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お前がボカロを広めるんだよォ!!

#1

1話

 豆腐の角に頭ぶつけて転生したっていうヤツいる?いねえよなぁ!!?



 いや……いるんだよなぁ、これが。



 教授の学会発表が終わって浮かれポンチだった大学生の私達は誰が言い始めた研究室でパーティーをしようという話に乗っかり、酒とツマミ片手に教授の部屋に押しかけた。


 普通なら学校で成人しているとはいえ、学生に酒をのます教授は居ないのだが、私達の研究室の主こと教授は悪ノリが大好きでノリノリで50年もののワインを持って来て学生らに振る舞った。

 めっちゃ美味しかった。


 流行の曲やゲームに話を咲かせ、就職先や将来について語り合い。私達は残り少ない研究生活を目一杯楽しもうと約束を交わす。
 そして、アルコールで正常に頭が働かなくなった頃に誰かが言った。


「豆腐で人が死ねるんだぜ!!!」


 と言って、ガラガラと倉庫からわざわざ引っ張ってきたのアホな同期が「豆腐の角に頭をぶつけて死ぬためには秒速340mのスピードが必要」という説明つきのイラストをネットで発見。
 そして、悪ノリ大好きな教授に頼んで購入した豆腐線形加速器なる装置だった。


 相変わらずアホやってんなーと思ったその時、私の頭に何かとんでもない速度で四角くて白い物体が撃ち込まれ、グチャっと、脳と首が逝った。ついでに私の意識も逝った。



 そして感覚的には数秒後、どういう訳が私は3歳の初音 未玖という女の子になっていたのである。


 正確には覚えていないが、あの状況を鑑みるに私は豆腐の角に頭ぶつけて転生したんだろう。
 死に方が不名誉すぎるけど。えぇ、両親にどうやって説明しよう……。


 そんな事を考えてなんとなく鏡を見たらひっくり返った。自分のツラがあまりにも初音ミクだかだ。



 青緑色のロングヘアに髪と同じ色のぱっちりお目目に、薄紅色のほっぺ。つぅるんつぅるんの小さな唇とバサバサまつ毛とかいうどう見ても初音ミクとしか思えない容姿をしていた。



 えぇ、アレですか?電子の歌姫ですか????混乱していると鏡の中の初音ミクもあわあわした表情になった。
 わぁ、ミクちゃんって滅茶苦茶可愛いな。そして喉に手を当て、声帯を震わしてみると「んぁあ〜」と初音ミクを幼女っぽくした声が出た。



 えぇ、可愛い。こんなの天使じゃん……(語彙力消失)



 声帯と容姿が初音ミクという事実に気分が良くなって、メルト(作詞・作曲:ryo)を歌っていたら窓越しに小鳥が集まってきた。

 ディズニープリンセスかな?でもまぁ初音ミクの声って老若男鳥も虜にするなんげ周知の事実だよね!というところに更に衝撃の事実判明。


 なんと今世の私のなんと私の両親金持ち。パパンは有名なロックバンドのギタリスト権ボーカル、ママンは数々の世界的なコンクールを総ナメしたピアニスト。
 その二人の間に生まれたのが初音ミクのスペックを持て転生した私こと初音 未玖ってことね。

 なるほど、そりゃ音楽(ロック)と音楽(クラッシック)が結婚したらその間に音楽(スーパーエンジェル)が生まれる訳だ。という感じでテンション上がり過ぎて意味不明な事を口走った娘を楽しそうに見守ってくれた両親へ。心広過ぎません??


 そしてせっかく初音ミクのスペックを転生特典にもらったんだから、ボカロを歌いまくろーっと両親が居ない間にパソコンを使って手始めに「千本桜(作詞・作曲:黒うさP)」と検索した。

 しかしあら不思議、ヒットが0件じゃありませんが!

 思わずひっくり返し返って泣き叫びそうになったけどよくよく考えると「千本桜」がリリースされたのは2011年の9月17日。
 まだ先だから当たり前だ。さぁ気を取り直して「VOCALOID」と検索。よく分からない海外サイトが出てくるだけで、初音ミクの姿はない。


 焦って「初音ミク ネギ」「LEON」「LOLA」と調べたが全くもって出てない。そして時間は過ぎて行き、あっという間に1週間経った。



 そして私が出した結論は………ここはボカロが存在しない世界線だということ。



 その事実に軽く絶望したが、私は初音ミクのスペックを持っているんだ!ボカロを広めてやろ!っと音楽ソフトを開いてみたが一ミリも分からず座礁。
 早すぎる挫折だったけど、歌やイラストを描くことなんかは得意だったのでそれを極めることにした。


 いつか誰かが素敵なボカロを作ってくれるマスターが現れて私がそれ歌うことを夢にみながら、親指導の元ボイトレや勉強に励んだ。


 お陰で幼稚園のお歌の時間は園長先生が職権乱用して私の独唱の時間が設けられ、保育士さんと幼児達の耳を存分に肥やす時間となった。
 フアハハハ、将来私と他の人の歌を聴き比べたときに「未玖ちゃんの方が良かったなぁ…」って思うようになりたまえ!!


