峻兄ちゃんは、こんな笑えない冗談を言う人じゃない。
「今日はもう遅い。みんな寝ろ」
私たちは寝室に入った。蓮くんは圭吾くんを寝かしつけたまま寝てしまったのか、圭吾くんのお腹に手を添えて眠っていた。バットたちも私たちと一緒に寝るつもりのようで、バットは蓮くんの頭の近くで顔を羽根にうずめ、ウルフは寝室のカーテン軸にぶら下がり、エメラルドは蓮くんの両脚にすっぽりと収まっている。
「佳奈美にちょっかい出したら、ただじゃおかねーぞ」
パジャマに着替えた峻兄ちゃんが棒のようなものを持って入ってきた。
「佳奈美」
峻兄ちゃんが私に棒を投げて渡してきた。パン生地を伸ばすのに使うやつ。いつ使うねん。
「何かされたら、遠慮なくこれで殴れ」
峻兄ちゃんは私たちに背中を向けるようにして眠ってしまった。
『そういえば、私たちが虫になれること、言いそびれたなあ』
「お姉さん、起きて」目を開けると太陽みたいに笑うりこちゃんがいた。
「朝ごはんできたって」
私の知らない少年がお皿にパンを乗せて台所からやってきた。
「って圭吾くん?」
圭吾くんの長い髪がチョキンと短く切られていた。ツーブロックっていうんだったっけ。
「へへ」
圭吾くんは短くなった自分の髪を嬉しそうに撫でた。
「エメラルドさんに爪で切ってもらったんだ」
峻兄ちゃんがしゃもじを手に顔を覗かせた。
「連れて行きたいところがある。早く食べて準備しろ」
バットとウルフはワシとコウモリの姿のまま、太陽の光から避難するように押入れの中にいた。
「お兄ちゃん、連れて行きたいところってどこ」
峻兄ちゃんが歯を磨いている。
「どっか行くの?」
バットがトマトジュースをストローで飲みながら押入れから顔を出した。峻兄ちゃんがペッと吐き出す。
「悪いな、今日は兄妹だけで話したいんだ」
峻兄ちゃんは蓮くんたちに子供たちの面倒を見るように頼んで、私を自転車の後ろに乗せた。
ギーコギーコ
峻兄ちゃんが重たそうに自転車を漕ぐ。
「重いなら私歩くけど」
「いや、」
峻兄ちゃんは水筒の中の水を飲んだ。カラン、と中で氷がぶつかる音がする。
「今日くらいはこうしてみたいんだ」
そう言って峻兄ちゃんは私をどこかへ連れて行った。峻兄ちゃんは私の知らない公園に連れて行ってくれた。人気の少ない場所にあって、遊具が錆びれている。苔に覆われた大きな箱のようなものが、錆びたジャングルジムの向こうに見えた。ゴミ箱。中には何も入っていなかった。雑草が生い茂っていた。
「これが…」
自転車を公園の入り口に立たせた峻兄ちゃんがゴミ箱に近づく。
「俺は覚えていないけどな。俺が生まれたばかりの頃に捨てられていたっていう場所や」
「今日はもう遅い。みんな寝ろ」
私たちは寝室に入った。蓮くんは圭吾くんを寝かしつけたまま寝てしまったのか、圭吾くんのお腹に手を添えて眠っていた。バットたちも私たちと一緒に寝るつもりのようで、バットは蓮くんの頭の近くで顔を羽根にうずめ、ウルフは寝室のカーテン軸にぶら下がり、エメラルドは蓮くんの両脚にすっぽりと収まっている。
「佳奈美にちょっかい出したら、ただじゃおかねーぞ」
パジャマに着替えた峻兄ちゃんが棒のようなものを持って入ってきた。
「佳奈美」
峻兄ちゃんが私に棒を投げて渡してきた。パン生地を伸ばすのに使うやつ。いつ使うねん。
「何かされたら、遠慮なくこれで殴れ」
峻兄ちゃんは私たちに背中を向けるようにして眠ってしまった。
『そういえば、私たちが虫になれること、言いそびれたなあ』
「お姉さん、起きて」目を開けると太陽みたいに笑うりこちゃんがいた。
「朝ごはんできたって」
私の知らない少年がお皿にパンを乗せて台所からやってきた。
「って圭吾くん?」
圭吾くんの長い髪がチョキンと短く切られていた。ツーブロックっていうんだったっけ。
「へへ」
圭吾くんは短くなった自分の髪を嬉しそうに撫でた。
「エメラルドさんに爪で切ってもらったんだ」
峻兄ちゃんがしゃもじを手に顔を覗かせた。
「連れて行きたいところがある。早く食べて準備しろ」
