時計の針は2時を指している。峻兄さんとアドルフはまだ帰ってきてない。サファイヤは水槽を理由もなくグルグル回りながら暇そうに泳ぎ回っている。バットは今晩の食材を買いに近所のスーパーに行った。一裕と彗星は、夏期講習に出ないといけないから3時くらいに帰ってくると言って出ていった。
「ねえねえ、二人とも。ちょっと見てほしいんだけど」
俺と蓮がリビングで溜まっている学校の課題をやっている時に、佳奈美さんが本棚から一冊の漫画を取り出して俺たちのところへ持ってきた。エメラルドは俺たちの横で、佳奈美さんが好きだと言っていた韓国アイドルの音楽を聴いている。
「アドルフの言っていた楓谷のことが気になって。やっぱり、獣神国と第一王女は関係してると思う」
エメラルドが音楽を聴くのをやめて、佳奈美さんの方を見た。
「兄上は第一王女様を知らなさそうだったぞ」
「ううん、アドルフが第一王女を襲ったとか、そういうことを言ってるんじゃなくて、これ」
佳奈美さんはそう言って、漫画のあるページを開いて、俺達に見せた。
「虞美人草?」
虞美人は馬鹿な俺でも知ってる。大昔の中国にいた、絶世の美女。でも、それだけ。他のことはよく知らない。
「何か、あれだろ?絶世の美女だったっていう…」
俺の横で化学の問題集を自分の前に開けたまま、佳奈美さんの話を聞いていた蓮が何に気付いたのか、あ、と言った。
「第一王女の瞳と髪の毛が、楓谷を作ったかもしれないってこと?」
「は?」
俺は蓮の問題集を閉じて、蓮の鞄にしまった。
「佳奈美さん、蓮。どういう意味?」
佳奈美さんは漫画のページを何枚か捲った後、それを俺に見せた。
『虞美人の血が地面に染み込んだ後に、1輪の花が咲いた。これが、虞美人草の名前の由来となった』
…つまり、第一王女様の亡骸の一部が獣神国にあって、それが楓谷を生み出したと?エメラルドがその漫画を手にとって、虞美人のエピソードを初めから終わりまで読んだ。
「ただ、それなら第一王女様を襲った宇宙の山賊は、何故楓谷にわざわざ埋めた?」
「…怖くなって捨てた、とか?」
捨てた?怖くなったって、第一王女様の瞳と髪の毛が?
「一昨日くらいにテレビで怪談特集が放送されてたの。勝手に動くぬいぐるみとか、市松人形の髪の毛が勝手に伸びるとか…幼くして病死した男の子の葬儀中に、棺桶の前に沢山供えられていた風船の中から、たった1つだけ、男の子のお母さんのもとに飛んでいったっとか…。私、人間って、亡くなった後も思いは遺していくんだと思う。だから、第一王女様の思いが何かしら、心霊現象みたいなことを起こして、それで山賊は不気味がって捨てたんじゃないかって」
俺達の身体は脆い。高いところから落ちただけで、自動車に轢かれただけで、水に溺れただけで、俺達はあっという間に死んでしまう。でも、俺達の思いだけは誰にも殺せない。俺達の思いは、俺達だけのものだから。
佳奈美さんは蓮と並んでソファに座って、漫画を読んでいるエメラルドを見上げている。
「第一王女様は、現実の人間だった圭吾くんを信頼していたし、親友として愛していた。アドルフも、自分とは違う世界の存在を親友として愛した。2人にはちゃんと、共通点がある。現に、アドルフの瞳が楓色だったしょ?」
エメラルドは漫画を読みながら首を縦に振った。
「本当にただの偶然かもしれないけどね。でも私は、アドルフの中に第一王女様の思いも宿ってるんじゃないかって思うんだ」
「たっだいまー、暑うっ!」
一裕と彗星が塾から帰ってきた。
「あ、待って。閉めないで」
ほとんど同時に、バットもスーパーから帰ってきた。白いナイロン袋からパックされたタコが赤く透けて見える。バットはその袋を台所のテーブルに置くと、冷蔵庫から自分の作ったジュースを取り出して1杯飲んだ。
「タコ焼きにしてみようかなって思ってさ」
タコも本当はサファイヤの友達だったかもしれないし、家族だったかもしれない。だが、サファイヤは俺達と過ごすうちに魚介類を食べ物として食べるようになった。「食べ物は食べてこそ、その命に生きた証を与えられる」。いつだったか、峻兄さんがサファイヤにそう伝えてからだ。
「バット、これは何に使うのさ」
サファイヤが水槽から飛び跳ねて空中で人間姿になると、テーブルに雑に置かれた袋からタコと一緒にソーセージと溶けるチーズ、生食用エビの袋も取り出した。
