急に「盗賊side」として書かれてますが、あまり今後の物語としては関りはありません。
「やっぱりこいつだったか」
「いやー、三日程度待って来なかったから心配したぜ」
「アニキ、早くやっちまおうぜ」
「そうだそうだ、早く動きたくて仕方がねぇ」
「リセル君、どうしよぉ…」
「危ないので俺の後ろに居てください。」
イリアさんと数時間の旅に出たのだが、なんということに盗賊合計4人に絡まれてしまった。
多分イリアさんが売ろうと考えてる”マナポーション”が目当てだと思うけど、そんなに重要なのか?
イリアさんから聞いた話だと、マナポーションは魔力を回復できるそうだ。
魔力不足だと、もう魔法は使えないし、脳震盪を起こして逃げる隙もない。だからそのためのポーションらしいのだ。
そんなに魔力の消費が激しいのか?ってかこのポーションを欲するってことはそれ以外に考えられない。
そしてイリアさんがこのポーションをルト町に届けるのには理由がある。
それは”異変”だ。ルト町の近くで”異変”が起こったのだ。
今まで起こったことがないし、ルト町周辺はもう魔物が刈り出されていて、そこまで重要視されなかった。
その”異変”に対応すべく、町は冒険者を募集したが、そこまで重要視されなかったこともあり、冒険者は一向に集まらず、数人、しかもランクがD以下の人たちしか集まらなかった。
一応魔物を殲滅することに成功したが、それだけ致命傷が大きく、治療に専念するがそれで手一杯。
もう生死を彷徨っていたのだ。
だからのこの「マナポーション」なんだけど、普通「マナポーション」だけで回復するのか…?
それこそ「治癒ポーション」とか「ヒールポーションとか」、色々とあるのに……
いや、そんなポーションあるのか知らないけど。
あと冒険者が致命傷を負って町がそれを治療するって…冒険者って致命傷を負ったら自己責任じゃないのか…?
…まぁいい、あとでクロエに聞くとしよう
そして今一番考えないといけないのは俺の目の前にいる盗賊だ。容赦はしない。
俺はイリアさんを後ろにつかせ、背中の鞘から少しだけ刃毀れしている剣を出した。
「……ぷっ、はははははっ!!!」
その瞬間、盗賊たちは笑いだす。
「お前、そんな剣で俺たち4人と戦うのか?笑えるぜ」
「せいぜい剣という名の木の棒だな!はははっ!!!」
多少刃毀れしてるが、切れないというわけではない。
実際、この盗賊に出会う数十分前にゴブリンを刈っている。その時には普通に切れた。
だから、大丈夫。自分に自信を持て、リセル。
俺はそう自分に言い聞かせ、一度深呼吸をし、構える。
「ふぅ…
っオルァ!!!!!」
そして、盗賊との戦いに挑む。
◇ 盗賊side ◇
俺らがマナポーションを欲するのには理由がある。
第一の理由として、この先のルト町に高値で売ることだ。
最近、ルト町で”異変”が発覚した。
そこまで栄えてないし、魔物も刈り出されているから冒険者たちは一向に集まらず、集まったところで数人、それも下級冒険者しか来なかったのだ。
だから傷が付くのも当然。致命傷は免れなかったのだろう。
そこで俺ら、「ナイツ」が、直々にマナポーションを売ってやろうと考えた。
だが普通にポーションを買うと値が張るし、そこまでお金を持っていなかった俺らは、ポーションを売りに来る商人に目を付けた。
ポーションを奪って商人を殺し、そのポーションをルト町で売ろうと考えたのだ。
致命傷を負っているイコール、”それだけ魔力が必須”になり、ルト町に売りに来る商人はそれだけポーションを持って出るだろうという魂胆だ。
でも俺はそこまで悪者じゃねぇ。
俺ら、「ナイツ」は、盗賊団の下っ端で、一番上の「ヨル」に全部命じられたことだ。
