教室が少しずつざわつき始めた。
新しいクラスの空気はまだ固くて、誰もが探り合うように席へ向かっていく。
藤宮凛は、自分の席に座りながら、そっと横目で橘夕奈を見た。
夕奈は窓際の席で、静かに筆箱を並べている。
その仕草は中学の頃と同じなのに、どこか遠く感じた。
――話しかけたい。
でも、どう話しかければいいのか分からない。
「ねぇ凛、写真部入るの?」
前の席になった男子が気軽に声をかけてきた。
「あ、うん……たぶん」
凛は曖昧に返事をしながら、夕奈の反応を気にしてしまう。
夕奈はその会話に気づいているはずなのに、
まるで聞こえないふりをするように視線を外していた。
その横顔が、少しだけ寂しそうに見えた。
チャイムが鳴り、担任が教室に入ってくる。
自己紹介が始まり、順番に名前が呼ばれていく。
「橘夕奈さん」
夕奈は立ち上がり、簡単に自己紹介をした。
声は落ち着いていて、どこか淡々としている。
凛はその声を聞くだけで胸がざわついた。
懐かしいのに、触れられない距離。
そして――
「藤宮凛くん」
名前を呼ばれた瞬間、夕奈の肩がわずかに揺れた。
ほんの一瞬だけ、凛のほうを見た。
その視線は、驚きでも戸惑いでもなく、
言葉にできない何かを含んでいた。
凛は立ち上がり、自己紹介を終える。
席に戻ると、夕奈はもう前を向いていた。
すれ違う視線。
交わりそうで交わらない距離。
高校生活は始まったばかりなのに、
凛の心はもう落ち着く場所を失っていた。
新しいクラスの空気はまだ固くて、誰もが探り合うように席へ向かっていく。
藤宮凛は、自分の席に座りながら、そっと横目で橘夕奈を見た。
夕奈は窓際の席で、静かに筆箱を並べている。
その仕草は中学の頃と同じなのに、どこか遠く感じた。
――話しかけたい。
でも、どう話しかければいいのか分からない。
「ねぇ凛、写真部入るの?」
前の席になった男子が気軽に声をかけてきた。
「あ、うん……たぶん」
凛は曖昧に返事をしながら、夕奈の反応を気にしてしまう。
夕奈はその会話に気づいているはずなのに、
まるで聞こえないふりをするように視線を外していた。
その横顔が、少しだけ寂しそうに見えた。
チャイムが鳴り、担任が教室に入ってくる。
自己紹介が始まり、順番に名前が呼ばれていく。
「橘夕奈さん」
夕奈は立ち上がり、簡単に自己紹介をした。
声は落ち着いていて、どこか淡々としている。
凛はその声を聞くだけで胸がざわついた。
懐かしいのに、触れられない距離。
そして――
「藤宮凛くん」
名前を呼ばれた瞬間、夕奈の肩がわずかに揺れた。
ほんの一瞬だけ、凛のほうを見た。
その視線は、驚きでも戸惑いでもなく、
言葉にできない何かを含んでいた。
凛は立ち上がり、自己紹介を終える。
席に戻ると、夕奈はもう前を向いていた。
すれ違う視線。
交わりそうで交わらない距離。
高校生活は始まったばかりなのに、
凛の心はもう落ち着く場所を失っていた。