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狭間に生きる僕ら

#39

記憶よ、目覚めよ(2)

「佳奈美。夕飯は何が…」
峻兄ちゃんが台所から玄関にやってきた。
「…泣いてたな」
私が台所に入る時に、峻兄ちゃんが私の耳元で、低い声で囁いた。夜ご飯までの五時間。本当なら、圭吾くんを除いた王国組でもう一度王国の記憶を見に行く予定だったんだけど、私と蓮くんの様子がおかしいことに気付いた王国組が、予定を明日にずらしてくれたのだ。
「連日はさすがにね。精神的にも、身体的にもしんどいし。大事よ、休憩は」
サファイヤが金魚と一緒に水槽の中を泳いでいた。水槽から人の声が聞こえてくることに、全く動じない自分がいる。慣れたから?いや、信じたくないことがあるから。圭吾くんとりこちゃんは、近くの空き地で鬼ごっこをして遊んでいる。バットは扇風機の前で畳にうつぶせになっている。エメラルドは、バットの隣で窓から子供たちの様子を見守っている。峻兄ちゃんは、畳に寝転がりながらスマホをいじっている。
「みんな…」
『ん?』
蓮くんの声にみんなが蓮くんに振り向いた。
「やめて!」
私は蓮くんが皆に何を相談しようとしているかが分かった。アパート全体が揺れてしまいそうなほどの私の叫び声に、男子陣が目を丸くして一斉に私に振り向く。
「やめて、話さないで!りこちゃんが消えちゃう!」

シン…

畳の部屋が静まり返る。子供たちの遊ぶ声が空き地から聞こえてくる。
「どういう…こと」
峻兄ちゃんがスマホをいじるのをやめて畳の上に置くと、身体を起き上がらせた。
「皆、りこってさ…生きてると思うか…?」

シン…

「やめて!」
「佳奈美!」
蓮くんが私を抱きしめて落ち着かせようとした。でも、私の身体が変。蓮くんを殴ったり蹴ろうとしたりしようとしている自分がいる。
「佳奈美、落ち着け」
峻兄ちゃんが私を蓮くんから引き剥がすと、私を後ろから抱きしめてお腹をポンポンと優しく叩き始めた。
「消えちゃう…やだ…」
私の身体が変。涙が止まらない。腕が震える。
「あ」
蓮くんが洗面所へタオルを取りに走った。
「大人しい佳奈美さんが失禁するって…何があったの」
蓮くんとバットで畳を拭いてくれている。峻兄ちゃんはお腹を優しく叩いている。
「佳奈美さん…ごめんね。少しだけだから」
エメラルドが私の目の前で、何か印のようなものを結んだ。眠い。瞼が重い。峻兄ちゃんの身体が暖かい。そういえば、昔、私がママとパパに激怒された時にも、峻兄ちゃん、こうやって慰めてくれたなあ…   


ーーーー佳奈美さんが眠り始めた。蓮は拭いたタオルを洗面所で洗って、畳の部屋に戻ってきた。
「蓮…りこが生きてるかどうかなんて…どういうことだ」
エメラルドの瞳がいつも以上に真面目だ。
「匂わないよな、ウルフ」
バットが俺を見た。そう、俺たち吸血鬼は、死んだ人間の匂いが分かる。だけど、りこからはその匂いがしない。
「…なんとなく…峻兄さん、今から桜大さんのお墓に連れて行ってくれませんか。お墓に「莉香」の名前が無いかを確認したいんです。なかったら、俺の嫌な想像で済む…」
「佳奈美はどうする」
バットが佳奈美さんを起こさないように、そっと峻兄さんから離させて畳の上に横たわらせた。
「俺が佳奈美さんの面倒を見ておいてやるよ。家に俺くらいいないと、圭吾たちが空き地から帰ってきたときに佳奈美さんを見てびっくりするだろ。ウルフ、お前は蓮たちと行け。それで目にしたことを、俺に交信して伝えろ」
蓮が心配そうに佳奈美さんを見たあと、不安な面持ちでりこたちがいる空き地に視線を向けた。りこの笑い声がする。
「佳奈美が言うように、りこが消えてしまわないかって…」
「大丈夫、俺が見ておいてやる。異変が起きたらすぐに知らせる」
バットはそう言って俺たちを送り出した。
「峻兄さん、案内をお願いします」
「…こっちだ」
何かが俺たちの前を風に吹かれて通り過ぎて行った。ピンクの花びら。は?この季節に?その時俺は、今から俺たちが向かう墓に眠る少年の名前を思い出した。桜大。…お前か。その花びらは、俺たちを導くように雑木林のほうへ飛んで行った。