「タコ焼きの具材だよ。タコじゃないといけないわけでもないからね」
バットは水で冷やしたタオルを首に掛けて、それらを1つずつ冷蔵庫にしまっていった。一裕と彗星は塾の鞄をリビングの隅に置いて、鞄からテキストを取り出すと、早速テーブルで塾の課題に取り組み始めた。提出はオンラインでするらしい。
時計の針は3時半を指している。
ガチャ…
峻兄さんとアドルフが帰ってきた。2人とも額に汗を浮かばせて、身分の違いなど初めから無かったようにお互いに慣れ親しんで楽しそうに話しながら、リビングにやって来た。台所の水道で濡らしたタオルで全身を拭きながら、桜大の小学校時代のバカなエピソードとかを話しながら笑い合っている。
「兄上、お帰りなさいませ」
エメラルドが佳奈美さんに借りた漫画をテーブルに置くと、アドルフのタオルを預かって洗面所で軽く洗った後、ベランダに干しに行った。
「エメラルド、そこの太い洗濯バサミで挟んでおけ。風に飛ばされると困るから」
エメラルドがタオルを干した物干し竿に、少し黄ばんだ洗濯バサミがあった。
パチン
アドルフの使っていたグレーのタオルがそよ風に吹かれてたなびいている。
「圭吾とりこという幼子が、桜大の兄弟だったとはな…楓は、3人の両親のもとにいると…いつか4人ともこの世界に帰ってくれば良いな」
アドルフは峻兄さんから圭吾たちのことも聞いたようで、壁に掛けられた2人の下手な花の絵を遠い眼差しで眺めている。
佳奈美さんは虞美人の漫画を、ソファに置かれた蓮の鞄の後ろに隠した。
「そういえばさ、佳奈美さんも蓮も、本当にご両親のこと、大丈夫なのか」
蓮と佳奈美は1週間以上連続で学校を休んでいることになる。学校から親に連絡があっても、全くおかしくないはずだ。
「ああ、それなら大丈夫」
聞けば、蓮と佳奈美は個人が経営している高校に通っているそうな。毎年夏に、2週間、夏休みとは別に休みの日が設けられているという。ちょうど、蓮の両親の長期出張とその休みの期間が偶然重なったそうだ。佳奈美さんは、校外宿泊学習に出かけると言って誤魔化したらしいが、嘘を付いた罪悪感を晴らしたくて、友達と旅行に行くと電話で伝え直したそうだ。
「ま、結果的に嘘じゃなくなったしね」
バットがポンと佳奈美さんの背中を叩いた。そうだ。俺達は、今、結末の分からない果てしない旅行に出ているのだ。
一裕と彗星はアドルフがアパートに着いた時に宿題をするのをやめて、テキストを鞄にしまった。一裕と彗星は、宇宙にある自分達の遺骸についてアドルフに何かを尋ねたそうにソワソワしているが、アドルフが峻兄さんと桜大の思い出話で盛り上がっている所を邪魔したくないようで、アドルフとエメラルドの間に立ってエメラルドの顔をチラチラと見ている。
「兄上、ランドルフ兄上から水について何かご報告は御座いましたか」
エメラルドは、一裕と彗星に見られていることに気付くと、「一裕の遺骸かもしれないもの」の詳細をアドルフに尋ねた。
「ああ、そのことについてだが、水は孤独の窟で発見されたそうだ。そこに迷い込んでしまった男児を役人が救出した際に水があることに気が付いたと。獣神国の役人の間では大騒ぎになっているようだが、下手に民に知らせると興味本位で近づくものがいるやもしれぬ。今は民には伏せておくようにとランドルフに通達した」
何だ、孤独の窟って…。
だがエメラルドは、孤独の窟を知っているようだ。エメラルドは蓮のノートを持ってきて、『獣神国の真実を暴く』と記されたページに、『獣神国に水、孤独の窟で発見』と書き加えた。
「エメラルド、孤独の窟って何?」
バットがノートに書き加えられた4つの文字を見つめている。
「昔、ランドルフ兄上が教えてくれた。孤独の窟は、迷い込んでしまうと二度と出られないって噂されて怖がられている物凄く窮屈な洞窟だ。太陽の光も届かなくて真っ暗らしい。男の子が無事に助け出されたのは奇跡に近いことなんだ」
…なるほどな。
だが、正直俺は、孤独の窟が何なのかはどうでもいい。俺は、その洞窟の名前の由来が気になる。恐れられているのなら、もっとそれらしい名前を付けるはずじゃないか?恐怖の窟とかさ。
…誰かがその洞窟の中で死んだとか?
