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こちらはBL作品です。性的な描写は一切ございませんが、苦手な方はご遠慮頂くようお願い致します。
また、部分的に自殺描写を含めました。露骨な表現はありませんが、ご注意下さい。

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冥刻の子守唄 〜シニガミコモリ〜

#7

第一章 蛍の光 〜鈴の音(2)〜


「そろそろ帰らんと…」
蛍が諦めた頃、右手の方からリンリンと涼し気な鈴の音が聞こえた。チャッチャッと小さな足音のようなものも。

「蛍…?」

蛍の視界の隅に、見覚えのある女子がいた。蛍と同じくらいの身長で、サラサラとした黒いボブが風に揺れていた。

「鈴珠…」
蛍はあの時を思い出した。修学旅行の夜、学年全員が見守る中、蛍は鈴珠に告白された。

「別に気にしてないよ、あの時のこと」
蛍の目の前にいる少女は、澄んだ目でケラケラと笑いながらそう語った。

鈴珠は蛍にとっても間違いなく美しく多才な人だった。ただ、それは宝石や絶景に似た存在で、美しいからといって恋愛感情を抱く対象ではなかった。蛍はあの時、皆の前で鈴珠にその事を伝えて以来、鈴珠に恥をかかせたような気がして後悔していた。謝ろうにも振っておきながら話しかけるのも気が引けて、何ヶ月もそのままにしてしまった。だが、鈴珠の「気にしていない」という言葉に、蛍の気持ちは多少軽くなった。

「ヘッヘッヘッヘッ」
ピンク色の鈴が付いたリードに繋がれた毛並みの綺麗な黒柴が、蛍の足の匂いを嗅ぎに行こうとするのを、鈴珠が紐を引っ張って止めた。
「あのっ、これ…」
蛍は思い出したように、ポケットからあるものを取り出した。緑色の学業成就のお守り。それは、鈴珠が蛍に告白した夜、想いを受け取ってもらえなかったと悟った鈴珠が、俯きながら無理やり蛍の両手にねじ込むようにして渡したものだった。鈴珠はそれを見た途端、気不味そうに顔を逸らした。影の中、彼女の瞳は揺れていた。彼女の黒い髪の毛は夕日に照らされて、淡い茶色に見えた。
「俺、合格して…その…だから、ありがとう。お守りくれて。……嬉しかったから」
蛍は喉の奥から溢れそうになる感情を、言葉を慎重に選び、口に出していった。蛍は声がブルブルと震えそうになるのを必死に抑えた。

鈴珠の周りを退屈そうに走り回る黒柴の足音と鈴の音に囲まれて、2人は夕焼けに包まれていた。鈴珠は、ふうっと長い溜息を付くと、夕日にも負けぬ眩しい笑顔を蛍に見せた。フワリと風に揺られた鈴珠の髪からは、ミントのような涼しい香りがした。
「うん、合格おめでと。気を遣わせちゃったみたいで……なんかゴメンね」

リンリンと鈴の音は鳴り響く。夕日に佇む2人の影は、同じ方向に伸びていた。

「鈴珠、俺ら、目指す道はバラバラだけど。また、どこかで会おうよ」
蛍の声は、今度は少しも震えなかった。スッと、心に浮かび上がった思いがそのまま言葉になっていった。
「うん」
日も暮れてきて、夕飯の準備をしているような音が至る所から微かに聞こえる。食器が触れ合う音、テレビの音。
「美味しそうな匂いする」
鈴珠は、左手の方に建っている家々の方に視線を向けながら、犬みたいにクンクンと空気の香りを嗅いだ。

空気が冷えてきた。でも、2人を包む、どこからともなく漂ってきたシチューの香りは、蛍の体に温かく染み渡っていった。


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2025/11/28 18:06

花火
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