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公安対魔特異0課:佐藤匠人の静止する日常

#1

第1話:神の如き隣人

東京、公安対魔特異4課。
そこは悪魔を狩るためなら「死」すら日常の一部として受け入れる、狂った者たちの掃き溜めだ。しかし、その4課ですら手に負えない事態に備え、内閣官房直属で設立された「0課」という枠組みが存在した。
所属人数、1名。それが、佐藤匠人だった。
「佐藤くん。今日から4課のデンジくん、それから魔人のパワーと一緒に動いてもらうわ」
マキマの声に、匠人はデスクに突っ伏したまま、面倒そうに視線だけを上げた。
「マキマさん、俺は言ったはずだ。平穏な日常が保証されるなら、名前だけは貸すと。新人の子守りまで契約に入れた覚えはない」
「これは命令ではなく、お願いよ。……あなたの『幽波紋』という力、今の公安には必要なの」
匠人は溜息をつき、椅子から立ち上がった。彼の背後で、目に見えないほどの高密度な精神エネルギーが、黄金のオーラを纏って揺らめいている。
「なんだぁ? このモヤシ野郎が『0課』の最強ぉ?」
練馬区の寂れた路上。デンジは匠人を一瞥して鼻で笑った。隣ではパワーが「ワシより弱そうな奴に挨拶などせぬぞ!」と威張っている。
「俺は佐藤匠人。ただの大学生だ。……お前らが何を企んでいようと興味はないが、俺の邪魔だけはするな」
匠人の言葉が終わるか終わらないかのうちに、その「異常」は起きた。
地面が激しく揺れ、近隣のビルを突き破って、巨大な「ナマコの悪魔」が姿を現したのだ。
「ギギ……ギギギ……!」
不快な音を立てて蠢く無数の触手。デンジがチェンソーのスターターを引こうとし、パワーが血の槍を構える。
だが、匠人は動かない。ただ、静かにポケットから手を出した。
「……五月蝿い」
匠人がパチンと指を鳴らす。
その瞬間、『ワールド・エンド』が発動した。
世界から音が消え、色彩が反転する。
噴き出した土煙も、逃げ惑う人々の悲鳴も、今まさに襲いかかろうとしていた悪魔の触手も、すべてが漆黒と白銀の静寂に閉じ込められた。
「やれやれ」
止まった時の中で、匠人だけが退屈そうに歩き出す。
彼は悪魔の巨体に近づくと、その表面を軽く叩いた。
「キラークイーン……第一の爆弾。それと――」
匠人の拳に、黄金色の螺旋が宿る。『黄金の回転』。それは次元の壁すら突き破る、無限の破壊エネルギーだ。
匠人は、悪魔の核があるであろう位置に、軽く拳を置いた。
「『クレイジー・ダイヤモンド』。修復の対象は、こいつが壊した背後のビルだ」
匠人が再び指を鳴らし、時は動き出す。
「ギャッ――!?」
悪魔の絶叫は、爆音にかき消された。
内側から「無限の回転」を伴った爆発が巻き起こり、巨大なナマコの悪魔は細胞のひとつひとつまで微塵切りにされながら、跡形もなく消滅した。
それと同時に、悪魔が突き破ったはずのビルが、まるで映像を巻き戻すかのように凄まじい速度で「修復」されていく。
瓦礫は空へと舞い戻り、折れた鉄骨は吸い付くように結合し、窓ガラスの一枚に至るまで、最初から何もなかったかのように元通りになった。
静まり返る路上。
チェンソーを出す暇もなかったデンジと、槍を構えたまま固まっているパワー。
「……あ?」
デンジの口から間抜けた声が漏れる。
目の前にいたはずの巨大な悪魔が消え、壊れたビルが直り、そこにはただ、スマホで時刻を確認している匠人が立っているだけだ。
「終わったぞ。……パワーと言ったか。お前の猫、ニャコはここにはいない。あっちの廃墟の先だ。……俺は帰る。これ以上は時間外労働だ」
匠人は二人を振り返ることなく、夕暮れの街へと歩き出した。
その背中は、最強のデビルハンターというよりも、ただの「世界の理そのもの」のようであった。
「……マキマさん。あいつ、何なんだよ」
後から合流したマキマに、デンジが震える声で尋ねる。
マキマは、匠人が去った道を愛おしそうに見つめながら、静かに微笑んだ。
「彼は佐藤匠人。時を止め、死を否定し、破壊を芸術に変える……この世界で唯一、私が『支配』できない男よ」

2026/03/03 14:34

taku203503
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