〜前回までのあらすじ〜
祠にお参りに行ったら双子であの世に片足突っ込む(物理)をしかけたが、全力疾走しておばあちゃんちに帰った。
ちなみにかけっこは私の勝利であった。
と、いうどうでもいい情報を伝えて現実逃避。あー、おそらがきれいだなぁ。
「刹那ー!おいなりさんなーい!!」
「おじさん達が食べちゃったんだって」
「えー!!!ずるぅーい、久遠も食べたかったぁ!!」
「私もだよ」
駄々捏ねしている久遠に残念そうにするふりをして、これからどうしようかと考える。
多分、あの狐には私が見えることがバレている。
逃げ方があからさま過ぎたし、顔にも出ていたとい自覚はあるのでバレても仕方ないっちゃ仕方ないけどめんどくさいことにはなるよなー。
私も片足だけとはいえ久遠を引っ張る為に川に片足突っ込んだし………。
・見える。
・知識もちょっとはある様子。
・7歳満たない双子の子供。
怪異や神に興味を持たれるのは無理のないトリプルコンボ。はい、終わったー絶対めんどくさいことになるぅー。
追ってくるのはよくあることだけど、攫われたら二度と戻って来れなくなる可能性があるので追ってきても「アレは偶々」と思わせるか、本職の人を呼んでもらって祓うか私達をどこかに隠してもらうかだな。
いやなーこれ家族を巻き込むことになるし、言っても信じて貰えないか分からないんだよなー。
一番信じてもらえそうなのはおばあちゃんだ。田舎ってこともあって信心深いし、祠の側には川がないはずなのに川があったって言ったら察してワンチャン本職の方に取り合って貰えるかも。
そうと決まればおばあちゃんにそれとなく話を振ってみよう。
……と、思っていたんだけどめちゃくちゃ眠くなってきた。
やばい。私って瞬発力はあるけど体力はないの典型例だし、6歳児の体には睡魔に抗う能力なんてないっ!!
おばあちゃんにそれとなく話を振らなきゃいけないのに、このままじゃ寝てしまう……ああ、どうしよう。めっちゃ眠い。
私がダメなら久遠に「おばあちゃんに狐さんと川のお話てあげよー」って後は頼むしかないか。
「くぉん……」
眠気で回らない呂律で名前を呼べばいなり寿司についてブツブツ言っていた久遠が勢いよく振り向いた。
よしよし、いい子だって、お前!!どこ行く!?ああ、ちょっと!!押入れからブランケットを取り出すな!?私に被せるな、寝ちゃうだろう!!いい子に育ってくれたのは嬉しいけど、今はそういうのじゃないからぁぁあああ!!!
結局私は久遠の優しさと睡魔には抗えず寝てしまったらしい。
網戸の向こうの空は真っ赤に染まっているし、蝉ももう鳴き止んでいた。
すぐにおばあちゃんに話すつもりだったのに時間を消費してしまった。夕食の時にそれとなく話そうかなーっと、上半身を起こしてブランケットを畳んで押入れに直す。
物を無くさないコツは使ったものは直ぐに戻すだよ〜。いや、この情報誰得?
「おーい」
久遠の声が垣根の外から聞こえた。
この部屋はリビングからちょっと離れていて、久遠と私でお盆の間寝泊まりする部屋だ。4畳半だけど、縁側につながる吐き出し窓がある。だけど、庭と道路を仕切る垣根が大き過ぎて外は見えにくい。
垣根の外、ということは態々玄関か裏口から回って、私に声を掛けにきたのか。……暇かよ。
いや久遠のことだから垣根を抜け出せる穴でも見つけたんだろう。でもそれ探すのに直缶かかるよね……やっぱり暇じゃん。
でもまぁ暇になれるのも子供のうちだけだろうねーとか考えて、久遠に近づくため庭に出て垣根の側まで近寄った。
「ねーねー!!これ見て!!すっごいデッカい蝉の抜け殻見つけたんだよ!!」
「へーどれくらいなの?見ーせて」
今は蝉だけど、小学生になったらカブトムシとかクワガタになるんだろうーなんて思いながらしゃがみ込んで、枝の隙間から外を覗いた。
ブラウンの瞳と視線が混じり合う。
瞬間、コイツは久遠じゃないと分かった。
久遠は私と同じくお母さん譲りのアンバーだし、垂れ目じゃない。じゃあ、久遠の声をしていたコイツは一体ダレ?
んなもん答えはわかりきっている、怪異だ。
そして今私は怪異に対して最大のタブーを犯した。
「おっ、ちゃんと反応したやん」
そう、“反応”してしまったのだ。
まずいまずいまずいまずい、マズイ、マズイ!!!