俺らは最初、盗賊団なんて入りたくなかった。ただただ冒険者として生きたかったが、盗賊団、それこそ「ヨル」にやられ、俺らは下っ端になる以外に生き残る方法がなかった。
だから、こうやってあからさまに悪者を演じきって、生き残るために物を盗んだりいろんなことをしている。
まぁいい。説明はこれくらいにして、この頼りない少年だけが相手じゃ腕が訛るってもんだ。
でも楽してお金を稼げるのは最高に良い。「ヨル」さんも良い作戦を考えるもんだ。
「ヨル」に命じられても、そこで行った行為で得た物の大半が俺らの利益になるからな。
自分の二刀流短剣でその少年を殺そうと襲った。
だが――
「……な、なに…?」
そいつは見たことない構え方で、俺らを見た。
普通、剣を扱うなら両手で持って脇を絞めて、一度剣を上にあげて振り下げるのだが、こいつは違った。
片手で、それも自分の頭より後ろに、剣を構え始めたのだ。
俺には「子供の遊び」のように見えた。俺らを侮辱しているように見えた。
だから、余計腹が立った。
「…し、死ねぇ!!!!!」
俺がそのまま右手にある剣で振りかざそうとした瞬間、そいつは――
「「がはっ!!!」」
剣を下げて俺の腹部に剣を刺した。
少しにやけていた気がする。それだけ余裕だったということだろうか。
俺も少々腹立っていたから怒りに任せて短剣を振っていたところもあるが、こいつはそれを見越して俺の腹部に剣を刺そうと考えていたのだ。
4人の少数盗賊、「ナイツ」の中で一番強いのは俺だ。だから瞬間的に思った。
「こいつには、勝てない。」
俺はそう理解した瞬間に、刺さっている少年の剣が抜けないように腹部に力を入れた。
それはもう激痛の嵐。でも、3人を守るくらいなら、俺一人の命なんて容易い物だ。
この世は弱肉強食だ。強いものが弱いものを倒し、生きていく。
でも大体の強いやつは優しいやつが多くて、俺らみたいな弱くて、悪いやつは強いやつらに刈られる運命。
それでも、俺以外のこいつら3人は絶対に違う。俺が断言する。命も捧げる。
だから、俺がせめて最期まで守る。この盗賊を組んだ時にそう誓ったのだ。
「「あがぁぁぁぁぁぁ!!!!」」
「っ!?、抜けねぇ!」
痛い。めっちゃ痛い。
でもそれでいい。俺はこいつらを守る。そう決めたんだ。
俺は念のため持っていた目くらまし玉をポッケから、最期の力を振り絞って地面にたたきつけた。
「な、なんだ!?ゴホッゴホッ」
「あ、アニキぃ!!!」
「俺のことなんてどうでもいい!とにかく逃げろ!!!」
「っぐ、アニキぃ…!」
あぁ、クラクラする。
でもちゃんと見えてるぞ、お前らの逃げる背中。
よかった、俺はこいつらを守ることができたんだ。
このまま、俺は……
◇ ◇ ◇
『おいリセル、こいつを回復させてやれ』
『…は?なんでだよ』
『いいから』
『でも俺回復の仕方なんて知らないぞ?』
『魔法だ。治癒の。こいつが治るイメージをしろ。』
『…?わかった。』
俺はクロエの言う通りに治癒魔法をかけた。
いやまぁ個人的に人を殺すのは俺にも抵抗があった。
でも思った以上に本気で突っかかってくるから、容赦せずに腹部を剣で貫いた。
俺に怒ってたのだろうか。少々荒っぽかった。普通に戦えてたならそこそこ強かったと思う。
まぁいい、目を覚ましたら聞くことにする。
そして治癒魔法だ。
これが案外簡単で、まぁあの「イメージしたらすぐ出てくる」を習得したからだろうけど、あまりイメージしなくても治癒することができた。
できなかったらイリアさんにお金を払ってマナポーションを使おうかと思ったが、手間が省けてよかった。第一にマナポーションの値段なんて知らないし。
まずまずマナポーションで回復できるのか…?普通治癒ポーションとか、ヒールポーションじゃないのか?
