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とある中3の恋愛物語

#14

第14話:『十月の風と、夕暮れの帰り道』

[明朝体]2025年10月。修学旅行の熱も落ち着き、進路希望調査票が配られ始めた秋の物語を、第14話として書き直します。[/明朝体]

10月に入り、校庭の金木犀が甘く香る季節になりました。
放課後の図書室には、定期テストと実力テストが重なり、今までになく張り詰めた空気が漂っています。
「……匠人くん、ここの歴史の並べ替え問題、一緒にやってみない?」
蔵持杏が、自分のノートを佐藤匠人の方へそっと寄せました。
「ありがとう、杏。……君のノートはいつも綺麗に整理されていて、見ているだけで心が落ち着くよ。なんだか、君の優しさが文字に表れているみたいだね」
匠人は穏やかに微笑み、杏の瞳を真っ直ぐに見つめました。その声は、秋の夕陽のように温かく、杏の心を優しく包み込みます。
「……そんなことないよ。私も、匠人くんが一生懸命な姿を見て、頑張ろうって思えるんだから」
杏がはにかむと、二人の間に流れる空気は、試験前のピリついた室内でそこだけが陽だまりのように穏やかでした。
その様子を、書架の陰で本を探していた森田千春が見つめていました。
「……千春、本、見つかった?」
背後から声をかけたのは、親友の荒川心春です。
「ええ。……でも、少しだけ、この香りに酔っちゃったみたい」
千春は金木犀の香りが混ざる風を窓から吸い込みました。かつての痛みは、今の千春の中では、秋の深まりとともに静かな「覚悟」へと変わりつつありました。
一方、中学2年生の森田詩織は、少し離れた席で中学3年生の4人の背中を見つめていました。
(先輩たちの紺色のリボンが、夕暮れの光で少し黒っぽく見える……。もう、冬が来るんだ)
詩織は、匠人の穏やかな笑い声を聞くたびに、夏祭りに交わした「同じ高校へ行く」という約束を思い出します。
「詩織、難しい顔をしてどうしたの? 良かったら、そこ、僕が見ようか」
匠人がふと顔を上げ、詩織の様子に気づいて優しく声をかけました。
「匠人先輩……。いえ、大丈夫です。自分で解いてみたいんです。先輩に追いつきたいから」
詩織が背筋を伸ばして答えると、匠人は嬉しそうに目を細めました。
「……そっか。詩織は本当に芯が強いね。僕も負けてられないな。みんなで、良い春を迎えられるように頑張ろう」
匠人のその言葉は、5人全員を優しく繋ぎ止める「絆」のように響きました。
窓の外では、2025年の秋が深まり、オレンジ色の太陽がゆっくりと沈んでいきます。
匠人と杏。それを見守る千春と心春。そして背中を追いかける詩織。
5人の想いは、秋風に乗って、まだ見ぬ冬の先にある「春」へと、静かに、けれど力強く向かっていました。

2026/01/10 17:30

高情緒なkojyochou
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