例えば…一裕が…。
「アドルフ国王陛下、孤独の窟の名前の由来について何かご存知ではないですか?」
アドルフと峻兄さんの前に、峻兄さんが通っていた小学校の学年アルバムが1年生のものから4年生までのものの4冊が置かれていて、2人は2年生の時の桜大が、プールで峻兄さんとバタフライの競争をしている写真を見ている。
チクタク…チクタク…
「あの〜…?」
いつまで経ってもアドルフが答えてくれない。ずっとアルバムを捲ってじっと見たと思ったら、最初の方のページに戻ったりを繰り返している。平民の俺が直接尋ねたのは、流石に不躾だったろうか。
「兄上は何かに夢中になると全く聞こえなくなるんだよ」
エメラルドが苦笑しながら、アドルフが返事をしない理由のついでに、洞窟の名前の由来も教えてくれた。
「昔、毛のないピンク色の妖怪が洞窟の中で生きていたらしい。ただ、洞窟からは毎日のようにすすり泣きのような声が聞こえてきたんだって。今は聞こえないけど。洞窟の中の妖怪は孤独に違いないということで、人々の間で孤独の窟と呼ばれるようになったんだ」
毛がない…。ピンク色の肌…。すすり泣き…。
「人間ってさ…狼に比べたら毛は少ないし、人間の肌は狼の毛色に比べれば、ピンクに近いよな?」
一裕がアドルフの方を見たまま、俺の言葉に耳を澄ませている。
「…ウルフ、その妖怪が人間だったと疑っているのか?」
「…一裕、お前ちょっと来い」
俺はエメラルドと一裕をリビングから連れ出して、リビングから一番遠いお風呂場に連れて行った。
「俺の推測を聞いてくれないか」
お風呂場の電気はついていない。エメラルドの瞳が淡い緑色に光っている。一裕の瞳は、お風呂場の鏡に反射している洗面所の窓からの光を受けて、黒目が少しだけ白く光っている。エメラルドと一裕はお互いに顔を見合わせると頷いて、俺に向き合うと、推測を聞かせてくれと言った。
アドルフと峻兄さんがリビングで桜大のことを嬉しそうに、寂しそうに、懐かしそうに話している声が聞こえてくる。
「…俺、孤独の窟で見つかった水が一裕の遺骸じゃないかと思う」
「…え?」
実際、人体が有機物であることを考えると、炭になることはあっても水になることは化学的にあり得ない。だが、それなら俺達吸血鬼の存在も、サファイヤも、エメラルドもアドルフも、灰色の世界も全部、あり得ないことになる。だが、実際にここにあるのだ。それらが。
「俺達が初めて狼男を見たらビックリするだろ。向こうも同じだ。自分達と見た目が全く違う生き物を見たら、妖怪扱いして当然だ」
どんな経緯で一裕が獣神国に行ったのかはまだ分からない。でも、一裕が愛しの彗星にも息子である楓にも会えずに地球ではない異国の地で息絶えたなら、相当な孤独に苦しんだはずだ。
一裕は、怖がっているようにも安心しているようにも見える表情で俺の話を聞いていた。やっと、自分の死の真実が解き明かされるかもしれない。でも、自分の遺骸を目の当たりにするのは怖い。一裕は何も言わずにいたが、目は口ほどに物を言うとはこれのこと。一裕の思っていることが手に取るように分かる。
「…兄上にお伝えしてこよう」
エメラルドを先頭にリビングに戻ると、アドルフと峻兄さんはいなかった。アルバムが丁寧に机の真ん中に重ねられている。
「峻兄さんたちは?」
「水槽を見に行った」
佳奈美さんの言うように、2人は水槽の中のサファイヤを見つめている。アドルフは、サファイヤよりも水そのものに興味を持っているように見える。
「そなたはサファイヤと言ったな。そなたは人間か、或いは魚か」
赤と白のまだら模様の金魚が、口をパクパクさせながらアドルフに答えた。
「本当は首長竜なんですよ」
「見せてはくれまいか」
「ここでは無理です。アパートを破壊してしまうんで。機会があればお見せしますよ」
確かに、首長竜姿のサファイヤの前では、いくらデカいアドルフであっても微生物になってしまう。
「兄上、発見された水について伺いたいことが御座います」
「何だ、ラルフ」
アドルフは水槽の水に映る自分の顔を興味津々に見つめながら答えた。
「水が発見されたのが、洞窟の中の具体的に何処なのかをご存知でしょうか」
「入り口のすぐ近くだ。だから男児は無事に救出され、役人も無事に戻ってくることが出来たのだ」
太陽の黄色い光がカーテンの隙間を縫って、水槽の中のサファイヤの姿を照らしている。サファイヤの鱗がキラキラと宝石の粒のように輝いている。
「燈火の姫が見られるのは今頃でしょうか」
燈火の姫って何?
「エメラルド、それって…」
「年に1回だけ獣神国の空を覆い尽くす、光の玉さ。白に近い金色の柔らかな光を放つ蛍みたいな光が、空を覆うんだよ。星とは別にな」
なんか、水の話から脱線し始めていないか?
「兄上、近々サファイヤを連れて獣神国に行く許可を」
まさか、エメラルド、孤独の窟に入るつもりか?
