「……ミサイル、着弾まであと30秒!」
「はぐろ」のCIC(戦闘指揮所)に、かつてない悲鳴のような報告が響いた。
匠人三等海佐はモニターを睨みつける。マッハ3で飛来する光点は、この1942年の世界では「神の雷」にも等しい破壊の化身だ。
「……各艦、個艦防空(ポイント・ディフェンス)開始! 撃ち落とせ!」
匠人の叫びと同時に、「はぐろ」のVLS(垂直発射装置)から対空ミサイル「ESSM」が発射された。白煙を引き、空へと吸い込まれる現代の槍。
数秒後、遥か高空で二つの光が激突し、真昼の太陽を凌駕する閃光が走った。
「迎撃成功……! しかし艦長、発射元を特定しました。方位300……我々の後方です!」
「後方だと? 日本艦隊のいる方角じゃないか」
匠人は即座に艦橋へ駆け上がり、双眼鏡を向けた。
水平線の向こう、ミッドウェーの硝煙の彼方から、見慣れた、しかしここには居るはずのないシルエットが二つ、海を割って進んできた。
[大文字]第1章:鋼鉄の再会[/大文字]
「……『あたご』、それに『あしがら』か!?」
見張り員の絶叫に近い声が上がった。
そこにいたのは、同じく海上自衛隊が誇るイージス護衛艦、「あたご」と「あしがら」であった。2026年の演習に参加していた別働隊が、あの磁気嵐に巻き込まれ、時間差でこの時代に放り出されたのだ。
「『あたご』より入電! 『貴艦の防空を支援した。状況は把握している……我々もまた、この狂った時代に迷い込んだようだ』」
「はぐろ」の乗員たちから安堵の溜息が漏れる。
これで、2026年世代の艦艇は、空母2、イージス艦4、最新鋭潜水艦3。
もはや一国の海軍を凌駕し、この時代の世界全軍を相手にしても勝てるほどの「超戦力」が、ミッドウェーの海に揃ってしまった。
だが、匠人の表情は晴れない。
「……これで、役者は揃ってしまったな」
「艦長、どういう意味ですか?」
「『いずも』『かが』に加えて、イージス艦が4隻だ。我々がその気になれば、この時代の米海軍も、日本海軍も、数時間で壊滅させることができる。……歴史を、我々の手で『終わらせる』ことができてしまうんだ」
匠人の言葉に、艦橋が凍り付く。
最強の力を手に入れたことへの全能感ではなく、歴史を壊してしまうことへの根源的な恐怖が、彼らを襲っていた。
[大文字]第2章:無線封鎖の向こう側[/大文字]
その時、艦隊全艦の共通ネットワーク「リンク16」を通じて、「いずも」の部隊指揮官からの全艦放送が入った。
『全艦へ。これ以上のタイムスリップ艦艇の出現はないものと判断する。我々がここに来た理由は不明だが、一つだけ確かなことがある。――我々は自衛官であり、目の前の不必要な殺戮を止める義務がある』
指揮官の声は厳かだった。
『これより、我が艦隊は「第三勢力」として介入する。日米両軍の戦闘を強制的に停止させ、生存者を救出する。抵抗するものは、現代の火力をもって無力化せよ。……歴史を変えることを恐れるな。我々が今ここに生きていることこそが、新たな歴史だ』
匠人は深く息を吐き、帽子を被り直した。
「……腹は決まった。砲雷長!」
「は、はい!」
「『あたご』『あしがら』『まや』とデータリンクを完全同期。これより、半径100マイル以内の全航空機、全艦艇をロックオンする。一発も弾を撃たせるな。……平和を『強制』するぞ」
[大文字]第3章:神の如き威圧[/大文字]
2026年の海上自衛隊による、前代未聞の「武力介入」が始まった。
上空では、F-35Bの編隊がソニックブーム(衝撃波)を鳴らしながら日米両軍の戦場に割って入り、機銃掃射の弾道さえも電子戦で狂わせていく。
海中では「たいげい」型三隻が、魚雷を放つのではなく、アクティブソナーの強烈な音響を叩きつけることで、両軍の潜水艦を浮上・無力化させていく。
そして「はぐろ」の前方。
燃え盛る「赤城」を止めにきた米駆逐艦に対し、匠人は127mm速射砲の精密射撃を見せつけた。
敵艦の艦首数メートル先に、計算され尽くした水柱を連続して立てる。
「これ以上進めば、次は当てる……。伝わってくれ、スプルーアンス閣下」
匠人の願いを乗せたかのように、米駆逐艦が速度を落とした。
その時、水平線の彼方、炎上する日本艦隊の向こうから、一隻の巨大な戦艦が姿を現した。
連合艦隊旗艦、戦艦「大和」。
山本五十六長官を乗せた、1942年当時の「最強」が、未来の「最強」の前に現れた瞬間だった。
「はぐろ」のCIC(戦闘指揮所)に、かつてない悲鳴のような報告が響いた。
匠人三等海佐はモニターを睨みつける。マッハ3で飛来する光点は、この1942年の世界では「神の雷」にも等しい破壊の化身だ。
「……各艦、個艦防空(ポイント・ディフェンス)開始! 撃ち落とせ!」
匠人の叫びと同時に、「はぐろ」のVLS(垂直発射装置)から対空ミサイル「ESSM」が発射された。白煙を引き、空へと吸い込まれる現代の槍。