風は吹いていないのに、花びらは自我を持っているように俺たちを雑木林の奥へ奥へと導いていく。峻兄さんも、エメラルドも、蓮も花びらの存在に気付いていた。
「お兄さん、あの花びらって」
「ああ、多分あいつだ。俺があいつの夢を見た時も、リビングの窓の外を花びらが舞っていたんだ」
雑木林の中は存外静かで、涼しささえ感じる。そうこうしてるうちに、雑木林の奥にお墓が寂しく並んだ墓地が見えてきた。
「あそこだ」
三人が墓地に向かって歩いていく。
…この匂い!
「おい!」
三人が俺に振り向いた。
「何だよ、ウルフ」
どう形容すれば良いか分からないけれど、匂う。間違いない。
「…死者の香りがする」
『峻』
一つの墓石から少年の声がした。まだ声変わりする前の、幼いガキの声。
「桜大…?」
峻兄さんの視線の先には、10歳くらいの少年が俺たちの方を向いて、墓石の近くに立っている。足が見えない。こいつが…。
『久しぶり』
少年は自分よりも背の高い蓮に近づくと、優しく笑った。
『大きくなったな。蓮。佳奈美は元気か』
「…はい」
少年は見た目こそガキだが、雰囲気は正直峻兄さんよりも大人びている。
『初めまして』
少年が俺たちに気付いた。
『お前が好きそうな奴らだな、峻』
こいつ、俺たちの正体に気付いてやがる…。
「桜大、お前に聴きたいことがある」
峻兄さんが墓石の側面に立って、そこに眠る人の名前を確認している。
「ここに彫られてる…圭悟と莉香は…誰だ」
圭吾と、りこ…!
桜大は足音も立てずに峻兄さんの横に立って、一緒に彫られた名前を見つめた。
『俺の弟になるはずだった子と、俺の妹。今、峻たちと一緒に過ごしている子供達だよ』
蓮の全身が震えている。カタカタと歯が鳴る音がする。峻兄さんは覚悟が決まっていたのか、震えることもなく、墓石の側面を凝視している。
「りこと圭吾は…死んでいる…のか?」
エメラルドは圭吾を他の誰よりも可愛がっている。エメラルドの狼の血が騒ぎ始めている。目は緑色に爛々と光り、鋭い牙で唇を嚙んでいる。真っ赤な血が唇から流れている。
『本当はね…だから、返して』
エメラルドが桜大に飛び掛かった。桜大が地面に押し倒されてエメラルドの下敷きになっている。
…あれ、桜大にも身体がある…?
エメラルドは食い殺さんばかりの勢いで桜大の顔を睨んでいる。
「圭吾たちを殺すな!」
エメラルドが桜大を睨んだまま、俺を指差した。
「ここに死者の匂いを感じ取れる奴がいる。でも、そいつは圭吾たちから死者の香りはしないって言ってる」
エメラルドは俺を指差していた手で、今度は桜大の胸を叩いた。
バシンッ
「お前だって身体を持っているじゃないか。お前は死んだんじゃないのか?どういうことだ!」
「ちょっ、待て」
エメラルドの言っていることはほとんど合っているけど、何かがおかしい。
「桜大、お前からはちゃんと死者の香りがする…」
桜大は、死者であり生者…?どういうことだ。
峻兄さんと蓮はエメラルドを止めることもなく、傍から二人の様子を見守っている。
『そう、俺は死んでる。本当は峻と同い年。でも今は圭悟より年下。だから不思議な感じがするんだ』
桜大は冷静にエメラルドを手で軽く押して、お尻の砂をパッパッと払って立ち上がった。
『だけどね、俺のことを生きているって思っている人がいるんだ。俺の両親。三人の子供を立て続けに亡くして、耐えられなかったんだろうな。死後もなお、心のどこかで俺たちが生きているって思い込んでる』
峻兄さんは桜大の頬を撫でた。
「痛くないか…?」
『…痛かったよ。でも今は楽』
空から何か赤いものが舞ってきて、それが蓮の足元に落ちた。桜大はそれを拾った。
『峻、お前らはこの子を探しているんじゃないか?』
…楓の葉!
桜大はフッと少年の笑みを浮かべた。
『俺にも手伝わせてよ。この子を探すの。それには…母さんと父さんに俺たちの死を受け入れてもらわないと。だから、俺の弟と妹を二人に会わせないといけないんだ』
桜大はエメラルドの前に立った。エメラルドは牙を剝き出しにして、桜大をきつく睨んでいる。
『殺すなんて物騒な言い方はやめてくれ。一度帰るだけだ。また戻ってくるさ、三人で』
桜大はきっと、俺たちの知らない世界を知っている。…このこと、どうやって佳奈美さんに伝えよう…。

