閲覧前に必ずご確認ください
こちらはBL作品です。性的な描写は一切ございませんが、苦手な方はご遠慮頂くようお願い致します。
また、部分的に自殺描写を含めました。露骨な表現はありませんが、ご注意下さい。
4月。朝の白い光が柔らかく教室に差し込む。新鮮な空気の香り。蛍は真新しい淡い紫色のブレザーに身を包み、見慣れぬ顔たちに囲まれて自分の席に着いていた。
始業まであと30分。蛍たちの担任と思われる中年男性は、校門に立って新入生に教室の場所の案内をしていたから、彼はまだ教室にはいない。
蛍は辺りをグルリと見渡した。蛍の周りの席に座る人はまだ登校しておらず空席。小学校時代から塾かなんかで知り合っていたと思われる人達は、廊下や教室の隅で集まって何やら騒いでいたが、教室にいる約半数の人間は、蛍と同じように喋る相手もなく、緊張した面持ちで自席に座っている。
蛍は特に社交的な方ではなかったが、知らぬ間に話し相手が出来るだろうと、不思議と不安は無かった。
もともと、世央とも始めから知り合っていたわけではなく、世央が小学校4年生の時に転校してきて初めて知り合った仲だ。蛍は、ここでも世央のような人と会えるはずだと、根拠もなく信じ切っていた。
ガタリと背後から椅子が引かれる音がして振り向くと、そこには教室に頭が付くのではないかと思うほどの長身がいた。特段スタイルが良かったわけではなく、顔が良かったわけでもない平均的な男子高校生だった。だが、余りにも巨大なので男女問わず皆の視線を一身に浴びていた。
彼は、よくこのサイズが売っていたなと思うくらいに大きいブレザーを脱ぐと、それを丁寧に椅子に掛けた。
「外れ値……」
蛍は彼を見て思わずそう呟いてから、慌てて自分の口を両手で塞いだ。
「俺やろ?」
蛍の声は彼にも聞こえていた。彼は小さすぎる席に無理やり身体を押し込むようにして座ると、太陽のように明るい笑顔を見せて豪快に笑った。
「小学校時代は、何回先生だと間違われたか」
彼は、中学校1年生の教室にいると違和感を抱くほど大きかった。だが、彼はまだ声変わりしておらず、存外可愛らしい声をしていた。
各々の机には、そこに座る生徒の名前が書かれた札が立てられている。彼はチラリと蛍の机上に置かれた名札に視線をやった。
「お前も虫なの」
「虫?」
彼は自分の机に置かれた名札を蛍に見せた。[漢字]泊蝶舞[/漢字][ふりがな]とまり ちょうま[/ふりがな]それが彼の名前だった。
「虫同士、ヨロシク」
蝶が舞うという優雅な名前の割に似合わぬ巨体の瞳は、太陽の光を受けて輝いていた。
[斜体][下線]「俺も虫と言われれば虫だな、そう言えば」[/下線][/斜体]
陽炎は、蛍と蝶舞の周りにある空席に腰を掛け、2人の顔を交互に見比べた。
[斜体][下線]「蛍と仲良くしてやって」[/下線][/斜体]
陽炎は蝶舞の肩に右手を優しく触れた。蝶舞の肩の温もりが、陽炎の右手に伝わる。誰も陽炎に目をくれなかった。だが、陽炎は間違いなくそこにいた。そんな気がして陽炎は、蛍が生まれて以来、久しぶりに胸に熱く込み上げるものを感じた。
始業まであと30分。蛍たちの担任と思われる中年男性は、校門に立って新入生に教室の場所の案内をしていたから、彼はまだ教室にはいない。
蛍は辺りをグルリと見渡した。蛍の周りの席に座る人はまだ登校しておらず空席。小学校時代から塾かなんかで知り合っていたと思われる人達は、廊下や教室の隅で集まって何やら騒いでいたが、教室にいる約半数の人間は、蛍と同じように喋る相手もなく、緊張した面持ちで自席に座っている。
蛍は特に社交的な方ではなかったが、知らぬ間に話し相手が出来るだろうと、不思議と不安は無かった。
