……
「[漢字]浜野[/漢字][ふりがな]はまの[/ふりがな] 歩佳」
「はい」
「[漢字]伏見[/漢字][ふりがな]ふしみ[/ふりがな] 尊、……松本 愛」
「はい」
「山澤 紗枝」
「はい」
……
あいつは、義務教育のルールに従い、入学式で名前だけは呼ばれた。
でも、あいつは学校に来ない。来れない。
……それは、1か月ぽっちじゃ変わるわけない事実。
そんな簡単に治ったら、苦労してないんだけどなー。
あいつはそう、軽く笑った。
そんな軽い問題なわけないでしょ。あんたがそれを1番分かってんでしょ。
それでもヘラヘラしてんのが、余計腹立つ。
無意識のうちに、貧乏ゆすりしながらため息をついていた。
クラスが一緒になった[漢字]京花[/漢字][ふりがな]きょうか[/ふりがな]ちゃんが「どした?なんか悩んでんの?」と聞いてきた。
そりゃそうだよな、あたし今、不機嫌JCのお手本だったもん。
「……そっか~、いるよね、そういう奴」
腹立つよ、と京花ちゃんが言う。
京花ちゃんはあたしたちと小学校が違う。だから初めて話したのは1か月前なんだけど、今では最高の心友。気が合うし、もう2回遊びに行った。
「ほんと……」
そう返して、中庭を挟んで向かいにある家庭科室を見た。あの辺りは人気が無いので、いくらか暗く見える。
「てか、今日、初めての部活じゃん。料理部だっけ?」
「あ、うん。京花ちゃんは……」
「ダンス部!ちょー楽しみっ‼」
「だよね~、なんかダンスって陽キャって感じ」
「え、そうかな?」
「そうだよ~」
どーでもいい会話な感じがする。でも、その“どーでもいい会話”が楽しい。
……あいつの「愛してる」とか「大好き」も、“どーでもいい”って思いながら言ってればいいのに。
「1年1組、浜野 歩佳です。好きな料理はケーキです」
自己紹介は簡潔に。印象は軽く残すくらいでいい。
それに、ケーキだって立派な料理だ。
優しさが隙間なくあふれ出る顧問の先生からの一言は、
「素敵だね~。でもケーキを作るのはちょっとレベルが高いかな?」
予想のつくようなものだった。
そのあとは先輩の自己紹介だとか部の決まりだとかを聞いた。部活1時間なんてすごく短くて、もう完全下校時刻10分前だ。
「早く帰らないと生徒会がうるさいから帰って~」
先輩に半ば急かされるように、校舎を出る。
あたしの家は学校から10分辺りのところにある。ちょうどいい距離なんだそうだ。
でも、小学校よりかは遠い。運動が苦手でバテる。
「ただいま~……」
尊くんのお見舞いは、と聞こうとした。
「あ、歩佳」
でも、その言葉は、ママの次の言葉で吹っ飛んだ。
「もう中学生なんだし、スマホ買いに行くわよ」
「[漢字]浜野[/漢字][ふりがな]はまの[/ふりがな] 歩佳」
「はい」
「[漢字]伏見[/漢字][ふりがな]ふしみ[/ふりがな] 尊、……松本 愛」
「はい」
「山澤 紗枝」
「はい」
……
あいつは、義務教育のルールに従い、入学式で名前だけは呼ばれた。
でも、あいつは学校に来ない。来れない。
……それは、1か月ぽっちじゃ変わるわけない事実。
そんな簡単に治ったら、苦労してないんだけどなー。
あいつはそう、軽く笑った。
そんな軽い問題なわけないでしょ。あんたがそれを1番分かってんでしょ。
それでもヘラヘラしてんのが、余計腹立つ。
無意識のうちに、貧乏ゆすりしながらため息をついていた。
クラスが一緒になった[漢字]京花[/漢字][ふりがな]きょうか[/ふりがな]ちゃんが「どした?なんか悩んでんの?」と聞いてきた。
そりゃそうだよな、あたし今、不機嫌JCのお手本だったもん。
「……そっか~、いるよね、そういう奴」
腹立つよ、と京花ちゃんが言う。
京花ちゃんはあたしたちと小学校が違う。だから初めて話したのは1か月前なんだけど、今では最高の心友。気が合うし、もう2回遊びに行った。
「ほんと……」
そう返して、中庭を挟んで向かいにある家庭科室を見た。あの辺りは人気が無いので、いくらか暗く見える。
「てか、今日、初めての部活じゃん。料理部だっけ?」
「あ、うん。京花ちゃんは……」
「ダンス部!ちょー楽しみっ‼」
「だよね~、なんかダンスって陽キャって感じ」
「え、そうかな?」
「そうだよ~」
どーでもいい会話な感じがする。でも、その“どーでもいい会話”が楽しい。
……あいつの「愛してる」とか「大好き」も、“どーでもいい”って思いながら言ってればいいのに。
「1年1組、浜野 歩佳です。好きな料理はケーキです」
自己紹介は簡潔に。印象は軽く残すくらいでいい。
それに、ケーキだって立派な料理だ。
優しさが隙間なくあふれ出る顧問の先生からの一言は、
「素敵だね~。でもケーキを作るのはちょっとレベルが高いかな?」
予想のつくようなものだった。
そのあとは先輩の自己紹介だとか部の決まりだとかを聞いた。部活1時間なんてすごく短くて、もう完全下校時刻10分前だ。
「早く帰らないと生徒会がうるさいから帰って~」
先輩に半ば急かされるように、校舎を出る。
あたしの家は学校から10分辺りのところにある。ちょうどいい距離なんだそうだ。
でも、小学校よりかは遠い。運動が苦手でバテる。
「ただいま~……」
尊くんのお見舞いは、と聞こうとした。
「あ、歩佳」
でも、その言葉は、ママの次の言葉で吹っ飛んだ。
「もう中学生なんだし、スマホ買いに行くわよ」