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曲パロ、気楽にやってこ〜 【njsj】【✨閲覧数400達成!✨】

#15

逆夢 King Gnu ⚠nmnm(Oriens)

[明朝体]あの日、平凡な日常に悪魔が突如として舞い降りた。

[中央寄せ][太字][大文字]“敵軍襲来”[/大文字][/太字][/中央寄せ]

耳を切り裂くようなサイレンの叫び声が、俺たちの日常が崩れていく合図だった。[/明朝体]

[水平線]

少年だった俺は生き残ることだけを考えて、隣町の森林の奥深くまで逃げ込んで、大きな岩と岩の隙間に隠れて息を潜めていた。

苔の薫りが苦しい。湿った土が冷たくて、足の裏に伝わる感触が気持ち悪い。太陽の光が遮られて、自身の姿すら捉えることが難しい。爆撃の音だけは、俺の真隣にあるみたいだった。

[小文字]何百発も花火を打ち上げたら、こんな感じの音になるんちゃうか。[/小文字]

数時間して、漸く周りが静かになった。焦げ臭い香りがする。遠くから微かに敵軍撤退のサイレンが途切れ途切れに聞こえて、俺は岩の隙間から這い出た。





そこには、何もなかった。





俺を匿ってくれた森林は、跡形もなく消えていた。瓦礫と灰の山となった隣町が丸見え。焼け焦げた寡黙なサイレン塔が、俺の目の前で倒れた。鈍い金属の音とともに破片が水飛沫みたいに散った。

[小文字]俺の冗談を笑ってくれた人たちは?[/小文字]

捜そうとしたところで結末は殆ど分かりきっていた。震える声で即興の冗談を飛ばしても、世界は無反応だった。当然の事だったが、俺はその当然が恨めしかった。

[小文字]なんでや…何で誰も笑ってくれへんねや……。[/小文字]

青い空。暖かいそよ風。自然だけは残酷なくらいにいつも通り。そよ風に揺れる俺の前髪は、青空と同じ色の筈だった。

白くなった髪の毛が、俺の視界を濁した。俺はもう、故郷の桜を見ることは出来ない。冬のまま時間が止まってしまってシンと冷えた俺の心を温めるには、白装束を身に纏った思い出の温もりだけじゃ到底頼りなかった。パラパラと乾いた雨が降り始めた。岩の隙間に身体を捩じ込ませた時に出来た擦り傷に沁みた。

[水平線]

俺の住む国は大きな山脈で東西に分断され、俺の故郷は東側にあった。ただ、山脈沿いに故郷があったから、どちらかといえば西寄りの東側だった。

そんな俺の故郷は元から人数が少なかった上に惨劇に襲われて、再起不能となってしまった。だが、東域なら紛争の被害には巻き込まれずに済んだし都市機能も発達していると、風の噂で聞いた。帰る家を失って餓鬼みたいに彷徨っていた俺は、藁にもすがる思いで東に向かった。

[水平線]

「お兄さん、良かったらこれ食べなさい」
「服が汚れてるから、これに着替えていきなさい」
東域と西域の境目の村に着くと、村の人々が俺を見かけるたびに何かしらを俺に与えてくれた。俺より前に既に東に向かった西域出身の人間で、俺に飯を分けてくれた人もいた。

その中に、俺と同い年くらいでピンクの化身みたいなギャル男がいた。彼は西域が紛争に巻き込まれるずっと前に東域に移り住んだと言っていた。普段は東域の都心部に住んでいるが、旅の過程で偶然ここに着いたら俺みたいに困っている人々を見過ごすことができず、人助けを先月からし始めたそうだ。

「ねぇ、俺最近、怪し気な二人組に声を掛けられててぇ、今日も二人が俺に会いに来るって言うのよ〜」
ギャル男は、俺に温かいスープを盛ってくれながらそう文句を垂れた。紛争後の人々の心が参っていることに漬け込んだ、悪質な宗教勧誘か?
「煙草を吸っているイッテツっていう男がしつこいのよ〜、ヒーローにならないかって。しかもデッカい体のマッチョを連れ添ってるし〜、はいどうぞ」
俺は、ギャル男から熱いスープを受け取って少しずつ飲み始めた。ギャル男が立てたピンク色のテントの入り口から、街の賑わいが流れ込む。俺の冷え切っていた心も、このスープとギャル男の打ち解けた雰囲気のおかげで幾分か温もりを取り戻した。
「ワゥ、ワン!」
野良犬も人々と共生しているし。
「キャハハ!」
子供たちも安心して遊んでいるし。

