あたしはスマホに電話番号を打つ手を止めた。
……あたし、なんであいつに電話しようとしてんの?
電話番号の候補に浮かび上がっていた「尊くん」の字を見つめる。そして、番号を1文字、1文字と消す。
途中、尊くんと同じぐらい、今は見たくない名前を見つけた。
あたしは無表情のまま、「京花ちゃん」のボタンを長押しして、削除した。
電話アプリを閉じ、他の連絡ツールからも京花ちゃんの名前を消した。
そして、ゲームを開いた。
癒し系のゲームのはずが、ゆるゆるのんびり動くマスコットが「おいし~い」とごはんを食べるのでさえストレスになる。
広告の画面で硬直して、あたしはもう我慢ができなくなった。
「みんなして、一体何なの⁉」
1番無実なスマホを睨み、怒鳴る。
ことの発端は昼休み。
あたしが4日前から探していた、おきにのウサギのコームを、京花ちゃんが使っていたのだ。
問い詰めたら、「おそろいを買ったんだよ、かわいいと思って」なんて。
そんなのあり得ない。
だって、あのコームについてるビーズは、あたしが自分で開けた穴にテグスを通して付けた、いわばアレンジ。
あたしのを誰かが拾って転売でもしなきゃ、買うなんてできっこないんだ。
そのことを言ったら、京花ちゃんが吐き捨てるみたいに言ったんだ。
「……ってか、歩佳みたいな芋女の代わりに使ってあげてるんだからさ、感謝くらいしなよ?」
こんな可愛いコーム、似合ってなかったしさー。
京花ちゃんは笑った。
もう全部どうでもよくなって。
「最低、あんたなんか大ッ嫌い‼」
泥棒、糞野郎、その他思いつく限りの罵詈雑言を、浴びせた。
そして、泥棒の手にあるコームを取り返した。
予定が合うのに一緒に帰らなかったのは、久しぶりだった。
なんで変わっちゃったの?
大雨が、今も止まない。
うるさい。
雨が屋根にあたる音の中で、澄んだ通知音が鳴る。
「今、ちょっと元気だから
久しぶりに顔見て話したいな。」
尊くんだった。
あぁ、そうだ。
スマホを買ってもらってから、メールでの会話が多くなった。
それに――。
先月、尊くんの容態が急変した。
1度、心臓も止まっていたらしい。
面会なんて、難しいどころじゃなかった。
会えなくて清々してたけど――なんか寂しくて。
だからなんだろうか。
嫌いなあいつに、わざわざ会うことを決めたのは。
「明日行く」
飛行機マークを押し、既読のつくのを確認した。
雨は、強く降り続いていた。
……あたし、なんであいつに電話しようとしてんの?
電話番号の候補に浮かび上がっていた「尊くん」の字を見つめる。そして、番号を1文字、1文字と消す。
途中、尊くんと同じぐらい、今は見たくない名前を見つけた。
あたしは無表情のまま、「京花ちゃん」のボタンを長押しして、削除した。
電話アプリを閉じ、他の連絡ツールからも京花ちゃんの名前を消した。
そして、ゲームを開いた。
癒し系のゲームのはずが、ゆるゆるのんびり動くマスコットが「おいし~い」とごはんを食べるのでさえストレスになる。
広告の画面で硬直して、あたしはもう我慢ができなくなった。
「みんなして、一体何なの⁉」
1番無実なスマホを睨み、怒鳴る。
ことの発端は昼休み。
あたしが4日前から探していた、おきにのウサギのコームを、京花ちゃんが使っていたのだ。
問い詰めたら、「おそろいを買ったんだよ、かわいいと思って」なんて。
そんなのあり得ない。
だって、あのコームについてるビーズは、あたしが自分で開けた穴にテグスを通して付けた、いわばアレンジ。
あたしのを誰かが拾って転売でもしなきゃ、買うなんてできっこないんだ。
そのことを言ったら、京花ちゃんが吐き捨てるみたいに言ったんだ。
「……ってか、歩佳みたいな芋女の代わりに使ってあげてるんだからさ、感謝くらいしなよ?」
こんな可愛いコーム、似合ってなかったしさー。
京花ちゃんは笑った。
もう全部どうでもよくなって。
「最低、あんたなんか大ッ嫌い‼」
泥棒、糞野郎、その他思いつく限りの罵詈雑言を、浴びせた。
そして、泥棒の手にあるコームを取り返した。
予定が合うのに一緒に帰らなかったのは、久しぶりだった。
なんで変わっちゃったの?
大雨が、今も止まない。
うるさい。
雨が屋根にあたる音の中で、澄んだ通知音が鳴る。
「今、ちょっと元気だから
久しぶりに顔見て話したいな。」
尊くんだった。
あぁ、そうだ。
スマホを買ってもらってから、メールでの会話が多くなった。
それに――。
先月、尊くんの容態が急変した。
1度、心臓も止まっていたらしい。
面会なんて、難しいどころじゃなかった。
会えなくて清々してたけど――なんか寂しくて。
だからなんだろうか。
嫌いなあいつに、わざわざ会うことを決めたのは。
「明日行く」
飛行機マークを押し、既読のつくのを確認した。
雨は、強く降り続いていた。