反対色
「茜ってあほだよな」
「失礼な!これでも私、国語は学年2位だぞ!」
「でも数学は300人中298位なんでしょ?」
「そうそう数学苦手だからね、、、ってなんで知ってるのっ!?」
そんなの、茜自身がテスト返しのときに叫んでたからじゃん。
まあ、わたしはそんな茜のことが、、、
好きだ。
なんて、言わない、言えないけど。
でも、それより先に抱いた感情はきっと憧れだった。
長くてふわっとした髪を揺らしながら茜は楽しそうに笑う。それだけで空気がぱっと明るくなる。
対してわたしは、ボーイッシュに見られるベリーショートの髪。
真逆な彼女のことが好きで憧れで、気づけば彼女だけを見つめてしまう。だけど、胸がギュッと苦しくなるんだ。
「あっ、[漢字]翠[/漢字][ふりがな]みどり[/ふりがな]先輩だ」
「わ、今日もイケメン、、、」
まただ、私からしたら顔も名前も知らない後輩たち。
男らしいとよく言われる私は、自分で言うのもなんだけど女の子たちから人気があるらしい。
「やっぱり翠、人気者だねぇ」
「いやまあ、別に」
「またまた〜照れちゃって」
知らない後輩たちに、同級生にチヤホヤされても嬉しくない。
わたしがチヤホヤされたい相手は、目の前にいる太陽みたいな女の子だけ。
そんなことを考えてぼーっとしていたら、手に持っていた美術の教科書を落としてしまった。
軽やかな動きでそれを拾ってくれる茜。
無造作に落ちた教科書は、色相環が描かれたページが開いていた。
「ねぇ、知ってる翠?赤と緑って、補色なんだよ!」
「ほしょく、、、?食べるの?」
「そんなわけないでしょ〜。反対の色ってこと!」
そういえば、中学のとき美術部だった茜は当時、赤と緑を使った風景画を描いていた。
鮮やかなハイビスカスと夕焼けと、それから何故か翡翠色の向日葵。
どうして向日葵が緑なのかは、聞いても教えてくれなかった。
たしかあの時、茜は笑って言っていたな。
『ヒントはね、君の名前と、向日葵の花言葉』
それにしても。
「どうして急に?」
「だから〜、私たちだって赤と緑じゃん!」
「あ、たしかに」
やっぱり、わたしたちは真逆。
誰からも好かれてみんなを明るい気分にさせる茜。彼女のことが好きだけど、それ以上にわたしは、彼女みたいになりたい。茜と一緒にいると自分がちっぽけなことを思い知らされるんだ。
視線を下に落とすと、埃っぽい美術室の床だけが目にうつる。
「翠?大丈夫?」
「あ、あぁうん。大丈夫」
茜はいつでも向日葵みたいに上を向いてる。下を向いてばっかのわたしとは違う。
本当は臆病でうじうじしてて、そんな自分から目を逸らすために部活に打ち込んでいたらいつの間にかチヤホヤされていたわたしとは。
そこまで考えて、ふともしかしたらと思う。
「あのさ茜、中学のとき茜言ってたよね。向日葵を緑色にした理由のヒント」
「言ってたねぇ、そんなこと。それで、答えは見つかったのかな?」
「もしかして。向日葵の花言葉がわたしに伝えたい言葉、だったりする?」
今わたしが茜に想いを伝えるなら、そしてわたしが絵が好きだったら。きっとわたしはそうする。
「どどど、どうしてそう思うのかなっ!?っていうか、向日葵の花言葉知ってるの、、?!」
「え、いや花言葉は知らないけど」
どうしてそんなに動揺するんだ、、、?
「そっそう!あ、じゃあもうすぐチャイムなるから座らなきゃ〜!!」
ここまでわざとらしい棒読みのセリフは初めてだ。それに、チャイムが鳴るまでまだ5分はあるし。
どうやら図星、らしい。
「向日葵、、、花言葉?」
聞いたことがある気がする。でも思い出せない。
茜はあからさまに目を逸らした。
、、、そこまで隠されると、気になる。
ポケットからスマホを取り出す。
スマホに表示されたそれに、スマホを打つ指が止まった。
向日葵の花言葉は。
『憧れ。貴方だけを見つめる』
茜がわたしのことを?
下を向いて俯いてばかりのわたしのことを、そんなふうに思ってくれてたの?
