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無糖のケーキを召し上がれ。

#6

14ー1

 あたしはスマホに電話番号を打つ手を止めた。

 ……あたし、なんであいつに電話しようとしてんの?

 電話番号の候補に浮かび上がっていた「尊くん」の字を見つめる。そして、番号を1文字、1文字と消す。

 途中、尊くんと同じぐらい、今は見たくない名前を見つけた。

 あたしは無表情のまま、「京花ちゃん」のボタンを長押しして、削除した。

 電話アプリを閉じ、他の連絡ツールからも京花ちゃんの名前を消した。

 そして、ゲームを開いた。

 癒し系のゲームのはずが、ゆるゆるのんびり動くマスコットが「おいし~い」とごはんを食べるのでさえストレスになる。

 広告の画面で硬直して、あたしはもう我慢ができなくなった。

「みんなして、一体何なの⁉」

 1番無実なスマホを睨み、怒鳴る。

 ことの発端は昼休み。

 あたしが4日前から探していた、おきにのウサギのコームを、京花ちゃんが使っていたのだ。

 問い詰めたら、「おそろいを買ったんだよ、かわいいと思って」なんて。

 そんなのあり得ない。

 だって、あのコームについてるビーズは、あたしが自分で開けた穴にテグスを通して付けた、いわばアレンジ。

 あたしのを誰かが拾って転売でもしなきゃ、買うなんてできっこないんだ。

 そのことを言ったら、京花ちゃんが吐き捨てるみたいに言ったんだ。

「……ってか、歩佳みたいな芋女の代わりに使ってあげてるんだからさ、感謝くらいしなよ?」

 こんな可愛いコーム、似合ってなかったしさー。

 京花ちゃんは笑った。

 もう全部どうでもよくなって。

「最低、あんたなんか大ッ嫌い‼」

 泥棒、糞野郎、その他思いつく限りの罵詈雑言を、浴びせた。

 そして、泥棒の手にあるコームを取り返した。

 予定が合うのに一緒に帰らなかったのは、久しぶりだった。

 なんで変わっちゃったの?

 大雨が、今も止まない。

 うるさい。

 雨が屋根にあたる音の中で、澄んだ通知音が鳴る。

「今、ちょっと元気だから
 久しぶりに顔見て話したいな。」

 尊くんだった。

 あぁ、そうだ。

 スマホを買ってもらってから、メールでの会話が多くなった。

 それに――。

 先月、尊くんの容態が急変した。

 1度、心臓も止まっていたらしい。

 面会なんて、難しいどころじゃなかった。

 会えなくて清々してたけど――なんか寂しくて。

 だからなんだろうか。

 嫌いなあいつに、わざわざ会うことを決めたのは。

「明日行く」

 飛行機マークを押し、既読のつくのを確認した。

 雨は、強く降り続いていた。

作者メッセージ

分からない方(僕含む)に説明すると……
コーム=櫛

2025/06/12 18:00

◇Alice◇
ID:≫ 6.HwTpWbghe22
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