「……手を組むって、具体的に何をするんですか」
私は拳を握ったまま、一ノ瀬先輩を睨み返した。学校一のイケメンにそんな不敵な笑みを浮かべられても、今の私の脳内は怒りと悔しさで沸騰している。
先輩は手すりから背を離し、私の目の前まで階段を二段下りてきた。目線が同じ高さになる。
「簡単な話だよ。白石美羽は、俺の気を引くために蓮見を利用してる。だったら、俺が別の女子に夢中になれば、あいつの作戦は完全に破綻するだろ?」
「別の女子って……」
「そう、君だ」
先輩は私のショートカットの髪に視線を落とし、ニヤリと笑った。
「高城、君と俺が付き合っているフリをするんだ。名付けて『偽装カップル作戦』。あいつらの前で、これ見よがしに仲良くしてやるんだよ」
心臓がドクン、と大きく跳ね上がった。
嘘でしょ。私みたいな、泥まみれのジャージが似合うサバサバ女が、学校一の有名人である一ノ瀬柊の彼女のフリ? そんなの、不釣り合いすぎて嫌がらせのレベルだ。
「無理です、先輩! 私、女子っぽくないし、そんな可愛い演技なんてできません!」
思わず強がりの裏にある本音で叫ぶと、先輩は呆れたように息を吐いた。
「誰が可愛い演技をしろって言った? そのままの君でいいんだよ。むしろ、白石みたいな『いかにも女の子』ってタイプに執着されてウンザリしてる俺が、君みたいな飾らない女子を選んだ方が、あいつへの最大の見せつけ(あてつけ)になる」
先輩の言葉は、私のコンクリートのように固まっていた劣等感を、少しだけ軽くした。
飾らない、そのままの私。
先輩はさらに言葉を重ねる。
「それにさ、蓮見の顔も見ものだろ。自分をフッたはずの『都合のいい元マネージャー』が、自分より遥かに格上の男と付き合って目の前に現れるんだ。あいつのプライドは粉々に砕け散るよ」
蓮見の、あの鼻につく爽やかな笑顔が引きつる瞬間が、脳裏をよぎる。
私を都合よくフったこと、私の優しさを舐めていたこと、そのすべてを後悔させられる。
美羽に騙されているとも知らずに浮かれているあいつに、現実の甘くなさを教えることができる。
「……やります」
私は先輩の目を真っ直ぐに見つめ返した。
「蓮見にも、白石美羽にも、私のこと舐めたツケを払ってもらいます」
「いい返事だ」
先輩は満足そうに微笑むと、ポケットから手を出し、私の前に綺麗な右手を差し出してきた。
「よろしく、相棒。……じゃあさっそく、今日の放課後、デートの練習といこうか」
差し出された手を握り返したとき、私の「甘くない現実」の物語は、まったく予想外の方向へと走り出していた。
私は拳を握ったまま、一ノ瀬先輩を睨み返した。学校一のイケメンにそんな不敵な笑みを浮かべられても、今の私の脳内は怒りと悔しさで沸騰している。
先輩は手すりから背を離し、私の目の前まで階段を二段下りてきた。目線が同じ高さになる。
「簡単な話だよ。白石美羽は、俺の気を引くために蓮見を利用してる。だったら、俺が別の女子に夢中になれば、あいつの作戦は完全に破綻するだろ?」
「別の女子って……」
「そう、君だ」
先輩は私のショートカットの髪に視線を落とし、ニヤリと笑った。
「高城、君と俺が付き合っているフリをするんだ。名付けて『偽装カップル作戦』。あいつらの前で、これ見よがしに仲良くしてやるんだよ」
心臓がドクン、と大きく跳ね上がった。
嘘でしょ。私みたいな、泥まみれのジャージが似合うサバサバ女が、学校一の有名人である一ノ瀬柊の彼女のフリ? そんなの、不釣り合いすぎて嫌がらせのレベルだ。
「無理です、先輩! 私、女子っぽくないし、そんな可愛い演技なんてできません!」
思わず強がりの裏にある本音で叫ぶと、先輩は呆れたように息を吐いた。
「誰が可愛い演技をしろって言った? そのままの君でいいんだよ。むしろ、白石みたいな『いかにも女の子』ってタイプに執着されてウンザリしてる俺が、君みたいな飾らない女子を選んだ方が、あいつへの最大の見せつけ(あてつけ)になる」
先輩の言葉は、私のコンクリートのように固まっていた劣等感を、少しだけ軽くした。
飾らない、そのままの私。
先輩はさらに言葉を重ねる。
「それにさ、蓮見の顔も見ものだろ。自分をフッたはずの『都合のいい元マネージャー』が、自分より遥かに格上の男と付き合って目の前に現れるんだ。あいつのプライドは粉々に砕け散るよ」
蓮見の、あの鼻につく爽やかな笑顔が引きつる瞬間が、脳裏をよぎる。
私を都合よくフったこと、私の優しさを舐めていたこと、そのすべてを後悔させられる。
美羽に騙されているとも知らずに浮かれているあいつに、現実の甘くなさを教えることができる。
「……やります」
私は先輩の目を真っ直ぐに見つめ返した。
「蓮見にも、白石美羽にも、私のこと舐めたツケを払ってもらいます」
「いい返事だ」
先輩は満足そうに微笑むと、ポケットから手を出し、私の前に綺麗な右手を差し出してきた。
「よろしく、相棒。……じゃあさっそく、今日の放課後、デートの練習といこうか」
差し出された手を握り返したとき、私の「甘くない現実」の物語は、まったく予想外の方向へと走り出していた。