『一応かけたぞ。』
『…まだ気絶してるだけだから、少しだけ待ってろ。』
『わかった。』
「イリアさん?って……」
「怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い…」
戦闘、そして治癒に徹していて忘れていたイリアさんを呼ぶと、俺の後ろというより木の後ろに立って「怖い」と連呼していた。
いやそうなってるイリアさんのほうがよっぽど怖いよ…
「イリアさん、もう大丈夫ですよ。相手は逃げました。」
「怖い怖い……え?」
イリアさんにそう伝えるとキョトンとした顔をした。
まぁ無理もない。さっきからずっと戦ってたわけだし、怖いのもわかる。
その瞬間――
バサッ!
「おぉ、起きたのか」
「ひっ、ひぃっ!」
その盗賊の人が勢い良く起き上がった。
「!?…なんだ、殺してなかったのか」
盗賊の人はイリアさんを守っている俺をギロリと睨みつけた。
命は助けてやったんだ。なにかお礼とかないのか?とも思ったけど、その窮地に立たせたのは俺だから、最終的に理不尽になる。
だから、俺は普通に話すことにした。
「殺すも何も、俺は人を殺したくなかったからね」
「…それは、俺ら盗賊でも、か?」
「盗賊でも人間は人間だ。モンスターでは無い限り、殺したいとは思わない。」
まずまずモンスターも無差別に殺したりはしたくないんだけどね俺。
まぁでも、モンスターは一応人間に害あるから。そう考えたら「討伐しよう」って考えることもできる。
盗賊も俺らからしたらめっちゃ害なんだけどさ。
「まぁいい、これからこのようなことは絶対にしないと誓えるなら、この場から逃げる権利を上げよう。
そこまで殺したくないが、それが守れなかったら俺が殺してやる」
「……」
少し怖く言い過ぎたのだろうか。
俺的には最終的に誓わなくても逃がすつもりだった。本当に殺したくないし。
でも、せっかくならこんな盗賊が減ればなっていう意味で、「もうやらない」と誓わせるとやらなくなるかなってことで、俺はそう盗賊に言ったのだ。
本当に無くなるとは思わない。けど、やらないよりはまだマシ。
「ま、待て。少しだけ話を聞いてくれ。」
「…ん、なんだ?」
だが、盗賊の男は正座になって、改まって俺に話を聞くようにお願いしてきた。
俺は反射でOK出しちゃったけど、大丈夫だったのだろうか。
まぁいい、話を聞くくらいならまだ大丈夫だろう。
そしてその男は話し出した。
「ポーションを盗もうとしたこと、これに関しては俺からも謝罪する。すまなかった。
でも、これに関しては俺らがやろうとしたんじゃないんだ。」
「…?罪を擦り付けようとしているのか?」
「いや、違う!
…俺らは『ナイツ』っつって、盗賊団、『ヨル』って中でも、一番の下っ端だ。
だから、その『ヨル』に命じられて、俺らはこんなことをやったんだ。」
俺は少々腹が立った。でも、そんな腹を立てることを表に表すことはしない。
そのまま俺は話を続けた。
「ということは、
『俺は上に命令されてやった。だから俺らは悪くない』…とでも言いたいのか?」
「……」
「それは少しだけ間違ってるぞ盗賊。
まぁこれくらいしか生きる道が無くなったのだろうが、それでもやってしまったことには変わりはないし、『上が命令したから』という言いがかりをつけられてしまっても、俺ら被害者は最終的にやった”お前ら”を罰することになる。」
盗賊は沈黙する。
やっていることが幼稚すぎる。その幼稚に口出しをする俺も幼稚みたいなもんだけど、こんなやつがこの世界にいるって言うなら、言いたいこともたくさんある。
だから、俺は父親交じりに説教をすることを選択した。
「それで『俺ら盗賊を助けてくれ』とでも言いたいのだろう?
