サファイヤの小さな後ろ姿は、遠ざかる毎にますます小さくなっていく。殺伐としたこの赤い世界を、一人の少年が堂々とした足取りで、遥か遠くにある「真実の樹池」を目指す。雨雲のような真っ黒な雲の隙間から漏れた真っ白な光は、サファイヤの跡を追う。
「時間が馬鹿みたいに掛かりそうだから、悪いけど掌の上に乗せてくれる?」
サファイヤは数百メートル先で立ち止まり、俺の方を振り向いてそう言った。彼の表情が分からないくらいに遠くにいるのに、サファイヤの声は、まるで俺のすぐ隣で話しているように聞こえた。これもまた夢のせいか。
或いはこれは…。
俺の小さな頭では理解しきれないほど、この世界が広くて、深くて、複雑で、沢山の謎が潜んでいる証なのかもしれない。
サファイヤが何百歩と歩いた距離を、俺は数歩歩いただけだった。まるで映画の中の怪獣になった気分だった。俺が一歩歩く毎に、足元を竜巻のような砂埃が舞い、地面が激しく揺れる。だが、サファイヤは俺を見て逃げ惑うことはしなかった。彼はただ、揺れる地面にしっかりと両足を付け、仁王立ちして俺を見つめていた。
「よいしょっと。お邪魔するね」
俺がしゃがんで彼に右手を差し伸べると、彼は掌の窪みにすっぽりと身を収め、胡座をかいて寛いだ。昔、年上の従兄弟に初めて掌に持たせてもらった子猫よりも小さな身体。それなのに、俺の身体がそのまま地球の中心にめり込むのではないかと思うほど、本当は軽いはずなのに重くて、俺はただ彼の小さな後ろ姿を見ていた。
「あ、あれだ。見える?池の真ん中に大樹が立ってるの」
俺がサファイヤを落とさないように慎重に運んで、サファイヤの指示に従って歩いていくと、遥か遠くに一本の大木が寂しげに葉を揺らしているのが見えた。その根元には、透明な水の張った池が、コンパスで描いたような綺麗な円を描いていた。
「サファイヤさん。ここが龍獅国というのは分かりました。でも、俺たちの他にドラゴンも人も見当たりません」
辺りは閑散としていて、何かがいる気配すらしなかった。全ての命が息絶えた後の地球は、こうなってしまうのかと恐ろしくなった。ただ、雲間から差し込む真っ白な暖かい光が救いだった。
「あ……そう。うん。そりゃそうさ。ここは、龍獅国の王族に代々仕えてきた守護竜が眠っている墓地だから」
俺はサファイヤの言葉に、俺は思わず歩くのを止めてしまった。
「おっとっと」
その反動で、サファイヤは俺の掌の上ででんぐり返しをした。
俺は今、ドラゴンの遺骸の上に立っている?
畏れ多い気持ちと、不謹慎にもドラゴンの遺骸を見てみたいと好奇心に駆られる気持ちに板挟みになる。
それはそうと、サファイヤはさっきから、俺たち以外の何かが見えているように辺りを見渡す。さっき、俺が「周りに何も見えない」と言った時、彼は不自然に言葉に詰まった。
「さっきさ…何も見えないって言ったよね」
サファイヤは、俺の右手に仰向けになって寝そべっていた。その視線は、遠くに見える、「真実の樹池」に絶えず向けられていた。
「それなら尚更、早くあの池に行かないと」
サファイヤはそう言うと、ムクッと起き上がり、真剣な表情をして俺の瞳の奥を覗き込むように言った。
「最初に聞いておくけど、もしも君が前世で誰かを死に導いたとしたら、君はどうする」
ドクン…
少なくとも俺が意識している範囲では、前世の記憶などないはずだった。だけど、俺の心臓は、警察に尋問されている時の容疑者のように、今にも逃げ出そうとするかのように激しく胸の中で暴れている。
「それが…ウルフさん達の言っていた、ドラゴンの禁忌っていう…?」
「あ、いや、それとは、また違う話だと俺は推測してる。……まぁ」
白い光が俺の掌を照らし、サファイヤの影が俺の手首の方に伸びる。水色に光るサファイヤの瞳は、北極星のように見えた。とても静かで穏やかなのに、目が離せなくて、それが無ければ不安に押し潰されてしまいそうな存在。
「まずは君が見なきゃ。この世界を」
サファイヤはゆっくりと首を回し、遥か遠くの大木に視線を向けた。そして、俺に背中を向けたまま、彼は落ち着いた声で語った。
「君の眼次第で、世界は如何様にも変わるんだよ」
[水平線]
「あの…大樹って、これのことですか?」
数十歩歩いた先には、大樹だと思っていた物が赤褐色の乾いた地面から生えていた。その立ち姿は、一般的なものよりも一回りか二回り大きいブロッコリーが地面に刺さっているようだった。いや、傘と言ったほうが良さそうだ。広げた傘の持ち手が、地面に突き刺さっているくらいの高さの木だった。高さは雑草程度なのに、見た目だけは立派な樹だった。
「うん。そう。でも、今の君からしてみれば小さく見えるだろうけどね」
それでも、傘みたいな木を囲う池は半径3mくらいはあって、木に比べればかなり大きい。池の中の水は、不純物が全くない透明なもの。だが、池と言うには多少深すぎる気がした。透明な水の層が重なり、深い青色に見える。その水の層は、延々と地球の中心に向かって伸びている。
「ちょっと待ってな」
サファイヤはそう言うと、俺の手の平から迷いもなくピョンと身軽に飛び降りた。
あ……!!
