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狭間に生きる僕ら

#15

仮面(2)

皆のところに戻ると、豪華な料理が机を埋め尽くしていた。テレビでしか見たことのない高級食材が真っ白な皿に盛りつけられている。
「では全員揃ったことですし、頂きましょう」
翠さんは今回は壁を作らなかった。圭吾くんは、翠さんが食材を口に運んでいくのをただ黙って見守っていた。翠さんていう人、前に楓くんが言っていた、一裕が恋に落ちるっていう宇宙人なのかな。でもそうなったら、楓くんはまた同じ運命を辿ってしまうんじゃないか。全員の皿が空になった。りこちゃんの小さなお腹には多すぎたようで蓮くんが手伝ってあげた。圭吾くんは食欲がない様子だったから私が手伝った。
「皆様と楽しい時間を過ごすことが出来て、本当に嬉しうございますわ」
翠さんのその言葉が、私たちと翠さんのその日の会話に終止符を打った。ショッピングモールを出て駅に向かう。電車に乗って家の最寄り駅まで揺られる。今日のことが、グワングワンと頭の中を走馬灯みたいに駆け巡っていく。
「ちょっとね、俺気になることがあって」
背もたれに身を預けた一裕が電車の照明を見ている。
「蓮、佳奈美さん。俺の歯、見てみてくれへんか」
一裕はそう言って私たちに口を開けて見せた。蓮くんが一裕の口の中を覗き込む。私と蓮くんの間に座っている圭吾くんは、蓮くんの背中から顔を覗かせて口の中を見ようとしていた。りこちゃんは、私のもう反対隣りでよだれを垂らしながら眠っている。キラッ。私の視界の端っこで何か白いものが光るのが見えた。それは一裕の犬歯だった。でも何か変。私たちのよりもずっと尖っている。
「かず、お前、あれみたいだ」
蓮くんが一裕の口を両手で抑えたまま言った。圭吾くんの眼が見開いて、血の気が引いている。
「どうして、僕がドラゴンのいる王国にいたときのものが」
圭吾くんの口がワナワナトと震えている。
「あれは、吸血鬼だ」
「へ」
一裕が口を開けたまま圭吾くんの方を見た。
「俺、血なんて吸ったことないよ」
一裕の身体が変わり始めている。楓くんが伝えてくれたストーリーから逸脱し始めている。これは楓くんが望むことなのか、それとも…。

「一裕お兄さん!」
圭吾くんが蓮くんを突き飛ばして一裕にのしかかる。蓮くんが床に倒れて、スマホを見ていた他の乗客の視線を一斉に浴びる。
「僕がいた世界に行ってみよう!」
圭吾くんが一裕の襟を掴んで顔に向かって叫ぶ。
「…世界って…君、どこから来たのよ」
襟を掴んでいた圭吾くんの手が離れる。
「確かめないといけないことがあるんだろ、きっと」
蓮くんが床から立ち上がってお尻についた砂利を手で払いながら言う。
「お前がこの世界で、血を欲する前に」
「俺、血見るの怖いのに」

最寄り駅についた。夕焼けがきれい。今日、本当に色んなことがあったけど、空だけはいつもきれいだ。
「蓮お兄さん、佳奈美お姉さん、どうやって僕たちがいた世界にやってきたの。あの、瓦礫の空間に。そこから一裕お兄さんを連れて行ってあげられるかもしれない」
ガコン
一裕が自販機で何かを買ったようだ。自販機の取り出し口からトマトジュースを取り出した。
「圭吾くん」
トマトジュースの蓋をあけながら一裕が圭吾くんに声をかけた。
「こうやってか」
一裕はそうやってトマトジュースを口の周りに塗って見せた。それが妙に似合って見えた。

