小学生になって数日経ったころ、ママが突然言った。
「[漢字]歩佳[/漢字][ふりがな]あゆか[/ふりがな]、尊くんのお見舞いに行こう」
「え、なんで?」
「なんで……って、尊くん、だいぶ落ち着いたんだって」
「……結局、何があったの?あの時」
「歩佳、落ち着いて聞いてね……、尊くんね、心臓に重い病気が見つかったんだって」
しんぞうの、びょうき。
あたしは無表情のままだった。
「死ぬの?」
「分からない。死んじゃうかもしれないし、生きれるかもしれない」
あたしは、死ぬ、ということについてまだよくわからなかった。
だから、その時は安易に、こう考えちゃった。
あいつに、もう2度と会わなくて済む。
けど、[漢字]とりあえず[/漢字][ふりがな]・・・・・[/ふりがな]お見舞いに行くことにした。
病院に向かう途中で、ママが「ケーキ、買いにいこう」と言った。
あそこのケーキは、あたしと尊くんが大好きなケーキのお店。
あたしは、それがすぐ尊くんのお見舞い用だと分かった。
けど、あたしは、自分も買ってもらえたことに嬉々としていた。
2個のショートケーキを持ったママの隣を、わくわくしながら歩いた。
教えられた307号室に向かっている病院の廊下でも、あたしのわくわくは止まらなかった。
何しろ、あたしの大好物が、そろそろ食べれるのだから。
だけど、あたしは病室に入って、戦慄した。
当時は戦慄なんて言葉知らなかったけど、あとから考えたら「戦慄」が1番しっくりくる。
あたしの知ってる尊くんじゃなかった。
管がいっぱい繋がれてて、酸素マスクをつけられていた。
「ごめんね歩佳ちゃん、尊、今寝てるの」
尊くんのママが言った。
「じゃあ、尊くんに、これ」
あたしのママが、ケーキを1切れ置いていこうとした。
「あぁ、ごめんね美佳ちゃん。尊ね、[太字]病気の影響で砂糖が食べられなくなっちゃったの[/太字]」
あたしは、その言葉の意味を理解するのにちょっと時間がかかった。
けど、それがやっとわかった時、また考えちゃった。
もう、ケーキを盗られなくて済む。
けど。
「あれ、歩佳、食べないの?」
「……うん、ママにあげる」
家で、あたしはケーキを1切れも食べ切れなかった。
あいつがいないところで食べるケーキは、まるで砂糖が入ってないみたいに不味かったんだ。
「[漢字]歩佳[/漢字][ふりがな]あゆか[/ふりがな]、尊くんのお見舞いに行こう」
「え、なんで?」
「なんで……って、尊くん、だいぶ落ち着いたんだって」
「……結局、何があったの?あの時」
「歩佳、落ち着いて聞いてね……、尊くんね、心臓に重い病気が見つかったんだって」
しんぞうの、びょうき。
あたしは無表情のままだった。
「死ぬの?」
「分からない。死んじゃうかもしれないし、生きれるかもしれない」
あたしは、死ぬ、ということについてまだよくわからなかった。
だから、その時は安易に、こう考えちゃった。
あいつに、もう2度と会わなくて済む。
けど、[漢字]とりあえず[/漢字][ふりがな]・・・・・[/ふりがな]お見舞いに行くことにした。
病院に向かう途中で、ママが「ケーキ、買いにいこう」と言った。
あそこのケーキは、あたしと尊くんが大好きなケーキのお店。
あたしは、それがすぐ尊くんのお見舞い用だと分かった。
けど、あたしは、自分も買ってもらえたことに嬉々としていた。
2個のショートケーキを持ったママの隣を、わくわくしながら歩いた。
教えられた307号室に向かっている病院の廊下でも、あたしのわくわくは止まらなかった。
何しろ、あたしの大好物が、そろそろ食べれるのだから。
だけど、あたしは病室に入って、戦慄した。
当時は戦慄なんて言葉知らなかったけど、あとから考えたら「戦慄」が1番しっくりくる。
あたしの知ってる尊くんじゃなかった。
管がいっぱい繋がれてて、酸素マスクをつけられていた。
「ごめんね歩佳ちゃん、尊、今寝てるの」
尊くんのママが言った。
「じゃあ、尊くんに、これ」
あたしのママが、ケーキを1切れ置いていこうとした。
「あぁ、ごめんね美佳ちゃん。尊ね、[太字]病気の影響で砂糖が食べられなくなっちゃったの[/太字]」
あたしは、その言葉の意味を理解するのにちょっと時間がかかった。
けど、それがやっとわかった時、また考えちゃった。
もう、ケーキを盗られなくて済む。
けど。
「あれ、歩佳、食べないの?」
「……うん、ママにあげる」
家で、あたしはケーキを1切れも食べ切れなかった。
あいつがいないところで食べるケーキは、まるで砂糖が入ってないみたいに不味かったんだ。