[太字][中央寄せ][大文字]「コココ、コケェー!!」[/大文字][/中央寄せ][/太字]

鶏も放し飼いされてるし。馬鹿うるさい鶏の鳴き声に、ギャル男は振り向いた。そして露骨に面倒臭そうな表情を見せた。

「来た〜…」


誰かの足音が近付いてくる。煙草臭い香りとともに。
「やっぱり俺、諦め切れな……あ?」
「テツ、無理に誘うのは止そうって…あ、どちら様〜?」


名前も知らなかったけれど、俺はこの二人を初めてみたとき、ギャル男が言っていた怪し気な二人組だと確信した。だが見た目は普通の大学生二人組のようだった。俺が気になるのは、二人がヒーローを誘っていることだ。

「今日は辞めとこうか」
二人は俺を暫く見るなり、気まずそうに引き取ろうとした。ギャル男はホッとしたような表情で、テントのジッパーを閉めようとチャックに手を伸ばしかけた。


「待って下さい」


俺は飲み干したスープの器を地面に置いて、立ち去ろうとする二人組の足首を両手で掴んだ。
「仲間に入れてくれませんか」
「何言ってんの〜?!」
ギャル男には申し訳ないが、俺はこの二人に興味が湧いた。二人は顔を見合わせて、煙草を片手に燻らせた男が俺に目線を合わせるように屈んだ。
「じゃあ、俺たちの事務所に来てくれる?」
俺は、彼の連れの筋肉の塊みたいな巨体に手を引っ張られて立ち上がった。そして行き先も分からず、煙草の男を先頭に俺は幼児みたいに手を引かれて人混みの中を進んでいった。
「やめておきなって!絶対に危ない組織だって!帰ってきたほうが良いって!」
ギャル男は俺の背中の服を引っ張って連れ帰ろうとする。だが、俺の手を引っ張る筋肉男の力には勝てず、帰宅を拒否する散歩中の犬みたいに引き摺られていく。

確かに、以前までの俺なら素性の知れない男二人組に安易についていくことはしなかっただろうが、もはや自分でも理由は分からず本能或いは運命という名の直感に俺は従った。二人が危険な人間だったとしても、死に損ないの俺には寧ろ正しい未来へと導いてくれると感じていた。


[水平線]

2人が俺らを連れて行ったのは、「事務所とは名ばかりの」と言うことすら出来ないような簡素な作りの仮説小屋だった。必要最低限のものしかなく、刑務所の囚人の方が良い生活を送っているのではないかと思うほどの簡素ぶりだった。
「話が終わったらすぐに帰ろうね?」
結局、引き摺られてここまで一緒にやって来たギャル男は、怯えた子犬みたいに俺の隣で身体を小さくしていた。
「俺たちの仲間になりたいって思った理由は何ですか?」
段ボールの箱で作った机を挟んで、俺はリトと名乗った男と向かい合って、ギャル男と並んで座っていた。彼自身も、テツと呼ばれているもう一人の男に誘われて行動を共にしているという。
「いや……」

俺が2人の仲間にしてもらいたいと思ったのは、ヒーローになりたいだなんて高尚な理由からではなく、取り敢えず衣食住に困らない状態に身を置きたかったからだ。この「事務所」を目の当たりにするとそれすらも危ういが、ギャル男と別れた後、見知らぬ土地で再び路頭に迷うくらいならマシだ。だからといって、それを正直に言ってしまえばそれは愚か者のすることだ。