一裕の口の周りのトマトジュースが数滴地面に滴り落ちた。圭吾くんがトマトジュースの雫を目で追うように視線を落とす。「ううん、本当の血はもっと苦いにおいがする」
圭吾くんを笑わせるつもりだった一裕は、圭吾くんの真実を述べた言葉に戸惑って、何をすればいいのかも分からないまま、残りのトマトジュースを口の中に流し込んだ。一裕の喉ぼとけが拍動しているように見えた。トイレに行っていた蓮くんが戻ってきて、顔を圭吾くんの耳に近づけた。
「どうや、あいつ。今日のところは家に帰してもよさそうか。それか、もう連れてくか。お前がいたドラゴンの国に」
圭吾くんが顔を上げて一裕がいる方を見る。一裕は全部飲み切らないまま、トマトジュースを数メートル先のゴミ箱に投げた。
ガコン
ゴミ箱の金属部分とぶつかる音が、誰もいない閑静な駅に響く。
「早く、連れて行ってあげないと」
圭吾くんが一裕の後ろ姿に歩み寄る。後ろから手をつなごうとしたのか、一度右手を一裕の左手に近づけたが、そのまま下ろした。
「一裕お兄さん、ついてきて」
圭吾くんが背中を一裕に向けるようにして一裕の前に立った。
「どこに行けばいい」
一裕の問いに答えず、圭吾くんはそのまま歩き出した。
「佳奈美お姉さん、蓮お兄さん、途中まででいいから案内してくれる?」
りこちゃんが後ろから走り寄っていって、圭吾くんと手をつなぐ。蓮くんが先頭に立つ。私が最後尾。その間に、前から順番に圭吾くんとりこちゃん、そして一裕。どこに連れていかれるのか分からない一裕は、不安な面持ちでひたすら蓮くんにどこに連れていくのか尋ねている。蓮くんは何も答えない。蓮くんたち影が一裕に重なり、一裕の影が私に重なる。あの山まで、あと10分くらい。カラスがギャーギャーと叫ぶように鳴きながら飛んでいく。
「あれ、俺と同じ香りが」
ちょうど私たちがあの公園に差し掛かった時、知らない声が聞こえた。声変わりしたばかりくらいの男の子の声。声の主は中学校と思われる制服姿のまま鉄棒に腰かけていた。髪の毛が少しだけ夕焼けに染まって見える。
「そこにいる人」
声の主は鉄棒に座ったまま、妙に長い人差し指を一裕に向けた。
「吸血鬼だったりしない?」

「なんか、違うところから来た人たちが他にもいるみたいだけど」
謎の少年が鉄棒からひょいッと飛び降りて、足音も立てずに私たちに近づいてくる。
「この子達」
少年が右人差し指で圭吾くんを、左人差し指でりこちゃんを指さす。
「迷子になっちゃったのかな」
蓮くんが圭吾くんとりこちゃんを庇うように二人の前に立った。
「ごめん、君は誰」
「あ、俺?」
少年が蓮くんの首元に顔を近づける。
「うわ、まずそう」
少年が臭いものを嗅いだように蓮くんから顔を背けた。
「ドラゴンがいたところにいるはずの、ただの吸血鬼だよ」
少年が蓮くんの後ろにいる圭吾くんに目をやる。ちらっとりこちゃんを見て、また圭吾くんに視線を戻す。
「女の子の方は違うみたいだけど、君、女の子の格好をした男の子は、僕と同じ故郷に人間でしょ」
圭吾くんがりこちゃんの手をギュッと握る。さっきからおろおろしている一裕に少年が近づいてくる。
「君は…あれー、おかしいな。この世界の香りに俺と同じ香りも混ざってる。…あ、良いにおいがする」
少年が私に近づいてくる。そして顔を私の首に近づける。私が思わず仰け反ったのと同時に蓮くんが手を伸ばして少年を止める。
「やっぱり、若い女性の香りは格別だね」
「俺は蓮だ。…君は…?」
少年がくるりと背中を向けて、最初にいた鉄棒のところに歩いていく。鉄棒のところまで行くと、逆上がりを途中までやったような状態でブランブランとぶら下がっている。
「通称モスキート。でも、本名はバット」
両足をピンと上に伸ばすと、少年はあと僅かで頭を打ちそうになるその瞬間、クルンと身体を立て直して、地面に立って見せた。最後に少年が鉄棒をぺろりと舐めて見せる。
「鉄の味、俺、大好き」少年の口から、一裕のものよりもずっと長くて尖った犬歯がキラッと光った。

