「特異0課、佐藤匠人……。マキマさんは、あんな得体の知れない男を本気で信頼しているのか」
早川アキは、公安の廊下で苦々しく呟いた。
第1話での「ナマコの悪魔」の一件は、4課の面々に戦慄を与えた。戦いとすら呼べない、一瞬の消失。アキが命を削って契約している「狐の悪魔」や「呪いの悪魔」が、まるでおもちゃのように思えるほどの格差。
そんな中、匠人はマキマの指示で、アキの指揮下にあるデンジとパワーの「再教育」に同行することになった。
「佐藤さん、今日は練馬の廃屋に潜伏している『コウモリの悪魔』の捜索です。……聞いていますか?」
アキが問いかけるが、隣を歩く匠人はワイヤレスイヤホンで音楽を聴いており、返事すらしない。
「……チッ。デンジ、パワー、行くぞ」
現場の廃屋に到着すると、そこにはパワーが裏切り、デンジを差し出そうとしていた「コウモリの悪魔」が待ち構えていた。
「ヒハハハ! 人間を連れてきたな、パワー! 約束通り、猫は返してやる!」
巨大な翼を広げ、醜悪な姿を見せるコウモリの悪魔。パワーは震えながら、ニャコが入った籠を抱えようとするが、悪魔は無慈悲にも籠ごとニャコを口の中へ放り込もうとした。
「あ……ニャ、ニャコォオオ!」
パワーの悲鳴が響く。アキが刀を抜こうとし、デンジが胸のスターターを引く。
だが、そのすべての動作が、「彼」にとっては停止した写真に過ぎなかった。
「……パチッ」
匠人が、指を鳴らす。
『ワールド・エンド』。
灰色の静寂が世界を包む。コウモリの悪魔の顎がニャコを噛み砕く寸前、時間は完全に凍りついた。
匠人は、動かない空気の中を悠々と歩いていく。
「悪魔の分際で、約束を破るな。不愉快だ」
匠人は空中に浮いたまま静止しているニャコの籠に触れた。
「『クレイジー・ダイヤモンド』」
籠は瞬時に匠人の手元へと引き寄せられ、同時に籠の隙間から、悪魔が以前に食らったであろう人間の「血液」や「肉片」が、悪魔の体内から逆流するように引きずり出されていく。
さらに、匠人はコウモリの悪魔の心臓部分に右拳を構えた。
その拳の周りで、微細な砂埃が黄金長方形の軌跡を描き始める。
「『黄金の回転』……乗せろ、『第一の爆弾』」
匠人の拳が、悪魔の皮膚に触れる。
無限の回転エネルギーが、対象の原子ひとつひとつに「爆弾」の属性を付与しながら、次元の奥深くまで浸透していく。
「時は動き出す」
――ドォォォォォン!!