悪いが俺も忙しい。そしてそんな盗賊団を助けるほどヤワじゃない
だから、”自分たち”で殲滅するんだ。
力が無くたって誰からか借りることはできるし、みんなと同じで知能もある。
そしてこんな事態に巻き込まれてるんだ。味方の一人や二人くらいは付くだろう。
『自分たちのやった行いを懺悔する』ように、その盗賊団を自分たちの手で殲滅させるんだ。」
「………」
「そうしたら罪が晴れるかもな。
まぁ最終的に俺がなにか手助けすることはできない。すまんな。」
盗賊の男は少しだけ沈黙し、膝をついて俺に言った。
「……あぁ。わかった。」
「理解してくれて嬉しい。
ほら、行った行った。」
そう促したが、実際殲滅することは多分できないだろうと実感した。
「ヨル」とやらの大きさはわからないし、多分こいつらを下っ端にするくらいの強さならめちゃくちゃ強いことが予想できる。
まぁでも、そんな中でも俺はなにも近づかないことを決めた。
普通に怖いし、でも殲滅すると言った願望もない。
このまま何も関与せずに行くのが正解だろう。
俺はそう結論付けた。
「イリアさん、もう行きましたよ」
そうイリアさんに言おうと後ろを向いたら、イリアさんは、俺のことを怖い目で見てきた。
…?
「リセル君、ちょっと怖い…」
「え?」
『それはあたしも同感。』
「…えぇ???」
そんな怖い俺であったが、これにて一件落着となった。
◇ ◇ ◇
ありがとう少年。
俺はこの少年のおかげで、なにをすればいいのかがわかった。
すべて俺らが悪くないと言えば嘘になるし、そんなことを言ったって罪を犯してからそう言ってしまうと誰も信用しない。
今までの俺は何を考えていたんだ…まったく。
…盗賊は悪い存在。だから、悪だ。
そんなことを小さい頃に習って、最終的に自分がそれになってどうする。
俺が、変えるんだ。
そうだ、俺が。
「アニキぃ!!!生きてたんすね!!!」
「あぁすまん、迷惑かけて。
そして急で悪いが、今から作戦会議を始める。」
「作戦会議?」
「あぁ。
……あいつらと、決着を付ける作戦会議だ。」
「やっぱりこいつだったか」
「いやー、三日程度待って来なかったから心配したぜ」
「アニキ、早くやっちまおうぜ」
「そうだそうだ、早く動きたくて仕方がねぇ」
「リセル君、どうしよぉ…」
「危ないので俺の後ろに居てください。」
イリアさんと数時間の旅に出たのだが、なんということに盗賊合計4人に絡まれてしまった。
多分イリアさんが売ろうと考えてる”マナポーション”が目当てだと思うけど、そんなに重要なのか?
イリアさんから聞いた話だと、マナポーションは魔力を回復できるそうだ。
魔力不足だと、もう魔法は使えないし、脳震盪を起こして逃げる隙もない。だからそのためのポーションらしいのだ。
そんなに魔力の消費が激しいのか?ってかこのポーションを欲するってことはそれ以外に考えられない。
そしてイリアさんがこのポーションをルト町に届けるのには理由がある。
それは”異変”だ。ルト町の近くで”異変”が起こったのだ。
今まで起こったことがないし、ルト町周辺はもう魔物が刈り出されていて、そこまで重要視されなかった。
その”異変”に対応すべく、町は冒険者を募集したが、そこまで重要視されなかったこともあり、冒険者は一向に集まらず、数人、しかもランクがD以下の人たちしか集まらなかった。
一応魔物を殲滅することに成功したが、それだけ致命傷が大きく、治療に専念するがそれで手一杯。
もう生死を彷徨っていたのだ。
だからのこの「マナポーション」なんだけど、普通「マナポーション」だけで回復するのか…?
それこそ「治癒ポーション」とか「ヒールポーションとか」、色々とあるのに……
いや、そんなポーションあるのか知らないけど。
あと冒険者が致命傷を負って町がそれを治療するって…冒険者って致命傷を負ったら自己責任じゃないのか…?