バットとウルフはワシとコウモリの姿のまま、太陽の光から避難するように押入れの中にいた。
「お兄ちゃん、連れて行きたいところってどこ」
峻兄ちゃんが歯を磨いている。
「どっか行くの?」
バットがトマトジュースをストローで飲みながら押入れから顔を出した。峻兄ちゃんがペッと吐き出す。
「悪いな、今日は兄妹だけで話したいんだ」
峻兄ちゃんは蓮くんたちに子供たちの面倒を見るように頼んで、私を自転車の後ろに乗せた。
ギーコギーコ
峻兄ちゃんが重たそうに自転車を漕ぐ。
「重いなら私歩くけど」
「いや、」
峻兄ちゃんは水筒の中の水を飲んだ。カラン、と中で氷がぶつかる音がする。
「今日くらいはこうしてみたいんだ」
そう言って峻兄ちゃんは私をどこかへ連れて行った。峻兄ちゃんは私の知らない公園に連れて行ってくれた。人気の少ない場所にあって、遊具が錆びれている。苔に覆われた大きな箱のようなものが、錆びたジャングルジムの向こうに見えた。ゴミ箱。中には何も入っていなかった。雑草が生い茂っていた。
「これが…」
自転車を公園の入り口に立たせた峻兄ちゃんがゴミ箱に近づく。
「俺は覚えていないけどな。俺が生まれたばかりの頃に捨てられていたっていう場所や」
- 1.開始せよ(1)
- 2.開始せよ(2)
- 3.開始せよ(3)
- 4.扉(1)
- 5.扉(2)
- 6.灰色(1)
- 7.灰色(2)
- 8.灰色(3)
- 9.混血(1)
- 10.混血(2)
- 11.混血(3)
- 12.いのち(1)
- 13.いのち(2)
- 14.仮面(1)
- 15.仮面(2)
- 16.仮面(3)
- 17.思い出せ(1)
- 18.思い出せ(2)
- 19.楓(1)
- 20.楓(2)
- 21.兄の過去(1)
- 22.兄の過去(2)
- 23.伝えられなかった「すき」 エピソード1
- 24.海の少年(1)
- 25.海の少年(2)
- 26.伝えられなかった「すき」 エピソード 2
- 27.王国の真実(1)
- 28.王国の真実(2)
- 29.王国の真実(3)
- 30.王国の真実(4)
- 31.王国の真実(5)
- 32.桜
- 33.眠った記憶(1)
- 34.眠った記憶(2)
- 35.眠った記憶(3)
- 36.眠った記憶(4)
- 37.眠った記憶(5)
- 38.記憶よ、目覚めよ(1)
- 39.記憶よ、目覚めよ(2)
- 40.記憶よ、目覚めよ(3)
- 41.休憩タイム(1)
- 42.休憩タイム(2)
- 43.休憩タイム(3)
- 44.伝えられた「すき」
- 45.謎解きゲーム(1)
- 46.謎解きゲーム(2)
- 47.隠された宇宙(1)
- 48.隠された宇宙(2)
- 49.隠された宇宙(3)
- 50.隠された宇宙(4)
- 51.死者の想い(1)
- 52.死者の想い(2)
- 53.死者の想い(3)
- 54.死者の想い(4)
- 55.親子(1)
- 56.親子(2)
- 57.親子(3)
- 58.親子(4)
- 59.親子(5)
- 60.こどもたち(1)
- 61.こどもたち(2)
- 62.ほこり(1)
- 63.ほこり(2)
- 64.食う(1)
- 65.食う(2)
- 66.食う(3)
- 67.本当の自分(1)
- 68.本当の自分(2)
- 69.本当の自分(3)
- 70.宿題との戦いの末、2人の高校生男子「死す」
- 71.別れ(1)
- 72.別れ(2)
- 73.喧騒に紛れて
- 74.仮面を脱げ
- 75.名前は
- 76.虚構と真実
- 77.ヨミガエル
- 78.迷宮
- 79.橋を渡る、境目を越える
- 80.罪人の証
- 81.真実との対峙
- 82.扉を開ける前に
- 83.浜辺の宵
- 84.目隠し
- 85.鏡の中
- 86.夜明け
- 87.誕生日
- 88.真実の足枷
- 89.覚悟の時
- 90.逃避
- 91.罪と真実と
- 92.父の懺悔
- 93.best friend
- 94.兄弟
- 95.境界線