「待ってください、桜大兄さん」
今まで一言も発さなかった蓮が、エメラルドと桜大の前に立った。震えは収まっている。
「圭吾は、流産した後に王国に転生しました。今、俺の友達の王国にいた頃の記憶の真実を確かめてるところなんです。俺の友達は、楓の名前を聞くたびに父親の人格が現れ始めて、返せって怒りに狂い出すんです。楓の居場所をまず教えて下さい。それさえ分かれば、大部分の謎は解決できるはず。そのために圭吾とりこを見届ける必要があるなら…覚悟します」
エメラルドが蓮を殴ろうとした手を、峻兄さんが腕で止めて守った。
「いつか、あなたも圭吾もりこも戻ってくるなら、それで良いんです…」
桜大は真っすぐ蓮を見つめている。
『蓮、佳奈美と仲良くしていけよ』
…なんでこいつ急にそんなこと言い出すんだ。
桜大が蓮を見上げて話し出した。
『楓はね、俺の母さんと父さんのところにいる。俺が何歳で死んだか分かる?ちょうど楓と同じくらいの年齢。楓を俺と思い込んでる。顔はね、正直全然似てない。だけどさ、自然界では我が子を失った動物が他の動物の子供を実の子供として育てることがあるって知ってるか。雌ライオンがガゼルの赤ちゃんを世話したりな。そんなもんだ』
桜大が峻兄さんに向き合った。
『俺たちは兄弟そろって、生者としても死者としても取り扱ってもらえない中途半端な存在だ。このままでは、生まれ変われない。圭悟が王国に転生できたのは、俺が認めたからだ。俺の弟が死んじゃったって。でも、俺たちが全員死んでからは、俺たちの死を認めてくれる人はいなくなった。峻、お前もだろ?お前だって、本当に俺の死を受け入れてくれたなら、毎年誕生日にもう繋がらない俺のスマホに会いたいなんてメールを送る訳ないもんな』
峻兄さんの瞳から、涙が一筋流れた。俺、峻兄さんが泣くところ初めて見た。
「悪かった…忘れたくなかった…なのに、俺は大切なことを忘れてしまってた。お前が莉香のことをどれだけ楽しみにしてたか…どうして…」
峻兄さんが小さな子供みたいに泣きじゃくり始めた。蓮も俺もエメラルドもどうすればいいか分からなくて、右往左往するしかない。だけど、桜大は違ってた。地面に座り込んでしまっている峻兄さんの頭を撫でで上げている。
『良いよ。お前だけだから、同級生の中で最後まで俺を覚えていようとしてくれたの。人間の記憶なんて、限られたものだよ。…峻、この話は俺が直接佳奈美にする。弟と妹の責任を、兄である俺が負ってやらないと』
楓を探すたびに、新しいメンバーが加わった。だけどきっと間もなく、三人離脱する。…いつになってもいい。ちゃんと戻って来い。桜大、圭悟、莉香…。

