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狭間に生きる僕ら

#38

記憶よ、目覚めよ(1)

峻兄ちゃんとバットが優先的にノートの内容を見ることが出来るように、蓮くんが二人の前にノートを置いた。峻兄ちゃんとバットの視線は、像の記憶から読み取れた『事実』に集中的に注がれている。
「ふーん、俺たちを守ったあの男、クランシーって名前だったんだ。それで、龍獅国王リオンドールの双子の弟。瞳の色のせいで、初めは兄弟間に確執が生じていたけど、リオンドールの姿勢にクランシーは兄貴、そして王族として受け入れたと」
「クランシーはアンバーっていう女性との間に子供をなしたけど、戦争に行っている間にアンバーが出産直後に亡くなって、クランシーは子供も亡くなったと思い込んだ。だけど、赤ちゃんは無事で伝令に拾われた後、リオンドールの娘として、メイプル第一王女として育っていく。誰も、王女がクランシーの実子だということには気づいていない」
「はあー、なるほどな。圭吾は第一王女の親友ってこういうことだったんだな」
「おい」
二人が交互にノートの内容を声に出して整理していると、峻兄ちゃんがノートのある所を指さした。
『圭吾は桜大の弟だったが、流産してしまって王国に生まれた』
峻兄ちゃんはその行を指さしている。やっぱり…。
「峻兄ちゃん、桜大兄ちゃんて、あの交通事故で亡くなった…」
峻兄ちゃんの指先が小刻みに震えている。峻兄ちゃんはそれを抑え込むように、数回大きな深呼吸をした。
「実は、相談したいことがある…。圭吾とりこは、本当の兄弟だったかもしれない。りこは…桜大の妹かもしれないんだ…」
ノートを見つめていた誰もが峻兄ちゃんの言葉に耳を疑った。
「夢の中で見たんだ。桜大との、忘れていた記憶を…」
そう言って、峻兄ちゃんは、私たちが王国に行っている間に見た夢の話を事細かく説明してくれた。桜大は、夏に生まれる妹の誕生を心待ちにしたまま、亡くなった。ジャスミンは、6月の誕生花。「りこ」は「莉香」かもしれない。峻兄ちゃんが話し終えると、エメラルドは再びノートに視線を落とした。
「俺たち、まだまだ王国の真実を紐解いていく必要がある。だけど、現実組に王国組から何人か移動させたほうが良いかもな。新たな謎が生まれた…誰が、移動する?」
ウルフが手を上げた。
「圭吾は現実組に移動するべきだと思う。俺が思うに、この先の王国の真実は、圭吾にとっては残酷すぎるものになる可能性が高い。それに、圭吾がもともとは現実の人間だったかもしれないなら…圭吾が王国での話を気にするんだったら、俺たちが代わりに見てそれを口頭で伝えるので十分だと思う。皆は、どうだ…」
峻兄ちゃんがウルフの目を見て頷いた。
「俺、明日くらいに桜大のお墓入りをしようと思う。今まで、つらくて避けてきたんだが…桜大が圭吾のことを知りたがっているような気がするんだ」
ト…ト…
寝室の扉が開いて小さな足音が近づいてくる。蓮くんは咄嗟にノートをリビングのテーブルの引き出しの奥にしまい込んだ。
「あれ、皆寝ないの?」
圭吾くんが、トイレに行きたくなって起きてきたのだ。
「こ…怖い話をして盛り上がってたんだよなー。ほら、おーばーけーだーぞー」
ウルフがリビングのソファにかけてあった峻兄ちゃんの白い掛布団を頭から被ると、圭吾くんを追いかけて、一度トイレを済ませてあげると、寝室に圭吾くんを連れて行った。トイレについてきてくれるお化けって、結構優しいな。ウルフが掛布団を手に持ってリビングに戻ってきた。
「明日、お墓に行くんだろ?りこと圭吾も連れていくか?」
ウルフが峻兄ちゃんの隣の椅子に静かに腰を下ろした。
「…いや、まずは俺だけで行ってきてみようかと思う。たしか、桜大のいる墓地には水子供養のやつもあるはずなんだ。そこで『圭吾』の名前を探してみようかと思う」
「ウルフ…トイレ」
「またかよ!」
ウルフが圭吾くんを迎えに寝室へ向かった。
「さすがに俺たちも寝るか」
時計の針が一時を指している。いつの間にか次の日になっていた。