「ならぬ!」
アドルフは案の定、エメラルドの方を向いて叱りつけるように怒鳴った。
「水が気になる気持ちも分かるが、命を危険に晒すな。ましてや、そなたの友人の命までもな」
アドルフは、エメラルドが俺と一裕も一緒に連れて行こうとしているのを感じ取ったようだ。
「大人の身体で入ったら危険だということですよね、兄上。我々は狼になれます。水が入り口付近にあるのなら、迷って出られなくなることも御座いますまい」
時計の針は5時を指している。夜ご飯まで後数時間。
「…私もついて参ろう。全ての責任は私が負う」
「有難うございます、国王陛下」
チョンチョン
誰かが俺の肩を指で突いた。
「お取り込み中悪いけど…タコ焼き食べて行く?やめとく?」
俺の肩を突いたのはバットだった。彗星もバットの2、3歩離れたところで俺達のやり取りを見ていたようだ。
「一裕さん、私…」
彗星は両手を胸のところで組んで、一裕を見ている。唇と指先が小刻みに震えている。
「翠ちゃん、大丈夫だから。俺も翠ちゃんも、ちゃんと生きてるから」
一裕は彗星の不安を感じ取って、彗星を固く抱き締めた。
「これからも2人で…いや、皆で生きていこうよ」
「…一裕…さん…陛下が…ご覧になっ…て…るから…」
一裕の首に腕を回している彗星の声が震えている。顔は一裕の背中で見えないが、言葉の節々が不自然に途切れている。
「兄上、急いては事をし損じると申しますから、ここは折角ですから地球の食事をお試しになってはいかがでしょうか」
アドルフは暫く悩んで、バットにタコ焼きを食べてほしそうな顔で見つめられていることに気が付くと、首を縦に振った。
「じゃあさ、タコ焼きに入れる具材の準備を手伝ってよ、エメラルド」
エメラルドはバットと一緒に台所に向かう途中で、佳奈美さんと蓮も誘って、具材を何にするかをワイワイと決め始めた。
「俺も混ぜてよ!」
サファイヤが水槽から飛び出て、人間になると台所に小走りで向かった。
「タコは絶対だな」
「エビも美味しいらしいよ、動画でやってる人がいた」
「ソーセージはチーズと一緒に入れても美味そうだな」
「私、幼稚園でタコ焼きパーティーしたことある。確か、中にチョコが入ってるのがあった気がするんだけど…」
「絶っ対に不味くなるから、やめておこうぜ」
…佳奈美さん、絶対に記憶が他の何かと混ざってる。
「でも、チョコのタコ焼き美味しかった記憶があるの。やってみよう?」
『やめろ!』
台所にいる奴らが必死に佳奈美さんを説得している。俺も気付いたら台所にいて、チョコを袋から取り出そうとしている佳奈美さんを止めていた。エメラルドも物凄い形相で、佳奈美さんからチョコの袋を取り上げて説得している。
「う〜ん、確かに不味いはずなんだけど、美味しかった記憶が…」
「記憶よりも常識を大事にしよう、今は!」
蓮のおかげで、やっと佳奈美さんが納得してくれた。エメラルドは胸を撫で下ろしている。バットは、佳奈美さんが再びチョコを入れようとしないように、チョコの袋を冷蔵庫に奥深くにしまった。
「…ラルフを笑顔にしてくれてありがとう」
「いえ、そんな…」
水槽のところでアドルフと峻兄さんが話しているのが、何となく遠いところから聞こえた気がした。
「ねえねえ、二人とも。ちょっと見てほしいんだけど」
俺と蓮がリビングで溜まっている学校の課題をやっている時に、佳奈美さんが本棚から一冊の漫画を取り出して俺たちのところへ持ってきた。エメラルドは俺たちの横で、佳奈美さんが好きだと言っていた韓国アイドルの音楽を聴いている。
「アドルフの言っていた楓谷のことが気になって。やっぱり、獣神国と第一王女は関係してると思う」
エメラルドが音楽を聴くのをやめて、佳奈美さんの方を見た。
「兄上は第一王女様を知らなさそうだったぞ」
「ううん、アドルフが第一王女を襲ったとか、そういうことを言ってるんじゃなくて、これ」
佳奈美さんはそう言って、漫画のあるページを開いて、俺達に見せた。
「虞美人草?」
虞美人は馬鹿な俺でも知ってる。大昔の中国にいた、絶世の美女。でも、それだけ。他のことはよく知らない。
「何か、あれだろ?絶世の美女だったっていう…」
俺の横で化学の問題集を自分の前に開けたまま、佳奈美さんの話を聞いていた蓮が何に気付いたのか、あ、と言った。
「第一王女の瞳と髪の毛が、楓谷を作ったかもしれないってこと?」
「は?」
俺は蓮の問題集を閉じて、蓮の鞄にしまった。
「佳奈美さん、蓮。どういう意味?」
佳奈美さんは漫画のページを何枚か捲った後、それを俺に見せた。
『虞美人の血が地面に染み込んだ後に、1輪の花が咲いた。これが、虞美人草の名前の由来となった』
…つまり、第一王女様の亡骸の一部が獣神国にあって、それが楓谷を生み出したと?エメラルドがその漫画を手にとって、虞美人のエピソードを初めから終わりまで読んだ。
「ただ、それなら第一王女様を襲った宇宙の山賊は、何故楓谷にわざわざ埋めた?」
「…怖くなって捨てた、とか?」
捨てた?怖くなったって、第一王女様の瞳と髪の毛が?
