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こちらはBL作品です。性的な描写は一切ございませんが、苦手な方はご遠慮頂くようお願い致します。
また、部分的に自殺描写を含めました。露骨な表現はありませんが、ご注意下さい。

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冥刻の子守唄 〜シニガミコモリ〜

#3

第一章 蛍の光 〜朝ぼらけ〜

その日以来、蛍は6年間の相棒と共に過ごすようになった。

初めは蛍の背丈のほぼ半分を占めていた灰色のランドセルは、いつの間にか蛍の背中に軽々と背負われるようになった。ランドセルの下からチョコンと伸びていた蛍の小さな細い両脚は、気付けば長く伸びて引き締まっていた。華奢で色白の肌は、校庭で6年間日に炙られ褐色になっていた。

蛍がランドセルとお別れをするまで、あと僅か3ヶ月。

この日、蛍はランドセルではなくリュックを背負って行った。リュックだけでは荷物が入り切らず、1週間前に慌てて買ったボストンバックを重そうに引き摺りながら、まだ薄暗い早朝の通学路を歩いた。

蛍は学校に着くと、胸に巻いていたスカーフを外し、リュックを雑に机の上に置くと、手を突っ込んで中から水色の表紙の薄い冊子を取り出した。
「やべぇ!めっちゃ折れ曲がってる!」
蛍は、表紙が大胆に斜めに拉げられていることに気が付き、折れ目をもとに戻そうとした。だが、どんなに手で直しても紙が折れ曲がる。蛍は、冊子を2枚の下敷きの間に丁寧に挟み、それをゆっくりとリュックの中に挿し込んだ。

蛍は椅子を引き腰を下ろすと、一息ついて黒板に目をやった。

蛍は学校に着くのが早すぎた。夜の寒さが残った、誰もいない薄暗い教室。いつもに比べて2時間も早く起きた蛍のあくびが響いた。あくびの涙でぼやけた視界に朧気に浮かぶ白い文字。前日から先生が準備しておいたのだろうか。黒板には、白や黄色のチョークで大きく「修学旅行」と書かれていた。

ガラリと突然教室の扉が開き、照明が一斉に点いた。蛍が思わず目を細めた視界の先に、汗だくになりながら荷物を引き摺って歩いて来る男子が教室に入るのが見えた。男子は俯きながら、自分の席へと向かう。蛍が男子に声を掛けようと席を立つと、男子はその音に驚いたように徐ろに顔を上げた。

「ぎゃあ?!」
その男子は蛍の姿を捉えると、目を大きく開いて叫んだ。男子の叫び声が、薄紫色の空の光が僅かに挿し込んだ廊下にまで響いた。男子のリュックには、数日前に学校から全員に配布された共通の青い名札がぶら下がっていた。そこには、ミミズが這ったような下手な字で「[漢字]堀道世央[/漢字][ふりがな]ほりみち せお[/ふりがな]」と書かれていた。
「誰もいないと思ってたから」
世央は、リュックを自分の席の近くの床の上に静かに置くと、辺りを見回した。陽炎は、蛍と世央のちょうど真ん中の位置にあった机に腰掛けていたが、世央も陽炎の姿を見ることはなかった。
『来い』
世央は周りに誰もいないことを確かめると、蛍を手招きした。
「何?」
整理整頓されているとは到底言えない、迷路のようになった机の隙間を蛍が縫うように歩く間、世央は何やらリュックの中を漁っていた。カサカサと乾いた音がしていた。
『内緒な』
蛍が世央に促されてリュックの中身を覗くと、そこには家から密かに持ってきたであろうお菓子類が、リュックの奥底に隠れているのが見えた。

紫色だった空の色は、徐々に東の方から明るい白に染まり始めた。小学生にとって、家ではない場所で過ごす早朝は、実に新鮮だった。小学生にとって、子供達だけで過ごす旅は実に心躍るものだった。蛍と世央は、胸が高鳴るのを隠し切れないように、お互いに顔を見合わせてニヤリと笑った。

[斜体][下線]
たった100年の命を、どうやって過ごすんだろう。[/下線][/斜体]

死神は人間の何千倍もの寿命を持つ。陽炎にとって、蛍も世央も儚く散ってゆく桜のように思われた。

[斜体][下線]だから、俺たち死神は命に惹かれるのかな。[/下線][/斜体]

人の夢は美しく、儚く散ってゆく。桜のように。
限りあるものは美しい。

[斜体][下線]なのに、間もなく死ぬと言われると恐怖に慄くのも、それもまた命。[/下線][/斜体]

儚い少年時代の楽しみを語らう様子を、陽炎に見守られているとは、2人の少年は想像だにしなかった。
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2025/11/21 20:35

花火
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