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こちらはBL作品です。性的な描写は一切ございませんが、苦手な方はご遠慮頂くようお願い致します。
また、部分的に自殺描写を含めました。露骨な表現はありませんが、ご注意下さい。

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冥刻の子守唄 〜シニガミコモリ〜

#9

第二章 青い春 〜他愛ない〜

中学校に入ってから、蛍は既に3回春を迎えた。そして桜も散って緑色の葉が芽吹き、蝉が鳴き始めた頃。教室の窓から見えた空は、果てしなく青かった。

今日は土曜日で、平日よりも3時間くらい学校から帰ることが出来る。廊下は、いち早く家に帰ったり塾に向かったりしようとしている生徒たちで混雑している。女子生徒の甲高いお喋りが蛍の横を通り過ぎていき、時折男子生徒たちのふざけ合っているような奇声が混雑の中から聞こえてくる。

「とーまーりー、まだー?」
蛍は肩にリュックを背負って廊下沿いの教室の壁にもたれ掛かり、教室の黒板を隅から隅まで丁寧に掃除している蝶舞を急かす。2人は放課後、学校の傍を走る国道沿いにあるスターバックスで勉強する約束をしている。そこは学生のためだけに建てられたと言っても過言ではないくらいに、放課後は様々な学校の学生たちで賑わう。何時しか蛍は、学校の真向かいにある祖母宅に真っ直ぐ帰るのではなく、蝶舞と少し寄り道をしてから帰るのが日課になった。
「ちょっと待ってー……いぃっ?!気持ちわり!」
蝶舞は黒板消しを握っていたが爪で黒板を引っ掻いてしまったらしく、肩をすくめて首を小さく横にブルブルと振った。

[水平線]

「泊、先に席取っといて」
「俺、抹茶のトール。後で払うわ」
今日も相変わらず学生たちで混んでいる。母国語であることは分かるが、言葉までは聞き取れない雑音のような話し声が、蛍の耳の周りをグルリと一周しては何処かに流れていくような感覚。蛍は蝶舞に自分の荷物を預けると、財布だけを持ってレジに向かった。蝶舞は荷物を預かると、店内をグルリと見渡し、窓際に2人分空いた箇所を見つけると、足早にそこに向かった。

「あぶな」
蛍のリュックのポケットの隙間から、ハンディファンの紐がはみ出していて、それに蝶舞の足が何度も引っ掛かりそうになる。陽炎はその紐をヒョイとポケットの中にしまった。店内には沢山の人がいたが、地面に限りなく近い足元で起こった「怪奇現象」に気付いた者は、蝶舞含め誰もいなかった。

[水平線]

「えぇ…平方完成すると、こうで…aが正の時とゼロの時と負の時で場合分けすると、定義式がこうなりまして……だから、最大値と最小値がこう……」
蛍は片手にチャイを持って時々飲みながら、早めに渡された夏休みの課題に取り組み始めていた。蝶舞は蛍の向かいの席で、長文の和訳をひたすらルーズリーフに書き込んでいる。そして時々スマホで何かを調べては、それを付箋に書き込み、英語の参考書をペラリと捲って貼り付ける。
「ん?」
スマホで調べ物をしていた蝶舞は、右手のペンを筆箱にしまいながら、スマホの画面と蛍の顔を見比べた。
「斗波?」
「ん?」
蛍はチャイを一口飲んだあと、蝶舞の方に視線を向けた。蝶舞は蛍の顔に穴が出来そうな勢いで見つめている。
「斗波ってさ…」
蝶舞は自分のスマホ画面が蛍に見えるように机に置くと、画面に映るある男性を指差した。
「何か血縁関係あったりする?」
「え?」
蛍は少し前かがみになって蝶舞のスマホを覗き込んだ。そこには、4年前に韓国でデビューしたアイドルグループのメンバーの1人が映っている。
「あぁ、よく似てるって言われるけど、親戚ちゃうで。祖先が猿の頃まで遡ったら、何処かで繋がってるかもしれへんけど」
画面に映る彼は、蛍を化粧させただけのように見えるくらいに蛍と似ていた。
「ふぅん。告られたりしたことあるんちゃう?」
蝶舞は自分のスマホをブレザーのポケットにしまうと、机の上に置いた英単語帳に手を少し触れた。蛍は蝶舞の言葉に心臓がビクリと肩をすくめた感覚を覚えたが、蝶舞がブツブツと呟きながら英単語帳を眺め始めたので安心した。


椅子にかけられた蛍と蝶舞の淡い紫色のブレザー。店内に差し込む柔らかな陽の光を受けて、胸に付けられた校章の刺繍糸がキラリと光る。
「眩しいなぁ」
蛍のリュックから、またハンディファンの紐がはみ出ている。陽炎はそれをもとに戻しながら、そうポツリと呟いた。陽炎の声は、学生たちの話し声に紛れて消えていきそうだった。
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2025/11/30 21:40

花火
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