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とある中3の恋愛物語

#1

第1話サクラ・グラデーション

[明朝体]中3という「最後の一年」を迎えた4人と、中2になった詩織。桜の舞う校庭から物語が始まっていきます。[/明朝体]

4月。
新学期の浮き足立った空気が、中学校の廊下を満たしていた。
「匠人、同じクラスになれて良かったな!」
掲示板の前で、佐藤匠人の肩を叩いたのは荒川心春だった。
「ああ、心春と一緒なら退屈しなさそうだ」
匠人が屈託のない笑顔を見せる。その視線の先には、同じクラスの女子の輪の中にいる蔵持杏の姿があった。
杏は匠人と目が合うと、はにかむように小さく手を振った。二人は去年の冬からお互いを意識し始めていたが、まだその想いを言葉にはできていない。
「……またあの二人、いい雰囲気になっちゃって」
その様子を少し離れた場所から見つめていたのは、森田千春だった。
心春の親友であり、匠人のことを密かに想い続けている彼女にとって、このクラス替えは残酷な再確認でもあった。
「お姉ちゃん、そんなに怖い顔してるとシワが増えるよ?」
不意に後ろから声をかけたのは、中2になったばかりの妹、森田詩織だった。
「詩織……。部活は?」
「今から行くところ。でも、その前に匠人先輩に挨拶したくて」
詩織の視線は、真っ直ぐに匠人へと向いている。中2になった彼女の赤いリボンは、去年よりも少しだけ大人びて見えた。詩織にとって、中3の先輩たちは「あと一年でいなくなってしまう」存在。だからこそ、この4月からの毎日は一秒も無駄にできない戦いだった。
放課後、5人はひょんなことから図書室のテラスに集まった。
「ねえ、今年の目標決めない?」
心春が提案した。
「俺は、志望校合格。それと……部活で県大会に行くこと」
匠人が宣言すると、杏が隣でそっと付け加える。
「私は、匠人くんと同じ高校に行けるように、勉強を頑張ること……かな」
その言葉に、匠人の顔が真っ赤になる。
千春は胸を締め付けられるような痛みを感じながらも、優等生らしく振る舞った。
「私は、悔いのない一年にすること。勉強も、……それ以外も」
千春の視線が、一瞬だけ匠人の背中に注がれる。
そして詩織は、自分よりも背の高い中3の4人を一人ずつ見つめてから、宣言した。
「私は、先輩たちに追いつくことです。勉強も、リボンの色も、……心の距離も」
桜の花びらが風に乗って、テラスに舞い込む。
中3の4人がつける「紺色のリボン」と、詩織がつける「赤いリボン」。
その色が重なることはないけれど、4月に始まったこの恋のプリズムは、誰一人予想もしない方向へと輝き始めていた。

作者メッセージ

1回が短いですが、どうぞ見ていってください

2026/01/10 10:33

高情緒なkojyochou
ID:≫ 10a8Rho2sBdDU
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