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狭間に生きる僕ら

#44

伝えられた「すき」

「佳奈美、そろそろじゃないか?」
私は音楽に夢中になってしまっていたけど、蓮くんに腕を突かれて腕時計を見ると、時計の針が12時50分をちょうど指していた。イベントまで後10分。ここから1階の多目的ホールまで行くのに、丁度いいくらいの時間。
「そうだね、行こう」
私はスマホとイヤホンをショルダーバッグにしまって、蓮くんと一緒に多目的ホールを目指した。bloom&brewと雑貨屋を通り過ぎてしばらく進んだところにある下りのエスカレーターに乗ろうと思ってたけど、蓮くんがそのエスカレーターに近づくにつれて、どんどん顔が強張っていくのが分かったから、エスカレーター横の階段を使って降りることにした。
「蓮くん、高い所怖いもんね」
「仕方ないだろ。人間、高い所から落ちたら死ぬんだぞ。これは防衛本能だ」
蓮くんが持ってくれている、ヒョンジュングッズが入ったナイロン袋の擦れる音が、蓮くんが一段ずつ降りていくたびに横から聞こえてくる。1階の床がカクカクと近づいてくるのに対して、横のエスカレーターに乗っている人たちは滑らかに1階へ降りていく。この階段は、実は写真撮影スポットとしても人気な場所。手すりは水の流れを彷彿とさせる透明な素材で出来ていて、段のところには、2階から1階へ降りる時には、ピンクや白の貝殻が落ちている波打ち際を歩いているように錯覚させるデザイン。反対に、1階から2階へ上る時は、星の光で出来た魚たちが夜空を自由に泳ぎ回っているデザインが見える。これは、私たちが初めてサファイヤに出会った、あの海水浴場をモチーフにした階段なのだ。

「まもなくアートワールド、午後の部が開始致しまーす。参加をご希望の方はこちらへどうぞー」
私たちが多目的ホールへ着いた頃には入り口で既に受付が始まっていて、小さい子供を連れた親や祖父母、暇つぶしに訪れたと思われる男子大学生3、4人組、そして周りに自慢したくて仕方ないように仲睦まじくいちゃつき合うカップルが列を作っていた。私たちは、そのカップルの後ろに並んだ。
「もう、俺みんちゃんのこと大大だーい好き!」
「もーおう、あっくんたらー!」
カップルは受付を済ませたのになかなかどいてくれない。早くどいてほ…
「高校生二人でお願いします!」
さすがのバカップルも蓮くんの言葉に隠された真意に気付いたようで、すごすごとホールの中に入っていった。蓮くん、ナイス。
「どちらのイベントへの参加を希望されてますか?」
「ええっと、大切な人の世界を描くコーナーです」
蓮くんが私のことを、大切な人と言ってくれた気がして嬉しかった。
「SOUー想・創ーですね。こちらチケットになります。合わせて1400円頂戴します」
受付からホールの中の様子が少しだけ見える。ホールの中は電気が消えていて、窓も黒いカーテンで閉められていて、ホールの中だけ夜みたいに暗い。ホールの中では、子供が描いた、歪な形をしてるのに可愛らしい色とりどりの魚たちが大きな壁に泳いでいる。おそらく、子供が描いた絵をコンピューターにダウンロードして、何かしらエフェクトを加えてから天井に取り付けられたプロジェクターで映されている。たまに、親が描いたと思われるリアルすぎる上手な魚が泳いでいく。
「佳奈美、入ろう」
蓮くんが受付を終わらせて、私たちは係員の案内に従って、ホールの中へと入っていった。ホールは縦×横が50mずつくらいあって、コーナーごとに簡易式の壁で六つに仕切られていた。
「ここだってさ」
係員さんが連れて行ってくれたのは、「SOUー想・創ー」コーナー。プリクラみたいな大きな箱が5台くらい壁にくっつくように並べて設置されている。
「まずは、こちらのブースで大切な人の世界を描いていただきます。完成したらお近くの係員をお呼びください。では、ごゆっくりどうぞー」
係員さんは私たちをその箱に入れて、カーテンをシャッと閉めた。勉強机みたいな灰色のテーブルとパイプ椅子が3台。テーブルの上に、真っ白な画用紙と、色鉛筆、マーカー、パステル、折り紙が用意されていた。
「切り絵でも面白そうだな」
蓮くんが折り紙の入った箱を開けて、中に入っている折り紙の色を確認している。蓮くんは私の世界を、どう描いてくれるんだろう。私も蓮くんの世界が描きたい。大切な人だから。
「蓮くん」
「ん?」
蓮くんはパイプ椅子に腰を下ろして、画用紙を自分の前に置いて描き始めようとしている。
「一緒に描こうよ。でも、どんな世界を描いたかは内緒ね」
私たちはお互いの絵が見えないように、間に自分達の荷物で壁を作った。
シャッシャッシャッ
色鉛筆が画用紙と擦れる音が蓮くんのところから聞こえる。目には見えないけど、使っている道具は分かってしまう。でも、完全には分からないから、余計に蓮くんが描く世界が気になって仕方がない。

