「……マキマさん。もう一度だけ聞くが、正気か?」
公安の鍛錬場。佐藤匠人は、目の前で「ギャハハ!」と笑いながら互いの鼻の穴に指を突っ込み合っているデンジとパワーを指差し、冷ややかな視線をマキマに向けた。
「この二人の修行(しつけ)を俺に任せると? ……岸辺さんという適任がいるはずだろう」
マキマは優雅にコーヒーを啜りながら、小首をかしげた。
「岸辺くんは今、別の任務で忙しいの。それに、佐藤くん。あなたの『暴力の極致』を彼らに叩き込んでほしいのよ。彼らは死なないから、手加減はいらないわ」
「……死なない、か。俺の拳を知っていて言っているなら、それは悪趣味な冗談だぞ」
匠人は溜息をつき、一歩前へ出た。
「おい、そこのバカ二人。遊ぶのは終わりだ。……俺が相手をしてやる」
「お! 佐藤じゃねーか! ちょうどいいぜ、昨日の『無駄無駄』ってやつ、俺にも教えろよ!」
デンジがスターターを引こうとする。
「ふん! ワシの血の武器があれば、貴様のような軟弱な人間など一突きよ!」
パワーが巨大なハンマーを形成する。
匠人は、ポケットから手を出さず、ただ静かに佇んでいた。
「……教えることは何もない。ただ、お前たちが『届かない』という絶望を、身体に刻んでやるだけだ」
■ 静止なき回避:身体能力の極致
修行が始まった。
デンジがチェンソーを振り回し、パワーが血の礫を乱射する。
本来なら、匠人が『ワールド・エンド』を一瞬発動させれば、彼らを肉の塊に変えるのは造作もない。だが、修行にならないため、匠人はあえて「スタンド」すら出さずに回避に徹した。
「遅い。……欠伸が出るぞ」
匠人の動きは、予知能力(全知全能の眼)を使っているわけでもないのに、まるで未来を知っているかのようだった。
デンジのチェンソーが鼻先をかすめる寸前、匠人は首を数ミリだけ傾けて回避する。パワーのハンマーが振り下ろされる直前、彼は地面の微かな振動から軌道を読み、一歩横へずれる。
「クソッ! 当たんねえ! なんで当たらねえんだよ!」
「貴様、さては魔法を使っておるな!? 卑怯なり!」
「……魔法ではない。お前たちの動きが、あまりに単調で『無駄』が多いだけだ」
匠人は、デンジのチェンソーの隙間を縫うようにして、彼の額を指先で弾いた。
パァン! と乾いた音が響き、デンジの身体が数メートル吹き飛ぶ。
「ぐはっ!? 指先でこれかよ……!」
「パワー、お前もだ。血を固めるのはいいが、その瞬間に意識が逸れている。……死にたいのか?」
匠人は、背後から迫るパワーの角を掴むと、そのまま彼女を軽々と投げ飛ばした。
■ 無限の連打:手加減という名の地獄
「……そろそろ、反撃の許可を出そう。ただし、お前たちが耐えられればの話だが」
匠人が右手を掲げると、背後に黄金の像——『クロノス・アンリミテッド』が静かに現れた。
そのオーラだけで、鍛錬場の空気が重力に逆らうように震え始める。
「『黄金の回転』。……これを受けると、お前たちの細胞は永久に回り続けることになる。……だが、今回は『修復(クレイジー・ダイヤモンド)』を併用してやる。壊れるたびに直してやるから、安心して死んでこい」
「……え、それって、永遠に痛いってことじゃねえか!?」
デンジが青ざめる。
「正解だ。……行くぞ」
匠人が指を鳴らす。
瞬間、鍛錬場は黄金の残像で埋め尽くされた。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!!」
匠人のラッシュが、デンジとパワーの全身に突き刺さる。
一発で内臓が弾け、骨が粉砕される威力の拳。だが、その拳が触れた瞬間に『クレイジー・ダイヤモンド』の修復能力が発動し、破壊された肉体が瞬時に「元通り」に再生される。
「ギャァァァッ! 痛い! でも治ってる! でも痛いぃぃ!」
「うぎゃぁぁ! ワシの角がぁ! 生えたり折れたり、忙しいのだぁぁ!」
破壊と再生。
それは、死ぬことすら許されない無限の苦行。
