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全てを無効化できる最強スキル「リジェクト」を手に異世界転生を果たした俺は、ツンデレ魔女奴隷契約を結んで甘々生活を送りたいと思います。〜いちゃラブコメと魔王討伐、どっちもやるってマジですか?〜

#4

第三話 : 救出直後に指名手配、転生早々人生終了。

「……キ……アキ……」

 なんだろう、どこか遠くの方から、呼ばれているような気がする。
 誰か分からないその声の主は、みるみるうちに俺の側へと近づいてくる。
 声が大きくなっていく。一体誰だ、この声は?

「アキ……お願い、目を覚まして……」

 そうだ、確か俺、剣で腹を刺されて……。
 その瞬間、俺はこの声の主が誰なのか、気づいた。

 ……リゼ?

「アキッ!!」

 花火の爆発音のように大きく響いた、リゼの声と共に俺は目を覚ました。
 目の前には、泣きながらこちらを見つめるリゼ。俺は、生き返ったのか? そうだ、腹は……

 俺は咄嗟に、自分の腹部、傷を負ったであろう場所に手をかざす。だが……

「あれっ? 傷が……」

 腹の傷は何故か、塞がっていた。しかも、跡形も無く。
 驚きと混乱を隠せないままに俺は、再びリゼの顔を見上げた。

「治して……くれたのか……?」
「バカ。大変だったんだからね……!」

 そう言ったリゼは、何かが切れたかのように突然、俺の胸に飛び込んで泣きじゃくり始めた。

「よがっだ……よがっだよおおぉぉぉ……」

 俺は、何も言わずに彼女の頭と腰を抱き寄せる。
 何はともあれ、俺も、こいつも助かったんだ。
 それ以上に、嬉しい事なんてないさ。

 ……数十分、そうしていただろうか。
 ようやく泣き止んだ彼女は、瞼を真っ赤に腫らした可愛らしい顔で、俺が刺された後、何が起こったのかを説明してくれた。

 俺が刺されて倒れ込んだ直後。咄嗟に撃った攻撃魔法、“ヘルファイア”で、兵士の一人を殺害した後、自力で俺を引き摺りながら、井戸に落下。
 井戸の底には、水中で繋がっている隠し通路があったらしく、俺を連れてなんとかそこを突破。そのまま地下道に出て、俺を治療して今に至る、という感じだそうだ。

 まあ、簡単に言えば、“リゼは俺の命の恩人”ということだな。
 俺は、彼女にできる限りの感謝を伝えてから、本題に移った。

「で……これから、どうする?」

 そう、ここから先、どうする問題である。
 地上がどうなっているのかは知らないが、確実に、この地に身を置いている限りは命を狙われ続けることになるだろう。

「取り敢えず、城下町に出て色々な物資を調達しないと。アキは、お金とか持ってるの?」
「……一文なしです」
「……」

 地下に沈黙走る。そう言えば、俺は金になるようなものを持っているのだろうか。
 そう思いながら、俺はポケットの中を素手で漁りながら辺りを見渡す。

「……あっ」
「……どうしたの?」
「それ、金になるんじゃないか?」

 そう言いながら俺が指さしたのは、先ほどまで俺の腹に刺さっていた一本の剣。
 ぱっと見だが傷も少なく、俺の血痕さえ拭えば多少の金にはなるのではないだろうか。

 そうと決まれば、やることは一つだ。

「地上に出るぞ」

 俺は、そばで丁寧に折りたたまれていた、血の染み込んだ上着を広げて剣の全体を覆うように包み、左手でそれを持つ。
 
「取り敢えず、この剣を売り払って、その金で食い扶持を立てていくしかない。ほら、行くぞ」

 俺はそう言いながら、リゼに右手を差し出した。

「わ、わかった……」

 リゼは、顔を真っ赤に染めながら、俺の手の平にそっと左手を添える。
 ……やっぱり、可愛いんだよなぁ。

 俺はそう、心の中で思いながら、彼女の手を優しく包み込み、地下道の先にある出口に向かって歩いていった。

 * * *

「緊急〜緊急〜、今日未明、貴族会館で行われていた人身オークション会場にて、一人の大男が乱入〜。会館の約一割を修復不可能なまでに破壊した後、目玉商品であった少女を抱きかかえて逃走〜。貴族に対して謀反を起こしたとして、懸賞金一億ディルで指名手配とする〜。また、拘束時の武力行使を容認し、抵抗が見られた場合、罪人の生き死には問わないものとする〜」