「一昨日くらいにテレビで怪談特集が放送されてたの。勝手に動くぬいぐるみとか、市松人形の髪の毛が勝手に伸びるとか…幼くして病死した男の子の葬儀中に、棺桶の前に沢山供えられていた風船の中から、たった1つだけ、男の子のお母さんのもとに飛んでいったっとか…。私、人間って、亡くなった後も思いは遺していくんだと思う。だから、第一王女様の思いが何かしら、心霊現象みたいなことを起こして、それで山賊は不気味がって捨てたんじゃないかって」
俺達の身体は脆い。高いところから落ちただけで、自動車に轢かれただけで、水に溺れただけで、俺達はあっという間に死んでしまう。でも、俺達の思いだけは誰にも殺せない。俺達の思いは、俺達だけのものだから。
佳奈美さんは蓮と並んでソファに座って、漫画を読んでいるエメラルドを見上げている。
「第一王女様は、現実の人間だった圭吾くんを信頼していたし、親友として愛していた。アドルフも、自分とは違う世界の存在を親友として愛した。2人にはちゃんと、共通点がある。現に、アドルフの瞳が楓色だったしょ?」
エメラルドは漫画を読みながら首を縦に振った。
「本当にただの偶然かもしれないけどね。でも私は、アドルフの中に第一王女様の思いも宿ってるんじゃないかって思うんだ」
「たっだいまー、暑うっ!」
一裕と彗星が塾から帰ってきた。
「あ、待って。閉めないで」
ほとんど同時に、バットもスーパーから帰ってきた。白いナイロン袋からパックされたタコが赤く透けて見える。バットはその袋を台所のテーブルに置くと、冷蔵庫から自分の作ったジュースを取り出して1杯飲んだ。
「タコ焼きにしてみようかなって思ってさ」
タコも本当はサファイヤの友達だったかもしれないし、家族だったかもしれない。だが、サファイヤは俺達と過ごすうちに魚介類を食べ物として食べるようになった。「食べ物は食べてこそ、その命に生きた証を与えられる」。いつだったか、峻兄さんがサファイヤにそう伝えてからだ。
「バット、これは何に使うのさ」
サファイヤが水槽から飛び跳ねて空中で人間姿になると、テーブルに雑に置かれた袋からタコと一緒にソーセージと溶けるチーズ、生食用エビの袋も取り出した。
「タコ焼きの具材だよ。タコじゃないといけないわけでもないからね」
バットは水で冷やしたタオルを首に掛けて、それらを1つずつ冷蔵庫にしまっていった。一裕と彗星は塾の鞄をリビングの隅に置いて、鞄からテキストを取り出すと、早速テーブルで塾の課題に取り組み始めた。提出はオンラインでするらしい。
時計の針は3時半を指している。
ガチャ…
峻兄さんとアドルフが帰ってきた。2人とも額に汗を浮かばせて、身分の違いなど初めから無かったようにお互いに慣れ親しんで楽しそうに話しながら、リビングにやって来た。台所の水道で濡らしたタオルで全身を拭きながら、桜大の小学校時代のバカなエピソードとかを話しながら笑い合っている。
「兄上、お帰りなさいませ」
エメラルドが佳奈美さんに借りた漫画をテーブルに置くと、アドルフのタオルを預かって洗面所で軽く洗った後、ベランダに干しに行った。
「エメラルド、そこの太い洗濯バサミで挟んでおけ。風に飛ばされると困るから」
エメラルドがタオルを干した物干し竿に、少し黄ばんだ洗濯バサミがあった。
パチン
アドルフの使っていたグレーのタオルがそよ風に吹かれてたなびいている。
「圭吾とりこという幼子が、桜大の兄弟だったとはな…楓は、3人の両親のもとにいると…いつか4人ともこの世界に帰ってくれば良いな」
アドルフは峻兄さんから圭吾たちのことも聞いたようで、壁に掛けられた2人の下手な花の絵を遠い眼差しで眺めている。
佳奈美さんは虞美人の漫画を、ソファに置かれた蓮の鞄の後ろに隠した。
「そういえばさ、佳奈美さんも蓮も、本当にご両親のこと、大丈夫なのか」
蓮と佳奈美は1週間以上連続で学校を休んでいることになる。学校から親に連絡があっても、全くおかしくないはずだ。
「ああ、それなら大丈夫」
聞けば、蓮と佳奈美は個人が経営している高校に通っているそうな。毎年夏に、2週間、夏休みとは別に休みの日が設けられているという。ちょうど、蓮の両親の長期出張とその休みの期間が偶然重なったそうだ。佳奈美さんは、校外宿泊学習に出かけると言って誤魔化したらしいが、嘘を付いた罪悪感を晴らしたくて、友達と旅行に行くと電話で伝え直したそうだ。
