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こちらはBL作品です。性的な描写は一切ございませんが、苦手な方はご遠慮頂くようお願い致します。
また、部分的に自殺描写を含めました。露骨な表現はありませんが、ご注意下さい。

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冥刻の子守唄 〜シニガミコモリ〜

#16

第三章 流れ星の瞬き 〜知らん振り〜


蛍は世央と並んで、列車を降りた。都会にある終点だということもあり、車内にいた大量の乗客が一斉に降りて、ドドドと流れる氾濫した川のような群衆に揉まれながら、蛍と世央は模試の受験会場へと向かい始めた。

「途中で泊と合流できたら良いんやけど」
蛍はズボンのポケットからスマホを取り出し、泊に居場所を尋ねようとした。

「あ、先に会場に向かうってさ。世央、俺ら2人やで」
蛍のスマホには、数分前には既に蝶舞からメッセージが送信されていた。
「蛍と2人か…そっか」
蛍は人に揉まれながら、LINEを閉じてGooglemapを開き、受験会場を検索した。

世央は、ただ黙って蛍の横顔を見つめている。求めてはいけない禁断の花に、見惚れているような瞳で。

「近鉄出口から出やんと行けへんねやな。…近鉄出口ってどれや?……あれや!世央、行こ!」
蛍は左手にスマホを持ち、右手で世央の腕を掴んだ。そして新幹線乗り場に向かう人の群れを横に突っ切り、改札を通って近鉄出口に向かう。

「何か、世央、顔赤ない?」
世央は蛍に腕を引かれて出口に向かう間、一言も言葉を発せずにいた。口を開いてしまえば、蛍に避けられるような言葉を口走ってしまう気がして怖かった。そして、蛍に触れられると、世央はろくに呼吸もできなかった。世央のその様子を不自然に感じた蛍が、不意に世央の方を見ながら尋ねたのだ。

「へ?!俺の顔……あぁ、あれかも。人混みで。何か暑かったっていうか」
「ふぅん…。ん?!ちゃう!ここ、名鉄側の出口や!引き返せ!向こうや!」
「え、あ、うん!」
蛍は世央の方を見てよそ見しながら駅構内を歩いているうちに、近鉄出口とは正反対の方向に向かって歩いてしまっていた。蛍は世央の手をグイと強く引っ張った。


『世央の奴、気付いてねえだろうな』


蛍は世央の腕を掴んだ時から、自分の胸の高鳴りがそのまま腕を伝って世央に伝わるのではないかと恐れていた。だがそれ以上に、蛍は世央に触れていたかった。


『蛍にバレたらあかん…』


蛍に自身の心臓の鼓動が伝わってしまうことを恐れていたのは、世央もまた然り。だが、世央の場合、「友達」という関係性を壊してしまうことを恐れる気持ちが勝ってしまった。蛍の「友達」でいなければ、蛍の傍には居られないと考えると、世央の心臓は握り潰されそうになった。



「蛍、ごめんやけど、離して」


世央は絞り出すような声で蛍の背中に声を掛けた。

「え…?あ……。ごめん」

蛍は世央のその言葉が、槍みたいに自分の心臓を貫いたように感じた。余りにも傷が大きすぎて、もはや痛みすら感じないほどに。

蛍は前を向いたまま、虚空を見つめるような瞳で世央の腕を掴んでいた手を離した。世央は蛍の温もりが自分の腕に伝わらなくなったのを感じると、心から溢れ出しそうになる言葉をギュッと押し込むように唇を強く噛み、後悔しそうになる自分を押し隠すようにぎこちない笑顔を浮かべた。



「あかん、あかん、あかん…!何しとん?!」

蛍と世央は、蝶舞が自分たちよりも先に会場に向かっているものだと思い込んでいたが、実は10mほど離れた距離から2人を尾けて様子を見守っていた。だが、蛍と世央がお互いに嘘を付き合っているように感じると、蝶舞は居ても立っても居らなかった。

「あっ…しまった。先に会場に向かうって連絡したし…あ、そうや。反対の出口に行っちゃったとか言えば…」

蝶舞は一瞬口を歪めたが、すぐに何かを思い付いたように蛍と世央の後ろ姿を追って走りかけた。そして、蝶舞はまた頭を抱える。

「でも…俺って邪魔やん。特に世央って人から見たら。なんか俺、斗波の恋人って勘違いされてるし……あか〜ん。どうしたらええの、俺」

蝶舞は人の邪魔にならないように、ホームの太い柱に寄りかかりながら、段々遠ざかっていく2人の後ろ姿を見送る。蝶舞はふと、自分の腕時計に目をやった。

「ヤバい!!」

蝶舞は目を丸くし、リュックを肩に掛けて近鉄出口を目指して走った。

「斗波!急げ!時間ない!」

蝶舞に不意に背後から叫ばれた蛍は、目を丸くして振り向いた。

「何で泊が俺達よりも後ろにおんねん?」
「あの人…」
世央の瞳の奥が曇った時、蛍たちの横を風と巨人が勢い良く過ぎ去っていった。

「そんなんどうでも良いから!後10分しかない!ここから徒歩20分やぞ!!」
「マジでぇぇ?!」

蛍は再び、世央の手を強く掴んだ。そして蝶舞を追って全速力で駆け出した。

「ちょっと待って!」

世央は蛍の手を握り返した。蛍は更に強く、世央の手を握り返した。世央の鼓動が速くなる。それが走っているからなのか、はたまた別の原因によるものか、世央は分かったような分かりたくないような気分だった。
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2025/12/06 17:33

花火
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