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鋼鉄の時空:ミッドウェー1942(第二次世界大戦編)

#2

第2話:鋼鉄の洗礼

1942年6月4日、ミッドウェー。
後に歴史家たちが「運命の5分間」と呼ぶことになるその瞬間、海域の北西に突如として現れた「令和の連合艦隊」は、圧倒的な異物としてそこに存在していた。
護衛艦「はぐろ」のCIC(戦闘指揮所)は、現代戦のそれとは異なる、異様な緊張感に包まれていた。青白い液晶モニターが並ぶ暗い室内で、オペレーターたちの指先がキーボードを叩く音だけが響く。
「敵機、急降下を開始! 角度60、速度増加! 来ます!」
艦長の匠人三等海佐は、戦術情報表示装置(CDS)を凝視していた。画面上には、現代の巡航ミサイルに比べれば「止まっている」も同然の速度で動く、24個の光点。しかし、それが放つ殺意は本物だ。
「……信じられん。我々は本当に『歴史』と戦うのか」
匠人は呟き、すぐに思考を戦術へと切り替えた。
「撃ち落とすのは容易だ。だが、相手は米海軍。我々の今の同盟国だぞ。ここで彼らを殲滅して、未来はどうなる?」
「艦長! 迷っている暇はありません! 敵1番機、投弾体勢!」
武器管制官の叫びが、匠人の躊躇を断ち切った。
もし今、歴史への干渉を恐れて「はぐろ」が沈めば、乗員200名以上の命がこの海に消える。それだけは、何があっても避けねばならない。
「……やむを得ん。各個判断で迎撃せよ! ただし、VLS(垂直発射装置)は使うな。対空ミサイル(SM-2)を使うまでもない。127mm速射砲およびCIWS、光学照準で対応。最小限の火力で追い払え!」
「了解! 砲雷長、対空戦闘。目標、接近するF4U編隊!」
「はぐろ」の前部に据え付けられた127mm単装速射砲が、自動追尾システムによって鎌首をもたげる。1942年のパイロット、ジョン・スミス大尉の目には、その滑らかな動きは「怪物の触手」のように映ったに違いない。
「撃てッ!!」
匠人の号令とともに、艦体が微かに震えた。
ドォォン、という重低音とともに、速射砲が火を噴く。数秒後、コルセア編隊の眼前で、現代の近接信管(プロキシミティ・ヒューズ)を備えた砲弾が炸裂した。
空中に咲く、漆黒の死の花。
F4Uのコックピットで、スミス大尉は目を剥いた。
(なんだあの爆発は!? 対空砲火にしては正確すぎる! 日本軍にこれほどの高角砲があったのか!?)
爆風に煽られ、編隊がバラバラに散る。しかし、歴戦の米軍パイロットたちは怯まなかった。彼らは「巨大な灰色の戦艦」を日本の秘密兵器と断定し、さらに加速して肉薄する。
「艦長、効きません! 敵機、弾幕を潜り抜けてきます! 距離3000……2000!」
「右舷CIWS、オートに切り替え。……撃たせろ」
匠人が苦渋の決断を下した瞬間、「はぐろ」の右舷側に設置された20mm機関砲(CIWS)が、獲物を狙う猛禽類のように旋回した。
バリバリバリバリ――ッ!!
布を裂くような、凄まじい発射音が艦橋まで轟く。
1分間に4500発という現代の火力が、空中に「火の壁」を作り出した。
直撃を受けた先頭のコルセアが、爆発することさえ許されず、瞬時にして細かな金属片へと分解され、海面へと降り注いだ。
「1機撃墜……いや、消滅しました」
オペレーターの声に喜びはない。
「……いずも、かが、まやからも発砲を確認」
匠人が窓の外を見ると、はるか遠方で「いずも」から飛び立った数機の影が見えた。それは、ステルス戦闘機F-35B。
本来、ミッドウェーの空を飛ぶはずのない「黒い翼」が、アフターバーナーの轟音を響かせて急上昇していく。その姿は、まるで神話の世界に現れた黒い悪魔のようだった。
「……これで、世界は変わってしまうな」
匠人は、灰が降りかかる海を見つめながら、静かに、しかし重くそう漏らした。
その時、「はぐろ」のソナー室から緊急連絡が入った。
「艦長! 直下よりスクリュー音感知! この音紋、本艦に随伴していた『たいげい』ではありません……! 古い、往復式のエンジン音です!」
「まさか、米潜水艦か?」
「いえ、至近距離です! 位置は『はぐろ』の直下、水深50……浮上してきます!」
海面が盛り上がり、巨大なクジラが息を吐くように、一隻の潜水艦が姿を現した。
その艦体には、大きく「伊号」の文字が刻まれていた。
第三話、「邂逅、そして混迷」へ続く...

2026/02/12 13:37

taku203503
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