「ま、結果的に嘘じゃなくなったしね」
バットがポンと佳奈美さんの背中を叩いた。そうだ。俺達は、今、結末の分からない果てしない旅行に出ているのだ。
一裕と彗星はアドルフがアパートに着いた時に宿題をするのをやめて、テキストを鞄にしまった。一裕と彗星は、宇宙にある自分達の遺骸についてアドルフに何かを尋ねたそうにソワソワしているが、アドルフが峻兄さんと桜大の思い出話で盛り上がっている所を邪魔したくないようで、アドルフとエメラルドの間に立ってエメラルドの顔をチラチラと見ている。
「兄上、ランドルフ兄上から水について何かご報告は御座いましたか」
エメラルドは、一裕と彗星に見られていることに気付くと、「一裕の遺骸かもしれないもの」の詳細をアドルフに尋ねた。
「ああ、そのことについてだが、水は孤独の窟で発見されたそうだ。そこに迷い込んでしまった男児を役人が救出した際に水があることに気が付いたと。獣神国の役人の間では大騒ぎになっているようだが、下手に民に知らせると興味本位で近づくものがいるやもしれぬ。今は民には伏せておくようにとランドルフに通達した」
何だ、孤独の窟って…。
だがエメラルドは、孤独の窟を知っているようだ。エメラルドは蓮のノートを持ってきて、『獣神国の真実を暴く』と記されたページに、『獣神国に水、孤独の窟で発見』と書き加えた。
「エメラルド、孤独の窟って何?」
バットがノートに書き加えられた4つの文字を見つめている。
「昔、ランドルフ兄上が教えてくれた。孤独の窟は、迷い込んでしまうと二度と出られないって噂されて怖がられている物凄く窮屈な洞窟だ。太陽の光も届かなくて真っ暗らしい。男の子が無事に助け出されたのは奇跡に近いことなんだ」
…なるほどな。
だが、正直俺は、孤独の窟が何なのかはどうでもいい。俺は、その洞窟の名前の由来が気になる。恐れられているのなら、もっとそれらしい名前を付けるはずじゃないか?恐怖の窟とかさ。
…誰かがその洞窟の中で死んだとか?
例えば…一裕が…。
「アドルフ国王陛下、孤独の窟の名前の由来について何かご存知ではないですか?」
アドルフと峻兄さんの前に、峻兄さんが通っていた小学校の学年アルバムが1年生のものから4年生までのものの4冊が置かれていて、2人は2年生の時の桜大が、プールで峻兄さんとバタフライの競争をしている写真を見ている。
チクタク…チクタク…
「あの〜…?」
いつまで経ってもアドルフが答えてくれない。ずっとアルバムを捲ってじっと見たと思ったら、最初の方のページに戻ったりを繰り返している。平民の俺が直接尋ねたのは、流石に不躾だったろうか。
「兄上は何かに夢中になると全く聞こえなくなるんだよ」
エメラルドが苦笑しながら、アドルフが返事をしない理由のついでに、洞窟の名前の由来も教えてくれた。
「昔、毛のないピンク色の妖怪が洞窟の中で生きていたらしい。ただ、洞窟からは毎日のようにすすり泣きのような声が聞こえてきたんだって。今は聞こえないけど。洞窟の中の妖怪は孤独に違いないということで、人々の間で孤独の窟と呼ばれるようになったんだ」
毛がない…。ピンク色の肌…。すすり泣き…。
「人間ってさ…狼に比べたら毛は少ないし、人間の肌は狼の毛色に比べれば、ピンクに近いよな?」
一裕がアドルフの方を見たまま、俺の言葉に耳を澄ませている。
「…ウルフ、その妖怪が人間だったと疑っているのか?」
「…一裕、お前ちょっと来い」
俺はエメラルドと一裕をリビングから連れ出して、リビングから一番遠いお風呂場に連れて行った。
「俺の推測を聞いてくれないか」
お風呂場の電気はついていない。エメラルドの瞳が淡い緑色に光っている。一裕の瞳は、お風呂場の鏡に反射している洗面所の窓からの光を受けて、黒目が少しだけ白く光っている。エメラルドと一裕はお互いに顔を見合わせると頷いて、俺に向き合うと、推測を聞かせてくれと言った。
アドルフと峻兄さんがリビングで桜大のことを嬉しそうに、寂しそうに、懐かしそうに話している声が聞こえてくる。
「…俺、孤独の窟で見つかった水が一裕の遺骸じゃないかと思う」
「…え?」
実際、人体が有機物であることを考えると、炭になることはあっても水になることは化学的にあり得ない。だが、それなら俺達吸血鬼の存在も、サファイヤも、エメラルドもアドルフも、灰色の世界も全部、あり得ないことになる。だが、実際にここにあるのだ。それらが。