『ウルフ!』
バットから交信が来た。
『すぐに戻れ!りこが消えかけてる。圭吾もだ!佳奈美さんが発狂しかけてる!』
…消え…る…!
「りこと圭吾が消え始めた!」
俺の声を聞くや否や、峻兄さんが家の方向へ全速力で走りだした。兄が妹のもとへと駆け付ける。桜大も同じだ。兄弟を守るために。

「嫌だ!逝かないで!」
アパートの中から佳奈美さんの泣き叫ぶ声が聞こえる。
「佳奈美!」
峻兄さんがドアを蹴とばすような勢いで開けた。透き通った圭吾とりこ。半狂乱になっている佳奈美さんを前に、二人でオロオロしている。圭吾が俺に気付いた。
「ウルフ、僕消えてるんだけどなんで?!」
『それはね、君たちが俺の兄弟でもう死んでるから』
桜大の身体も透けてる。桜大が二人に近づく。
『俺と一緒に来て』
「出て行って!」
両目から滝のように涙を流す佳奈美さん。身体の内側から何かが爆発しそうにのたうち回っているのを、バットと峻兄さんと蓮が必死になって押さえつけている。
「二人を連れて行かないで!返して!」
圭吾たちの色がどんどん薄くなっていっている。桜大が兄弟二人を連れて行こうとしている。佳奈美さんにとって、桜大は死神同然。
『佳奈美、大きくなったね。お姉さんになっちゃった』
「行かないで!」
『楓くん、ちゃんと探すからさ』
「嫌だ嫌だ嫌だー!」
佳奈美さんは桜大のことが聞こえないみたいだ。
『俺が臨終宣告された時の母さんと父さんを思い出すな…』
桜大が圭吾とりこの手を繋いだ。
『また帰るからね。怖くない、怖くない』
桜大が、圭吾が、りこが、消えた。

「いやああああ!!」

佳奈美さんの慟哭が響く。佳奈美さんは蓮を血走った目で睨んでいる。
「あんたがりこちゃんと圭吾くんを殺した!裏切者!返せ…返せ…返せ!」
「…佳奈美、ごめん…」
ああ、どうしてこうもこの二人から、お互いに「すきだ」って伝えられる機会を奪っていくのだろうか、神は。