 俺たちが出た場所は、城下町と思わしき場所の路地裏。どうやら、マンホールのような金属の丸板で穴が塞がれていたらしい。この世界にマンホールという概念があること自体衝撃だが、今はそれどころではない。

 路地裏の先、陽の光が当たっている人通りの多い道で、記者らしき人物が、精密に描かれた俺そっくりの似顔絵入りの指名手配書を、覇気も抑揚もない声で決められた台詞を口にしながら町中の建物の壁に張り出していたのだ。まさか、ここまで対応が早いとは思いもしなかった。

 しかし、普通ならば、見知らぬ謀反者の事など誰も気にせず、その人相絵すら確認することなくその場を通り過ぎ去る事だろう。だが、今回は違った。

「……1億ディル?」「……おい、今の記者、一億ディルって言わなかったか?」「おいおい嘘だろ、一億って……一生遊び暮らせるような額じゃねえか」

 ……そう、何故か懸賞金が一億ディル——。その価値は詳しく分からないが、民衆の反応的に、恐ろしいほどの高額なのだろう。まずい、これは、とてもまずい。

「なあ……俺、大丈夫かな?」
「……多分、大丈夫じゃないかも」

 俺の横でそう話すリゼを、先ほどの“貴族会館”と言う場所から連れ出してから数時間。
 追っ手に殺されかけたと思えば、今度は指名手配犯になるとはな。
 こんな経験、滅多に味わうことなんてないだろう。まあ、味わわないほうがいいような気がするが。

「なあ、こっからどうしようか、リゼ……さん?」
「呼び捨てで構わないわよ」
「分かった……リゼ」

 何故かリゼ呼びが許可されたこと。そして、さっきから俺のことを“アキ”と呼び捨てにしていることに、ちょっと距離が縮まったような感じがして、内心ガッツポーズを俺はしながら、その気持ちを隠さねばと、必死に落ち着いたそぶりを見せながら話を続ける。

「取り敢えず、俺とリゼの服を取り替えないと。このままじゃ、どこに行っても目立ってしまうからな」
「ええ、そうね……」
「服が欲しいなら、あの店がおすすめですよ?」
「ああそうだな……」

 …………あれ、今、俺以外の男の声が……。
 数秒のフリーズ。その後、ほぼ同時のタイミングで、俺とリゼは勢いよく後ろを振り向いた。

「だ、誰だっ、あんた!」

 何とか震え声で俺はそう叫ぶ。そこにいたのは灰色のローブに身を纏った、謎の男。
 艶やかな長い黒髪とは反対に、異常なほど白いおしろいで顔から首元にかけてを覆っており、手には、布製と思わしき黒い手袋を着けている。また、細く長い一重瞼の先に見える赤く輝いた瞳孔が、その不気味さを一層加速させていた。
 俺は慌ててリゼの姿を背中に隠し、必死に苦笑いを浮かべながら会話をスタートさせる。

「すっ、すいません……あなたは、どちらさまでしょうか?」
「どちら様も何も……たまたま通りかかった、ただの一般市民ですよ……?」

 ああ、その一言が欲しかったんだ。言った張本人は、なかなかに一般市民とは思えない見た目だけどな。安堵と共に俺は、人生で一番とも言えるほど大きなため息をその場で吐く。
 こちらのことを知らないと分かれば一安心だ。俺は気を取り直して、今度は満面の笑顔で再び彼に話しかけた。

「ありがとうございます! ところで、その服屋というのは……」
「ああ、そこですよ、そこ。」

 そう言いながら彼が指さしたのは、先ほどの無気力記者が、俺の指名手配書を貼った建物であった。
 ああ、すまないが、あそこには行けないんだ。理由は、言えないけれども。

「あ、あはは……、他の店は、ご存知ないですかね?」
「他の店? いや、あそこが一番近くて……」
「いや、そうじゃなくて……」

 なんて説明すればいいのだろうか。“自分の指名手配書が貼ってあるので”なんて、言えるわけがない。

「……あ、なるほど! 後ろに隠れている貴方の娘さんの服が欲しいと、そういうことですね?」

 おお! 丁度、都合のいい解釈を勝手にしてくれたようだ。おそらくあそこは、見た目からして高級店。確実に、女児服など売っていないだろう。以前として俺の背中に隠れているリゼは、見た目からして女児というよりは女子中高生のような見た目をしているが、身長はおそらく低い方なので、何とかなるはずだ。

「ええ、そういうことです! だから女児服の売っている店を——」
「実はあそこ、子供向け衣類も取り扱っている人気店舗なんです。さあさあ行きましょう! 何やら混み合っていそうですが、店の中は広く、快適なので恐らく問題はないでしょう」

 ……あ、終わった。

「ちょっ、待——」

 俺がそう止める前に、彼はずんずんと店の前まで歩みを進めて行ってしまった。何とか、彼が指名手配書を見らずに進んでくれないだろうか。

 ぱん、ぱん!