…まぁいい、あとでクロエに聞くとしよう
そして今一番考えないといけないのは俺の目の前にいる盗賊だ。容赦はしない。
俺はイリアさんを後ろにつかせ、背中の鞘から少しだけ刃毀れしている剣を出した。
「……ぷっ、はははははっ!!!」
その瞬間、盗賊たちは笑いだす。
「お前、そんな剣で俺たち4人と戦うのか?笑えるぜ」
「せいぜい剣という名の木の棒だな!はははっ!!!」
多少刃毀れしてるが、切れないというわけではない。
実際、この盗賊に出会う数十分前にゴブリンを刈っている。その時には普通に切れた。
だから、大丈夫。自分に自信を持て、リセル。
俺はそう自分に言い聞かせ、一度深呼吸をし、構える。
「ふぅ…
っオルァ!!!!!」
そして、盗賊との戦いに挑む。
◇ 盗賊side ◇
俺らがマナポーションを欲するのには理由がある。
第一の理由として、この先のルト町に高値で売ることだ。
最近、ルト町で”異変”が発覚した。
そこまで栄えてないし、魔物も刈り出されているから冒険者たちは一向に集まらず、集まったところで数人、それも下級冒険者しか来なかったのだ。
だから傷が付くのも当然。致命傷は免れなかったのだろう。
そこで俺ら、「ナイツ」が、直々にマナポーションを売ってやろうと考えた。
だが普通にポーションを買うと値が張るし、そこまでお金を持っていなかった俺らは、ポーションを売りに来る商人に目を付けた。
ポーションを奪って商人を殺し、そのポーションをルト町で売ろうと考えたのだ。
致命傷を負っているイコール、”それだけ魔力が必須”になり、ルト町に売りに来る商人はそれだけポーションを持って出るだろうという魂胆だ。
でも俺はそこまで悪者じゃねぇ。
俺ら、「ナイツ」は、盗賊団の下っ端で、一番上の「ヨル」に全部命じられたことだ。
俺らは最初、盗賊団なんて入りたくなかった。ただただ冒険者として生きたかったが、盗賊団、それこそ「ヨル」にやられ、俺らは下っ端になる以外に生き残る方法がなかった。
だから、こうやってあからさまに悪者を演じきって、生き残るために物を盗んだりいろんなことをしている。
まぁいい。説明はこれくらいにして、この頼りない少年だけが相手じゃ腕が訛るってもんだ。
でも楽してお金を稼げるのは最高に良い。「ヨル」さんも良い作戦を考えるもんだ。
「ヨル」に命じられても、そこで行った行為で得た物の大半が俺らの利益になるからな。
自分の二刀流短剣でその少年を殺そうと襲った。
だが――
「……な、なに…?」
そいつは見たことない構え方で、俺らを見た。
普通、剣を扱うなら両手で持って脇を絞めて、一度剣を上にあげて振り下げるのだが、こいつは違った。
片手で、それも自分の頭より後ろに、剣を構え始めたのだ。
俺には「子供の遊び」のように見えた。俺らを侮辱しているように見えた。
だから、余計腹が立った。
「…し、死ねぇ!!!!!」
俺がそのまま右手にある剣で振りかざそうとした瞬間、そいつは――
「「がはっ!!!」」
剣を下げて俺の腹部に剣を刺した。
少しにやけていた気がする。それだけ余裕だったということだろうか。
俺も少々腹立っていたから怒りに任せて短剣を振っていたところもあるが、こいつはそれを見越して俺の腹部に剣を刺そうと考えていたのだ。
4人の少数盗賊、「ナイツ」の中で一番強いのは俺だ。だから瞬間的に思った。
「こいつには、勝てない。」
俺はそう理解した瞬間に、刺さっている少年の剣が抜けないように腹部に力を入れた。
それはもう激痛の嵐。でも、3人を守るくらいなら、俺一人の命なんて容易い物だ。
この世は弱肉強食だ。強いものが弱いものを倒し、生きていく。
でも大体の強いやつは優しいやつが多くて、俺らみたいな弱くて、悪いやつは強いやつらに刈られる運命。
それでも、俺以外のこいつら3人は絶対に違う。俺が断言する。命も捧げる。
だから、俺がせめて最期まで守る。この盗賊を組んだ時にそう誓ったのだ。
「「あがぁぁぁぁぁぁ!!!!」」
「っ!?、抜けねぇ!」
痛い。めっちゃ痛い。
でもそれでいい。俺はこいつらを守る。そう決めたんだ。