りこと圭吾が桜大に連れられて姿を消して以来、アパートは急に寂しくなった。佳奈美さんは、一日中寝込むようになってしまったし、佳奈美に拒絶された蓮は魂が抜けたようになって、一言も話さなくなってしまった。峻兄さんは、妹の気持ちを兄貴として守れなかった罪悪感からか、一日に何回も佳奈美さんの寝顔を撫でに寝室を出入りするようになった。圭吾をだれよりも弟みたいに可愛がっていたエメラルドも、話さないことはないが塞ぎ込んでいる。りこと圭吾という遊び相手を失ったバットは、気力を失って何にもやる気を示さなくなった。子供たちの笑い声を聞くことが出来ないことが、こんなにも苦しいことだとは。サファイヤは、佳奈美さんが半狂乱になっている間、王国に行って真実の記憶の情報を集めていた。真夜中になって、佳奈美さんが目に大量の涙を溜めてぐったりと死んだように眠ったころに帰ってきたのだ。
「なんか、ごめんな。俺だけ佳奈美さんから逃げたみたいになっちゃって…」
バットと俺、峻兄さん、エメラルド、サファイヤ、そして蓮。誰もが後悔、恋慕、罪悪感を抱いている。
峻兄さんが寝室から浮かない顔で戻ってきた。
「…佳奈美は」
蓮の問いかけに峻兄さんは首を横に振った。蓮が台所の机に突っ伏する。
「エメラルド、頼む。佳奈美から俺の記憶を消してくれ。俺の記憶から佳奈美を消してくれ。これ以上、佳奈美に嫌われたくない。いっそのこと、出会う前に戻ってしまいたい。佳奈美のこと…好きにならなきゃ良かった」
「…佳奈美さんが聞いたら悲しむぞ。お前の言葉は…誰よりも佳奈美さんの心を左右する。今は一人にしておいてやれ。…お前のことは嫌いにはならないさ。だから、いつの日か佳奈美さんをしっかりと抱き締めてやれ。それは、宇宙中のどの男の中でもお前にしか出来ないことだからな…サファイヤ、何を見た。口頭で頼む」
エメラルドは、蓮の隣に座ってうなだれている。それでもエメラルドは、一裕の記憶を解き明かすために戦い続ける。
「まず…要点を絞って言うと、第一王女は自分がリオンドールの実の娘でないことを知る。伝令が流行り病にかかって亡くなる時、第一王女に伝えたんだ。自分があなたを拾ったのだと。だけど、伝令もクランシーが第一王女の実の父親であることは知らなかった。伝令が亡くなってから、第一王女はリオンドールに内緒で実の父親を捜すたびに出た。でも、オレンジ色の髪の毛と楓色の瞳に狂信的な価値を置く、ある山賊に惨殺されたんだ。髪の毛は無残にも抜かれて、瞳は抉られて…その山賊は宇宙からの者たちだった。彗星さんとは違う星から来たみたいだけどな。ウルフとバットが前に、楓の勲章をつけた宇宙人と戦ったことがあるって言ってただろ。そいつらだ。楓そのものみたいな外見をした第一王女を奪いに攻め込んできたんだ。王国は惨敗したものの、第一王女の命だけはリオンドールと圭吾が死に物狂いになって守り切ったんだけどな…第一王女の変わり果てた遺骸が王城に運ばれてきたとき、圭吾は責任を取って命を絶ったんだ。第一王女の名前を叫んでな。それで、リオンドールがあの言葉を叫んだんだ。『返せ!』って。でもその直後、リオンドールが倒れた。ショック死と憤死が重なったんだ。クランシーは第一王女が自分の娘であることを知らないまま、国王と第一王女の訃報を耳にした。その後が悲惨だった。朱色を愛した結果残酷な運命に飲み込まれたリオンドールの話が王国中に広まると、再び朱色が排除されるようになった。リオンドールの跡は、隣国から招いた親戚が継いだんだけど、そいつが歴代屈指の愚帝だったんだ。治安も悪化して、街に孤児も大量に現れ始めた。その中に、お前ら、ウルフとバットも含まれていた。だけど、クランシーだけは亡き兄の遺志を継いで、密かに孤児を守り続けた。だけど…その先は覚えているよな」
時計の針はもう3時を指しているけど、食欲が全く湧かない。バットが深いため息をついた。
「…一裕の『返せ!』っていう怒りは、リオンドールのものだったのか。蓮が言うように、リオンドールとクランシーが遺伝子的に同一人物なら一裕という一人の人間になって生まれた時に、二人の記憶が混ざってもおかしくはない、か…エメラルド、彗星さんに伝えておけ。謎が一つ解けたってな。でも…スッキリしねえな…」
バットが再び深いため息をついた。峻兄さんが声にならないようなか細い声で言った。
「圭吾は現実で流産して、王国でも一度死んだけど、桜大の両親が生きているって思い込んでいるから、圭吾は死ぬことが出来なかったということか…」
「みんな」
机に突っ伏していた蓮は、背筋を伸ばして椅子に座って正面を見据えている。
「俺たちにはまだまだ解き明かさないといけない謎がある。どうして圭悟が圭吾になってしまったか…。灰色の世界はどこなのか…。りこ圭吾のことは、桜大兄さんを信じようと思う。あの人は、嘘を付けない質の人間だったから。三人が安心して戻ってこれるように…準備万端にしておこう」
ガチャ…
佳奈美さんが寝室から出て台所にやってきた。峻兄さんが佳奈美さんを抱きしめる。
「蓮くん…」
死人のように生気のない声。
「蓮くんのこと、嫌いなんかじゃない。ごめん…拒んでごめん…ずっと、私の近くにいて?」
「…佳奈美」
蓮は立ち上がると、佳奈美さんをしっかりと抱き締めた。
「俺は死ぬまで傍にいたいよ」
…蓮、今、プロポーズしなかったか?神様、頼む。これ以上、二人を引き裂こうとしないでくれよな。










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2025/06/30 07:58

花火
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