 そんな感じで数年後には幼稚園を卒業。

 まぁ人生2週目だし、歌の時間以外は他の子と関わらずに家から持ってきた本ばっかり読んでいたので卒園に関して特に感慨深い思いはない。

 唯一心残りといえば、縦に並んだホクロと癖のある黒髪がチャーポイントのキオくんだ。

 顔面が初音ミクである私の隣に立っても一ミリも霞まない容姿を持つキヨくんはその可愛さから幼稚園のお散歩の時に高確率で不審者に話しかけられた。
 見かね私が「きゃー助けて!!このオジサン靴にファンタ入れて飲ませてって結構ハードめな要求してくるぅー!!」と、有る事無い事言って追い払っていた。


 それに恩を感じたのかキオくんはいつも私と一緒に行動して、世話を焼こうとした。





「みくちゃん、おてて洗わないとばっちいよ」

「みくちゃん、おねねんねのじかんだよ。いっしょにねよ」

「みくちゃん、おうたうたって」

「みくちゃん、おれのしゅっしゅあげる」





 みくちゃん、みくちゃんっとひよこのようについて回って私の世話を焼こうとする(実際私がやいている)弟分が可愛くないわけもなく、キヨくんと離れるのはちょっぴり寂しいし、あの不審者につけまわされていたキヨくんを一人にするなんて気が気じゃない。
 一応、ご両親にも話は伝わっていると思うけど心配だ。


 インスピレーションを求めて関西に行くので、私の進学先である小学生は兵庫だ。

 つまり、キヨくんとは離れ離れ………うーんやっぱり心配、ということでキヨくんには「私が居なくても不審者に捕まっちゃダメだよ」と言って防犯ブザーをプレゼント。
 我が子の成長に涙ぐむ保護者の波を抜けて、一旦帰宅。そして諸々の荷物を持って兵庫行きの新幹線に乗った。




 さらば東京!こんにちは兵庫県!


 あっそういえばキヨくんには兵庫行くって言ってなかった……。
 何で言わなかったのって拗ねるかな?まぁどうせ幼稚園のことなんて直ぐに忘れちゃうんだし、大丈夫でしょ。



 という言葉がキヨくんが初音 未玖ガチ恋同担拒否全方位彼氏面激重感情となって現れるフラグとなるのだが……………これはまた後で話そう。









 春は出会いの季節なんて言われてるけど、別に春じゃなくても出会えるでしょと思っていた。

 だけど、桜舞い散る春真っ盛りに私の人生を大きく変える出会いをする。


 気持ちで恥ずかしい気持ちを、初音ミクっぽい格好をしたいという願望で押し込め、長い髪の毛をツインテールに結んで望んだ入学式。

 さぁ初音ミクの顔面に見惚れたまえ!と教室に入り、自分の名前が書かれた席に座った。そして、お隣さんがガン見してくるので何かと思ってそちらへ視線を向けて、私はしばし固まった。


 確証なんてない。だと、こいつも転生者だとなぜか理解した。




「他のガキに違って落ち着いてるねー。ねぇ、名前聞いてもいい?僕は桝田 希空ね」
「そういう君も周りと比べて落ち着いてるね。私は初音 未玖」
「Sin、cos?」
「tanθ。次は私ね、9の8乗は?」
「43046721」
「夏に去りし?」
「君を想フ……。今度は僕ね、[明朝体]“大胆不適に”[/明朝体]?」
「[明朝体]“ハイカラ革命、磊々落々 反戦国家”[/明朝体]」
「……もしかしなくても未玖ちゃんって転生者な感じ?」
「ザッツライト。もしかしなくても私は転生者だよ」
「あのさぁ、未玖ちゃんって歌うの好き?」
「大好き。希空は曲とか作るの好き?」
「大好き」

「「これからよろしくな、相棒!!!」」




 というスピード展開で私達はユニットを組むこととなった。

 前世で培ったプレゼン能力でお互いの親にこれからの展望を説明、許可をもらい、両親指導の元私達はボカロを復活させる事を決意した。

 いま思えば二人とも冷静じゃなかった。でも大好きなボカロがこの世に存在しないなんて許せなかった。
 だから死ぬ気でやったのだ。希空が作詞・作曲、私が勿論歌。

 希空が再現したボカロの難解すぎる初音ミクの歌声に発狂しそうになったたが、頭を叩かれて現世に戻ったし、ボカロP様の複雑すぎる旋律に宇宙を垣間見た希空が死にかけたけど水をぶっ掛けて蘇生させた。

 そうしてそれぞれの担当分野に頭を悩ませつつもお互い支え合いながら歩き続けること約2年。ついにネットの海に成果を放出する時が来た。




「やっとここまで来たね」
「でも、スタート地点に立っただけだから、達成感に浸ってる暇ないよ。次の曲も制作しなきゃだし」
「そうだね。次の曲は確か………「初音ミクの消失(作詞・作曲みきとP)」だっけ?言っとくけどあれ人間の歌じゃないよ」
「そうだねぇ……だけど、歌のは私じゃなくてお前だからな!頑張れ!」
「くっそ他人事だと思いやがって!!」
「アッハハハハハハハ!!」




 パソコンの前でやり取りしながら、マウスを動かしてカーソルを合わせる。




「じゃあ………投稿するぞ!」
「おっす!」




 カチッとエンターキーを押す音がして表示される「投稿されました」という表示。
 その日、私達の愛おしい2つのボカロ曲は世界へと羽ばたいた。
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2024/12/03 14:36

白鯨@更新低速
ID:≫ 4yOs/kl2X2mU.
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