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とある中3の恋愛物語

#15

第15話:『十一月の雨と、温かな缶コーヒー』

[明朝体]11月半ば。放課後の校舎は、模試の結果に一喜一憂する3年生たちの溜息で満ちていました。
特にこの日は、冷たい雨が朝から降り続き、図書室の窓は真っ白に曇っています。[/明朝体]

「……匠人くん、大丈夫? さっきから、ずっと同じページで止まってるよ」
蔵持杏が、心配そうに佐藤匠人の顔を覗き込みました。
匠人は、手元の模試の判定結果を見つめたまま、力なく微笑みました。
「……ごめん、杏。少しだけ、足踏みしちゃってるみたいだ。君の背中が、なんだか急に遠くに見えてしまって」
匠人の声は、雨音に溶けてしまいそうなほど弱々しいものでした。いつも穏やかで優しい彼も、この時期特有のプレッシャーに押し潰されそうになっていたのです。
杏は一瞬、言葉を失いました。でも、すぐに自分にできることを探すように、匠人の冷たくなった手に自分の手をそっと重ねました。
「遠くなんてないよ。私はずっと、匠人くんの隣にいるから。……ねえ、少しだけ外の空気を吸いに行かない?」
二人が廊下へ出ると、自販機の前で森田千春と荒川心春が話し込んでいました。
「匠人、杏。……顔色が悪いわよ。特に匠人、あなた」
千春は鋭く、けれど深い慈しみを持って匠人の顔を見ました。彼女は、かつて自分が抱いた恋心を、今は「仲間を支える強さ」へと変えていました。
「ほら、これ。お姉ちゃんが選んだんだよ。温まるから飲んで」
心春が、温かい缶コーヒーを二人に手渡しました。
そこへ、部活のジャージ姿の森田詩織が、走ってやってきました。
「匠人先輩! ……お姉ちゃんたちも!」
詩織の髪には、雨の雫がキラキラと光っていました。彼女は自分のバッグから、一枚の小さな紙を取り出しました。それは、彼女が図書室の掲示板で見つけた、ある格言のメモでした。
「『夜明け前が、一番暗い』。……匠人先輩、私、この言葉が大好きなんです。今が一番苦しいなら、もうすぐ光が見えるってことだから。……私、先輩の笑顔が一番好きなんです。だから、そんな顔しないでください」
詩織の真っ直ぐな言葉と、仲間の温かい缶コーヒー。
匠人は、じわじわと指先から伝わる熱を感じながら、ゆっくりと顔を上げました。
「……みんな、ありがとう。僕は幸せ者だね。こんなに素敵な人たちに囲まれているんだから」
匠人は、いつもの穏やかな、けれど力強い笑顔を取り戻しました。
「杏、もう一度、隣に座ってくれるかな? 次のページに進む勇気が、今、湧いてきたんだ」
杏は嬉しそうに頷き、5人は再び図書室へと戻りました。
窓の外では、2025年の冷たい雨がまだ降り続いていました。
けれど、5人が囲むテーブルだけは、誰にも邪魔できないほど、優しくて温かな光に包まれていました。
2026年の春まで、あと少し。
彼らの心は、雨上がりの空を待ちわびるように、静かに、けれど熱く燃え続けていました。

作者メッセージ

長期連載を目標にしているので皆さんコメントよろしくお願いします!

2026/01/11 19:03

高情緒なkojyochou
ID:≫ 10a8Rho2sBdDU
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