ガチャン
翌朝、峻兄ちゃんは朝ごはんを食べ終えると、早速桜大の墓へ自転車で向かっていった。私たちが皆、朝ごはんを食べ終えた頃、圭吾くんがパジャマ姿で台所にやってきた。一部分とはいえ、自分に深く関係する記憶を見続けるには、かなりの体力を費やしたのだろう。りこちゃんが圭吾くんを起こそうとしていたけれど、ウルフとバットがりこちゃんをアパートのすぐ近くの用水路に連れて行った。
「鯉だー、綺麗ー」
「上手そうな赤だな、ウルフ、食ってみていいか」
「駄目だ!」
三人のはしゃぐ声が台所にまで聞こえてくる。
「今日の夜は、記憶を見に行かないの?」
着替え終わった圭吾くんが少し冷めた味噌汁をすすっている。
「今晩からお前が好きそうな映画があるからな。3日間スペシャルらしい」
エメラルドがスマホで番組表を確認している。
『忠』
それは、一人の男が一人の女性に忠誠を誓ったものの、女性が年ごろになって他の男に嫁いだ時に、男は忠誠を誓った心には恋心が眠っていることを自覚した。しかし、男が愛した女は、他の男の幸せに暮らしている。男はもはや、女にとっては必要のないものになってしまった。
『姫、常にお傍に』
これは、名セリフ中の名セリフ。男が女の傍にずっといるつもりだとも、男が女にずっと傍にいてほしいと願っているようにも捉えられるとして、ファンの間では度々論争が起きている。これを、小学校の高学年くらいの子供に見せるなんて、圭吾くんの過去も踏まえると少し残酷じゃない?
「面白そう!」
あ、いいんだ。圭吾くんはキラキラした目で番組表のあらすじを読んでいる。
ガチャン…
峻兄ちゃんが帰ってきた。汗だくになっている。峻兄ちゃんは汗で濡れたシャツを洗濯機に投げ込むと、タンクトップ姿になって台所の椅子に座って、近くにあった裏紙を扇子代わりに仰ぎ始めた。エメラルドが圭吾くんを連れて、りこちゃんたちがいる用水路に連れて行った。台所には、峻兄ちゃんと私の二人だけ。圭吾くんとりこちゃんが水を掛け合って遊んでいるのが聞こえてくる。
「…行ってきた。圭吾の名前はなかった」
え?じゃあ、同姓同名?
峻兄ちゃんは仰ぐのをやめると、真面目な顔で私に向き合った。
「ただ…墓の側面にその一家の亡くなった人たちの名前が彫られているだろ。その中に『圭悟』っていう名前はあったんだ。もしかしてって思って、水子供養の名前を一人ずつ確認していったら、その名前が彫られた地蔵が一つだけあったんだ。佳奈美、お前、圭吾とは灰色の世界で出会ったって言ってたな。色と時間を失った世界…。佳奈美、何か思うことはないか」
え?何…?
「『圭悟』の『悟』からりっしんべんを取ってみろ」
あ…りっしんべんって心だ…。色と時間は心に深く関係するもの。心を失ったから、圭吾くんは灰色の世界にいたの?でも、いったい、どうして圭吾くんは王国にいたはずなのに、灰色の世界に…?
「俺も頑張ってみる。お前らも、もう少し王国から記憶を読み取ってきてくれ」
そう言うと峻兄ちゃんは台所の窓を開けて、遊んでいる圭吾くんたちに昼ご飯は何が良いか聞いた。
「うーん、何でも良いよー」
圭吾くんの声が用水路を流れる水の音と一緒に聞こえてくる。
ガララ…
峻兄ちゃんは窓を閉めると、冷蔵庫の中身を確認し始めた。
「佳奈美、お前は何が良い。リクエストがないのって、結構困るんだ」
「…冷やし中華」
「昨日麺類食っただろ」
「…じゃあ、サンドイッチ」
「わかった」
峻兄ちゃんは卵とハムとサンドイッチ用のパンを補充しにスーパーへ出かけて行った。

