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こちらはBL作品です。性的な描写は一切ございませんが、苦手な方はご遠慮頂くようお願い致します。
また、部分的に自殺描写を含めました。露骨な表現はありませんが、ご注意下さい。

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冥刻の子守唄 〜シニガミコモリ〜

#15

第三章 流れ星の瞬き 〜再会〜

蛍が世央への恋心を認めた日から2年が過ぎて、蛍たちは高校2年生になった。

蛍と蝶舞は高校に上がってからは一度も同じクラスにはならなかったが、学校終わりにスタバに寄ってブラブラと下校する仲であることに変わりはなかった。

蛍が同性愛者であることを打ち明けた後も、蝶舞との関係性に変化はなかった。蝶舞も蛍に恋の相手を聞くことはなく、蛍も蝶舞に世央のことを伝えることはなかった。小学校を卒業して以来、蛍は世央に会っていない。

蛍はただ、思い出の中の世央に恋をしているだけで十分だった。世央には知られたくなかったのだ。蛍は、世央にとっての「男友達」のままでいたかったからだ。



平日よりも空いている急行列車。窓の外を朝の景色が通り過ぎていく。
「せっかくの休みやのに、模試に潰されるとなダルすぎるんやけど」
蛍と蝶舞はドアにもたれ掛かり、列車に揺られながら各自単語帳や一問一答を気だるそうに眺めている。
「テスト終わるの何時?」
「18時」
「ダッッル!」
蛍は手に持っていた公共倫理の一問一答集を閉じ、窓の外の景色を眺めた。列車が橋の上を走る音。橋の下を流れる川は、昨日の大雨でいつもよりかさが増していた。川が太陽の光を反射する。眩しい陽の光がコロコロと川面を転がっている。

「〇〇、〇〇です。4番線から✕✕駅行き急行が発車します」
列車が停車駅に停まると、平日でもないのに高校生と思われる学生がゾロゾロと車内に流れ込んできた。
「このへんやったっけ。斗波が小学校の時に住んでたのって」
「うん、そう」
蛍は窓の外の景色に視線を向けた。小学校時代は、あまり電車に乗る機会がなかったので、駅付近の景色には見覚えはほぼないはずだった。だが、蛍には、道端に生えている雑草さえも懐かしく感じた。

『♪♫♬』

突然、車内に聞き覚えのあるメロディーが流れた。蛍が蝶舞と観に行った例の映画の主題歌だった。それは、〇〇駅で乗車してきて蝶舞の隣に立ってイヤホンをしていた男子高校生のスマホから聞こえた。蛍も含め、車内にいる乗客が一斉に彼に視線を浴びせた。しかし、当の本人はスマホに夢中で気が付かない。
「すんません。めっちゃ音漏れしてますよ」
蝶舞が彼の肩を指先で突くと、彼はようやく顔を上げた。そして、真隣に立つ巨人に驚いたような表情を見せてから、周りにペコペコと頭を下げながら、慌ててイヤホンのプラグを丁寧に差し込み直した。

蛍は、彼の慌てた表情に見覚えがあった。授業中にゲップをしてしまった時、給食を派手にぶち撒けた時のあの子の顔。その全てが愛おしくて、蛍が忘れられなかったあの子。


「世央…?」

彼はハッと息を飲み、目を丸くしながら蛍の顔を見た。

蝶舞は蛍と彼の顔を困惑した表情で交互に見ていた。そして蝶舞は何を思ったのか、足元に置いていたリュックを手に持ち、混雑した車内の中を掻き分けるように蛍たちから離れようとした。
「どこ行くねん」
蛍は慌てて蝶舞の袖口を掴んで引き留めた。それを見た彼は、何処か寂し気で悔しそうに下唇を噛んだ。しかし、蝶舞の方を向いていた蛍には、彼のその表情は見えていなかった。蝶舞はクルリと振り向くと、彼を一瞥してから蛍に言った。
「トイレ。この車両には無いで、他のところに行ってくる」
そして蝶舞はそのまま、人混みの奥へと姿を消した。

「蛍…やんな?」
彼は、蝶舞の後ろ姿を見送る蛍に不安そうに尋ねた。
「そ…そやで。世央やろ?さ…さっきのデカい奴は友達で泊って奴で…」

蛍は、目の前にいる世央の顔を上手く見ることが出来なかった。少なくとも小学校の時は、じゃれ合って世央に抱き着かれても挙動不審になることはなかった。蛍は必死に、自身の恋心を世央に悟られまいと平静を装った。

「蛍…」
世央は声変わりした後の低い声で、蛍から目を背けて苦しそうに尋ねた。
「その泊って人…何?」
「何とは?」

蛍は、まさか蝶舞がデカすぎて、世央には象にでも見えているのかと思った。蛍は、初めて蝶舞に出会った時の自分を思い出し、思わず吹き出しそうになったが、世央の表情は深刻だった。

「何でもない……蛍も模試?」
「え?あ、そう!それで明日から学校もあるし、振り替え休日にしてくれよってマジでって」

蛍の声は弾んでいた。対して世央の声は、必死に元気さを装っているような空っぽな声だった。

蝶舞はなかなかトイレから戻って来ない。いや、トイレはただの口実だった。

「名古屋、名古屋、終点です」
「あれ?!泊の奴、まだトイレにいんのかよ。呼びに行ってくる」
蛍はスマホをリュックのポケットから取り出して蝶舞から何の連絡も無いことを確かめると、隣の車両に蝶舞を探しに向かおうとした。
「待って」
世央が蛍の腕を引っ張った。
「あの人も模試なんやろ?大丈夫やって。会場に行ったらおるって、絶対」
「あ、そう?」
蛍を止める世央の表情は、叶いもしない願いを流れ星に託しているように見えた。蛍は蝶舞がいると思われる隣の車両に視線を向けたまま。世央はそれを確かめると、蛍の腕を強く引っ張った。
「俺、名古屋に詳しくないから、不安やで会場まで行こう。一緒に」
「あ………ええよ」
蛍は、想い人に腕を掴まれて気分が高揚していた。心臓がルンルンと踊っているような感覚を全身で味わっていた。それが一瞬の沈黙として現れた。

世央には、その沈黙の意味が正しく伝わらなかったようだった。


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2025/12/05 18:16

花火
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