「俺達が初めて狼男を見たらビックリするだろ。向こうも同じだ。自分達と見た目が全く違う生き物を見たら、妖怪扱いして当然だ」
どんな経緯で一裕が獣神国に行ったのかはまだ分からない。でも、一裕が愛しの彗星にも息子である楓にも会えずに地球ではない異国の地で息絶えたなら、相当な孤独に苦しんだはずだ。
一裕は、怖がっているようにも安心しているようにも見える表情で俺の話を聞いていた。やっと、自分の死の真実が解き明かされるかもしれない。でも、自分の遺骸を目の当たりにするのは怖い。一裕は何も言わずにいたが、目は口ほどに物を言うとはこれのこと。一裕の思っていることが手に取るように分かる。
「…兄上にお伝えしてこよう」
エメラルドを先頭にリビングに戻ると、アドルフと峻兄さんはいなかった。アルバムが丁寧に机の真ん中に重ねられている。
「峻兄さんたちは?」
「水槽を見に行った」
佳奈美さんの言うように、2人は水槽の中のサファイヤを見つめている。アドルフは、サファイヤよりも水そのものに興味を持っているように見える。
「そなたはサファイヤと言ったな。そなたは人間か、或いは魚か」
赤と白のまだら模様の金魚が、口をパクパクさせながらアドルフに答えた。
「本当は首長竜なんですよ」
「見せてはくれまいか」
「ここでは無理です。アパートを破壊してしまうんで。機会があればお見せしますよ」
確かに、首長竜姿のサファイヤの前では、いくらデカいアドルフであっても微生物になってしまう。
「兄上、発見された水について伺いたいことが御座います」
「何だ、ラルフ」
アドルフは水槽の水に映る自分の顔を興味津々に見つめながら答えた。
「水が発見されたのが、洞窟の中の具体的に何処なのかをご存知でしょうか」
「入り口のすぐ近くだ。だから男児は無事に救出され、役人も無事に戻ってくることが出来たのだ」
太陽の黄色い光がカーテンの隙間を縫って、水槽の中のサファイヤの姿を照らしている。サファイヤの鱗がキラキラと宝石の粒のように輝いている。
「燈火の姫が見られるのは今頃でしょうか」
燈火の姫って何?
「エメラルド、それって…」
「年に1回だけ獣神国の空を覆い尽くす、光の玉さ。白に近い金色の柔らかな光を放つ蛍みたいな光が、空を覆うんだよ。星とは別にな」
なんか、水の話から脱線し始めていないか?
「兄上、近々サファイヤを連れて獣神国に行く許可を」
まさか、エメラルド、孤独の窟に入るつもりか?
「ならぬ!」
アドルフは案の定、エメラルドの方を向いて叱りつけるように怒鳴った。
「水が気になる気持ちも分かるが、命を危険に晒すな。ましてや、そなたの友人の命までもな」
アドルフは、エメラルドが俺と一裕も一緒に連れて行こうとしているのを感じ取ったようだ。
「大人の身体で入ったら危険だということですよね、兄上。我々は狼になれます。水が入り口付近にあるのなら、迷って出られなくなることも御座いますまい」
時計の針は5時を指している。夜ご飯まで後数時間。
「…私もついて参ろう。全ての責任は私が負う」
「有難うございます、国王陛下」
チョンチョン
誰かが俺の肩を指で突いた。
「お取り込み中悪いけど…タコ焼き食べて行く?やめとく?」
俺の肩を突いたのはバットだった。彗星もバットの2、3歩離れたところで俺達のやり取りを見ていたようだ。
「一裕さん、私…」
彗星は両手を胸のところで組んで、一裕を見ている。唇と指先が小刻みに震えている。
「翠ちゃん、大丈夫だから。俺も翠ちゃんも、ちゃんと生きてるから」
一裕は彗星の不安を感じ取って、彗星を固く抱き締めた。
「これからも2人で…いや、皆で生きていこうよ」
「…一裕…さん…陛下が…ご覧になっ…て…るから…」
一裕の首に腕を回している彗星の声が震えている。顔は一裕の背中で見えないが、言葉の節々が不自然に途切れている。
「兄上、急いては事をし損じると申しますから、ここは折角ですから地球の食事をお試しになってはいかがでしょうか」
アドルフは暫く悩んで、バットにタコ焼きを食べてほしそうな顔で見つめられていることに気が付くと、首を縦に振った。
「じゃあさ、タコ焼きに入れる具材の準備を手伝ってよ、エメラルド」