怪異に反応するということは、見えるということがバレる。というか今絶対、バレた。
怪異に見えるということが悟られたら他の怪異まで寄ってきて何されるか分かったもんじゃないと2話で言った気がするけど、もう一回言う。
何するか分かったもんじゃない。
生まれたてほやほやの赤ん坊のときはほっぺつっつかれるぐらいで済んだけど、いまコイツは久遠の真似をして私を誘き出した。
つまり、人に擬態するのがうまくて知性もある。関わったらヤバいタイプの怪異の典型例……こういうのに見えるバレたらろくなことにならないって、一見ヤンキーにしか見えない(※実際ヤンキー)の繋ちゃんが言っていた。
やっばーい。今世史上の大ピンチかもしれない。
さて、ここで私の選択肢は2つ。
何も見なかったふりして帰るか、怪異と話してみるか。
まぁ何も見なかった一択なんだけど何気に意思疎通が出来る怪異って初めて見たから、私はともかく久遠だけは攫わないでくださいっ!!!って正直に言うのも出来るかもしれない。
かもなんだけどねっ!!
「こんにちは、さっきはお参り来てくれてありがとうなー」
「………」
「この家不思議やなぁ、西洋式の結界貼られてて怪異が全然入られへんねんけど」
「………」
無視しろ。
何も見なかったふりして部屋に戻ろう。おばあちゃんの家には何故か怪異は入れないから、戻ったら大丈夫だ。
「入れはせんけど、祟ることはできるで」
「……っ!」
枝の間から除く垂れ目がきゅっと、楽しそうに細まった。
「なぁ、お話しよや」
繋くんが知性のある怪異は関わったらヤバいと言っていた理由が、なんとなく分かる気がする。
「………は、い」
あゝごめんねお母さん、お父さん、久遠。
めちゃくちゃめんどくさい事に巻き込まれて、先立つ親不をお許しください。
「なぁなぁ、栗子ちゃんっていつから俺らのこと見えるようになったん?」
「栗子……?」
「だってほら髪の色が栗っぽいやん」
「なるほど?」
なるほど、さっぱり分からん。
家は入れへんけど中の人祟れんで〜という脅しに屈して、私は今垣根越しに怪異と話している。
うっかり選択肢を間違えたら食われるか、祟られるか。気に入られたら付き纏われるか、連れ去られるか……。地獄の口頭試問辞めよぉ……と言っている暇はない。
えーっと確か、いつから怪異が見えるようになったかだっけ?
「さぁ、気づいた時には見えてました」
「ほーん。じゃあ誰かに怪異について教えてもらったりしたんか?俺らの対処法やけに知っとるみたいやん」
「対処法って程でもないですけど、見える人知り合いから怪異は基本は無視するのと。境界線は渡ったらダメだと教えてもらいました」
「だから川渡らんかったんやな。賢い賢い」
全然褒めてなさそうなトーンで言われてもな。
もちろん対処法はなんちゃってオタク知識と実体験、あとは近所の見える仲間繋くんに教えて貰った。
繋くんとは、近所の商店の跡取り息子である烏養繋心のことだ。見た目はヤンキーだが、なんだかんだで面倒見がいいし優しい。漫画でよく見る雨の日に「お前もひとりなのか…」って言って捨て猫拾うタイプだ。
まぁご両親とも健在でよく久遠と御つかいに言ってるんですけど。
「というか、あなたあの時のきつねさんだったんですね」
「そうそう。あの時、川の向こうに居たかっこいい狐さんやで。あのお稲荷さんうまかったわ、またちょうだいな」
二度と行きたくないですが???と言ったら怒られそうなので言わなかった。
ではでは、そろそろ夕ご飯の匂いがしてきたので切り上げるとするか。
「それじゃあ、私はご飯食べに行きますね。祠までは御気をつけて」
「ほな、“また”な栗子ちゃん」
ぺこりと頭を下げて網戸を閉めた。
そしたら一気にドクッドクッと、心臓が耳元に移動したんじゃないかというぐらい煩くなって、怖かった。
すぅーっと背筋に凍ったように冷たい汗が伝う。
あー!!怖かった……!!