俺は念のため持っていた目くらまし玉をポッケから、最期の力を振り絞って地面にたたきつけた。
「な、なんだ!?ゴホッゴホッ」
「あ、アニキぃ!!!」
「俺のことなんてどうでもいい!とにかく逃げろ!!!」
「っぐ、アニキぃ…!」
あぁ、クラクラする。
でもちゃんと見えてるぞ、お前らの逃げる背中。
よかった、俺はこいつらを守ることができたんだ。
このまま、俺は……
◇ ◇ ◇
『おいリセル、こいつを回復させてやれ』
『…は?なんでだよ』
『いいから』
『でも俺回復の仕方なんて知らないぞ?』
『魔法だ。治癒の。こいつが治るイメージをしろ。』
『…?わかった。』
俺はクロエの言う通りに治癒魔法をかけた。
いやまぁ個人的に人を殺すのは俺にも抵抗があった。
でも思った以上に本気で突っかかってくるから、容赦せずに腹部を剣で貫いた。
俺に怒ってたのだろうか。少々荒っぽかった。普通に戦えてたならそこそこ強かったと思う。
まぁいい、目を覚ましたら聞くことにする。
そして治癒魔法だ。
これが案外簡単で、まぁあの「イメージしたらすぐ出てくる」を習得したからだろうけど、あまりイメージしなくても治癒することができた。
できなかったらイリアさんにお金を払ってマナポーションを使おうかと思ったが、手間が省けてよかった。第一にマナポーションの値段なんて知らないし。
まずまずマナポーションで回復できるのか…?普通治癒ポーションとか、ヒールポーションじゃないのか?
『一応かけたぞ。』
『…まだ気絶してるだけだから、少しだけ待ってろ。』
『わかった。』
「イリアさん?って……」
「怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い…」
戦闘、そして治癒に徹していて忘れていたイリアさんを呼ぶと、俺の後ろというより木の後ろに立って「怖い」と連呼していた。
いやそうなってるイリアさんのほうがよっぽど怖いよ…
「イリアさん、もう大丈夫ですよ。相手は逃げました。」
「怖い怖い……え?」
イリアさんにそう伝えるとキョトンとした顔をした。
まぁ無理もない。さっきからずっと戦ってたわけだし、怖いのもわかる。
その瞬間――
バサッ!
「おぉ、起きたのか」
「ひっ、ひぃっ!」
その盗賊の人が勢い良く起き上がった。
「!?…なんだ、殺してなかったのか」
盗賊の人はイリアさんを守っている俺をギロリと睨みつけた。
命は助けてやったんだ。なにかお礼とかないのか?とも思ったけど、その窮地に立たせたのは俺だから、最終的に理不尽になる。
だから、俺は普通に話すことにした。
「殺すも何も、俺は人を殺したくなかったからね」
「…それは、俺ら盗賊でも、か?」
「盗賊でも人間は人間だ。モンスターでは無い限り、殺したいとは思わない。」
まずまずモンスターも無差別に殺したりはしたくないんだけどね俺。
まぁでも、モンスターは一応人間に害あるから。そう考えたら「討伐しよう」って考えることもできる。
盗賊も俺らからしたらめっちゃ害なんだけどさ。
「まぁいい、これからこのようなことは絶対にしないと誓えるなら、この場から逃げる権利を上げよう。
そこまで殺したくないが、それが守れなかったら俺が殺してやる」
「……」
少し怖く言い過ぎたのだろうか。
俺的には最終的に誓わなくても逃がすつもりだった。本当に殺したくないし。
でも、せっかくならこんな盗賊が減ればなっていう意味で、「もうやらない」と誓わせるとやらなくなるかなってことで、俺はそう盗賊に言ったのだ。
本当に無くなるとは思わない。けど、やらないよりはまだマシ。
「ま、待て。少しだけ話を聞いてくれ。」
「…ん、なんだ?」
だが、盗賊の男は正座になって、改まって俺に話を聞くようにお願いしてきた。
俺は反射でOK出しちゃったけど、大丈夫だったのだろうか。
まぁいい、話を聞くくらいならまだ大丈夫だろう。
そしてその男は話し出した。
「ポーションを盗もうとしたこと、これに関しては俺からも謝罪する。すまなかった。
でも、これに関しては俺らがやろうとしたんじゃないんだ。」
「…?罪を擦り付けようとしているのか?」
「いや、違う!