「もっと卵乗せるの!」
「おい、りこ。そんなに挟んだらパンからはみ出るぞ」
「あ、ハムがなくなった」
「ベーコンで代用しよう」
「僕、野菜嫌だ」
「駄目。ちゃんとレタスも挟め」
皆で一時峻兄ちゃんのアパートに暮らすようになってからは、食事の時間はいくら耳があっても足りないくらい賑やかだ。この時だけは、今私たちが世界の境界線に立っていることを忘れることが出来る。
「プリン食べてもいい?峻お兄ちゃん」
「峻お兄さん、僕このプリンが食べてみたい」
圭吾くんとりこちゃんが、高級プリンの食レポをしているテレビの中の渋い俳優さんを指差している。
「無理だ。俺、そんなにお金ないもん」
昨晩、峻兄ちゃんから桜大兄ちゃんとの夢で見た記憶の話を聴いて以来、りこちゃんや圭吾くんが誰かを兄さんと呼ぶたびに耳が敏感に反応するようになってしまった。
桜大兄ちゃんと、圭吾くんと、りこちゃん。桜大兄ちゃんは二人の兄かもしれなくて、圭吾くんは『圭悟くん』だったかもしれなくて、りこちゃんは『莉香ちゃん』かもしれない。
圭吾くんが流産してしまった後に王国に生まれ変わって、何かしらの理由で灰色の世界にいたなら、圭吾くんは一応異世界からの人間ということになるはず。
でも、りこちゃんは?
りこちゃんが桜大兄さんの妹なら、りこちゃんは私たちと同じ現実側の人間ということになる。
でも、りこちゃんは圭吾くんと同じ灰色の世界にいた。
峻兄ちゃんは、桜大兄ちゃんを亡くした悲しみから、桜大兄ちゃんの両親が生まれた「莉香ちゃん」を存分に可愛がれなかったから、「莉香ちゃん」は寂しくなって灰色の世界にいたのかもしれないって考えていた。
でも、「りこちゃん」は私たちのすぐ近くにいる。
さすがに桜大兄ちゃんの両親だって、自分の娘がいないことに気付かないわけがない。
そうなると、「莉香ちゃん」は一応桜大兄ちゃんの家で両親と一緒に暮らしていることになる。
「りこちゃん」はここにいて、「莉香ちゃん」は本当の家にいる…?
同じ人間が同時に違う場所に存在することは出来るの…?
どうして桜大兄ちゃんは、今になって峻兄ちゃんに自分のことを全部思い出させようとしたんだろう…
「莉香ちゃん」は、どこに行っちゃったの…?

「佳奈美」「ひゃい?!」
色々考え事をしていたら突然誰かが私を呼んで変な声を出してしまった。私を呼んだのは蓮くんだった。食べ終わったお皿を洗って乾燥棚に置くと、ハンガーに干してあった自分の帽子を被ると、私を玄関に呼んだのだ。
「お前ら、どっか行くんか?」
圭吾くんとりこちゃんは何やらウルフたちと揉めながらサンドイッチをまだ食べていた。峻兄ちゃんが歯磨きをしながら、玄関で靴を履いている私たちに声をかけた。
「いやー、俺のペンのインクが切れかけてるんですよ。これからまだ12日間もあるし、12日間だけで全ての謎が解き明かせるとも思えないし…どちらにしろ、ノートにはまだまだ活躍してもらわないといけないんで」
蓮くんはそう言うと扉を開けて私の手を引いて、アパートの外に連れ出した。真夏の太陽が肌を焼くように照り付ける。湿気を含んだ熱い空気が全身を包む。運動もしていないのに、汗が滝のように流れる。汗が背中に引っ付いて気持ち悪い。
「なんか伝えたいことがあるんじゃない?」
近所の本屋さんに向かう間、蓮くんが何度も手の平を閉じたり開いたりしている。これは、中学一年生の時、蓮くんが私を放課後の教室に呼び出して告白をしてくれた時と全く同じ動作。付き合っていた時も、何かしら大切なことを伝えないといけないときは、全く同じことをしていた。
「ああ、さすがやわ」