すぐにおばあちゃんに言って本職の人を呼ばせてもらおう、早くあの怪異から離れたい。
祀られていたということはそれなりに力があるのは間違いないから、今の会話で気に入られたら終わり、嫌われても終わるクソゲー。急がないと、急いで離れないと。
部屋の障子を開けた。
それからの記憶はない。
祠にお参りに行ったら双子であの世に片足突っ込む(物理)をしかけたが、全力疾走しておばあちゃんちに帰った。
ちなみにかけっこは私の勝利であった。
と、いうどうでもいい情報を伝えて現実逃避。あー、おそらがきれいだなぁ。
「刹那ー!おいなりさんなーい!!」
「おじさん達が食べちゃったんだって」
「えー!!!ずるぅーい、久遠も食べたかったぁ!!」
「私もだよ」
駄々捏ねしている久遠に残念そうにするふりをして、これからどうしようかと考える。
多分、あの狐には私が見えることがバレている。
逃げ方があからさま過ぎたし、顔にも出ていたとい自覚はあるのでバレても仕方ないっちゃ仕方ないけどめんどくさいことにはなるよなー。
私も片足だけとはいえ久遠を引っ張る為に川に片足突っ込んだし………。
・見える。
・知識もちょっとはある様子。
・7歳満たない双子の子供。
怪異や神に興味を持たれるのは無理のないトリプルコンボ。はい、終わったー絶対めんどくさいことになるぅー。
追ってくるのはよくあることだけど、攫われたら二度と戻って来れなくなる可能性があるので追ってきても「アレは偶々」と思わせるか、本職の人を呼んでもらって祓うか私達をどこかに隠してもらうかだな。
いやなーこれ家族を巻き込むことになるし、言っても信じて貰えないか分からないんだよなー。
一番信じてもらえそうなのはおばあちゃんだ。田舎ってこともあって信心深いし、祠の側には川がないはずなのに川があったって言ったら察してワンチャン本職の方に取り合って貰えるかも。
そうと決まればおばあちゃんにそれとなく話を振ってみよう。
……と、思っていたんだけどめちゃくちゃ眠くなってきた。
やばい。私って瞬発力はあるけど体力はないの典型例だし、6歳児の体には睡魔に抗う能力なんてないっ!!
おばあちゃんにそれとなく話を振らなきゃいけないのに、このままじゃ寝てしまう……ああ、どうしよう。めっちゃ眠い。
私がダメなら久遠に「おばあちゃんに狐さんと川のお話てあげよー」って後は頼むしかないか。
「くぉん……」
眠気で回らない呂律で名前を呼べばいなり寿司についてブツブツ言っていた久遠が勢いよく振り向いた。
よしよし、いい子だって、お前!!どこ行く!?ああ、ちょっと!!押入れからブランケットを取り出すな!?私に被せるな、寝ちゃうだろう!!いい子に育ってくれたのは嬉しいけど、今はそういうのじゃないからぁぁあああ!!!
結局私は久遠の優しさと睡魔には抗えず寝てしまったらしい。
網戸の向こうの空は真っ赤に染まっているし、蝉ももう鳴き止んでいた。
すぐにおばあちゃんに話すつもりだったのに時間を消費してしまった。夕食の時にそれとなく話そうかなーっと、上半身を起こしてブランケットを畳んで押入れに直す。
物を無くさないコツは使ったものは直ぐに戻すだよ〜。いや、この情報誰得?
「おーい」
久遠の声が垣根の外から聞こえた。
この部屋はリビングからちょっと離れていて、久遠と私でお盆の間寝泊まりする部屋だ。4畳半だけど、縁側につながる吐き出し窓がある。だけど、庭と道路を仕切る垣根が大き過ぎて外は見えにくい。
垣根の外、ということは態々玄関か裏口から回って、私に声を掛けにきたのか。……暇かよ。
いや久遠のことだから垣根を抜け出せる穴でも見つけたんだろう。でもそれ探すのに直缶かかるよね……やっぱり暇じゃん。
でもまぁ暇になれるのも子供のうちだけだろうねーとか考えて、久遠に近づくため庭に出て垣根の側まで近寄った。
「ねーねー!!これ見て!!すっごいデッカい蝉の抜け殻見つけたんだよ!!」
「へーどれくらいなの?見ーせて」
今は蝉だけど、小学生になったらカブトムシとかクワガタになるんだろうーなんて思いながらしゃがみ込んで、枝の隙間から外を覗いた。
ブラウンの瞳と視線が混じり合う。
瞬間、コイツは久遠じゃないと分かった。
久遠は私と同じくお母さん譲りのアンバーだし、垂れ目じゃない。じゃあ、久遠の声をしていたコイツは一体ダレ?
んなもん答えはわかりきっている、怪異だ。
そして今私は怪異に対して最大のタブーを犯した。
「おっ、ちゃんと反応したやん」
そう、“反応”してしまったのだ。
まずいまずいまずいまずい、マズイ、マズイ!!!