サファイヤの身長からすれば、相対的に俺は10階建ての建物ぐらいの大きさだ。そんな高さから落ちたら、サファイヤが死んでしまう……!!
俺は咄嗟にしゃがんでサファイヤを掴もうとしたが間に合わなかった。だが、俺の心配をよそに、サファイヤはまるで忍者のようにスタッと着地すると、膝頭に付いた砂をパッパッと手で払い、池に向かって歩き出した。
「サファイヤさん?」
俺がサファイヤの跡をついていこうとした時、サファイヤは既に池の淵に四つん這いになって、池の中に映る自分を見ていた。
「おいで」
サファイヤは池の中を覗き込んだまま、左手をヒラヒラと振って俺を手招きした。
「池に何があるんですか?」
サファイヤは俺の問いには答えなかった。ただ、来い、と無言で俺を催促する。
「真実の樹池」。
いったい何故、龍獅国の人々は「真実」と言ったのか。
サファイヤは俺に、俺の眼次第で、世界の見え方が変わると語った。
俺の眼が映してきた他愛ない世界は、虚構だったのか、或いは真実か。
俺の眼に映る異世界は、果たして真実なのか。
俺は吸血鬼だ…。ウルフさんも、バットさんも。
俺の存在は、世界にとって嘘なのか、本当なのか。
「李龍臣…」
サファイヤは、俺の本名を呼んだ。俺が虐められる原因になった、あの名前。アローは格好良いと言ってくれたが、俺が一番嫌いな名前。
サファイヤは、それを知っている。それなのに、彼はその名前で俺を呼んだ。
俺は、本当の俺から逃げていてはいけないんだ。
俺は拳を固く握りしめ、唇を強く噛んだ。歯を食いしばり、そしてサファイヤの隣に俺も四つん這いになった。池の中には、俺とサファイヤの姿が映っているはずだった。
波1つ立たない静かな水面。傍から見た時は、確かに透明な水が奥深くへと続いているはずだった。今、俺とサファイヤの前には、大きな鏡があった。眠ったように静かな池に、何かが映っていたのだ。それは、俺が今までに一度も見たことが無かった、想像の世界の存在だった。
サファイヤが映っている筈の場所には、2階建ての建物くらいの体長の首長竜が映っていた。サファイヤが前に言っていた、サファイヤの本来の姿だった。群青色の岩で出来たような肌。名前に相応しく、サファイヤで出来たような、透き通った水色の瞳。図鑑で見るよりもずっと穏やかな瞳は、怪獣らしい巨体には似つかわしくない。その2つの瞳が、水面に映る何かに視線を向けている。その何かとは、俺が映っている筈の場所に、戸惑ったような表情を浮かべて静かに佇んでいる。それは、全身がサファイヤやラピズラズリで出来たような、真っ青なドラゴンだった。その姿はまさに、俺がいつも首から下げている、ドラゴンのネックレスの飾りそのものだった。だからだろうか。俺は、水面に映るドラゴンの姿を見て「知っている」、と理由もなく感じた。
俺の隣で四つん這いになっているサファイヤは、依然として人間姿でいる。サファイヤは、池の中に映る自分の姿を、青いドラゴンの姿を見て、全く狼狽えた様子を見せない。寧ろ、安心したような、納得したような横顔だった。
「何で俺の姿が映っていないんですか?」