匠人の拳は、因果律すら無視する速度で、彼らの神経に「究極の痛み」という情報を直接書き込んでいく。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァーッ!!」
数分後。
鍛錬場の中央には、泡を吹いて気絶したデンジと、白目を剥いてガタガタと震えているパワーの姿があった。
身体は無傷。だが、その精神は、一生分の苦痛を短時間で味わわされたことで完全に破壊されていた。
■ 修行の果てに
「……ふぅ。マキマさん、これで満足か?」
匠人は乱れた髪を整え、見学席にいたマキマを振り返った。
マキマは感心したように拍手を送る。
「素晴らしいわ、佐藤くん。彼ら、さっきよりも『悪魔に近い本能』が目覚めているもの」
「本能というか、単なるトラウマだろうな。……俺の顔を見るだけで、吐くようになるかもしれないぞ」
匠人は倒れている二人の傍らに膝をつき、最後にもう一度だけ『クレイジー・ダイヤモンド』の光を浴びせた。
「……精神の摩耗までは直せないが、せめて良い夢を見られるようにしてやろう」
匠人が去った後、デンジがうわ言のように呟いた。
「……佐藤、お前……。次は、もっと弱く殴ってくれよ……」
その光景を影から見ていた早川アキは、震える手でタバコに火をつけた。
(……アイツを敵に回さなくて、本当によかった……。マキマさんですら、アイツをコントロールできているのか怪しいものだ)
夕暮れ時。
匠人はひとりで、いつもの公園のベンチに座っていた。
「……修行、か。結局、俺が一番疲れたな」
彼はポケットから、コベニにもらったお菓子の袋を取り出した。
「……静寂が、一番だ」
匠人が一口、クッキーを齧る。
その穏やかな時間は、彼のチート能力でも、何物にも代えがたい「本物の日常」だった。
だが、そんな静寂を切り裂くように、匠人のスマホが鳴る。
発信者はマキマ。
「佐藤くん。京都へ行く準備をして。……いよいよ、銃の悪魔の本体、その一部が動き出すわ」
匠人の瞳から、日常の光が消える。
「……ようやく、本気を出せる相手が出てくるのか」
黄金の精神エネルギーが、夜の帳を切り裂くように激しく揺らめいた。
公安の鍛錬場。佐藤匠人は、目の前で「ギャハハ!」と笑いながら互いの鼻の穴に指を突っ込み合っているデンジとパワーを指差し、冷ややかな視線をマキマに向けた。
「この二人の修行(しつけ)を俺に任せると? ……岸辺さんという適任がいるはずだろう」
マキマは優雅にコーヒーを啜りながら、小首をかしげた。
「岸辺くんは今、別の任務で忙しいの。それに、佐藤くん。あなたの『暴力の極致』を彼らに叩き込んでほしいのよ。彼らは死なないから、手加減はいらないわ」
「……死なない、か。俺の拳を知っていて言っているなら、それは悪趣味な冗談だぞ」
匠人は溜息をつき、一歩前へ出た。
「おい、そこのバカ二人。遊ぶのは終わりだ。……俺が相手をしてやる」
「お! 佐藤じゃねーか! ちょうどいいぜ、昨日の『無駄無駄』ってやつ、俺にも教えろよ!」
デンジがスターターを引こうとする。
「ふん! ワシの血の武器があれば、貴様のような軟弱な人間など一突きよ!」
パワーが巨大なハンマーを形成する。
匠人は、ポケットから手を出さず、ただ静かに佇んでいた。
「……教えることは何もない。ただ、お前たちが『届かない』という絶望を、身体に刻んでやるだけだ」
■ 静止なき回避:身体能力の極致
修行が始まった。
デンジがチェンソーを振り回し、パワーが血の礫を乱射する。
本来なら、匠人が『ワールド・エンド』を一瞬発動させれば、彼らを肉の塊に変えるのは造作もない。だが、修行にならないため、匠人はあえて「スタンド」すら出さずに回避に徹した。
「遅い。……欠伸が出るぞ」
匠人の動きは、予知能力(全知全能の眼)を使っているわけでもないのに、まるで未来を知っているかのようだった。
デンジのチェンソーが鼻先をかすめる寸前、匠人は首を数ミリだけ傾けて回避する。パワーのハンマーが振り下ろされる直前、彼は地面の微かな振動から軌道を読み、一歩横へずれる。
「クソッ! 当たんねえ! なんで当たらねえんだよ!」
「貴様、さては魔法を使っておるな!? 卑怯なり!」