私、蓮くんの世界、どうやって描こう。私がまだ蓮くんのことを好きだと思ってることがバレるのは、やっぱり怖い。だけど、友達だったころに戻れるわけもないのに。私と蓮くんが付き合っていたのは、僅か2年半のこと。でも、その間だけでも、私は蓮くんの隣にいられて嬉しかった。自然消滅してからも、変わらず私に優しく、面白く、時にはバカでいてくれる蓮くんが、私は今も好きなのに。
怖い。…何が?蓮くんが?いや、違う。蓮くんの隣にいられなくなることが。友達でも良いから、私はあなたの隣にいたい…
「佳奈美、出来た?」
蓮くんが完成させたようだ。鞄の向こうから、私の絵は見ずに声をかけてきた。
「うん」
私たちはお互いの絵を見せないようにして、ブースを出た。
「これ、お願いします」
「はーい、お預かりしますー。少々お待ちくださいませー」
私たちはブースの外に置かれた、半径3mくらいの小さなドームの中に案内された。真っ白な壁に真っ白な床。
「電気を消しますねー。では、彼氏さんの方から」
彼氏。蓮くんと私は顔を見合わせた。
「俺が佳奈美の彼氏か…う…」
「なんて?」
「何でもない」
蓮くんに何か誤魔化された気がして、何を言おうとしていたのかを聞き出そうと蓮くんを揺すっているうちに、暗くなったドームに蓮くんが描いてくれた私の世界がジワジワと広がり始めた。見慣れた景色。蓮くんが描いたのは、小学生の時から何回も通っている通学路で、一人称視点で描かれていた。川沿いに植えられた満開の桜。ピンクの花が咲き誇っている。ただ一枚の花弁だけは、少し濃いピンク色をしていて、手のひらに乗せられている。そういえば、蓮くんが私に告白してくれたのも春だったっけ。
「俺、当たり前の景色が当たり前でなくなる瞬間を描いてみたんだ。もちろん、悲しい意味じゃなくて。小学生の時、いつも通り登校していたら、色の濃い桜の花びらが空から舞ってきたんだ。見上げてみたら、空全部を覆いつくすくらいに桜のピンクが俺の真上に広がっていてさ。今まで、全然意識してこなかったんだ。でも、あの花びらがきっかけで、桜ってこんなに綺麗だったんだって実感したんだ」
蓮くんは懐かしそうに自分の描いた世界を眺めてる。
「佳奈美と中学1年生の時に初めて同じクラスになったろ。俺は佳奈美のことをずっと前から知っていたけど、何でか知らないけど、あの日見た桜を思い出したんだ。…佳奈美との日常は俺にとっては当たり前だった。だけど、佳奈美が俺の近くにいてくれることを幸せに思うようになって」
「好きになってくれたっていうこと?」
蓮くんは私の顔をしっかりと見て、私の両手を握った。
「…今も…だ」

…今も?