俺はサファイヤの横顔にそう尋ねた。サファイヤは、フフッと悲しげに笑った。その笑みは、僅かな覚悟も含んでいるように見えた。その笑みは、歴史の資料集で時折見かける、塹壕に泥だらけの姿で身を潜めながら、小さな子猫と遊んでいる兵士の横顔のそれに似ていた。
「映っているんだよ、それが」
「え…?」
俺が再び水面に映るドラゴンの姿を見た時、ドラゴンもまた全く同じタイミングで俺の方を見た。煙臭い風が俺の頬を撫でていき、左目を隠すように伸びていた前髪が揺れる。ドラゴンの髭は、銀色の絹のように滑らかに風に吹かれている。フッと風が弱まった時、水面に映るドラゴンの髭も、俺の前髪と全く同じタイミングでなびかなくなる。
静かな水面に映る首長竜が、雲間から漏れる光に向かって高く首をもたげた。青いドラゴンは、相変わらず俺とにらめっこをしている。
サファイヤが諭すような声で、空を仰ぎながら言った。
「それが、宮司龍臣。イ・ソクヒョン……君の前世の姿だよ」
「時間が馬鹿みたいに掛かりそうだから、悪いけど掌の上に乗せてくれる?」
サファイヤは数百メートル先で立ち止まり、俺の方を振り向いてそう言った。彼の表情が分からないくらいに遠くにいるのに、サファイヤの声は、まるで俺のすぐ隣で話しているように聞こえた。これもまた夢のせいか。
或いはこれは…。
俺の小さな頭では理解しきれないほど、この世界が広くて、深くて、複雑で、沢山の謎が潜んでいる証なのかもしれない。
サファイヤが何百歩と歩いた距離を、俺は数歩歩いただけだった。まるで映画の中の怪獣になった気分だった。俺が一歩歩く毎に、足元を竜巻のような砂埃が舞い、地面が激しく揺れる。だが、サファイヤは俺を見て逃げ惑うことはしなかった。彼はただ、揺れる地面にしっかりと両足を付け、仁王立ちして俺を見つめていた。
「よいしょっと。お邪魔するね」
俺がしゃがんで彼に右手を差し伸べると、彼は掌の窪みにすっぽりと身を収め、胡座をかいて寛いだ。昔、年上の従兄弟に初めて掌に持たせてもらった子猫よりも小さな身体。それなのに、俺の身体がそのまま地球の中心にめり込むのではないかと思うほど、本当は軽いはずなのに重くて、俺はただ彼の小さな後ろ姿を見ていた。
「あ、あれだ。見える?池の真ん中に大樹が立ってるの」
俺がサファイヤを落とさないように慎重に運んで、サファイヤの指示に従って歩いていくと、遥か遠くに一本の大木が寂しげに葉を揺らしているのが見えた。その根元には、透明な水の張った池が、コンパスで描いたような綺麗な円を描いていた。
「サファイヤさん。ここが龍獅国というのは分かりました。でも、俺たちの他にドラゴンも人も見当たりません」
辺りは閑散としていて、何かがいる気配すらしなかった。全ての命が息絶えた後の地球は、こうなってしまうのかと恐ろしくなった。ただ、雲間から差し込む真っ白な暖かい光が救いだった。
「あ……そう。うん。そりゃそうさ。ここは、龍獅国の王族に代々仕えてきた守護竜が眠っている墓地だから」
俺はサファイヤの言葉に、俺は思わず歩くのを止めてしまった。
「おっとっと」
その反動で、サファイヤは俺の掌の上ででんぐり返しをした。
俺は今、ドラゴンの遺骸の上に立っている?
