトを「面白い奴」と認識。
弱点:甘いものに目がない。方向音痴。冷静さを欠くと大きな隙ができる。
攻略のヒント:クッキーを与えることで、およそ30%の確率で機嫌が直る。
「…すごい」
『何が見えるのよ』
「えっと…称号、聖遺物、ステータス…それに、スキルとか弱点とか…」
『弱点!?』
アリサの声が裏返る。
『ちょ、ちょっと、何が見えるの!?変なこと書いてあったりしないでしょうね!!早く教えなさい!メガネぶっ壊すわよ!!』
「え、えっとー…」
言えるわけがない。甘いものに目がないとか、方向音痴とか、冷静さを欠くと隙ができるとか。言ったら八つ裂きにされそうだ。
「べ、別に大したことじゃないですよ。ただ、精神攻撃に弱いとか…」
『そんなの当たり前でしょ!誰だって精神攻撃は嫌よ!』
あ、誤魔化せた…?
【マスター。彼女は単純です。その特性を覚えておくと良いでしょう】
カイシ、お前も大概だな…。
ギルドのカウンターで、リリカさんが手際よく書類を処理している。
『はい、これで登録完了です!ランクはGからスタートとなります!』
「Gって…一番下ですか……?」
『来たばかりなんですから当ったり前ですよ!クエストをこなしていけばランクは上げられるので!頑張ってくださいね!』
リリカさんはニコニコしながら、依頼書の束を差し出す。分厚い…
「ちなみにどんなクエストがあるんですか?」
『そうですねー。初心者向けだと、草むしりとか、街の清掃とか、魔物の素材集めとか…』
「く、草むしり…」
俺はゲーマーだ。日本で初めてラスボスを倒した男だというのに。草むしりから始まるのか…。当然っちゃ当然だけど。
【マスター。現実を受け入れましょう。あなたの戦闘力は一般市民以下です】
カイシの容赦ないテキストが視界に浮かぶ。
「うるさいわ…」
『え?何か言いました?』
「いえ、なんでもないです!」
仕方ない。草むしりからコツコツと…。
そう思った、その時だった。
[太字]バンッ![/太字]
ギルドの扉が勢いよく開かれた。
『依頼を受けるわ!』
入ってきたのは、一人の少女だった。
銀色の長髪をポニーテールにした、俺と多分同い年くらいの女の子。白い騎士風の装束に身を包み、腰には美しい剣を携えている。
そして何より――目が、すごくキラキラしていた。
『お、アリサちゃん!今日も元気だねぇ!』
リリカさんが手を振りながら挨拶している。
少女はカウンターへ一直線に歩いてくる。周りの冒険者たちが、道を開ける。なんだろう、このオーラ…。
俺は無意識に、カイシを起動していた。
【対象:アリサ=クロフォード】
称号:日本一の剣姫
聖遺物:英雄級『白銀の誓約剣』
ステータス:剣技S/魔力C/耐久B
備考:最年少で剣聖の称号を得た天才。
現在の状態:やる気に満ちている
「日本一の…剣姫…?」
思わず呟く。
その声が聞こえたのか、少女がこっちを向いた。
『ん?あんた、誰?』
「あ、えっと…さっき来たばかりの…」
『ふーん。新入りか』
少女は興味なさそうに、またリリカさんに向き直る。
『リリカ!今日こそはBランクのクエストを頂くわ!』
『えーっとね、アリサちゃん。まだCランクのクエストを3つこなしてないよね?ランクアップの条件は…』
『そんなの関係ない!私は天才だって誰もが認めてるのよ!?Bランクくらい楽勝に決まってる!』
『でもねー…規則だから…』
リリカさんが困った顔で一瞬俺を見る。助けを求められても困るんだけど。
「あの…」
気がついたら、口が動いていた。
『何よ』
「その…Cランクのクエストをこなせば、自然とBランクになれるんじゃないですか?ゲームと同じで、経験値が足りてないと次のレベルには行けないというか…」
少女がジロリと俺を睨む。
『ゲーム?あんた、この世界をゲームと一緒にしないでくれる?この世界はゲームなんかじゃない。真面目に話して』
「あ、えと、はい、すみません…」
即座に謝った。怖い。この人、めっちゃ怖い。
【マスター。彼女の才能は本物です。刺激しない方が良いでしょう】
「わかってるよ…」
小声で呟く。
『アリサちゃん、ユウトくんの言う通りだよ。まずはCランクを3つクリアしよう?そうしたらBランクのクエスト、一緒に選んであげるから!』
リリカさんのナイスフォロー。
少女は一瞬ムッとしたが、やがて『…わかったわ』と渋々うなずいた。
『じゃあさっさとCランクのクエスト決めましょうよ』
『はいはい…これなんてどう?「東の森の魔物討伐」。ゴブリンが数匹出る程度だし、アリサちゃんには物足りないかもしれないけど』
『ゴブリン?そんなの一瞬よ!ナメないでくれる!?』
少女は依頼書をひったくるように受け取ると、クルリと反転した。