 そう思っていると突然、彼が人だかりの前で二回、手を叩いた。

「ほら皆さん、何をしているのですか、お客さんの邪魔になるでしょう?」
「あ、ヴァレーさん。しっかしそんなこと言ったってほら、見てくださいよこれ……」

 そうか、彼の名はヴァレーと言うのか。いや待て、待ってくれ。

「ん? この美男子、さっき路地裏で……ほら、あの人!」

 彼はそう呟きながら、こちらに首を向け、指を刺した。

「……おい、リゼ」
「……うん、分かってる」
「逃げるぞ」

 俺はリゼをひょいとおぶり、全力で路地裏を駆け回る。バレた、バレた。

「くっそ……あのヴァレーとかいう男、いい奴っぽかったのに……」

 というか、いい奴だったのだろう、多分。そんな事を思いながら、走る、走る、そして、走る。

「おい、どこ行った!」「まだ近くにいるはずだ、探せ!」

 おいおい、数十分は走り続けているんだぞ? それなのに未だ、男達の声はそこらじゅうから響き続けていた。
 やはり、金というのは人を狂わせてしまうのだな。ああ、恐ろしい。
 正直、俺はもう走れないほど体力の限界を迎えていた。やむを得ない、一旦息を整えようか——、そんな時であった。

「あっ、いたぞ!」

 突然、そんな声が背後から聞こえる。そこにいたのは、指の一本や二本詰めていそうなほど柄の悪い巨漢の男。
 俺は、ナイフを持って追いかけてくるそいつから逃げるため、再び走り出す。だが——

「おい、挟み撃ちにしろ!」

 巨漢男がそう叫ぶ。次の瞬間、逃げていた方向にも、同じく強面の男が現れた。しかも、クロスボウのようなものを抱えている。
 このまま逃げれば死。引き返しても死。

「アキ、跳んでっ!」

 そんな時聞こえたのは、俺の背中におぶられていたリゼの声だった。

「はあ? 跳ぶってどういう——」
「いいから、早く!」

 逃げ道がないから、上に跳ぼうって魂胆か? やれるかは分からないが、今できることはそれしかない。
 
「一億ッ、覚悟!」

 巨漢男がそう言いながら斬りかかってくる。信じるぞ、リゼ——!
 全力を出して跳ぼうとした、その直前のことであった。

「風よ、巻き起これ。エアライズ!」

 彼女が、俺の背中の上でそう叫ぶ。すると、俺が真上に飛び上がろうとしたその時、真下の地面に緑色の魔法陣が出現し、辺りで風が巻き起こりはじめた。

「嘘……だろ……?」

 次の瞬間俺は、数十メートル近い跳躍をした。衝撃波で、地上にいる男たちが吹き飛ばされ、気絶しているのが見える。俺は軌道を変えつつ、“リジェクト”で落下の衝撃を軽減し、路地裏を作り出していた建物群の一角の屋根への着地に成功した。

「撒いた、か……?」
「そうみたいね……」

 ひとまず、逃げ切った。その安堵によって、一気に全身の筋肉が弛緩する。
 ひとまず休みたいが、兎に角、まずは服だ。俺は、血まみれになった上着を脱いでしまっているため上裸。下にはぶかぶかの道着のようなものを着ており、それにも多少血が染み込んでいるため余計に目立つ。リゼに至っては、粗末な下着とボロ布一枚という有様であった。

「取り敢えず、服を調達しないとな……」
「服なら、用意してありますよ」

 …………は? 何で今、その声が聞こえるんだ?
 冷や汗が止まらない。ぶるぶると震えたまま俺は、恐る恐る後ろを振り返る。

「さっきぶりですね。えっと……“アキくん”と“リゼちゃん”でいいのかな?」

 そこにいたのは、平然と、涼しい顔のままこちらに笑みを見せる男、ヴァレーであった。

2025/08/22 20:30

はま
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