畏れ多い気持ちと、不謹慎にもドラゴンの遺骸を見てみたいと好奇心に駆られる気持ちに板挟みになる。
それはそうと、サファイヤはさっきから、俺たち以外の何かが見えているように辺りを見渡す。さっき、俺が「周りに何も見えない」と言った時、彼は不自然に言葉に詰まった。
「さっきさ…何も見えないって言ったよね」
サファイヤは、俺の右手に仰向けになって寝そべっていた。その視線は、遠くに見える、「真実の樹池」に絶えず向けられていた。
「それなら尚更、早くあの池に行かないと」
サファイヤはそう言うと、ムクッと起き上がり、真剣な表情をして俺の瞳の奥を覗き込むように言った。
「最初に聞いておくけど、もしも君が前世で誰かを死に導いたとしたら、君はどうする」
ドクン…
少なくとも俺が意識している範囲では、前世の記憶などないはずだった。だけど、俺の心臓は、警察に尋問されている時の容疑者のように、今にも逃げ出そうとするかのように激しく胸の中で暴れている。
「それが…ウルフさん達の言っていた、ドラゴンの禁忌っていう…?」
「あ、いや、それとは、また違う話だと俺は推測してる。……まぁ」
白い光が俺の掌を照らし、サファイヤの影が俺の手首の方に伸びる。水色に光るサファイヤの瞳は、北極星のように見えた。とても静かで穏やかなのに、目が離せなくて、それが無ければ不安に押し潰されてしまいそうな存在。
「まずは君が見なきゃ。この世界を」
サファイヤはゆっくりと首を回し、遥か遠くの大木に視線を向けた。そして、俺に背中を向けたまま、彼は落ち着いた声で語った。
「君の眼次第で、世界は如何様にも変わるんだよ」
[水平線]
「あの…大樹って、これのことですか?」
数十歩歩いた先には、大樹だと思っていた物が赤褐色の乾いた地面から生えていた。その立ち姿は、一般的なものよりも一回りか二回り大きいブロッコリーが地面に刺さっているようだった。いや、傘と言ったほうが良さそうだ。広げた傘の持ち手が、地面に突き刺さっているくらいの高さの木だった。高さは雑草程度なのに、見た目だけは立派な樹だった。
「うん。そう。でも、今の君からしてみれば小さく見えるだろうけどね」
それでも、傘みたいな木を囲う池は半径3mくらいはあって、木に比べればかなり大きい。池の中の水は、不純物が全くない透明なもの。だが、池と言うには多少深すぎる気がした。透明な水の層が重なり、深い青色に見える。その水の層は、延々と地球の中心に向かって伸びている。
「ちょっと待ってな」
サファイヤはそう言うと、俺の手の平から迷いもなくピョンと身軽に飛び降りた。
あ……!!
サファイヤの身長からすれば、相対的に俺は10階建ての建物ぐらいの大きさだ。そんな高さから落ちたら、サファイヤが死んでしまう……!!
俺は咄嗟にしゃがんでサファイヤを掴もうとしたが間に合わなかった。だが、俺の心配をよそに、サファイヤはまるで忍者のようにスタッと着地すると、膝頭に付いた砂をパッパッと手で払い、池に向かって歩き出した。
「サファイヤさん?」
俺がサファイヤの跡をついていこうとした時、サファイヤは既に池の淵に四つん這いになって、池の中に映る自分を見ていた。
「おいで」
サファイヤは池の中を覗き込んだまま、左手をヒラヒラと振って俺を手招きした。
「池に何があるんですか?」
サファイヤは俺の問いには答えなかった。ただ、来い、と無言で俺を催促する。
「真実の樹池」。
いったい何故、龍獅国の人々は「真実」と言ったのか。
サファイヤは俺に、俺の眼次第で、世界の見え方が変わると語った。
俺の眼が映してきた他愛ない世界は、虚構だったのか、或いは真実か。
俺の眼に映る異世界は、果たして真実なのか。
俺は吸血鬼だ…。ウルフさんも、バットさんも。
俺の存在は、世界にとって嘘なのか、本当なのか。
「李龍臣…」
サファイヤは、俺の本名を呼んだ。俺が虐められる原因になった、あの名前。アローは格好良いと言ってくれたが、俺が一番嫌いな名前。
サファイヤは、それを知っている。それなのに、彼はその名前で俺を呼んだ。
俺は、本当の俺から逃げていてはいけないんだ。
俺は拳を固く握りしめ、唇を強く噛んだ。歯を食いしばり、そしてサファイヤの隣に俺も四つん這いになった。池の中には、俺とサファイヤの姿が映っているはずだった。
波1つ立たない静かな水面。傍から見た時は、確かに透明な水が奥深くへと続いているはずだった。今、俺とサファイヤの前には、大きな鏡があった。眠ったように静かな池に、何かが映っていたのだ。それは、俺が今までに一度も見たことが無かった、想像の世界の存在だった。
