桜が風に揺れていた。
高校の校門へ続く並木道は、淡い桃色の光に包まれていて、藤宮凛は思わず足を止めた。
今日から高校生活が始まる。
新しい制服、新しい教室、新しい人間関係。
胸が高鳴るはずなのに、どこか落ち着かない。
――席表を見た瞬間からずっとだ。
「橘夕奈」
その名前を見つけたとき、凛は息を飲んだ。
中学で告白して振られた相手。
理由も聞けず、ただ距離を置かれたまま終わった恋。
同じクラスになるなんて、思ってもいなかった。
校門をくぐると、桜の下にひとり立つ少女がいた。
風に揺れる髪、少し大人びた横顔。
凛の心臓が跳ねる。
橘夕奈だった。
夕奈はスマホを見ていたが、ふと顔を上げた。
そして――凛と目が合った。
時間が止まったように感じた。
夕奈の瞳がわずかに揺れる。
驚きと戸惑い、そしてほんの少しの懐かしさ。
凛は声を出そうとして、喉が固まった。
「……っ」
名前を呼べない。
中学のあの日と同じように。
夕奈は一瞬だけ凛を見つめて、
そして、淡く微笑んだ。
すれ違う瞬間、桜の花びらがふたりの間に舞う。
「……久しぶり、凛くん」
その小さな声だけが、春風よりも強く凛の胸を揺らした。
高校生活の始まりは、あまりにも静かで、
そして――あまりにも痛かった。
高校の校門へ続く並木道は、淡い桃色の光に包まれていて、藤宮凛は思わず足を止めた。
今日から高校生活が始まる。
新しい制服、新しい教室、新しい人間関係。
胸が高鳴るはずなのに、どこか落ち着かない。
――席表を見た瞬間からずっとだ。
「橘夕奈」
その名前を見つけたとき、凛は息を飲んだ。
中学で告白して振られた相手。
理由も聞けず、ただ距離を置かれたまま終わった恋。
同じクラスになるなんて、思ってもいなかった。
校門をくぐると、桜の下にひとり立つ少女がいた。
風に揺れる髪、少し大人びた横顔。
凛の心臓が跳ねる。
橘夕奈だった。
夕奈はスマホを見ていたが、ふと顔を上げた。
そして――凛と目が合った。
時間が止まったように感じた。
夕奈の瞳がわずかに揺れる。
驚きと戸惑い、そしてほんの少しの懐かしさ。
凛は声を出そうとして、喉が固まった。
「……っ」
名前を呼べない。
中学のあの日と同じように。
夕奈は一瞬だけ凛を見つめて、
そして、淡く微笑んだ。
すれ違う瞬間、桜の花びらがふたりの間に舞う。
「……久しぶり、凛くん」
その小さな声だけが、春風よりも強く凛の胸を揺らした。
高校生活の始まりは、あまりにも静かで、
そして――あまりにも痛かった。