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恋の短編集。

#7

ぶりっ子(恋愛要素ほぼなし)

私は笹寺愛華。もうすぐ高校卒業の、世に言うぶりっ子だ。
さて、私はそろそろぶりっ子を卒業しようと思っている。
かわいいだけで許されるのは、子供までだし。私もそろそろ18歳になって、子供じゃなくなるから。
だけど、ずーっと中学からぶりっ子キャラでやってきてた。
それに、反感を買わないよう、男女問わずぶりっ子してきた。
だから、卒業しにくい…
「あの〜…笹寺さん…」
「なぁに?」
別に好きでもない男子にこんな話し方をしてしまう私に嫌気が差す。
「進路調査票出してなかったので…その…」
「そっかそっかぁ、ごめんねぇ。今出すからねっ!」
そうして渡し、逃げるようにトイレに入った、するとそこにいたのは、憧れの女の子だった(恋愛感情は無だが)。
「国田さん!」
国田麻子さん。とってもかっこいい女の子。
「あれ、笹寺さん。あのさ、笹寺さん最近悩みない?」
「え…」
国田さんなんでわかるの!?
「わかるよ。笹寺さんわかりやすいし」
「うそぉ」
「でさ、悩みって何?教えてくれる?笹寺さんの悩み聞くよ」
「……実はね」
私は一瞬だけ、いつもの甘ったるい声を出しかけて、ぐっと飲み込んだ。
国田さんは急かさず、鏡にもたれたまま待ってくれている。
「私、ぶりっ子やめようと思ってて」
「ふうん」
「でも、中学からずっとこのキャラで生きてきたから、今さらどうしたらいいかわかんなくて」
沈黙。
心臓がやたらうるさい。
「正直さ、かわいいって言われるのも、優しくされるのも、嫌いじゃない。むしろ好き。でもそれって、“笹寺愛華”じゃなくて、“ぶりっ子の笹寺”に向けられてるんだなって思うと……」
そこまで言って、やっと国田さんの方を見る。
「……ちょっと、疲れた」
国田さんは少しだけ目を細めて、ふっと笑った。
「それ、十分じゃん」
「え?」
「やめたい理由、ちゃんと自分でわかってるってこと」
トイレの換気扇の音が、妙に大きく聞こえる。
「笹寺さんさ、無理にキャラ変しなくていいと思う」
「でも……」
「“ぶりっ子をやめる”って決めるから苦しいんじゃない?
 ただ、疲れた日は無理しない。それだけでいい」
国田さんは鏡越しに私を見た。
「今日は、今みたいに普通に話してるじゃん」
「……あ」
確かに。
語尾も伸ばしてないし、作り笑いもしてない。
「それで誰かに嫌われたらさ」
国田さんは肩をすくめる。
「その程度の関係だったってことだよ」
胸の奥が、じんわり熱くなる。
「……国田さんって、ほんとかっこいい」
「はいはい」
照れたようにそっぽを向く横顔を見て、思った。
この人みたいに、無理しないで立っていられる大人になりたい。
「ね、笹寺さん」
「なに?」
「高校卒業したらさ、一回リセットじゃん」
「……うん」
「大学でも就職でも、最初は“素”でいけばいい。
 かわいくしたくなったら、そのときすればいいし」
私は、深く息を吸って、吐いた。
「……ありがとう。なんか、少し楽になった」
「よかった」
チャイムが鳴る。
「戻ろっか」
「うん」
トイレを出るとき、私は小さく決めた。
今日から完璧じゃなくていい。
ぶりっ子を“演じない時間”を、少しずつ増やしていこうって。
——かわいいだけじゃない私を、
まずは私自身が、ちゃんと認めてあげるために。

作者メッセージ

急に頭に入ってきた奴
最近スランプ気味というか、小説書く前に疲れて死にそうになる

2025/12/25 20:16

みわし
ID:≫ 41Hr8ljzmJmOs
コメント

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NL短編集恋愛友情

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