「かぐや姫様、帝がいらっしゃいました」
「放っておきなさい」
「ですが」
「仕方ありません、会うだけ会います」
ため息を付く。最近帝がうるさい。迷惑だ。
「かぐや姫」
「何ですか、さっさと要件を言ってください」
「宮中に来て働かぬか?」
またか、しつこいな。このやり取りは何度目だろう。
「無理です。私は竹取家当主。この竹取家をおいて働くことなどできません。お引き取りください」
右手を上げて指示を出す。いつもどうり帝はむりやり退出させられる。これでいい。私は今、老齢の二人に代わってこの竹取家を切り盛りしている。だから、どこかについて働くことなど論外だ。ひれ伏すことなんてもってのほか。
「富士に行きます」
「今、なんと?」
「富士に行く準備を始めてください。今すぐに」
私は遠くにあるであろう富士を思う。まだ見ぬ富士。この地で最も高い山ともいわれる富士。桜子はエベレストだって言ってたけど。
私は今の状況と思いを綴る。
「また、会えるかな」
会えないことはわかっている。でも、いつか。
「姫様。準備が整いました」
富士へ。出発した。今まで出会ってきたどんなもの、どんな場所よりも遠くへ。
「姫様、もうじきつきます」
何日も移動し続けた。桜子に当てた文を眺めながらずっと揺られていた。
御簾を上げて風景を見る。富士が見える。大きく壮大だ。私達人間の何倍もの月日を存在し続けた富士。
その山腹まで登る。少しでも桜子に思いが伝わりやすい場所が良かった。伝わらないことは知っている。でも。
「火を炊いて」
焚き火が起こる。少しずつ大きくなっていく。温かな光に見入った。
文を開く。宛名は鳥羽桜子。何かが違う。当てるべき名は、これじゃない。
「筆をください」
炭に浸す。筆を整える。
宛名の鳥羽桜子を一本線で消す。
「竹月桜」
その横に親友の名を綴る。
「竹月桜」
もう一度呟く。
文を火にくべる。煙が空へと舞い上がる。未来で確かに生きている、親友へ。
「ありがとう」
私は振り向き、山を下り始める。振り返らない。振り返ったら、もう、帰れなくなってしまう。それだけに苦しくなってしまう。
それは、私の親友は望んでいない。
涙で陽の光がよりいっそう輝く。
「ありがとう」
「放っておきなさい」
「ですが」
「仕方ありません、会うだけ会います」
ため息を付く。最近帝がうるさい。迷惑だ。
「かぐや姫」
「何ですか、さっさと要件を言ってください」
「宮中に来て働かぬか?」
またか、しつこいな。このやり取りは何度目だろう。
「無理です。私は竹取家当主。この竹取家をおいて働くことなどできません。お引き取りください」
右手を上げて指示を出す。いつもどうり帝はむりやり退出させられる。これでいい。私は今、老齢の二人に代わってこの竹取家を切り盛りしている。だから、どこかについて働くことなど論外だ。ひれ伏すことなんてもってのほか。
「富士に行きます」
「今、なんと?」
「富士に行く準備を始めてください。今すぐに」
私は遠くにあるであろう富士を思う。まだ見ぬ富士。この地で最も高い山ともいわれる富士。桜子はエベレストだって言ってたけど。
私は今の状況と思いを綴る。
「また、会えるかな」
会えないことはわかっている。でも、いつか。
「姫様。準備が整いました」
富士へ。出発した。今まで出会ってきたどんなもの、どんな場所よりも遠くへ。
「姫様、もうじきつきます」
何日も移動し続けた。桜子に当てた文を眺めながらずっと揺られていた。
御簾を上げて風景を見る。富士が見える。大きく壮大だ。私達人間の何倍もの月日を存在し続けた富士。
その山腹まで登る。少しでも桜子に思いが伝わりやすい場所が良かった。伝わらないことは知っている。でも。
「火を炊いて」
焚き火が起こる。少しずつ大きくなっていく。温かな光に見入った。
文を開く。宛名は鳥羽桜子。何かが違う。当てるべき名は、これじゃない。
「筆をください」
炭に浸す。筆を整える。
宛名の鳥羽桜子を一本線で消す。
「竹月桜」
その横に親友の名を綴る。
「竹月桜」
もう一度呟く。
文を火にくべる。煙が空へと舞い上がる。未来で確かに生きている、親友へ。
「ありがとう」
私は振り向き、山を下り始める。振り返らない。振り返ったら、もう、帰れなくなってしまう。それだけに苦しくなってしまう。
それは、私の親友は望んでいない。
涙で陽の光がよりいっそう輝く。
「ありがとう」