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とある中3の恋愛物語

#11

第11話:『陽炎のラプソディと、秘密の約束』

[明朝体]2025年の夏休みが本格的に始まり、栃木の街に刺すような日差しが降り注ぐ8月上旬。物語は、最も熱く、そして残酷なほどに鮮やかな季節へと進みます。[/明朝体]

8月。校庭の隅に咲く向日葵が、頭を垂れるほどの猛暑。
中3の4人は、学校の図書室で開催される「夏休み自習会」に参加していました。冷房の効いた室内でも、受験生特有のぴりついた熱気が漂っています。
「……匠人くん、この英語の長文、あと少しで終わるよ」
蔵持杏が、少し疲れた様子の佐藤匠人を励ますように声をかけました。
「サンキュ、杏。お前が隣にいてくれるから、なんとか座ってられるわ」
匠人が小さく笑って答えます。二人の間には、言葉にしなくても伝わる信頼関係が、この夏を通してより一層深まっていました。
そんな二人を、少し離れた席から見つめる森田千春。彼女は、自分のノートにびっしりと書かれた数式よりも、匠人が杏に向ける「特別な眼差し」に意識を奪われていました。
(見ちゃダメだって分かってるのに……)
千春はペンを強く握りしめ、自分を律するように視線を参考書に戻しました。
そこへ、部活終わりの荒川心春が、廊下から勢いよく顔を出しました。
「みんなー! 休憩しよ! 詩織ちゃんが、すごいもの持ってきてくれたよ!」
心春に連れられて現れたのは、森田詩織でした。彼女の両手には、クーラーボックスから取り出したばかりの冷たいアイスキャンディー。
「先輩たち、お疲れ様です。お姉ちゃんも、あんまり無理しないで」
詩織の気遣いに、図書室の空気が一気に和らぎます。
「うおー! アイス! 詩織、お前は命の恩人だ!」
匠人が一番に駆け寄り、詩織の手からアイスを受け取りました。その瞬間、詩織の指先が匠人の熱い手に触れます。
「……っ、いえ。先輩が頑張ってるから」
詩織の頬が、夏の夕暮れのように赤く染まりました。中2の彼女にとって、この一瞬の接触さえも、この夏を生き抜くための大切なエネルギーでした。
アイスを食べながら、5人は図書室のベランダに出ました。
「ねえ、見て。入道雲がすごいよ」
心春が指差す先には、巨大な雲がそびえ立っています。
「なあ、みんな」
匠人がアイスの棒を口にくわえたまま、ふと言い出しました。
「夏休みの最後の夜、学校の裏山にある神社で花火大会あるだろ? 5人で行かないか?」
その提案に、杏は嬉しそうに頷き、心春は「賛成!」と拳を上げました。
しかし、千春と詩織は、それぞれ違う理由で胸を高鳴らせていました。
千春は、これが匠人の隣にいられる数少ない「最後の方のチャンス」かもしれないという予感に。
詩織は、赤いリボンを卒業する前に、匠人の記憶に自分の姿を刻み込みたいという決意に。
「約束だぞ。5人全員で、な」
匠人の言葉が、夏の空に溶けていきました。
2025年、8月。
友情という名のコーティングの下で、それぞれの恋心は、真夏の太陽に焼かれて今にも弾けそうなほど膨らんでいました。
花火大会までのカウントダウンが、静かに始まろうとしていました。

作者メッセージ

読者さん方〜こんにちは〜
ちなみに友達部屋や日本パドやおにぎり部屋の皆さん走っていると思いますが栃木は僕が住んでいるところでもともとの舞台が栃木県のとある場所で〜す

2026/01/10 11:36

高情緒なkojyochou
ID:≫ 10a8Rho2sBdDU
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