「なんで、あそこにいるはずの人間が、ここにいるの」
少年が鉄棒に付いた唾液に息をフッと吹きかけて、またこちらに歩いてくる。
「全く同じこと、俺、君に聞きたいんだけど。…名前なんて言うの?」
「圭吾」
「あそう」
バットは夕焼け空に向かって叫んだ。
「かーんたん、簡単。それはね」
バットが圭吾くんの方を見る。
「堕とされちゃったから」
「堕とされた?」
バットが蓮くんの前に、体が付くか付かないかのギリギリのところに立つ。そして、ひょいッと身体を横に90度曲げて、蓮くんの背中側にいる圭吾くんの顔を見て、歯茎をわざと見せるようにして笑う。
「君は知ってるでしょ、あの国で、吸血鬼がどんな立ち位置だったか。どんな扱いを受けたか」
圭吾くんがしばらくの間、バットの顔を見つめた。そして首をゆっくりと縦に振った。バットはそれを確認すると、ひょいッと身体を元に戻して住宅街に進んでいく。
「良かったらみんな、今から俺ん家おいでよ。色々おしゃべりしよ?」
バットが軽い足取りで飛び跳ねるように住宅街を歩いていく。
「一裕お兄さんが、吸血鬼になってしまうかもしれないんだ」
圭吾くんがバットの後ろ姿に叫んだ。圭吾くんの語尾だけが、山彦みたいに響き渡った。
「別にいいんじゃないの」
バットが脚を広げてその間から顔を覗かせる。
「だって、俺、普通に人間として暮らしていけてるもんね」
股から顔を覗かせたまま、バットがポケットから何かを取り出した。赤い塊。
「別にね、生きている人間の血じゃなくてもいいのよ、美味しいけどね。これ、代用品。家の冷蔵庫から持ってきた」
バットは赤い塊を少しちぎって、小さい方を股の間から私たちに投げた。一裕がそれを両手でキャッチする。それは、生のブタかなんかのレバーだった。バットが残りの大きい方を、ためらいもなく口に投げ入れた。ただのお菓子を食べているかのような顔で。

「…お邪魔してもいいですか」
バットから10メートルくらい離れたところから、蓮くんが叫んだ。
「どーぞー、こっちー」
バットはまた、ぴょんぴょんと跳ねるような足取りで住宅街を歩いていく。蓮くんが真っ先についていく。しばらく立ち止まっていた圭吾くんは、重たそうに足を前に進ませた。
「なんか、俺、もう、わかんなくなってきたよ」
一裕が色々愚痴をこぼしながら、蓮くんにぴたりとくっつくように歩いていく。私のスカートの裾が引っ張られた。りこちゃんが私を見上げている。
「あのお兄ちゃん、誰だろ」「…私もわかんない」
私達二人は、しばらく男子陣の後ろ姿を見守っていた。
「行こか」
私はりこちゃんの手を引いて歩き出した。
バサッバサッ
大きなコウモリが私たちの上を飛んで行った。
バットの家は、ごく普通の一軒家だった。地味過ぎず、おしゃれ過ぎず。なんか素敵。将来は、こんな家に住んでみたいな。バットがドアを開ける。
「かあさーん」
バットが玄関から、右のほうに顔を向けて叫んだ。
「おかえりー、あらま」
奥から母親と思しきおばさんが出てきた。
「学校のお友達かしらねえ」
「…そんなところです」
蓮くんが、おばさんの顔をまんべんなく観察するように目を動かしている。
「あれー、うちの息子もこんな可愛い時期があったのにねえ」
おばさんが圭吾くんとりこちゃんに気付く。すると、さっきまで思いつめたような表情だった圭吾くんが、急に変顔をし始めた。おばさんが吹き出す。おばさんが、口を開けて笑ったその瞬間、圭吾くんが一瞬だけ真面目な顔をした。
「どうぞ―中に入って」
おばさんは、ひとしきり笑った後、私たちを家に招き入れた。バットがドアを押さえて、私たちが順番に入っていく。 廊下を進んでいくと、階段が見えた。
「俺の部屋にみんなでいるね、母さん」
バットはそう言って階段に向かっていった。てっきり、階段を上っていくものだと思っていた。彼は、予想外のところから私たちを部屋に連れて行こうとしていた。
「俺の家ね、ちょっと面白いのよ」
バットはそう言って、階段の近くの真っ白な壁を手で押すと、ボコンと凹んだ。レバーのようなものが見える。バットがそのレバーに全身の体重をかけるようにして引いた。ガコン。大きな歯車がかみ合わさったような音がしたかと思うと、階段が滑り台みたいに平になった。バットは滑り台みたいになった階段の適当なところに手を置いて押した。すると、さっきと同じように凹んで、今度は電卓みたいな数字が並んだ板のようなものが出てきた。ピピピピピピ。バットが入力し終えた。ウイーン、ガシャン。平らになった階段から、地下室への入り口みたいなものが出来た。中は暗くて、何も見えない。
「俺ねー、吸血鬼だから、やっぱり太陽の光には当たりたくないのよ。寿命が縮んじゃうんだ」
そう言ってバットはどこからか取り出した懐中電灯を頼りに暗い階段を降り始めた。蓮くん、一裕、りこちゃん、圭吾くん、私の順で後を付いていく。圭吾くんは階段を下りる直前、周りに人がいないことを確認してから私の耳に口を近づけた。「僕、あの時、おばさんの口の中を確認したけど、吸血鬼じゃなかった」
それだけ言って、圭吾くんは階段をそろりそろりと注意深く降りて行った。