ぱっと弾かれるように顔を上げると、茜と目があった。
見つめると、彼女は珍しく俯いた。ロングヘアから覗く耳が赤くなっていた。
思わず笑みがこぼれる。
昔、美術の先生が言っていた言葉がよみがえる。
補色は、真逆だからこそお互いを引き立てる。隣り合うだけでお互いが輝けるんだって。
[漢字]彼女[/漢字][ふりがな]あこがれのひと[/ふりがな]に[漢字]そう[/漢字][ふりがな]憧れだって[/ふりがな]言われちゃ、俯いてなんていられないな。
わたしは、太陽を追って上を向く向日葵を真似て、天を仰いで上を向いた。これから先、また下を向くような日があっても。
向日葵は太陽を追う。
そして私は、その太陽みたいな笑顔を追って、また上を向ける。
「失礼な!これでも私、国語は学年2位だぞ!」
「でも数学は300人中298位なんでしょ?」
「そうそう数学苦手だからね、、、ってなんで知ってるのっ!?」
そんなの、茜自身がテスト返しのときに叫んでたからじゃん。
まあ、わたしはそんな茜のことが、、、
好きだ。
なんて、言わない、言えないけど。
でも、それより先に抱いた感情はきっと憧れだった。
長くてふわっとした髪を揺らしながら茜は楽しそうに笑う。それだけで空気がぱっと明るくなる。
対してわたしは、ボーイッシュに見られるベリーショートの髪。
真逆な彼女のことが好きで憧れで、気づけば彼女だけを見つめてしまう。だけど、胸がギュッと苦しくなるんだ。
「あっ、[漢字]翠[/漢字][ふりがな]みどり[/ふりがな]先輩だ」
「わ、今日もイケメン、、、」
まただ、私からしたら顔も名前も知らない後輩たち。
男らしいとよく言われる私は、自分で言うのもなんだけど女の子たちから人気があるらしい。
「やっぱり翠、人気者だねぇ」
「いやまあ、別に」
「またまた〜照れちゃって」
知らない後輩たちに、同級生にチヤホヤされても嬉しくない。
わたしがチヤホヤされたい相手は、目の前にいる太陽みたいな女の子だけ。
そんなことを考えてぼーっとしていたら、手に持っていた美術の教科書を落としてしまった。
軽やかな動きでそれを拾ってくれる茜。
無造作に落ちた教科書は、色相環が描かれたページが開いていた。
「ねぇ、知ってる翠?赤と緑って、補色なんだよ!」
「ほしょく、、、?食べるの?」
「そんなわけないでしょ〜。反対の色ってこと!」
そういえば、中学のとき美術部だった茜は当時、赤と緑を使った風景画を描いていた。
鮮やかなハイビスカスと夕焼けと、それから何故か翡翠色の向日葵。
どうして向日葵が緑なのかは、聞いても教えてくれなかった。
たしかあの時、茜は笑って言っていたな。
『ヒントはね、君の名前と、向日葵の花言葉』
それにしても。
「どうして急に?」
「だから〜、私たちだって赤と緑じゃん!」
「あ、たしかに」
やっぱり、わたしたちは真逆。
誰からも好かれてみんなを明るい気分にさせる茜。彼女のことが好きだけど、それ以上にわたしは、彼女みたいになりたい。茜と一緒にいると自分がちっぽけなことを思い知らされるんだ。
視線を下に落とすと、埃っぽい美術室の床だけが目にうつる。
「翠?大丈夫?」
「あ、あぁうん。大丈夫」
茜はいつでも向日葵みたいに上を向いてる。下を向いてばっかのわたしとは違う。
本当は臆病でうじうじしてて、そんな自分から目を逸らすために部活に打ち込んでいたらいつの間にかチヤホヤされていたわたしとは。
そこまで考えて、ふともしかしたらと思う。
「あのさ茜、中学のとき茜言ってたよね。向日葵を緑色にした理由のヒント」
「言ってたねぇ、そんなこと。それで、答えは見つかったのかな?」
「もしかして。向日葵の花言葉がわたしに伝えたい言葉、だったりする?」
今わたしが茜に想いを伝えるなら、そしてわたしが絵が好きだったら。きっとわたしはそうする。
「どどど、どうしてそう思うのかなっ!?っていうか、向日葵の花言葉知ってるの、、?!」
「え、いや花言葉は知らないけど」
どうしてそんなに動揺するんだ、、、?
「そっそう!あ、じゃあもうすぐチャイムなるから座らなきゃ〜!!」
ここまでわざとらしい棒読みのセリフは初めてだ。それに、チャイムが鳴るまでまだ5分はあるし。
どうやら図星、らしい。
「向日葵、、、花言葉?」
聞いたことがある気がする。でも思い出せない。
茜はあからさまに目を逸らした。
、、、そこまで隠されると、気になる。
ポケットからスマホを取り出す。
スマホに表示されたそれに、スマホを打つ指が止まった。
向日葵の花言葉は。
『憧れ。貴方だけを見つめる』
茜がわたしのことを?
下を向いて俯いてばかりのわたしのことを、そんなふうに思ってくれてたの?
ぱっと弾かれるように顔を上げると、茜と目があった。
見つめると、彼女は珍しく俯いた。ロングヘアから覗く耳が赤くなっていた。
思わず笑みがこぼれる。
昔、美術の先生が言っていた言葉がよみがえる。
補色は、真逆だからこそお互いを引き立てる。隣り合うだけでお互いが輝けるんだって。
[漢字]彼女[/漢字][ふりがな]あこがれのひと[/ふりがな]に[漢字]そう[/漢字][ふりがな]憧れだって[/ふりがな]言われちゃ、俯いてなんていられないな。
わたしは、太陽を追って上を向く向日葵を真似て、天を仰いで上を向いた。これから先、また下を向くような日があっても。
向日葵は太陽を追う。
そして私は、その太陽みたいな笑顔を追って、また上を向ける。
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