「今日から引っ越してきました、春川尚と申します。ご迷惑おかけするかもしれませんが何卒よろしくお願いします」
綺麗な、透き通った声でそう言った美形。
銀髪の短いが男子にしては少し長めな髪に、アイスブルーの瞳。真っ白な肌は冬に呑まれそうなほど美しい。そして服はシンプルな白いTシャツだがそれを際立たせる黒い上着はとてもシンプルだが春川さんには派手な服よりこちらの方が似合うだろう。
びっくりするほどかっこよく整った顔立ち。
私好みの顔…………。
でも驚くべきところはそこではない。
「あの……何故春川さんの周りだけ吹雪いてるんですか……?」
相手は挨拶してくれたのに、私はそれをそっちのけて質問してしまった。
だけど春川さんは動じず、
「ああ、俺、雪男なんです」
……と言った。
………………………雪男ぉ!?
信じがたいが春川さんの周りが吹雪いているのが何よりの証拠。
……そして寒い。今、冬だけど今日は冬といえど暖かくて雪も降っていないのに、春川さんといるとめっちゃ寒くなった。雪も(春川さんの周りだけ)積もってる。
「ちょっと一旦外に出ましょう。一応ここ私の家の玄関なので、雪が積もられたらちょっと困るので。今度は玄関に雪対策グッズ仕入れておきますね」
「ああ、はい」
……お隣に引っ越してきたのは、雪男でした。
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私、三上莉子は、平凡な女子大生。
生まれつき茶髪の髪は大体ポニーテールにするか結んでいないかの二パターンが多くて、
瞳の色はザ・日本人の黒色。服はラフなのが多くておしゃれとかあんまり気にした事ない。
友達もそこそこいて、平凡、平凡、平凡中の平凡な女子である。
……彼氏募集中です……。
大学に入ると同時にアパートで一人暮らしを始めた私だが、私の隣の部屋はずっと空き部屋だった。今日そこに雪男が引っ越してきた。ちなみに今は冬休み。レポート等も終わらせて1月の半ばくらいまでゆっくりするつもりでいたら春川さんがお隣に入居してきた。
春川さんの周りはいつも吹雪いていて、私と同い年にも関わらず大学に通っていない。
そりゃ、周りがいつも吹雪いている人が学校に来たら騒ぎになるよね。
そして誰かにSNSにあげられたりとかして……。
炎上……という文字が頭に浮かんだ。
ひぇ……コワぁ……。
私がそんなことを考えてる間に、春川さんは口を開く。
「……俺、暑さに弱いから外に出れないし、出たところで好んで俺に近寄ってくる人いないんで、友達ひとりもいなくて……。あの、お隣さん……三上さん、仲良くしてくれませんか……!」
……すごい、お辞儀の角度綺麗〜……。
じゃないくて、イケメンな男が私に頭を下げている。どんな光景だ!?
仲良く?していいんですか?こんな、好みの男性と??
「っはい、勿論です!!仲良くしましょう!!」
……つい食い気味で答えてしまった……。
「本当ですか!?嬉しいです……ありがとうございます!」
……顔を赤く染めている。照れてる。すごい。かわいい。
「ぇあっ、こちら、こそぉ……っ」
かわいすぎて直視できない!!
「あ、スマホ持ってます?連絡先交換できますか?」
「あ……スマホですか……俺スマホ触ると必ず壊すんです……手が冷たすぎて……」
ああ、なるほど……。
「私の前使ってた携帯あるんですけど要ります?まだ使えますよ。確か冬用のスマホを寒さに強くするグッズも持ってるんで使って下さい。多分、連絡取るくらいはできると思います。あ、壊してくれても大丈夫なので、遠慮しなくて大丈夫です!」
「え、いいんですか……あ、でも、Wi-Fi……」
「大丈夫です、私がなんとかします!」
「え、悪いですよ……!」
「いいんですよ??」
圧をかける。
「あっはい……じゃあよろしくお願いします」
私の圧に負けてくれたみたい。よかった。
無事新規登録等が完了して、連絡先交換できた(私は一旦自分の家に帰りスマホをとってきた。流石に春川さんもお家に入れたら家が大惨事になるから。本当は《イケメンが家に!?思わぬハプニングが……!?みたいな漫画的展開を望んでたけれど)。
でも、連絡先交換できただけで飛び上がりそうである。
ふぁああああ…………男の人(美形)の連絡先ッ、毎日拝みます!!
「何から何まで、ありがとうございます」
ぺこり、とお辞儀する春川さん。相変わらず綺麗な角度なお辞儀だった。見惚れる。
「あ、いえ、私が好んでやった事なので本気で気にしないで頂いて」
「……いい人ですね、貴方は」
ふ、と優しく微笑むイケメン。
破壊力えぐい!!キュン死するが!?
「……いえ、本当に私は好きでやってる事なんです。なんか、友達もそこそこ多い癖に、何故か時々孤独感に苛まれる事があって……。多分友達、いるにはいるけど、趣味が合う子が1人もいないからなのかなって。……小中高一緒だった子が……離れ離れになった喪失感もあって」
ポツリと呟く。
独り言の様な心地で、零れ落ちた言葉。
(こんな話、会ったばかりの他人にすることじゃないのに…私、何やってんだろ…)
「素敵……だと思います」
春川さんの声がした。
「……素敵、ですか?」
意味がわからなかった。
「だって、莉子さんの内側が聞けて。少なくとも俺は嬉しかったですよ。『完璧すぎる人』なんて近づくのも躊躇うし『俺とは違う』ってちょっと嫉妬しちゃうし……。なんか、莉子さんの『人間らしい』ところが聞けてよかったです。俺なんて人間離れしてるから」
春川さんは、そう言って俯く。
……なんて、
「可愛い……」
思わずつぶやいてしまう。
「え?」
「ああ、なんでもないです。それにしても春川さん……なんてお優しいんですか?そんなんで美形だなんて贅沢な人ですね」
それに、人間離れしてるなんて嘘でしょう?
こんなに人間らしくて、でもどこか人間とは違うけれど魅力的で、人間よりも優しい人。
周りは吹雪いていても、心はすごく暖かい人。
「春川さんに出会えてよかったですよ。出会ってまだほんの数分しか経ってないけど」
ふわりと微笑んでみせる。
それにつられたのか、春川さんも優しい笑顔を見せてくれた。
「……ありがとう、ございます……莉子、ちゃん」
は?????
莉子、ちゃん?
三上さん→莉子さん→莉子ちゃん??
春川さん……ずるいですよ……!!!
もうキャパオーバーです……ッ。
これからこのお隣さんとの暮らしは、どうなっていくのでしょうか。