「とりあえず故郷帰るかぁ」
そう思い立ったが・・・。
路銀が足りない。
(どうしたものか・・・。)
勇者の旅なんかに同行したくなかったのに・・・。
金は払わされる、時間は奪われる、尊厳は踏みにじられるだぁ?
誰が進んで参加するか!!
あー、次会ったら殺そ。
ふと、宣伝のベルの音が耳に入る。
「フェルシュ王国行きの馬車はこれで最後だよー、さあいかがー!?」
現在地は、大陸最北端の街ゲルニカ。
そして目的地は、大陸最南端に位置するアドベル王国の北側。
フェルシュ王国は、ゲルニカの南西にある国だ。最短ルートから外れてしまう。
馬車が並べられたところを渡り歩くが、アドベル王国行きの馬車は見つからない。
(まあ、遠いしなぁ。)
ゲルニカとアドベル王国のちょうど真ん中、エランドール公国行きも探したが、見つからなかった。
「あのさ、君、どこ行きたいの?」
急に肩に手をかけられ、振り向くと、異様な気配がした。
危機を察知し、すぐに飛び退く。
「え、あれ、そんなに嫌? えー、誘ってあげようとしたのになぁー」
この気配、まず人ではない。私より確実に強い。
「あ、自己紹介するんだっけ。わたしはプエル。よろしく」
そんな名前、魔法史に一切登場しない。もしや天使か?
「そんなに警戒しないでよ。拗ねちゃうよ」
頬を膨らませる彼女。敵意がないのであれば、敵を作るケースは避けるべきだ。
「で、どこか行きたいの? ここにいるってことはそういうことでしょ?」
「・・・アドベル王国へ」
「なら、ちょうどいい。ついてきて」
彼女は軽い足取りで街を歩き始めた。急いでそれに続く。
結構長いこと歩くと、飛行船が見えた。
かなりでかめの。
「アレに乗るよ。
誰かー! ロープ下ろしてー!」
「あいよ!」
男の声がして、すごい勢いで長いロープが下ろされる。
登るなら、魔法を使ったほうが楽だ。
「[漢字]飛行[/漢字][ふりがな]カルリア[/ふりがな]」
ロープにしがみつくプエルを横目に、高速で船の高さまで飛ぶ。
「お前、誰だ?」
「あの方に連れてこられて」
「プエルー! コイツお前の客かー!?」
[小文字]「そうだよー!」[/小文字]
遠くから小さい声が聞こえる。
「アドベル王国まで頼みたいんだが、いくらだ?」
「タダだが?」
「え?」
思わずキョトンとする。
「よいせっと。え、これ何どういう状況?」
プエルが船の縁に乗り上げた。
「この船って運賃タダ?」
「そうだけど?」
プエルにも尋ねるが、当たり前かのように言い返された。
「あ、けどめっちゃ時間かかるよ?」
「それはいいんだけど・・・」
「じゃあ、船を案内しないとね。
空き部屋は・・・母船にはないや。ちょっと小型船出すから待ってて」
プエルは床ハッチをこじ開け、その下の階段を降りていってしまった。
「タダ」?「母船」?「小型船」?
疑問ばかりが頭を廻る。
まあ楽しそうだしトラブルとかなさそうだし別にいっか。
私は思考を放棄した。