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鋼鉄の時空:ミッドウェー1942(第二次世界大戦編)

#3

第3話:邂逅、そして混迷

海面が沸き立ち、大量の海水が「はぐろ」の舷側に打ち付けられた。
現れたのは、現代の潜水艦のような滑らかな流線型ではない。リベット打ちの無骨な艦体、甲板に据え付けられた14センチ砲、そしてセイルに刻まれた「伊一六八」の文字。
「……伊号潜水艦……」
「はぐろ」の艦橋で、匠人三等海佐は双眼鏡を覗き込み、息を呑んだ。
歴史上、ミッドウェー海戦において米空母「ヨークタウン」を撃沈し、日本側で唯一と言っていい戦果を挙げた殊勲艦。それが今、目と鼻の先に浮上している。
「艦長、伊一六八より発光信号! 『ワレ、敵新鋭戦艦ト遭遇セリ。貴艦ノ所属ヲ問ウ』……だそうです」
通信士の声が困惑に震える。2026年の自衛官にとって、それは教科書の中の出来事ではなく、今まさに眼前に突きつけられた現実だった。
「……『我、海上自衛隊所属、護衛艦はぐろ。現在、全般的な状況を確認中。貴艦の武運を祈る』と返せ。余計なことは言うな」
匠人はそう命じたが、事態はそれを許さなかった。
上空では、先行して発艦した「いずも」のF-35Bが、その圧倒的な機動性で米軍編隊を散らし、戦場を支配し始めていた。レシプロ機とは次元の違う、空を切り裂くようなジェットエンジンの轟音がミッドウェーの海に響き渡る。
「艦長、前方海域……『赤城』および『加賀』と思われる艦影から、黒煙が上がっています。歴史通りなら、彼らは米艦上爆撃機の奇襲を受けた直後です」
砲雷長が苦渋に満ちた表情で報告する。
モニターの向こう側、はるか水平線の彼方。かつての誇り高き第一航空戦隊が、炎に包まれて沈もうとしていた。
「艦長! 『いずも』より全艦へ緊急入電! 司令官からの命令です。――『歴史的経緯は二の次とする。これより我が艦隊は、燃え上がる日本空母の生存者を救助、および接近する米機動部隊を制圧する』!!」
「……ついに、引き金を引くのか」
匠人は拳を強く握りしめた。
自衛隊の任務は「専守防衛」だ。しかし、この世界でその「防衛」の定義は何になる? 目の前で沈みゆく同胞を見捨てることが、自衛官の誇りに叶うのか。
「面舵一杯! 針路、一航戦炎上海域! 本艦は生存者の救助活動を最優先とする。ただし、米艦隊が攻撃を続行する場合……」
匠人は一瞬言葉を切り、CICの全乗員を見渡した。
「……火器管制システムのロック解除。我々の『盾』は、もはや過去の犠牲者を見捨てるためのものではない」
その時、水平線の向こうから新たな光点が現れた。
米機動部隊・第16任務部隊。空母「エンタープライズ」および「ホーネット」。
彼らにとって、突如現れた巨大な「はぐろ」や、音速で飛ぶ「黒い翼」は、悪魔の化身に他ならなかった。
「報告! 米駆逐艦群、本艦に向け主砲射撃を開始! 初弾、左舷500に落下!」
「……警告は終わった。これより、我々の戦いを始める」
匠人の瞳に、覚悟の火が灯った。
「はぐろ、戦闘開始! 5インチ砲、対艦戦闘用意! 敵駆逐艦の兵装のみをピンポイントで無力化しろ。命までは奪うな!」
令和のイージス艦が、歴史という名の巨大な渦に、自ら飛び込んでいった。
[大文字][下線][太字]次回予告:第4話「雷撃の神々」[/太字][/下線][/大文字]
海中から迫る「たいげい」「はくげい」「じんげい」。
音もなく忍び寄る最新鋭潜水艦が、米第16任務部隊の直下に到達する。一方、匠人は救助した「赤城」の乗員から、信じがたい言葉を聞くことになる。

2026/02/12 13:39

taku203503
ID:≫ 17/UklnAAecq6
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