君の姿に憧れて
#1
先輩はいつも少し早い
[漢字]玲奈[/漢字][ふりがな]れいな[/ふりがな]先輩は、いつも私より少しだけ早く会社に来ている。
出社してオフィスのドアを開けると、静かな空気の中、キーボードを打つ軽い音が聞こえてくる。
その音の主を探すまでもなく、自然と視線は一箇所に向かっていた。
背筋を伸ばしてモニターを見つめる横顔。長い指が迷いなく動いている。
その姿を見るたび、胸の奥がすっと引き締まる。
「おはよう、ひよりちゃん」
顔を上げて笑いかけられると、私は慌てて頭を下げた。
「おはようございます、玲奈先輩」
玲奈先輩は背が高くて、すらりとしていて、近くに立つと自然と見上げる形になる。
かっこいい人だと思う。でも、それだけじゃない。
目が合った瞬間に柔らかく細まる表情や、時折見せる無邪気な笑い方が、どこかかわいらしくもあって――そのバランスが、ずるい。
午前中、コピー機の前で資料をまとめているうちに、思った以上の量になってしまった。
両腕いっぱいに抱えて歩き出そうとした、そのとき。
「ひよりちゃん、それ一人で運ぶの?」
振り返ると、心配そうに眉を下げた玲奈先輩が立っていた。
「だ、大丈夫です」
「ほんとに? 無理しなくていいんだよ」
そう言いながら、当然のように資料を半分持っていく。
その手際の良さと距離の近さに、私は言葉を失った。
可愛がられているのは分かっている。
童顔で、年下で、まだ覚えることばかりの私を、先輩はいつも気にかけてくれる。それが嬉しくないわけじゃない。
でも、先輩の後ろを歩きながら、胸の奥に小さな違和感が残った。
(いつか私も、あんなふうに)
迷いなく動いて、誰かを助けて、当たり前のように頼られる人に。 玲奈先輩の姿に、私は憧れている。
それが、まだ名前のつかない感情だということを、私は疑いもしなかった。
出社してオフィスのドアを開けると、静かな空気の中、キーボードを打つ軽い音が聞こえてくる。
その音の主を探すまでもなく、自然と視線は一箇所に向かっていた。
背筋を伸ばしてモニターを見つめる横顔。長い指が迷いなく動いている。
その姿を見るたび、胸の奥がすっと引き締まる。
「おはよう、ひよりちゃん」
顔を上げて笑いかけられると、私は慌てて頭を下げた。
「おはようございます、玲奈先輩」
玲奈先輩は背が高くて、すらりとしていて、近くに立つと自然と見上げる形になる。
かっこいい人だと思う。でも、それだけじゃない。
目が合った瞬間に柔らかく細まる表情や、時折見せる無邪気な笑い方が、どこかかわいらしくもあって――そのバランスが、ずるい。
午前中、コピー機の前で資料をまとめているうちに、思った以上の量になってしまった。
両腕いっぱいに抱えて歩き出そうとした、そのとき。
「ひよりちゃん、それ一人で運ぶの?」
振り返ると、心配そうに眉を下げた玲奈先輩が立っていた。
「だ、大丈夫です」
「ほんとに? 無理しなくていいんだよ」
そう言いながら、当然のように資料を半分持っていく。
その手際の良さと距離の近さに、私は言葉を失った。
可愛がられているのは分かっている。
童顔で、年下で、まだ覚えることばかりの私を、先輩はいつも気にかけてくれる。それが嬉しくないわけじゃない。
でも、先輩の後ろを歩きながら、胸の奥に小さな違和感が残った。
(いつか私も、あんなふうに)
迷いなく動いて、誰かを助けて、当たり前のように頼られる人に。 玲奈先輩の姿に、私は憧れている。
それが、まだ名前のつかない感情だということを、私は疑いもしなかった。