怪異に反応するということは、見えるということがバレる。というか今絶対、バレた。
怪異に見えるということが悟られたら他の怪異まで寄ってきて何されるか分かったもんじゃないと2話で言った気がするけど、もう一回言う。
何するか分かったもんじゃない。
生まれたてほやほやの赤ん坊のときはほっぺつっつかれるぐらいで済んだけど、いまコイツは久遠の真似をして私を誘き出した。
つまり、人に擬態するのがうまくて知性もある。関わったらヤバいタイプの怪異の典型例……こういうのに見えるバレたらろくなことにならないって、一見ヤンキーにしか見えない(※実際ヤンキー)の繋ちゃんが言っていた。
やっばーい。今世史上の大ピンチかもしれない。
さて、ここで私の選択肢は2つ。
何も見なかったふりして帰るか、怪異と話してみるか。
まぁ何も見なかった一択なんだけど何気に意思疎通が出来る怪異って初めて見たから、私はともかく久遠だけは攫わないでくださいっ!!!って正直に言うのも出来るかもしれない。
かもなんだけどねっ!!
「こんにちは、さっきはお参り来てくれてありがとうなー」
「………」
「この家不思議やなぁ、西洋式の結界貼られてて怪異が全然入られへんねんけど」
「………」
無視しろ。
何も見なかったふりして部屋に戻ろう。おばあちゃんの家には何故か怪異は入れないから、戻ったら大丈夫だ。
「入れはせんけど、祟ることはできるで」
「……っ!」
枝の間から除く垂れ目がきゅっと、楽しそうに細まった。
「なぁ、お話しよや」
繋くんが知性のある怪異は関わったらヤバいと言っていた理由が、なんとなく分かる気がする。
「………は、い」
あゝごめんねお母さん、お父さん、久遠。
めちゃくちゃめんどくさい事に巻き込まれて、先立つ親不をお許しください。
「なぁなぁ、栗子ちゃんっていつから俺らのこと見えるようになったん?」
「栗子……?」
「だってほら髪の色が栗っぽいやん」
「なるほど?」
なるほど、さっぱり分からん。
家は入れへんけど中の人祟れんで〜という脅しに屈して、私は今垣根越しに怪異と話している。
うっかり選択肢を間違えたら食われるか、祟られるか。気に入られたら付き纏われるか、連れ去られるか……。地獄の口頭試問辞めよぉ……と言っている暇はない。
えーっと確か、いつから怪異が見えるようになったかだっけ?
「さぁ、気づいた時には見えてました」
「ほーん。じゃあ誰かに怪異について教えてもらったりしたんか?俺らの対処法やけに知っとるみたいやん」
「対処法って程でもないですけど、見える人知り合いから怪異は基本は無視するのと。境界線は渡ったらダメだと教えてもらいました」
「だから川渡らんかったんやな。賢い賢い」
全然褒めてなさそうなトーンで言われてもな。
もちろん対処法はなんちゃってオタク知識と実体験、あとは近所の見える仲間繋くんに教えて貰った。
繋くんとは、近所の商店の跡取り息子である烏養繋心のことだ。見た目はヤンキーだが、なんだかんだで面倒見がいいし優しい。漫画でよく見る雨の日に「お前もひとりなのか…」って言って捨て猫拾うタイプだ。
まぁご両親とも健在でよく久遠と御つかいに言ってるんですけど。
「というか、あなたあの時のきつねさんだったんですね」
「そうそう。あの時、川の向こうに居たかっこいい狐さんやで。あのお稲荷さんうまかったわ、またちょうだいな」
二度と行きたくないですが???と言ったら怒られそうなので言わなかった。
ではでは、そろそろ夕ご飯の匂いがしてきたので切り上げるとするか。
「それじゃあ、私はご飯食べに行きますね。祠までは御気をつけて」
「ほな、“また”な栗子ちゃん」
ぺこりと頭を下げて網戸を閉めた。
そしたら一気にドクッドクッと、心臓が耳元に移動したんじゃないかというぐらい煩くなって、怖かった。
すぅーっと背筋に凍ったように冷たい汗が伝う。
あー!!怖かった……!!
すぐにおばあちゃんに言って本職の人を呼ばせてもらおう、早くあの怪異から離れたい。
祀られていたということはそれなりに力があるのは間違いないから、今の会話で気に入られたら終わり、嫌われても終わるクソゲー。急がないと、急いで離れないと。
部屋の障子を開けた。
それからの記憶はない。