本屋の自動扉が開く。本の匂い、店内の冷気、近日公開される映画の宣伝ポスターの匂い。ここは、私があの小説を購入した本屋だ。蓮くんはペンのインクが販売されているコーナーを素通りしていく。
「蓮くん、ここに売ってるよ」
蓮くんが私に振り向いた。あ、この人、何か嘘ついたな。下あごを若干前に突き出す癖がまだ残っている。
「ペンなら予備が沢山リビングの引き出しにあるんだ。俺が佳奈美を連れてきたのは、見せたいものがあるからや」
蓮くんは本屋の奥へ奥へと歩いていく。たどり着いたのは、世界各国の神話コーナーだった。子供でも読める物から専門的な分厚い本まで、百冊は裕に超える本が棚にびっしりと詰まっている。
「これを見せたいんだ」
蓮くんが取り出したのは、子供用のギリシャ神話の漫画だった。ゼウスを象徴していると思われる真っ黄色の巨大な稲妻が、灰色の雲を貫いているデザイン。
「昔、母さんに買ってもらった本なんだ。表紙のデザインはかなり変わっているけど、中身は同じはず」
蓮くんが目次を確認して、後ろの方のページを開いた。
「これ、軽く読んでみて」
蓮くんに頼まれて呼んだのは、ある悲しい女性の物語だった。

その女性は夫を心から愛していた。しかし、夫は亡くなってしまい、その現実を受け入れることが出来ず悲嘆に暮れた女性は夫にそっくりな像を作って、それを夫として愛で日々を過ごしていた。あまりに哀れな女性の姿に神が同情して、像に夫の命を吹き込んだ。女性は喜びに溢れた。しかし、それは一晩だけだった。翌朝、像は元通りの像となっていた。女性がいくら話しかけても夫の返事は返ってこない。そこで女性は初めて夫の死という現実を思い知らされた。再び夫に会いたい。再び夫と愛の言葉を交わし合いたい。女性は夫と死後に巡り合えることを願って、自ら命を絶った。

「俺、これを読んだときは小学1年生だったから、衝撃を受けて。今でもこの話は鮮明に覚えているんだ」
蓮くんはその本を元の棚に戻した。
「近くにあまり人がいない公園があるだろ。そこで話がしたい」
蓮くんは一瞬出口に足を向けたけど、何も買わないのはさすがに気が引けたのか、文房具コーナーで適当に定規やら下敷きをいくつかレジに持っていった。
「ありがとうございましたー」
自動ドアが開くと、熱い空気が店内になだれ込んできた。不快。これに尽きる。蓮くんは暑さに構わず、私の先をどんどん進んでいく。
「待って」
私は少し小走りになって、蓮くんの隣に並んだ。蓮くんの目が泳いでいる。まただ。あの日の告白と同じ。蓮くんは頭の中で言葉を整理するとき、目を泳がせる癖を持っている。

蓮くんが私を連れて行ったのは、前に峻兄ちゃんが連れて行ってくれたあの公園だった。生まれて間もない峻兄ちゃんが、ゴミ箱に捨てられていたあの公園。ゴミ箱は相変わらず雑草に覆われていて、雑草が前よりも高く伸びている気がする。「佳奈美、ここに座ろう」公園の隅に葉を青々と茂らせた大きな木が生えている。夏の桜の木だ。公園の中で、唯一その木の下に影があった。私は蓮くんと並んで、桜の木の根っこを椅子の代わりに腰かけた。夏だということを忘れてしまうくらいに、影の中は涼しかった。
「あっつ…」
蓮くんが被っていた帽子を脱いだ。汗に濡れた髪が乱れて額に張り付いている。
「話したい事って何?」
すぐ近くの雑木林から蝉の大合唱が聞こえてくる。蓮くんは自分の脚の血を吸おうとしていた蚊を追い払うと、私の顔を見た。真剣な瞳。真っすぐと人の心の奥まで読みそうな鋭い瞳。そうだ…私は蓮くんの、この瞳に惚れたんだった。告白してくれたあの日、蓮くんが私に「すき」を教えてくれたんだった。
「佳奈美、泣いてもいい。ただ、俺の考えを聞いてほしい。間違っているかもしれないけど、聞いてほしい」
蝉の大合唱は、真隣にいる蓮くんの声をかき消してしまうくらいに大きかった。
「佳奈美、俺、りこはもう、亡くなってるんじゃないかって思う」

