昼休みのチャイムが鳴ると、教室の空気が一気にほどけた。
弁当を広げる音、友達を探す声、椅子を引く音――
新しいクラスのざわめきが、春の光の中で揺れている。
藤宮凛は、弁当を机に置きながら、そっと夕奈の席を見た。
橘夕奈は窓際で、まだ弁当を開けずに外を見ていた。
桜の花びらが風に舞い、光の粒のように揺れている。
その景色を見つめる夕奈の横顔は、どこか遠くて、どこか寂しげだった。
――話しかけたい。
でも、どう声をかければいいのか分からない。
中学のあの日からずっと、夕奈の前では言葉がうまく出てこない。
凛が視線をそらした瞬間だった。
「……凛くん」
名前を呼ばれて、凛は肩を跳ねさせた。
夕奈が、こちらを向いていた。
「お昼……一緒に食べない?」
その声は、いつもの静けさより少しだけ柔らかかった。
凛の胸が、ゆっくりと熱を帯びる。
「……いいよ」
言葉にすると、夕奈はほっとしたように微笑んだ。
その笑顔は、どこか懐かしくて、胸の奥を静かに揺らした。
「じゃあ、屋上行こ。人多いし」
夕奈は弁当を持ち上げ、立ち上がる。
凛も慌てて鞄を閉じて後を追った。
廊下を歩くふたりの影が、春の光に重なる。
夕奈は前を向いたまま、ぽつりとつぶやいた。
「……同じクラスになるなんて、思わなかった」
その声は、少しだけ震えていた。
凛は返事をしようとして、言葉が喉で止まる。
嬉しいのか、怖いのか、自分でも分からない。
屋上へ続く階段を上りながら、夕奈は続けた。
「中学のとき……あのままじゃ、ちゃんと話せなかったから」
凛は足を止めた。
夕奈も振り返る。
「だから……高校で同じクラスになれて、よかったって思ってる」
その瞳は、まっすぐ凛を見ていた。
逃げずに、隠さずに。
春の風が階段の窓から吹き込み、ふたりの間をそっと揺らす。
凛はゆっくり息を吸い、言った。
「……俺も、よかったって思ってる」
夕奈は小さく笑った。
その笑顔は、ほんの少しだけ泣きそうに見えた。
止まっていた時間が、またひとつ動いた気がした。
弁当を広げる音、友達を探す声、椅子を引く音――
新しいクラスのざわめきが、春の光の中で揺れている。
藤宮凛は、弁当を机に置きながら、そっと夕奈の席を見た。
橘夕奈は窓際で、まだ弁当を開けずに外を見ていた。
桜の花びらが風に舞い、光の粒のように揺れている。
その景色を見つめる夕奈の横顔は、どこか遠くて、どこか寂しげだった。
――話しかけたい。
でも、どう声をかければいいのか分からない。
中学のあの日からずっと、夕奈の前では言葉がうまく出てこない。
凛が視線をそらした瞬間だった。
「……凛くん」
名前を呼ばれて、凛は肩を跳ねさせた。
夕奈が、こちらを向いていた。
「お昼……一緒に食べない?」
その声は、いつもの静けさより少しだけ柔らかかった。
凛の胸が、ゆっくりと熱を帯びる。
「……いいよ」
言葉にすると、夕奈はほっとしたように微笑んだ。
その笑顔は、どこか懐かしくて、胸の奥を静かに揺らした。
「じゃあ、屋上行こ。人多いし」
夕奈は弁当を持ち上げ、立ち上がる。
凛も慌てて鞄を閉じて後を追った。
廊下を歩くふたりの影が、春の光に重なる。
夕奈は前を向いたまま、ぽつりとつぶやいた。
「……同じクラスになるなんて、思わなかった」
その声は、少しだけ震えていた。
凛は返事をしようとして、言葉が喉で止まる。
嬉しいのか、怖いのか、自分でも分からない。
屋上へ続く階段を上りながら、夕奈は続けた。
「中学のとき……あのままじゃ、ちゃんと話せなかったから」
凛は足を止めた。
夕奈も振り返る。
「だから……高校で同じクラスになれて、よかったって思ってる」
その瞳は、まっすぐ凛を見ていた。
逃げずに、隠さずに。
春の風が階段の窓から吹き込み、ふたりの間をそっと揺らす。
凛はゆっくり息を吸い、言った。
「……俺も、よかったって思ってる」
夕奈は小さく笑った。
その笑顔は、ほんの少しだけ泣きそうに見えた。
止まっていた時間が、またひとつ動いた気がした。