もともと、世央とも始めから知り合っていたわけではなく、世央が小学校4年生の時に転校してきて初めて知り合った仲だ。蛍は、ここでも世央のような人と会えるはずだと、根拠もなく信じ切っていた。
ガタリと背後から椅子が引かれる音がして振り向くと、そこには教室に頭が付くのではないかと思うほどの長身がいた。特段スタイルが良かったわけではなく、顔が良かったわけでもない平均的な男子高校生だった。だが、余りにも巨大なので男女問わず皆の視線を一身に浴びていた。
彼は、よくこのサイズが売っていたなと思うくらいに大きいブレザーを脱ぐと、それを丁寧に椅子に掛けた。
「外れ値……」
蛍は彼を見て思わずそう呟いてから、慌てて自分の口を両手で塞いだ。
「俺やろ?」
蛍の声は彼にも聞こえていた。彼は小さすぎる席に無理やり身体を押し込むようにして座ると、太陽のように明るい笑顔を見せて豪快に笑った。
「小学校時代は、何回先生だと間違われたか」
彼は、中学校1年生の教室にいると違和感を抱くほど大きかった。だが、彼はまだ声変わりしておらず、存外可愛らしい声をしていた。
各々の机には、そこに座る生徒の名前が書かれた札が立てられている。彼はチラリと蛍の机上に置かれた名札に視線をやった。
「お前も虫なの」
「虫?」
彼は自分の机に置かれた名札を蛍に見せた。[漢字]泊蝶舞[/漢字][ふりがな]とまり ちょうま[/ふりがな]それが彼の名前だった。
「虫同士、ヨロシク」
蝶が舞うという優雅な名前の割に似合わぬ巨体の瞳は、太陽の光を受けて輝いていた。
[斜体][下線]「俺も虫と言われれば虫だな、そう言えば」[/下線][/斜体]
陽炎は、蛍と蝶舞の周りにある空席に腰を掛け、2人の顔を交互に見比べた。
[斜体][下線]「蛍と仲良くしてやって」[/下線][/斜体]
陽炎は蝶舞の肩に右手を優しく触れた。蝶舞の肩の温もりが、陽炎の右手に伝わる。誰も陽炎に目をくれなかった。だが、陽炎は間違いなくそこにいた。そんな気がして陽炎は、蛍が生まれて以来、久しぶりに胸に熱く込み上げるものを感じた。
- 1.序章 〜出会い〜
- 2.第一章 蛍の光 〜ランドセル〜
- 3.第一章 蛍の光 〜朝ぼらけ〜
- 4.第一章 蛍の光 〜夜景と鏡〜
- 5.第一章 蛍の光 〜咲き誇る〜
- 6.第一章 蛍の光 〜鈴の音(1)〜
- 7.第一章 蛍の光 〜鈴の音(2)〜
- 8.第二章 青い春 〜ブレザー〜
- 9.第二章 青い春 〜他愛ない〜
- 10.第二章 青い春 〜ひぐらし〜
- 11.第二章 青い春 〜パンドラ〜
- 12.第二章 青い春 〜ポップコーン〜
- 13.第二章 青い春 〜涙の跡〜
- 14.第二章 青い春 〜解放〜
- 15.第三章 流れ星の瞬き 〜再会〜
- 16.第三章 流れ星の瞬き 〜知らん振り〜
- 17.第三章 流れ星の瞬き 〜夜にトケル〜
- 18.第三章 流れ星の瞬き 〜息を吐く〜
- 19.第三章 流れ星の瞬き 〜1:00〜
- 20.第三章 流れ星の瞬き 〜カウントダウン〜
- 21.第四章 怪なるモノたち 〜影〜
- 22.第四章 怪なるモノたち 〜双尾の妖猫〜
- 23.第四章 怪なるモノたち 〜縁〜
- 24.第四章 怪なるモノたち 〜匂う世界〜
- 25.第四章 怪なるモノたち 〜繋ぐ〜
- 26.第四章 怪なるモノたち 〜悪夢〜
- 27.第五章 夢のオハナシ 〜予定された未来〜
- 28.第五章 夢のオハナシ 〜既に始まっている〜
- 29.第五章 夢のオハナシ 〜広大なこの世界で〜
- 30.第五章 夢のオハナシ 〜蝕む、恋心〜