[太字][大文字]「テツぅ、俺の昔の写真持ってきてぇ!」
「はぁい!」[/大文字][/太字]
リトは屈強な身体から突然大きな声を響かせて、小屋の外で溜まった煙草の灰を処理していたテツを呼んだ。暫くして、テツは1枚の写真を持ってリトの右隣に腰を下ろした。写真の中でギロリとカメラ目線で睨む一人の身体つきの良い男と俺の目が合った。
「これ、俺ね」
リトが彼を指差した。体格は2人揃ってとんでもなく厳つい。が、瞳に宿っているモノが違った。
「俺、テツに出会ってなかったら堕落してたと思う、今頃」
そしてリトは腰を手でポリポリと掻きながらすぐにその写真をテツに返して、テツはそれをどこかへ仕舞いに行った。リトは自身の過去を詳しく語ることはしなかったが、それが何よりも彼の過去を物語っていた。
「俺も始めはヒーローになりたいとかは思ってなくて、取り敢えずコイツについて行くかってノリでテツと行動を共にした人間だから、君に特別理由は求めてないよ。ただ一応、無理やりは後ろめたいから理由を尋ねただけで……ところで名前なんていうの」
「…緋八マナ」
小屋の外からふと視線を感じてそちらに目を遣ると、テツと目が合った。テツは俺とリトのやり取りを見守っていたようだが、俺に気付かれるとスッと目線を逸らした。
「あいつ、人見知りだから。ゴメンね」
リトがそう言った直後、ほんの一瞬だけ沈黙があった。その隙を突いて、ギャル男がサッと腰を上げた。
「もう俺帰りたいから帰るね、ほら、行こう」
ギャル男が俺の手を引いて立ち上がろうとした瞬間、ドンと段ボール机の上に何かが置かれる音がした。
「まぁまぁ、酒でも飲んでいきなさいって」
リトの両手に、大きな酒瓶。段ボール机の表面が少し凹むくらいには沢山の酒が入っているようだ。
「その手には乗らないぞ」
「いや、乗ってくれないと困るね」
ギャル男は口では酒を拒んでいたが、何度か唾をゴクリと飲み込む音が聞こえた。ギャル男とリトは暫くの間、二瓶の酒を挟んで乗る乗らないと揉めていたが、そこに静かにテツが割って入った。

「人助けがしたいんだろ、ウェンくん」

ギャル男はテツの言葉に反射的に頷いたように見えた。テツは、ふとした瞬間に舞台俳優のような心地よい低音を発することがあるらしいと俺は気付いた。誰も無視できない魅惑の声の持ち主だった。

「俺はある組織に入ろうと考えているんだ。組織は、現実から目を逸らすことを許しつつ人々の現実に居場所や生き甲斐、夢を与える。俺はその組織の在り方に共感するんだ。ウェン、少しは興味が湧かないか?」

テツが燻らせる煙草の煙が、スーッと東風に吹かれていく。

「俗っぽい話をすれば、その組織に入ることが出来れば少なくともその日暮らしの生活からは抜け出せる。上手く行けばだが、少なくても月収〇〇万円だ」
「〇〇万円?!」

ギャル男……いや、ウェンは一瞬だけ金額の値に目を輝かせたが、かえって怪しいと思ったのか訝しそうな視線をテツとリトに浴びせた。

「勿論、無理に入れとは言わない。もしも今日、ウェンくんを説き伏せることが出来なかったら潔く引き下がろう。ただ、組織が今求めている人材を考えると、自信を持って言える。俺らは適任だ。しかも、組織が求める人材は時々変わる。今を逃せば、次の機会はないと思ったほうが良い」


テツという男は、とある組織に魅了されている。俺にとっては、テツとリトとウェンの3人と似た存在なのかも知れない。

ウェンを説得するテツの言葉を聞いて、俺は静かな確信を得ていた。この男についていけば、心を壊していく憎しみと壊れた心の破片を拾っては直していく愛が調和していく。何者でもなかった俺に、名前が与えられると。そしていつかは俺の存在が、誰かの夢になれるのかもしれないと。

凍えていた俺の肩に、温かいコートを掛けてくれて道標となってくれる人がいる。

冷えた記憶の倉庫の中から、嘗て抱いた愛の気持ちを拾い上げて俺は、皆という宝箱の中に静かに仕舞おう。たとえその愛が俺を巣食うことになっても、俺達の影は東から西へ。

その先で重なる俺らの影よ、夢と成れ。正も逆も越えて。


[水平線]
[水平線]
[水平線]


「やろっか」
ウェンの言葉に俺はハッと我に返った。3人が俺の方を見ている。色の異なる鮮やかな瞳が並んでいる。俺の視界を掠める髪は依然として色を失ったまま。だけど、その色が不思議なことに少しだけ綺麗に見えた。
「よしっ!」
テツが両手をパンッと叩いて、高く昇る太陽に目を細めて言った。
「いよいよ始動だ」


―――これが、まだ名前を与えられる前のOriensが始まった瞬間だった。

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作者メッセージ

今作品は、にじさんじ所属のOriensの皆様を題材にしたnmnm作品です。作品内に登場する彼らの言動は、すべて御本人方の意思とは関係ありませんのでご注意下さい。また、Oriens並びにメンバーの皆様の経歴の大部分に捏造設定が含まれます。ご注意下さい。

佐伯イッテツ×宇佐美リトが登場する熱異常の曲パロを読んでから読むと、もっと楽しめると思います。

2026/03/01 20:00

花火
ID:≫ 6.vyqE1zzWDXY
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