「佳奈美。俺と…付き合って…くれますか」

桜の花びらが一枚、蓮くんと私の間に舞い落ちた気がした。

「…好…き?」
「では、次は彼女さんですねー」
係員さんには私たちの会話が聞こえないようになっている。
「…佳奈美は?」
蓮くんが私の両手を強く、優しく握った。
「俺は…佳奈美を尊重する」
蓮くんの低くて安心感のある声。温かくて大きな手。私の大切な人の瞳は、私の姿を映している。
「答えはね」
私はドームの天井を見上げた。蓮くんも私の手を握ったまま、天井を見上げた。
「これが?」
「うん、そう」
私たちの上には、満天の星が輝いている。床には夜の海の絵。海から夜空に向かって、一匹の小さな魚が泳いでいく。魚が目指す先は、優しい光に包まれた月。
「この魚が私。蓮くんは月。月って、昼間は見えないだけでずっと地球の近くにいるでしょ。それで夜になったら、地球に明かりをもたらしてくれる。蓮くんは、ずっと私の傍にいてくれた。悲しい時も、嬉しい時も、何でもない日も。私は、月の傍にいたい。海を飛び出してでも、月が遥か遠くにあったとしても、私は蓮くんの傍にいたい」
私と蓮くんは再び顔を見合わせた。
「…じゃあ?」
蓮くんの瞳に、私の描いた魚の絵が映ってる。夜空に一筋の流れ星が流れた。
「すきだけじゃ足りないくらい」
私は蓮くんの頬を撫でた。
「…あなたの隣にいていいですか」
蓮くんは何度も頷きながら私を強く抱き締めた。
『離さないで』
あ、声が揃った。私も蓮くんを強く抱き締めた。

ピロン
蓮くんと私のスマホが同時になった。バットからだった。
「お前ら―、そろそろ来いよー」
時計の針は、もう16時を指している。

「帰ろ。佳奈美」
ホールを出ると、蓮くんが私に手を差し出してきた。頬っぺたが少しだけ赤くなってて可愛い。少しだけ照れくさかったけど、私たちはお互いの指を絡ませて手を繋いだ。蓮くんの手と私の手の温かさが混ざり合っていく。
「…すきだ」
「分かってるって」
私たちは何度もそのやり取りをしながら、待ち合わせ場所に向かった。
「おお、お前ら。来たか…って。何事?」
バットが私たちの距離が異常に近いことに気が付いた。ウルフとサファイヤはニヤニヤしながら私たちを見ていて、エメラルドは峻兄ちゃんと一緒に私と蓮くんを交互に見ている。
「お兄さん、俺たち、付き合うことになりました」
「は?!」「うっそー!?」「え、え、え?」「やっとか!」
蓮くんが目を丸くして、口をパクパクさせている峻兄ちゃんに一歩近づいた。
「お兄さん、許してくれますか」
峻兄ちゃんは、私たちが中学時代に一度付き合ったことがあることを知っている。峻兄ちゃんは、駅の方へ歩き出した。
「俺が口出し出来ることじゃない。蓮」
峻兄ちゃんが立ち止まって、蓮くんの方を振り向いた。生まれた初めて見た、峻兄ちゃんの真剣な表情。
「妹を大事にしろ。それだけだ」
峻兄ちゃんは、再び駅に歩き出した。
「え?ねえねえねえ、どっちから告白したの」
「…同時、かな」
「いやあああ!ロマンチック!」
バットが子犬みたいにはしゃぎまわっている。
「まあ、分かってたけどな」
サファイヤたちは、子犬みたいなバットを落ち着かせながら峻兄ちゃんの後をついていった。
「行こうか」
「うん」
蓮くんと私は、お互いの気持ちを再確認し合うように、手を強く繋いだ。