数秒後、遥か高空で二つの光が激突し、真昼の太陽を凌駕する閃光が走った。
「迎撃成功……! しかし艦長、発射元を特定しました。方位300……我々の後方です!」
「後方だと? 日本艦隊のいる方角じゃないか」
匠人は即座に艦橋へ駆け上がり、双眼鏡を向けた。
水平線の向こう、ミッドウェーの硝煙の彼方から、見慣れた、しかしここには居るはずのないシルエットが二つ、海を割って進んできた。
[大文字]第1章:鋼鉄の再会[/大文字]
「……『あたご』、それに『あしがら』か!?」
見張り員の絶叫に近い声が上がった。
そこにいたのは、同じく海上自衛隊が誇るイージス護衛艦、「あたご」と「あしがら」であった。2026年の演習に参加していた別働隊が、あの磁気嵐に巻き込まれ、時間差でこの時代に放り出されたのだ。
「『あたご』より入電! 『貴艦の防空を支援した。状況は把握している……我々もまた、この狂った時代に迷い込んだようだ』」
「はぐろ」の乗員たちから安堵の溜息が漏れる。
これで、2026年世代の艦艇は、空母2、イージス艦4、最新鋭潜水艦3。
もはや一国の海軍を凌駕し、この時代の世界全軍を相手にしても勝てるほどの「超戦力」が、ミッドウェーの海に揃ってしまった。
だが、匠人の表情は晴れない。
「……これで、役者は揃ってしまったな」
「艦長、どういう意味ですか?」
「『いずも』『かが』に加えて、イージス艦が4隻だ。我々がその気になれば、この時代の米海軍も、日本海軍も、数時間で壊滅させることができる。……歴史を、我々の手で『終わらせる』ことができてしまうんだ」
匠人の言葉に、艦橋が凍り付く。
最強の力を手に入れたことへの全能感ではなく、歴史を壊してしまうことへの根源的な恐怖が、彼らを襲っていた。
[大文字]第2章:無線封鎖の向こう側[/大文字]
その時、艦隊全艦の共通ネットワーク「リンク16」を通じて、「いずも」の部隊指揮官からの全艦放送が入った。
『全艦へ。これ以上のタイムスリップ艦艇の出現はないものと判断する。我々がここに来た理由は不明だが、一つだけ確かなことがある。――我々は自衛官であり、目の前の不必要な殺戮を止める義務がある』
指揮官の声は厳かだった。
『これより、我が艦隊は「第三勢力」として介入する。日米両軍の戦闘を強制的に停止させ、生存者を救出する。抵抗するものは、現代の火力をもって無力化せよ。……歴史を変えることを恐れるな。我々が今ここに生きていることこそが、新たな歴史だ』
匠人は深く息を吐き、帽子を被り直した。
「……腹は決まった。砲雷長!」
「は、はい!」
「『あたご』『あしがら』『まや』とデータリンクを完全同期。これより、半径100マイル以内の全航空機、全艦艇をロックオンする。一発も弾を撃たせるな。……平和を『強制』するぞ」
[大文字]第3章:神の如き威圧[/大文字]
2026年の海上自衛隊による、前代未聞の「武力介入」が始まった。
上空では、F-35Bの編隊がソニックブーム(衝撃波)を鳴らしながら日米両軍の戦場に割って入り、機銃掃射の弾道さえも電子戦で狂わせていく。
海中では「たいげい」型三隻が、魚雷を放つのではなく、アクティブソナーの強烈な音響を叩きつけることで、両軍の潜水艦を浮上・無力化させていく。
そして「はぐろ」の前方。
燃え盛る「赤城」を止めにきた米駆逐艦に対し、匠人は127mm速射砲の精密射撃を見せつけた。
敵艦の艦首数メートル先に、計算され尽くした水柱を連続して立てる。
「これ以上進めば、次は当てる……。伝わってくれ、スプルーアンス閣下」
匠人の願いを乗せたかのように、米駆逐艦が速度を落とした。
その時、水平線の彼方、炎上する日本艦隊の向こうから、一隻の巨大な戦艦が姿を現した。
連合艦隊旗艦、戦艦「大和」。
山本五十六長官を乗せた、1942年当時の「最強」が、未来の「最強」の前に現れた瞬間だった。
- 1.第1話:群青の予兆
- 2.第2話:鋼鉄の洗礼
- 3.第3話:邂逅、そして混迷
- 4.第4話:深海の静かなる狩人
- 5.第5話:集結、そして決断
- 6.第6話:巨艦、対峙
- 7.第7話:ミッドウェー・フリーズ
- 8.第8話:鋼鉄のカーテン・2026
- 9.第9話:鋼鉄の苗床
- 10.第10話:蒼焔の翼、本土防衛
- 11.第11話:降臨、大いなる列島
- 12.第12話:孤立する「自由の砦」
- 13.第13話:蒼穹の騎士道
- 14.第14話:ワシントンの邂逅
- 15.第15話:巨神降臨、ハワイ沖
- 16.第16話:鋼鉄の怒涛、ノルマンディー
- 17.第17話:黒十字の幻影と「陸の王者」
- 18.第18話:狂気の終焉、ベルリンの落日
- 19.最終話:鋼鉄の黎明
- 20.番外編:鋼鉄の福音 ―植民地主義の終焉―