サファイヤが映っている筈の場所には、2階建ての建物くらいの体長の首長竜が映っていた。サファイヤが前に言っていた、サファイヤの本来の姿だった。群青色の岩で出来たような肌。名前に相応しく、サファイヤで出来たような、透き通った水色の瞳。図鑑で見るよりもずっと穏やかな瞳は、怪獣らしい巨体には似つかわしくない。その2つの瞳が、水面に映る何かに視線を向けている。その何かとは、俺が映っている筈の場所に、戸惑ったような表情を浮かべて静かに佇んでいる。それは、全身がサファイヤやラピズラズリで出来たような、真っ青なドラゴンだった。その姿はまさに、俺がいつも首から下げている、ドラゴンのネックレスの飾りそのものだった。だからだろうか。俺は、水面に映るドラゴンの姿を見て「知っている」、と理由もなく感じた。
俺の隣で四つん這いになっているサファイヤは、依然として人間姿でいる。サファイヤは、池の中に映る自分の姿を、青いドラゴンの姿を見て、全く狼狽えた様子を見せない。寧ろ、安心したような、納得したような横顔だった。
「何で俺の姿が映っていないんですか?」
俺はサファイヤの横顔にそう尋ねた。サファイヤは、フフッと悲しげに笑った。その笑みは、僅かな覚悟も含んでいるように見えた。その笑みは、歴史の資料集で時折見かける、塹壕に泥だらけの姿で身を潜めながら、小さな子猫と遊んでいる兵士の横顔のそれに似ていた。
「映っているんだよ、それが」
「え…?」
俺が再び水面に映るドラゴンの姿を見た時、ドラゴンもまた全く同じタイミングで俺の方を見た。煙臭い風が俺の頬を撫でていき、左目を隠すように伸びていた前髪が揺れる。ドラゴンの髭は、銀色の絹のように滑らかに風に吹かれている。フッと風が弱まった時、水面に映るドラゴンの髭も、俺の前髪と全く同じタイミングでなびかなくなる。
静かな水面に映る首長竜が、雲間から漏れる光に向かって高く首をもたげた。青いドラゴンは、相変わらず俺とにらめっこをしている。
サファイヤが諭すような声で、空を仰ぎながら言った。
「それが、宮司龍臣。イ・ソクヒョン……君の前世の姿だよ」
- 1.開始せよ(1)
- 2.開始せよ(2)
- 3.開始せよ(3)
- 4.扉(1)
- 5.扉(2)
- 6.灰色(1)
- 7.灰色(2)
- 8.灰色(3)
- 9.混血(1)
- 10.混血(2)
- 11.混血(3)
- 12.いのち(1)
- 13.いのち(2)
- 14.仮面(1)
- 15.仮面(2)
- 16.仮面(3)
- 17.思い出せ(1)
- 18.思い出せ(2)
- 19.楓(1)
- 20.楓(2)
- 21.兄の過去(1)
- 22.兄の過去(2)
- 23.伝えられなかった「すき」 エピソード1
- 24.海の少年(1)
- 25.海の少年(2)
- 26.伝えられなかった「すき」 エピソード 2
- 27.王国の真実(1)
- 28.王国の真実(2)
- 29.王国の真実(3)
- 30.王国の真実(4)
- 31.王国の真実(5)
- 32.桜
- 33.眠った記憶(1)
- 34.眠った記憶(2)
- 35.眠った記憶(3)
- 36.眠った記憶(4)
- 37.眠った記憶(5)
- 38.記憶よ、目覚めよ(1)
- 39.記憶よ、目覚めよ(2)
- 40.記憶よ、目覚めよ(3)
- 41.休憩タイム(1)
- 42.休憩タイム(2)
- 43.休憩タイム(3)
- 44.伝えられた「すき」
- 45.謎解きゲーム(1)
- 46.謎解きゲーム(2)
- 47.隠された宇宙(1)
- 48.隠された宇宙(2)
- 49.隠された宇宙(3)
- 50.隠された宇宙(4)
- 51.死者の想い(1)
- 52.死者の想い(2)
- 53.死者の想い(3)
- 54.死者の想い(4)
- 55.親子(1)
- 56.親子(2)
- 57.親子(3)
- 58.親子(4)
- 59.親子(5)
- 60.こどもたち(1)
- 61.こどもたち(2)
- 62.ほこり(1)
- 63.ほこり(2)
- 64.食う(1)
- 65.食う(2)
- 66.食う(3)
- 67.本当の自分(1)
- 68.本当の自分(2)
- 69.本当の自分(3)
- 70.宿題との戦いの末、2人の高校生男子「死す」
- 71.別れ(1)
- 72.別れ(2)
- 73.喧騒に紛れて
- 74.仮面を脱げ
- 75.名前は
- 76.虚構と真実
- 77.ヨミガエル
- 78.迷宮
- 79.橋を渡る、境目を越える
- 80.罪人の証
- 81.真実との対峙
- 82.扉を開ける前に
- 83.浜辺の宵
- 84.目隠し
- 85.鏡の中
- 86.夜明け
- 87.誕生日
- 88.真実の足枷
- 89.覚悟の時
- 90.逃避
- 91.罪と真実と
- 92.父の懺悔
- 93.best friend
- 94.兄弟
- 95.境界線