シン…

蝉の合唱が止んだ。桜の木の葉がそよ風に吹かれる音しかしない。
「なん…で…」
蓮くんは私を抱き寄せた。
「ごめん。佳奈美がりこのことを物凄く可愛がっていることは俺もよく分かってる。俺がさっき、佳奈美に読ませたギリシャ神話…亡くなった人間を生きていると勘違いした物語だ。俺たちさ、本当は、りこのことを生きているって勘違いしている可能性はないか…?」
「そんなわけない!」
私は蓮くんを突き放そうとしたけれど、蓮くんの腕はしっかりと私を抱いている。
「だって、私、何回もりこちゃんと手を繋いだんだよ?峻兄ちゃんだって、りこちゃんのことを何回も抱っこしてきたでしょ?それに、エメラルドもサファイヤも、バットたちも、誰もりこちゃんのことを指摘しなかった。人間よりも第六感が優れた人達だって、りこちゃんのことを生きた人間だって扱ったのに?」
蓮くんが一層強く私を抱きしめた。蓮くんの首筋の汗の匂い。
「…聞いてくれ。分かってる…りこちゃんは透けてるわけでもないし、物理的に身体もちゃんとある…でも、それはギリシャ神話のあの像も同じだ。一晩だけは、夫という亡くなった人間が像という身体を持ったんだ。…俺さ、神話の中では神様が魂を吹き込んだって表現されているけど、妻が夫のことを生きているって信じ続けたから夫は身体を一晩だけでも持つことが出来たんじゃないかって…もしかしたら、俺たちが生きているって勘違いし続けているから、りこも今まで身体を持つことが出来てきたんじゃないかって…灰色の世界で出会った時にも、りこは身体を持っていた。でも、俺たちはあの時だって、戸惑いつつも、りこのことを亡くなった人間だとは微塵も思わなかった…」
私たちの上で、桜の木が気持ちいいくらいに青い葉を風に揺らしている。
「…私は信じない!だって、だって、だって…」
りこちゃんが死んでいるわけない。私たちが少しでも、りこちゃんの存在を疑ったら消えてしまいそうで…もう二度とあのマシュマロみたいな柔らかい頬っぺたを、腕を、身体を触ることが出来ないなんて…耐えられない。
私はきっと、生まれた日以来の大声で泣いた。自分でもどうすれば泣き止めるのかなんて、全然分からなかった。蓮くんは私が泣きやむまでの間、ずっと私を抱きしめていてくれた。

「帰ろう…俺の話は、ただの想像でしかないからさ…」
私は泣いていたことがバレないように、涙をしっかりと手で拭き取って、蓮くんの手を繋いだ。アパートまでずっと。
「蓮お兄さん、佳奈美お姉さん、おかえりー。インクね、引き出しに沢山入ってたよ?」
りこちゃんがリビングからトテトテと可愛らしい足音を立てて、私たちを出迎えてくれた。私は気づいたら、胸の中にりこちゃんを抱いていた。柔らかくて、すべすべで、お餅みたいな身体がちゃんと、私の胸の中で息をしている。それだけで、良いんだ。
「どうしたの?」
「…ギューッてしたくなっちゃってね」
私が前からりこちゃんを抱きしめている間、蓮くんは後ろからりこちゃんを抱きしめていた。
「サンドイッチごっご?」
…私は、信じない。絶対に。




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2025/06/29 17:32

花火
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