新しい教室は、まだ誰の色にも染まっていなかった。
窓から差し込む春の光が、机の上に淡く広がっている。
藤宮凛は、席表をもう一度見つめた。
自分の名前のすぐ近くに――橘夕奈。
心臓が、また小さく跳ねる。
教室に入ると、すでに何人かが席に座っていた。
その中に、夕奈の姿があった。
窓際の席。
頬に光を受けて、少しだけまぶしそうに目を細めている。
中学の頃よりも落ち着いた雰囲気で、でもどこか儚さが増していた。
凛は一瞬、足が止まった。
声をかけるべきなのに、喉が固まる。
――桜の下で「久しぶり」と言われたのに。
夕奈は気づいていないようで、静かにノートを開いていた。
その横顔を見ているだけで、胸がざわつく。
「おはよー! あ、新しい子?」
明るい声が凛の背中を押した。
同じクラスになった男子が話しかけてきて、凛は慌てて返事をする。
その声に反応したのか、夕奈がゆっくりと顔を上げた。
凛と目が合う。
一瞬だけ、夕奈の瞳が揺れた。
驚きでも、戸惑いでもない。
言葉にできない何かが、そこにあった。
凛は口を開こうとした。
「……たちば――」
名前が出ない。
夕奈の名前を呼ぶだけなのに、喉が痛いほど固まる。
夕奈は小さく微笑んだ。
その笑顔は、どこか寂しげだった。
「……おはよう、凛くん」
その声は、春風みたいに柔らかくて、
でも胸の奥を静かに刺した。
凛はただ、うなずくことしかできなかった。
高校生活は始まったばかりなのに、
もうすでに心が追いつかない。
夕奈の隣の席が空いている。
そこに座るべきなのか、座らないほうがいいのか――
凛はまだ決められなかった。
窓から差し込む春の光が、机の上に淡く広がっている。
藤宮凛は、席表をもう一度見つめた。
自分の名前のすぐ近くに――橘夕奈。
心臓が、また小さく跳ねる。
教室に入ると、すでに何人かが席に座っていた。
その中に、夕奈の姿があった。
窓際の席。
頬に光を受けて、少しだけまぶしそうに目を細めている。
中学の頃よりも落ち着いた雰囲気で、でもどこか儚さが増していた。
凛は一瞬、足が止まった。
声をかけるべきなのに、喉が固まる。
――桜の下で「久しぶり」と言われたのに。
夕奈は気づいていないようで、静かにノートを開いていた。
その横顔を見ているだけで、胸がざわつく。
「おはよー! あ、新しい子?」
明るい声が凛の背中を押した。
同じクラスになった男子が話しかけてきて、凛は慌てて返事をする。
その声に反応したのか、夕奈がゆっくりと顔を上げた。
凛と目が合う。
一瞬だけ、夕奈の瞳が揺れた。
驚きでも、戸惑いでもない。
言葉にできない何かが、そこにあった。
凛は口を開こうとした。
「……たちば――」
名前が出ない。
夕奈の名前を呼ぶだけなのに、喉が痛いほど固まる。
夕奈は小さく微笑んだ。
その笑顔は、どこか寂しげだった。
「……おはよう、凛くん」
その声は、春風みたいに柔らかくて、
でも胸の奥を静かに刺した。
凛はただ、うなずくことしかできなかった。
高校生活は始まったばかりなのに、
もうすでに心が追いつかない。
夕奈の隣の席が空いている。
そこに座るべきなのか、座らないほうがいいのか――
凛はまだ決められなかった。