…俺らは『ナイツ』っつって、盗賊団、『ヨル』って中でも、一番の下っ端だ。
だから、その『ヨル』に命じられて、俺らはこんなことをやったんだ。」
俺は少々腹が立った。でも、そんな腹を立てることを表に表すことはしない。
そのまま俺は話を続けた。
「ということは、
『俺は上に命令されてやった。だから俺らは悪くない』…とでも言いたいのか?」
「……」
「それは少しだけ間違ってるぞ盗賊。
まぁこれくらいしか生きる道が無くなったのだろうが、それでもやってしまったことには変わりはないし、『上が命令したから』という言いがかりをつけられてしまっても、俺ら被害者は最終的にやった”お前ら”を罰することになる。」
盗賊は沈黙する。
やっていることが幼稚すぎる。その幼稚に口出しをする俺も幼稚みたいなもんだけど、こんなやつがこの世界にいるって言うなら、言いたいこともたくさんある。
だから、俺は父親交じりに説教をすることを選択した。
「それで『俺ら盗賊を助けてくれ』とでも言いたいのだろう?
悪いが俺も忙しい。そしてそんな盗賊団を助けるほどヤワじゃない
だから、”自分たち”で殲滅するんだ。
力が無くたって誰からか借りることはできるし、みんなと同じで知能もある。
そしてこんな事態に巻き込まれてるんだ。味方の一人や二人くらいは付くだろう。
『自分たちのやった行いを懺悔する』ように、その盗賊団を自分たちの手で殲滅させるんだ。」
「………」
「そうしたら罪が晴れるかもな。
まぁ最終的に俺がなにか手助けすることはできない。すまんな。」
盗賊の男は少しだけ沈黙し、膝をついて俺に言った。
「……あぁ。わかった。」
「理解してくれて嬉しい。
ほら、行った行った。」
そう促したが、実際殲滅することは多分できないだろうと実感した。
「ヨル」とやらの大きさはわからないし、多分こいつらを下っ端にするくらいの強さならめちゃくちゃ強いことが予想できる。
まぁでも、そんな中でも俺はなにも近づかないことを決めた。
普通に怖いし、でも殲滅すると言った願望もない。
このまま何も関与せずに行くのが正解だろう。
俺はそう結論付けた。
「イリアさん、もう行きましたよ」
そうイリアさんに言おうと後ろを向いたら、イリアさんは、俺のことを怖い目で見てきた。
…?
「リセル君、ちょっと怖い…」
「え?」
『それはあたしも同感。』
「…えぇ???」
そんな怖い俺であったが、これにて一件落着となった。
◇ ◇ ◇
ありがとう少年。
俺はこの少年のおかげで、なにをすればいいのかがわかった。
すべて俺らが悪くないと言えば嘘になるし、そんなことを言ったって罪を犯してからそう言ってしまうと誰も信用しない。
今までの俺は何を考えていたんだ…まったく。
…盗賊は悪い存在。だから、悪だ。
そんなことを小さい頃に習って、最終的に自分がそれになってどうする。
俺が、変えるんだ。
そうだ、俺が。
「アニキぃ!!!生きてたんすね!!!」
「あぁすまん、迷惑かけて。
そして急で悪いが、今から作戦会議を始める。」
「作戦会議?」
「あぁ。
……あいつらと、決着を付ける作戦会議だ。」