エメラルドはバットと一緒に台所に向かう途中で、佳奈美さんと蓮も誘って、具材を何にするかをワイワイと決め始めた。
「俺も混ぜてよ!」
サファイヤが水槽から飛び出て、人間になると台所に小走りで向かった。
「タコは絶対だな」
「エビも美味しいらしいよ、動画でやってる人がいた」
「ソーセージはチーズと一緒に入れても美味そうだな」
「私、幼稚園でタコ焼きパーティーしたことある。確か、中にチョコが入ってるのがあった気がするんだけど…」
「絶っ対に不味くなるから、やめておこうぜ」
…佳奈美さん、絶対に記憶が他の何かと混ざってる。
「でも、チョコのタコ焼き美味しかった記憶があるの。やってみよう?」
『やめろ!』
台所にいる奴らが必死に佳奈美さんを説得している。俺も気付いたら台所にいて、チョコを袋から取り出そうとしている佳奈美さんを止めていた。エメラルドも物凄い形相で、佳奈美さんからチョコの袋を取り上げて説得している。
「う〜ん、確かに不味いはずなんだけど、美味しかった記憶が…」
「記憶よりも常識を大事にしよう、今は!」
蓮のおかげで、やっと佳奈美さんが納得してくれた。エメラルドは胸を撫で下ろしている。バットは、佳奈美さんが再びチョコを入れようとしないように、チョコの袋を冷蔵庫に奥深くにしまった。
「…ラルフを笑顔にしてくれてありがとう」
「いえ、そんな…」
水槽のところでアドルフと峻兄さんが話しているのが、何となく遠いところから聞こえた気がした。
- 1.開始せよ(1)
- 2.開始せよ(2)
- 3.開始せよ(3)
- 4.扉(1)
- 5.扉(2)
- 6.灰色(1)
- 7.灰色(2)
- 8.灰色(3)
- 9.混血(1)
- 10.混血(2)
- 11.混血(3)
- 12.いのち(1)
- 13.いのち(2)
- 14.仮面(1)
- 15.仮面(2)
- 16.仮面(3)
- 17.思い出せ(1)
- 18.思い出せ(2)
- 19.楓(1)
- 20.楓(2)
- 21.兄の過去(1)
- 22.兄の過去(2)
- 23.伝えられなかった「すき」 エピソード1
- 24.海の少年(1)
- 25.海の少年(2)
- 26.伝えられなかった「すき」 エピソード 2
- 27.王国の真実(1)
- 28.王国の真実(2)
- 29.王国の真実(3)
- 30.王国の真実(4)
- 31.王国の真実(5)
- 32.桜
- 33.眠った記憶(1)
- 34.眠った記憶(2)
- 35.眠った記憶(3)
- 36.眠った記憶(4)
- 37.眠った記憶(5)
- 38.記憶よ、目覚めよ(1)
- 39.記憶よ、目覚めよ(2)
- 40.記憶よ、目覚めよ(3)
- 41.休憩タイム(1)
- 42.休憩タイム(2)
- 43.休憩タイム(3)
- 44.伝えられた「すき」
- 45.謎解きゲーム(1)
- 46.謎解きゲーム(2)
- 47.隠された宇宙(1)
- 48.隠された宇宙(2)
- 49.隠された宇宙(3)
- 50.隠された宇宙(4)
- 51.死者の想い(1)
- 52.死者の想い(2)
- 53.死者の想い(3)
- 54.死者の想い(4)
- 55.親子(1)
- 56.親子(2)
- 57.親子(3)
- 58.親子(4)
- 59.親子(5)
- 60.こどもたち(1)
- 61.こどもたち(2)
- 62.ほこり(1)
- 63.ほこり(2)
- 64.食う(1)
- 65.食う(2)
- 66.食う(3)
- 67.本当の自分(1)
- 68.本当の自分(2)
- 69.本当の自分(3)
- 70.宿題との戦いの末、2人の高校生男子「死す」
- 71.別れ(1)
- 72.別れ(2)
- 73.喧騒に紛れて
- 74.仮面を脱げ
- 75.名前は
- 76.虚構と真実
- 77.ヨミガエル
- 78.迷宮
- 79.橋を渡る、境目を越える
- 80.罪人の証
- 81.真実との対峙
- 82.扉を開ける前に
- 83.浜辺の宵
- 84.目隠し
- 85.鏡の中
- 86.夜明け
- 87.誕生日
- 88.真実の足枷
- 89.覚悟の時
- 90.逃避
- 91.罪と真実と
- 92.父の懺悔
- 93.best friend
- 94.兄弟
- 95.境界線