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『誰とも付き合う気ない』の翻訳が『お前とは無理』だった件について。

#4

第3話:利害一致のパートナー

「……手を組むって、具体的に何をするんですか」

私は拳を握ったまま、一ノ瀬先輩を睨み返した。学校一のイケメンにそんな不敵な笑みを浮かべられても、今の私の脳内は怒りと悔しさで沸騰している。

先輩は手すりから背を離し、私の目の前まで階段を二段下りてきた。目線が同じ高さになる。

「簡単な話だよ。白石美羽は、俺の気を引くために蓮見を利用してる。だったら、俺が別の女子に夢中になれば、あいつの作戦は完全に破綻するだろ?」

「別の女子って……」

「そう、君だ」

先輩は私のショートカットの髪に視線を落とし、ニヤリと笑った。

「高城、君と俺が付き合っているフリをするんだ。名付けて『偽装カップル作戦』。あいつらの前で、これ見よがしに仲良くしてやるんだよ」

心臓がドクン、と大きく跳ね上がった。
嘘でしょ。私みたいな、泥まみれのジャージが似合うサバサバ女が、学校一の有名人である一ノ瀬柊の彼女のフリ? そんなの、不釣り合いすぎて嫌がらせのレベルだ。

「無理です、先輩! 私、女子っぽくないし、そんな可愛い演技なんてできません!」
思わず強がりの裏にある本音で叫ぶと、先輩は呆れたように息を吐いた。

「誰が可愛い演技をしろって言った? そのままの君でいいんだよ。むしろ、白石みたいな『いかにも女の子』ってタイプに執着されてウンザリしてる俺が、君みたいな飾らない女子を選んだ方が、あいつへの最大の見せつけ(あてつけ)になる」

先輩の言葉は、私のコンクリートのように固まっていた劣等感を、少しだけ軽くした。
飾らない、そのままの私。

先輩はさらに言葉を重ねる。
「それにさ、蓮見の顔も見ものだろ。自分をフッたはずの『都合のいい元マネージャー』が、自分より遥かに格上の男と付き合って目の前に現れるんだ。あいつのプライドは粉々に砕け散るよ」

蓮見の、あの鼻につく爽やかな笑顔が引きつる瞬間が、脳裏をよぎる。
私を都合よくフったこと、私の優しさを舐めていたこと、そのすべてを後悔させられる。
美羽に騙されているとも知らずに浮かれているあいつに、現実の甘くなさを教えることができる。

「……やります」
私は先輩の目を真っ直ぐに見つめ返した。
「蓮見にも、白石美羽にも、私のこと舐めたツケを払ってもらいます」

「いい返事だ」
先輩は満足そうに微笑むと、ポケットから手を出し、私の前に綺麗な右手を差し出してきた。

「よろしく、相棒。……じゃあさっそく、今日の放課後、デートの練習といこうか」

差し出された手を握り返したとき、私の「甘くない現実」の物語は、まったく予想外の方向へと走り出していた。

作者メッセージ

第3話をお読みいただきありがとうございました!

ついに柊先輩から「偽装カップル作戦」が提案されました!
強がりで女子力に自信がない千晶ですが、先輩の「そのままの君がいい」という言葉に背中を押され、同盟を結ぶことに。
ここから、裏切った蓮と腹黒な美羽への、本格的なリベンジが始まります。

次回、さっそく始まる「放課後デートの練習」。ビジネスライクな関係のはずが、距離が近すぎて千晶の心臓が持たない予感……!?

「この二人お似合い!」「早く蓮見たちの鼻を明かしてほしい!」など、皆様の感想をぜひコメント欄でお待ちしております!

そして、もしかしたらこの2人をガチで恋人にしようかな?でも、現実はそう甘くないっていうテーマだからな⋯と思っているので皆様の意見が聞きたいです!

2026/06/26 21:35

紗奈(さな) 元苺花
ID:≫ 09TUAnUf7Mj7U
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