爆発音ではない。それは「世界が削り取られる音」だった。
コウモリの悪魔の巨体は、粉砕されるのではなく、内側から無限に回転するエネルギーによって、文字通り「消滅」していった。再生の余地などない。細胞の破片すら残らない、完全なる無だ。
「……え?」
パワーが目を開けると、自分の腕の中に無傷のニャコが戻っていた。
デンジは、変身する間もなく目の前から悪魔が消えたことに、口を半開きにしている。
「……何をした」
アキが震える声で尋ねた。
「俺は、十数年かけてこいつらを殺すために準備してきたんだ……! それを、お前は……たった一瞬で……!」
匠人は、アキの横を通り過ぎる際に短く言った。
「復讐なんてものは、効率が悪い。止まった時の中で終わらせれば、悲鳴を聴く手間も省けるぞ」
匠人の目は、冷酷なまでに合理的だった。
彼にとって「最強」とは、誇るべきものではなく、単に「日常を早く終わらせるための道具」に過ぎないのだ。
その時、遠くからマキマの車が近づいてくるのが見えた。
匠人のチート級の力が、公安の、そしてデビルハンターたちの運命を大きく狂わせ始めていた。
早川アキは、公安の廊下で苦々しく呟いた。
第1話での「ナマコの悪魔」の一件は、4課の面々に戦慄を与えた。戦いとすら呼べない、一瞬の消失。アキが命を削って契約している「狐の悪魔」や「呪いの悪魔」が、まるでおもちゃのように思えるほどの格差。
そんな中、匠人はマキマの指示で、アキの指揮下にあるデンジとパワーの「再教育」に同行することになった。
「佐藤さん、今日は練馬の廃屋に潜伏している『コウモリの悪魔』の捜索です。……聞いていますか?」
アキが問いかけるが、隣を歩く匠人はワイヤレスイヤホンで音楽を聴いており、返事すらしない。
「……チッ。デンジ、パワー、行くぞ」
現場の廃屋に到着すると、そこにはパワーが裏切り、デンジを差し出そうとしていた「コウモリの悪魔」が待ち構えていた。
「ヒハハハ! 人間を連れてきたな、パワー! 約束通り、猫は返してやる!」
巨大な翼を広げ、醜悪な姿を見せるコウモリの悪魔。パワーは震えながら、ニャコが入った籠を抱えようとするが、悪魔は無慈悲にも籠ごとニャコを口の中へ放り込もうとした。
「あ……ニャ、ニャコォオオ!」
パワーの悲鳴が響く。アキが刀を抜こうとし、デンジが胸のスターターを引く。
だが、そのすべての動作が、「彼」にとっては停止した写真に過ぎなかった。
「……パチッ」
匠人が、指を鳴らす。
『ワールド・エンド』。
灰色の静寂が世界を包む。コウモリの悪魔の顎がニャコを噛み砕く寸前、時間は完全に凍りついた。
匠人は、動かない空気の中を悠々と歩いていく。
「悪魔の分際で、約束を破るな。不愉快だ」
匠人は空中に浮いたまま静止しているニャコの籠に触れた。
「『クレイジー・ダイヤモンド』」
籠は瞬時に匠人の手元へと引き寄せられ、同時に籠の隙間から、悪魔が以前に食らったであろう人間の「血液」や「肉片」が、悪魔の体内から逆流するように引きずり出されていく。
さらに、匠人はコウモリの悪魔の心臓部分に右拳を構えた。
その拳の周りで、微細な砂埃が黄金長方形の軌跡を描き始める。
「『黄金の回転』……乗せろ、『第一の爆弾』」
匠人の拳が、悪魔の皮膚に触れる。
無限の回転エネルギーが、対象の原子ひとつひとつに「爆弾」の属性を付与しながら、次元の奥深くまで浸透していく。
「時は動き出す」
――ドォォォォォン!!
爆発音ではない。それは「世界が削り取られる音」だった。
コウモリの悪魔の巨体は、粉砕されるのではなく、内側から無限に回転するエネルギーによって、文字通り「消滅」していった。再生の余地などない。細胞の破片すら残らない、完全なる無だ。
「……え?」
パワーが目を開けると、自分の腕の中に無傷のニャコが戻っていた。
デンジは、変身する間もなく目の前から悪魔が消えたことに、口を半開きにしている。
「……何をした」
アキが震える声で尋ねた。
「俺は、十数年かけてこいつらを殺すために準備してきたんだ……! それを、お前は……たった一瞬で……!」
匠人は、アキの横を通り過ぎる際に短く言った。
「復讐なんてものは、効率が悪い。止まった時の中で終わらせれば、悲鳴を聴く手間も省けるぞ」
匠人の目は、冷酷なまでに合理的だった。
彼にとって「最強」とは、誇るべきものではなく、単に「日常を早く終わらせるための道具」に過ぎないのだ。
その時、遠くからマキマの車が近づいてくるのが見えた。
匠人のチート級の力が、公安の、そしてデビルハンターたちの運命を大きく狂わせ始めていた。