そして、出口に向かいながら、振り返らずに言った。
『あんた、新入りでしょ。勉強したいなら、見学に来てもいいわよ。私の華麗な剣技、目に焼き付けなさい!』
「え?あ、はい…」
気がついたら返事してた。
少女は満足そうにうなずくと、颯爽とギルドを出て行った。
「…なんだったんだ、今の」
【どうやら、マスターは彼女のお守り役を任されたようです】
「お守り役って…あんな強い人の?」
【戦闘力は高いですが、他は…その…】
「言おうとするなよ」
[水平線]
[太字][大文字]東の森[/大文字][/太字]
結局、俺はアリサ(という名前らしい)についていき、気づけば東の森まで来ていた。
『遅い!』
森の入り口で、彼女が腕を組んで立っている。
「す、すみません…」
『まったく。で、あんた名前は?』
「ユウトです。桐谷ユウト」
『ユウトね。私はアリサ=クロフォード。称号は日本一の剣姫よ』
さっきカイシで見たから知ってるけど。そうとは知らないアリサはドヤ顔だ。完全にドヤ顔だ。
「あの、さっきギルドでも聞こえたんですけど…日本一の剣姫って、どういう…」
『文字通りよ。日本で一番若くして剣聖の称号を得たの。15歳の時ね』
「15歳!?」
『今は16よ。で、こっちに来て3年目。つまり、この世界ではめっちゃベテランってわけ!』
なるほど。だからあの自信満々な態度か。
【マスター。彼女の称号は本物です。ただし…】
「ただし?」
【プライドが高そうです。扱いに注意してください】
カイシの忠告がなければ、今頃もっと嫌な思いをしてたかもしれない。
『で、あんたの称号は何なの?まさか、無称号で来たわけないでしょ?』
「えっと…」
言いにくい。
『何よ、はっきり言いなさいよ』
「…眼精疲労です」
『………は?』
「日本一の、眼精疲労、です…」
アリサが固まった。
数秒の沈黙の後――
『はっ!あははははは!』
盛大に笑われた。誰かに称号を言うと毎回爆笑されるものだから結構心に来る。
「やっぱり笑われた…」
『眼精疲労!?それで日本一!?ダサくない!?』
「…言い返せない」
『あははは!面白い!初めて会ったわ、そんな称号の人!』
笑いすぎて涙まで出てる。確かに笑い話だけど、本人の前でそこまで笑わなくても…。
『で、聖遺物は?眼精疲労に相応しいものが出たわけ?ひんやりタイプの目薬?』
「それが…」
俺はカイシを取り出した。
『なによこれ、メガネ?』
「はい。神話級らしいんですけど」
アリサの動きがピタリと止まった。
『…は?神話級?』
「みたいです。よくわかんないですけど」
『ちょっと貸しなさい!』
アリサがメガネをひったくる。力が強すぎてカイシがへし折れそうだ。耐えてくれカイシ。
『…確かに、それなりのオーラは感じるわね。本物だったりして』
「本物なんですか?」
『はっきりとは私にも分からないけどね。でも、なんで眼精疲労が称号の奴なんかに…』
「んなこと俺が知りたいです」
アリサがメガネを返す。その目つきが、さっきまでのバカにするようなものから、少し変わっているような気がする。
『…ちょっとかけてみなさいよ。何が見えるのか気になるの。さっさと教えて』
俺はカイシをかけた。
視界に、アリサの情報が浮かぶ。
さっきと同じだ。でも、もっと詳しく見たりも出来るかもしれない。
【詳細表示モードに切り替えますか?】
カイシの問いかけに、心の中で〖はい〗と答える。
【対象:アリサ=クロフォード】(詳細モード)
称号:日本一の剣姫
聖遺物:英雄級『白銀の誓約剣』(通称:シルヴィ)
ステータス:剣技S/魔力C/耐久B/敏捷A/精神D(プライドが高いため、精神攻撃に弱い)
スキル:剣術(極)、気配察知(中)、料理(壊滅的)
現在の状態:やる気に満ちている。ユウトを「面白い奴」と認識。
弱点:甘いものに目がない。方向音痴。冷静さを欠くと大きな隙ができる。
攻略のヒント:クッキーを与えることで、およそ30%の確率で機嫌が直る。
「…すごい」
『何が見えるのよ』
「えっと…称号、聖遺物、ステータス…それに、スキルとか弱点とか…」
『弱点!?』
アリサの声が裏返る。
『ちょ、ちょっと、何が見えるの!?変なこと書いてあったりしないでしょうね!!早く教えなさい!メガネぶっ壊すわよ!!』
「え、えっとー…」
言えるわけがない。甘いものに目がないとか、方向音痴とか、冷静さを欠くと隙ができるとか。言ったら八つ裂きにされそうだ。
「べ、別に大したことじゃないですよ。ただ、精神攻撃に弱いとか…」
『そんなの当たり前でしょ!誰だって精神攻撃は嫌よ!』
あ、誤魔化せた…?
【マスター。彼女は単純です。その特性を覚えておくと良いでしょう】
カイシ、お前も大概だな…。