「……魔法ではない。お前たちの動きが、あまりに単調で『無駄』が多いだけだ」
匠人は、デンジのチェンソーの隙間を縫うようにして、彼の額を指先で弾いた。
パァン! と乾いた音が響き、デンジの身体が数メートル吹き飛ぶ。
「ぐはっ!? 指先でこれかよ……!」
「パワー、お前もだ。血を固めるのはいいが、その瞬間に意識が逸れている。……死にたいのか?」
匠人は、背後から迫るパワーの角を掴むと、そのまま彼女を軽々と投げ飛ばした。
■ 無限の連打:手加減という名の地獄
「……そろそろ、反撃の許可を出そう。ただし、お前たちが耐えられればの話だが」
匠人が右手を掲げると、背後に黄金の像——『クロノス・アンリミテッド』が静かに現れた。
そのオーラだけで、鍛錬場の空気が重力に逆らうように震え始める。
「『黄金の回転』。……これを受けると、お前たちの細胞は永久に回り続けることになる。……だが、今回は『修復(クレイジー・ダイヤモンド)』を併用してやる。壊れるたびに直してやるから、安心して死んでこい」
「……え、それって、永遠に痛いってことじゃねえか!?」
デンジが青ざめる。
「正解だ。……行くぞ」
匠人が指を鳴らす。
瞬間、鍛錬場は黄金の残像で埋め尽くされた。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァッ!!!」
匠人のラッシュが、デンジとパワーの全身に突き刺さる。
一発で内臓が弾け、骨が粉砕される威力の拳。だが、その拳が触れた瞬間に『クレイジー・ダイヤモンド』の修復能力が発動し、破壊された肉体が瞬時に「元通り」に再生される。
「ギャァァァッ! 痛い! でも治ってる! でも痛いぃぃ!」
「うぎゃぁぁ! ワシの角がぁ! 生えたり折れたり、忙しいのだぁぁ!」
破壊と再生。
それは、死ぬことすら許されない無限の苦行。
匠人の拳は、因果律すら無視する速度で、彼らの神経に「究極の痛み」という情報を直接書き込んでいく。
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァーッ!!」
数分後。
鍛錬場の中央には、泡を吹いて気絶したデンジと、白目を剥いてガタガタと震えているパワーの姿があった。
身体は無傷。だが、その精神は、一生分の苦痛を短時間で味わわされたことで完全に破壊されていた。
■ 修行の果てに
「……ふぅ。マキマさん、これで満足か?」
匠人は乱れた髪を整え、見学席にいたマキマを振り返った。
マキマは感心したように拍手を送る。
「素晴らしいわ、佐藤くん。彼ら、さっきよりも『悪魔に近い本能』が目覚めているもの」
「本能というか、単なるトラウマだろうな。……俺の顔を見るだけで、吐くようになるかもしれないぞ」
匠人は倒れている二人の傍らに膝をつき、最後にもう一度だけ『クレイジー・ダイヤモンド』の光を浴びせた。
「……精神の摩耗までは直せないが、せめて良い夢を見られるようにしてやろう」
匠人が去った後、デンジがうわ言のように呟いた。
「……佐藤、お前……。次は、もっと弱く殴ってくれよ……」
その光景を影から見ていた早川アキは、震える手でタバコに火をつけた。
(……アイツを敵に回さなくて、本当によかった……。マキマさんですら、アイツをコントロールできているのか怪しいものだ)
夕暮れ時。
匠人はひとりで、いつもの公園のベンチに座っていた。
「……修行、か。結局、俺が一番疲れたな」
彼はポケットから、コベニにもらったお菓子の袋を取り出した。
「……静寂が、一番だ」
匠人が一口、クッキーを齧る。
その穏やかな時間は、彼のチート能力でも、何物にも代えがたい「本物の日常」だった。
だが、そんな静寂を切り裂くように、匠人のスマホが鳴る。
発信者はマキマ。
「佐藤くん。京都へ行く準備をして。……いよいよ、銃の悪魔の本体、その一部が動き出すわ」
匠人の瞳から、日常の光が消える。
「……ようやく、本気を出せる相手が出てくるのか」
黄金の精神エネルギーが、夜の帳を切り裂くように激しく揺らめいた。