「はあ~生き返る」
アパートに着いたのは、17時10分頃。彗星さんと一裕が来るまで、後20分くらい。男子陣はさっそく洗面所で上の服を脱ぎ棄てて、タンクトップ姿で冷房の効いた台所に駆けこんだ。
「みんな、飲んでみようよ」
バットが冷蔵庫から、プラスチック製の透明な円柱の容器を取り出した。中には、イチゴジュースとイチゴジャムの間みたいな、イチゴの果実が入った液体がある。
「俺ね、Youtubeで見つけたのよ。イチゴと粉砂糖を混ぜたシロップで、牛乳と混ぜて飲むとイチゴオレみたいになるんだってよ」
バットが容器の蓋を開けると、イチゴの甘い香りが台所に広がった。
「レモンで作ったのもあるんだ」
そう言ってバットは、スライスされたレモンと粉砂糖が入った容器を冷蔵庫から取り出した。エメラルド、ウルフ、蓮くんはイチゴを選んで、残りの男子はレモンを選んだ。
「佳奈美はどっちにする?」
蓮くんがイチゴのシロップの入ったコップに牛乳を注いでいた。
「私はレモンにしてみる」
私はサファイヤからレモンシロップの容器を受け取って、蓮くんと同じようにコップに入れてから牛乳を注いだ。淡い黄色のレモンジュースから、微かにレモンの甘酸っぱい香りが漂っている。
「いただきます」
バットが作ってくれたレモンジュースは、ほんのりと酸味が効いていて甘かった。
「美味しいよ、バット。私も真似しようかな」
バットは得意げにコップを片手に持って、私たちを見回している。
「俺、情報集めるのは得意だから」
「スマホばっか見てるってだけだろうが」
「だまらっしゃい」
喧嘩するほど仲がいいというのは、ウルフとバットのような間柄を言うのだろう。バットはウルフの頭を一回はたいたけど、絶対に力は入れていなかったし、ウルフは美味しいと口に出して言うことはしなかったけど、誰よりも早くバットのジュースを飲み干していた。
「佳奈美、少しあげるから俺にも頂戴」
蓮くんは半分くらいまでイチゴのジュースを飲んで、半分くらい残っている私のレモンジュースをねだっている。
「じゃあ、交換しよ」
私たちはお互いのコップを交換した。イチゴジュースの方は、レモンジュースよりも甘さが控えめで、何となく大人っぽい甘さだった。
「きゃあああ!俺、恥ずかしくなっちゃう!」
バットが真っ赤な顔を両手で覆って、ウルフにすり寄っている。
「バット、俺と佳奈美は付き合うことになったけど、いつも通り接してくれよ」
蓮くんが笑いながら席を立って、バットをウルフから引き剥がした。
「だって俺たち、恋愛っていう概念を知る前に処刑されたんだもん!」
台所が一瞬だけ静かになった。
「大丈夫、今世では長生きできる」
蓮くんがバットの頭をポンポンと軽く叩いた。
「そういえば、峻兄さんはどうなんです?好きな人とかいたりしたんですか」
エメラルドは、新しいコップにレモンのシロップを注いで、牛乳を入れて混ぜた後、ゆっくりと味わうように飲んでいた。サファイヤは汗をかいたから、金太郎のいない水槽で泳ぐと言って台所から出て行った。
「いた」
「そうなん?」
初めて知った。言われてみれば、峻兄ちゃんだって大学生なんだし、今までに好きな人とかいてもおかしくない年齢だけど。全然意識したことなかったし、峻兄ちゃんだって一度も自分の恋心を家族にさえ感じさせるような行動は取らなかった。峻兄ちゃんは少しだけ残ったイチゴジュースを前に、団扇で上半身を仰いでいた。
「中学校の時に、二つ上の先輩で凄く綺麗な人がいたんだ。髪が長くて、顔も美人で、スタイルも良くて、勉強も出来て。まさに、才女だって思った。その先輩が卒業していく日、今日しかないと思って、想いを伝えたんだ。振られるかもとか、そういう不安もあったけど、俺が臆病だったせいで想いを伝えられないままに終わらせてしまうのが一番怖かった」
バットが目を輝かせながら、興味津々に峻兄ちゃんの想い出話に聴き入っている。
「峻兄ちゃん、それで、どうなったの?」
峻兄ちゃんは、何かを言おうとしたけど、すぐに口を閉ざしてしまった。残酷な振られ方をしたのかな?不躾なことを聞いてしまった気がして、私が話題を変えようとした時、峻兄ちゃんが口を開いた。
「その人、心が男だった」
バットが少しだけ悲しそうな顔をして、圭吾みたいだな、とポロリと言った。
「俺が想いを伝えたら、悲しそうな顔をされたんだ。もし俺がちゃんと女の子だったなら、君のことも愛せたのかなって。俺は男として生まれたかった。でも、今こうやって君に愛してもらえてたことを知って、本当に嬉しい。だから、ありがとう。でも、ごめん。俺は君に嘘を付きたくないんだって」
峻兄ちゃんは最後に左手を上げてヒラヒラさせながら、それでさよならだ、と言った。
「切ないよおおお!」
バットがまた顔を両手で覆って、ウルフの胸に顔をうずめた。
今夜からは、きっと未解決の問題に取り組むので忙しくなりそうだから、先にシャワー浴びておこうかな。
「皆、私シャワー浴びてくるね」
「佳奈美」
峻兄ちゃんが少し怒った顔で私を見ている。
「なに」
「男ばっかりの前で、そういうことを簡単に言うもんじゃない。男は皆、女に飢えた狼だと思っておけ」
「峻兄さん、今俺の悪口言いませんでした?」
「…悪かったな。でも、そういう言い回しがあるんだよ」
「俺は納得がいきませんねえ。狼は紳士ですよ。人間は浮気とか不倫とかするんでしょ?狼はそんな下賤なことしませんよ」
エメラルドの言うことはもっともかもしれない。私は峻兄ちゃんの忠告にちゃんと従って、洗面所の扉に鍵を掛けて服を脱ぎ始めた。

