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君の姿に憧れて

#14

夏祭り・花火大会編:浴衣の背中と夜空の光

 七月最後の週末。

 町中は提灯の灯りと祭りに来た人たちでいっぱいだった。


 私たちは浴衣を着て、夏祭りに出かける。

 玲奈さんの浴衣姿は、背が高く、まとめた髪が涼しげで、自然と視線が吸い寄せられる。

「ひよりちゃん、あんまり固まってると、楽しめないよ」

 そう言って、手を軽く引かれた。


 笑いながら振り返ると、屋台の人混みに混ざった彼女の横顔は、昼間のオフィスとは別人のように柔らかかった。

 焦げたソースの香りと、りんご飴やチョコバナナの甘い香りが鼻をくすぐる。

 かき氷をひとつずつ食べながら、通りを歩く。

 人混みの中で肩がぶつかるたび、玲奈さんの手が自然と私の手に絡む。


「はぐれたら困るから」と、ちょっとだけ意地悪っぽく囁かれると、胸がぎゅっと熱くなる。

 歩き疲れた頃、ふたりで少し離れた河原に到着した。


 そこは、花火大会の穴場スポット。

 人混みを避けて、少し静かな場所だ。

 空が暗くなるにつれ、川面に映る街の灯りが揺れる。


 玲奈さんはそっと私の肩に手を置き、視線を夜空に向ける。

「ひよりちゃん、綺麗だね」

 その声に頷くしかできない。


 そして、最初の花火が夜空を裂くように上がった。


 ドン、と大きな音とともに、色とりどりの光が広がる。

 横を見ると、玲奈さんの顔が光に照らされて、うっすら汗ばむ額も、笑う唇も、すべてが夏の夜に溶け込んでいる。


 そっと肩が触れ合う。

 指が自然に絡む。

 誰もいないかのような二人だけの世界。

 花火がひとつ、またひとつ、夜空に咲くたびに、心臓が跳ねる。


「来年も、こうやって一緒に見られるかな」


 ぽつりと言った玲奈さんの声に、私は静かに笑って答える。

「はい。絶対、また一緒に」

 音に混じる笑い声、指先の温度、肩越しの香り。


 浴衣姿の先輩の隣で、私は夏の匂いと胸の高鳴りを、同じ高さで感じていた。

 夜空に大輪の花が咲き、散る瞬間。


 その光とともに、ふたりの距離も自然と近づいていく。


 すべてが、二人で過ごす特別な夜を彩っていた。

作者メッセージ

久しぶりの投稿でした。皆さん暑さに気をつけてくださいね
次は海水浴編です

2026/07/24 14:52

魂染朱廻
ID:≫ 307X6okIvTEt6
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