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真理の観測者:転生したら世界の理を上書きする力を持っていた件

#4

第4話:名付けの代償と、黄昏の村への行進

牙狼族を「死の疑似体験」という爆発的な恐怖で屈服させた佐藤匠人は、冷めた目でその光景を眺めていた。数百頭の狼が、まるで飼い犬のように行儀よく座り込み、匠人の一挙手一投足に怯えながらも、深い敬意(と生存本能)を示している。
「……さて。降伏を受け入れた以上、呼び名がないのは不便だな。……リムル、お前の出番だ」
匠人は、足元でプルプルと震えているスライムを指差した。
「えっ!? 俺がやるのかよ、佐藤さん! こういうのは主(あるじ)であるあんたがやった方が……」
「……断る。名付けなんていう、魔素をドブに捨てるような『無駄』なことは、俺の主義に反する。……お前なら、この犬どもの器を広げるくらいは造作もないだろ」
匠人は、自身の能力を「爆弾」に限定している。名付けによる進化は、ある種の世界の理への「干渉」だ。彼はそれを、今はまだ傍観することに決めていた。
■ 魔素の暴風:リムルの「一斉名付け」
結局、押し切られる形でリムルの名付けが始まった。
「えーと、お前はランガ、お前たちは……」
リムルが牙狼族、そしてそれを見守っていた少数のゴブリンたちに次々と名前を与えていく。本来なら、これほどの数に名付けを行えば、魔素が枯渇して数日は動けなくなるはずだ。だが、この場には「佐藤匠人」という絶対的な魔素の供給源(バックアップ)が存在していた。
「……チッ、見ていられないな。……リムル、お前の魔素が底を突く前に、俺が補填してやる」
匠人は、指先で空中に小さな火花を散らした。
「『爆弾:エネルギー還元』。……周囲の大気中の魔素を微小爆発させ、お前の体内に強制的に押し込む」
パチッ、と匠人が指を鳴らす。
目に見えない衝撃波がリムルを包み、大気から剥ぎ取られた膨大なエネルギーが、リムルの核へと充填されていく。リムルは気絶することなく、数分で数百名への名付けを完了させてしまった。
「お、おい……全然疲れないんだけど!? むしろ、さっきより元気な気がする……!」
リムルが自分の身体(スライム体)を弾ませる。
「……気にするな。無駄に時間をかけて眠られるよりはマシだ」
■ 変貌した群れ:ゴブリンの村への帰還
名付けが終わると、奇跡のような進化が始まった。
牙狼族は一回り大きく、毛並みは銀色に輝く『嵐牙狼(テンペストウルフ)』へと変貌し、怯えていたゴブリンたちも、筋骨隆々とした『ホブゴブリン』や艶やかな『ゴブリナ』へと進化した。
「クハハハ! 面白い! 名付け一つでこれほどまでに個体の格が上がるとは! 佐藤、貴殿の魔素供給もまたデタラメよな!」
人間の姿をしたヴェルドラが、腕組みをしながら感心したように頷く。
「……準備は済んだな。……次は、お前たちの村へ行くぞ。……案内しろ、リグルド」
匠人の呼びかけに、村長であった老ゴブリン……否、今は立派な体躯を持つ戦士へと進化したリグルドが、涙を流しながら平伏した。
「はっ! 佐藤様、リムル様、ヴェルドラ様! 我らが村へ、謹んでご案内いたします!」
■ 黄昏の行進:爆弾の防衛線
一行は、牙狼族を従え、ゴブリンの村へと向かって森の中を行進し始めた。
匠人は、先頭を歩きながらも、周囲の殺気に敏感に反応していた。ジュラの森の秩序が、暴風竜の消滅(実際は解放)によって崩壊し、飢えた魔物たちが村を狙っているのが視える。
「……騒がしいな。……歩いている間に、村の周囲を『爆破予約』しておくとしよう」
匠人は、歩きながら道端の石ころや木々に、次々と指先で触れていった。
「『第一の爆弾:感圧式爆破・事象固定』」
匠人が触れた場所には、透明な、しかし致命的な精神エネルギーの刻印が刻まれていく。それは、特定の殺意を持った者が踏み込まない限り発動しない、究極の地雷原だ。
「……おい佐藤、今何したんだ?」
リムルが不思議そうに尋ねる。
「……ただの保険だ。……俺たちが村に着く前に、横槍を入れられるのは『無駄』だからな。……もし、俺たちが通り過ぎた後に誰かが村を襲おうとすれば……その瞬間、その場所の『存在』が爆発する」
匠人がそう言い終えた瞬間。
数キロ後方、彼らが通り過ぎたばかりの森の奥で、巨大な爆発音が響いた。
音は一度きり。だが、そこにあったはずの巨大な熊型の魔物の気配が、一瞬で完全に消失した。
「クハハハ! 容赦がない! 貴殿の爆弾は、もはや因果を直接断ち切っておるではないか!」
ヴェルドラが愉快そうに笑うが、進化したゴブリンたちは、改めて自分たちの主となった男の、底の知れない恐怖に背筋を凍らせた。
「……着いたぞ。ここが、お前たちの村か」
夕闇に包まれた、粗末な小屋が並ぶ村。
だが、佐藤匠人がその地に足を踏み入れた瞬間、そこはただの村ではなく、世界の理から切り離された「絶対聖域」へと変わり始めた。
「……リグルド。……飯の準備をしろ。……不味いのは、爆破するぞ」
匠人の不器用な、しかし圧倒的な支配の第一歩が、ジュラの森に刻まれた。

2026/03/04 22:06

taku203503
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