階段を下りてから、バットの部屋まではずっと暗かった。バットの懐中電灯だけではおぼつかなくて、小学校時代にみんなで夜に山を登って電池の切れかけた懐中電灯で何とか無事に下りた思い出が脳をよぎる。
「暗いね、ごめん」
バットがドアを開けた。ドアの中も、暗かった。そもそも、そこにドアがあることすら分からなかった。
「懐中電灯で足りた?みんな」
そう言ってバットは懐中電灯を消した。真っ暗。日の光がまったくない。
「お姉さん…」
りこちゃんの泣き出しそうな声。どこにいるのか全く分からないけれど、とりあえず探す。
「あ、ごめんごめん」
バットがまた懐中電灯を付けた。
「俺はここね」
そう言ってバットは自分に懐中電灯の光を向けた。バットの眼が猫みたいに光っていた。
「結構、広いっすね」
一裕の声がする。え?何が?
「お、やっぱり君、少しは見えるんだ」
バットが嬉しそうな顔をしてみせる。犬歯が暗闇の中、鈍く光っていた。
「吸血鬼の血が混ざっていると、こういう時に便利なんだよ」
「あんた!」
おばさんの声が後ろから聞こえた。コロコロ。何かが転がってくる。それは光の玉だった。星を空から取ってきたような光の玉。
「あんた!人間のお友達を部屋に入れる時はこれを持っていきなさいって言ったでしょ。」
「あ、忘れてた」
「こら!」
「はい!」
バットが光の玉を一人ずつに渡していく。
「ごめんね、そんなに見えてないって思わなかった」
「これ、どうやってつくったの?」
りこちゃんが怖がることもなく、バットに尋ねる。光の玉がりこちゃんの両目に映っていた。
「簡単よ、こんなの。ガチャガチャのケースにでっかい電球を入れただけ。母さんが作った」
「バットくん、光浴びちゃって大丈夫?」
わざわざ命を削ってほしくない。私ももう、暗がりを恐れるような年齢じゃない。階段を上り下りするときは、さすがに欲しいけど。
「ああ、人工の光なら平気」
バットは私たちを部屋の中に案内した。暗い部屋の中。五つの玉と一人の両目だけが光っていた。

