ひよりちゃんは、入社した頃から少し不思議な後輩だった。
声は控えめで、動きもどこか慎重で、それなのに仕事に向き合う目だけは真剣で。
資料を抱える姿も、メモを取る仕草も、どこか子供っぽくて、自然と目で追ってしまう。
「ひよりちゃん、大丈夫?」
気づけば、そんな言葉を何度もかけていた。
守ってあげたい、という気持ちは確かにあったと思う。年上で、先輩で、経験もある。
だから当然だと、自分に言い聞かせていた。
でも――それだけじゃなかった。
彼女が少しずつ仕事を覚えて、自分なりに考えて動くようになっていくのを見ていると、胸の奥が静かにざわついた。
嬉しいはずなのに、どこか落ち着かない。
他の人に褒められている姿を見たとき、その理由が分からず、視線を逸らした自分に気づいてしまった。
(……ああ、そっか)
その瞬間、ようやく理解した。
私は「見守っている先輩」なんかじゃなかった。
ただ、自分より少し低い位置にいてくれる存在に、安心していただけだったのだ。
夜のオフィスで、ひよりちゃんが「隣に立ちたい」と言ったとき。
胸の奥で、何かがほどける音がした。
守られる側でいてほしかったわけじゃない。
ただ、私の視界からいなくならないでほしかった。
それが、恋だと認めるには、少し時間がかかったけれど。
今は、手を繋いで歩く帰り道が、こんなにも自然だ。
同じ歩幅で、同じ景色を見て。
追いかけるでも、追いかけられるでもなく。
――君の姿に憧れていたのは、きっと私のほうだった。
そう思いながら、私はひよりちゃんの手を、少しだけ強く握り返した。
声は控えめで、動きもどこか慎重で、それなのに仕事に向き合う目だけは真剣で。
資料を抱える姿も、メモを取る仕草も、どこか子供っぽくて、自然と目で追ってしまう。
「ひよりちゃん、大丈夫?」
気づけば、そんな言葉を何度もかけていた。
守ってあげたい、という気持ちは確かにあったと思う。年上で、先輩で、経験もある。
だから当然だと、自分に言い聞かせていた。
でも――それだけじゃなかった。
彼女が少しずつ仕事を覚えて、自分なりに考えて動くようになっていくのを見ていると、胸の奥が静かにざわついた。
嬉しいはずなのに、どこか落ち着かない。
他の人に褒められている姿を見たとき、その理由が分からず、視線を逸らした自分に気づいてしまった。
(……ああ、そっか)
その瞬間、ようやく理解した。
私は「見守っている先輩」なんかじゃなかった。
ただ、自分より少し低い位置にいてくれる存在に、安心していただけだったのだ。
夜のオフィスで、ひよりちゃんが「隣に立ちたい」と言ったとき。
胸の奥で、何かがほどける音がした。
守られる側でいてほしかったわけじゃない。
ただ、私の視界からいなくならないでほしかった。
それが、恋だと認めるには、少し時間がかかったけれど。
今は、手を繋いで歩く帰り道が、こんなにも自然だ。
同じ歩幅で、同じ景色を見て。
追いかけるでも、追いかけられるでもなく。
――君の姿に憧れていたのは、きっと私のほうだった。
そう思いながら、私はひよりちゃんの手を、少しだけ強く握り返した。