私が髪を乾かしてリビングに向かうと、蓮くんたちが上の服を着て、ソファに寝そべりながらイヤホンを付けてスマホで何かを聴いていた。
「やっぱりね、少しくらいは勉強しないと」
蓮くんたちは数学や化学の、Youtubeにアップロードされた映像授業を見ていた。峻兄ちゃんは蓮くんたちの横のテーブルで、ノートパソコンと睨めっこをしながらキーボードを叩いている。
「大学のレポートを終わらせておきたいんだってさ」
サファイヤは水槽でのんびりと泳いでいるし、エメラルドはバットのジュースがよほど美味しかったのか、自分でジュースの素を台所で作っている。
「エメラルドがさ、彗星たちは18時半くらいにやってくるってさ。塾の宿題をやってこなかった生徒がいたらしくて、次回の授業ではそういう生徒が出ないように、急遽各自塾に残って課題を終わらせないといけないことになったんだって」
ああ、無実の人間まで巻き込むスタイルの先生か。そうなると…?リビングの掛け時計は17時半ちょうどを指している。後1時間くらいか。夜ご飯はどうしよう。彗星さんのご両親も心配するだろうし。
「エメラルド、彗星さんは夜ご飯どうするって言ってる?」
エメラルドはイチゴとレモン以外にも、バナナとチョコレートを使ったスムージーをスマホで検索しながら作っている途中だった。
「ええっとな、夜ご飯は塾からここに向かう途中のコンビニで何か買って食べるってさ。あと、家族には事情を既に伝えたらしい。自分が本当は宇宙人で実の娘ではないことは伝えてないみたいだけど、幸い所謂オカルトチックな話題には寛容な考えを持った家族らしくて、数日間はアパートに俺らと泊まる許可を貰ったってさ」
エメラルドは淡々と彗星さんからの交信内容を伝えながらも、着々とスムージー作りにいそしんでいた。彗星さんが夜ご飯を食べてから来るなら、私たちも今のうちに食べておくべきだろうか。
「あ、俺、今晩これ作ってみる!」
勉強動画を見ていたはずのバットは、いつの間にか料理動画を見ていた。
「美味しそうじゃない?」
バットがそう言って私に見せてきたのは、梅干しとシソの葉、オクラを使ったそうめんだった。
「材料あるの?」
「大丈夫、今日の買い出しで買ってきた。吸血鬼の感が当たったのさ」
バットは早速それを作りに台所に向かった。
「あいつ、馬鹿だけど料理だけは天才なんだよな」
ウルフが化学の授業動画を垂れ流しにしたまま、ソファにもたれて目を瞑っている。
「蓮くん、一緒に見てもいい?」
「おう」
蓮くんは数学の積分の解説動画を見ていた。
『では、皆さんも解いてみましょう』
私と蓮くんは学校の鞄から自習ノートを取り出して、動画で紹介されている演習問題を解き始めた。10問あるうちの最初の半分は何とか解けたけど、後半の問題には手も足も出ない。どうしよう、私、もっと勉強しないと。蓮くんも私と全く同じ問題で苦しんでいる。何度も式を書いては二重線で消してを繰り返している。
『はーい、解けたでしょうか。最後の5問は少し難しかったかな?○○大学の入試問題から出題してみました』
「解けるわけあるかー!」
蓮くんがもっと簡単な問題を扱う動画を探し始めた。○○大学は、我が国最高峰の超難関大学。私たちとは無縁の存在。
「出来たよ」
バットが台所から私たちを呼んだ。

夕飯を食べたら、いよいよ始まる。

王国と灰色の世界の謎解きゲームが。
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2025/07/05 18:24

花火
ID:≫ 6.vyqE1zzWDXY
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