おばさんが作ってくれたという光の玉が、私たちの顔をぼんやりと照らす。
「何から話そっかなー」
バットの両目が宙に浮かんでいる。紫がかった瞳が私たちを順番に見ていく。
「…最初に聞いていいか」
蓮くんが口を開いた。
「さっき、おばさんさ、人間の友達を部屋に連れて行くときはって言っていたよな」
蓮くんが持っていた光の玉の寿命が尽きたみたいだ。蓮くんの顔がパッと見えなくなる。
「お前には、人間以外の友達が、この世界にいるのか」
圭吾くんの顔が、蓮くんの顔のあった空間に向けられた。バットの瞳は、蓮くんがいるであろうあたりをじっと見ている。「呼んであげようか、今から」
そう言ってバットは、急に立ち上がって私に近づいてくる。
「あ、ごめんね。そこに俺のカバンが置いてあるから、ちょっとどいてくれるかな」
私が光の玉を頼りに移動すると、バットが私のいたあたりにしゃがんでゴソゴソとカバンを漁るような音を立てた。
パアッー
急に強い光がバットの顔を照らした。バットの手にはスマホが握られていた。
「げ、まぶしっ」
バットは目を細めて、スマホの光度を一番小さくして誰かに電話をし始めた。
「俺ら吸血鬼の存在を信じ入れていない人間が何人かいるから、今から来れるか」
みんなが息を飲んで見守る。
「お前、ここに美味しそうな女子高生がいるから、何か食ってから来い。理性吹っ飛ばすなよ」
バットは電話を切った。
「今から来るってさ」

五分くらいたった。その間誰も話さなかった。いや、話せなかった。一裕だけが、バットとおしゃべりを楽しんでいた。会話の内容は、ごく普通の男子たち。好きな漫画、好きな女優、次に会う約束までし始めた。
キキッ
部屋の中で何かの鳴き声がした。光の玉を鳴き声がした方にかざす。大きなコウモリが、羽ばたいていた。
「おう、来たか」
バットが一匹のコウモリを手招きした。
「こいつが俺の友達」
コウモリが、バットの人差し指からぶら下がっている。
「あれ、俺さっき、君たちのこと見たよ」
コウモリから、低い男子の声がした。バットの家を訪れる前に、私とりこちゃんの上を飛んで行った、あのコウモリだ。
「何でこの姿で来たのさ」
「体力使わなくていいからな」
コウモリとバットが共通の話題で盛り上がっている。人間の血が吸いたくなったら、蚊を食べると便利だなんて、生まれて初めて聞いた。
「コウモリさん、名前なに?」
りこちゃんが光の玉を、しっかりと胸に抱いている。コウモリの野性的な鋭い、けど、怖くない眼がりこちゃんに向けられる。
「通称ナイトメア、本名はウルフ」
「コウモリなのにウルフなの?」
「良いだろ、別にそんな細かいこと」
ウルフの眼が私を見る。一瞬、コウモリなのに本当に狼みたいな目をした。
「ああ、確かにこの人美味しそうだな」
「お前らのこと、教えてくれ」
暗闇の中から蓮くんがウルフとバットに言う。
「架空の存在だって思ってたんだ、お前らのこと」
それを聞くと、バットとウルフはゲラゲラと大爆笑し始めた。
「お腹が痛い…」
バットはお腹を抱えながら圭吾くんを手招きした。
「おい、ウルフ。こいつ、俺らと同じ世界にいた人間だぞ」
バットは圭吾くんを自分の隣に座らせた。ウルフが圭吾くんの周りを何周か飛んで回ると、ポンと突然人間の姿になった。誰かに似てた。気がした。
「ほんとだ。ドラゴン見たことあるでしょ、君」
ウルフは胡坐をかいて、顔を圭吾くんに近づけた。圭吾くんは黙って頷いた。
「君は、多分。第一王女様を知ってるだろ。そんなにおいがする。だったらさー」
ウルフは胡坐をかいている。バットは両脚を伸ばして両手を後ろに付くようにして座っている。
「ほら、みんなに教えてあげなきゃ、圭吾」
バットが圭吾くんの背中を促すように叩く。でも、圭吾くんは固く口を閉ざしたままでいる。
「俺らね、あの世界では、犯罪者みたいなもんよ」
バットとウルフは、何かを恨むような眼で空を見つめていた。その目は、初めて出会った時の、楓くんの眼に似ていた。


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2025/06/22 22:38

花火
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