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探偵は眠らない!

#19

5話 ゆく猫くる猫 2

 俗にいう探偵っぽい服はインバネスコートと呼ぶらしいが、この小さな探偵はどうやら、ワイシャツに黒のネクタイ、ストッキングに短パンと、その全てに被さるようにベージュのトレンチコートという、どちらかと言えば刑事みたいな格好である。
 身軽な格好ではあるが、トレンチコートはなんだか大きすぎる気がしなくもない。いや、身長のもんd
「今、アンタ失礼なこと考えなかった?」
 鋭いし早ぇ。
「いや、なんも」
 小さいなどと言うと、どんな目に遭うか一日目にしっかりと学習した。
「さて、探すと言ってもアテがあるわけじゃないわ」
「どうやって見つけるんだ?」
「まあ、無難に聞き込みでしょうね」
「そうだよなぁ」
 聞きこみ調査。
 最も大事ではあるが、最も面倒なもの。己の忍耐とコミュニケーション力が試される。
「一晩経ってるみたいだし、捜索範囲は広い方がいいかもしれないわね。まずは依頼人の家周りから順に聞いていきましょう」

 依頼人の家はそう遠くはない、徒歩五分の圏内だ。駅まで徒歩五分という表示をよく見たものだけれど、五分で着いた試しがない。もしかすると、俺の足が遅いだけだったりするかもしれないが。
「ここら辺ね」
 中央に向かってものすごい傾斜をつけていくタイプの屋根が連立している。愉快な一家のエンディングの家もこんな家だった。
 家の表面に耐震のためなのかよくわからないが、屋根の下で交差している木と、漆喰で塗り固めたような白い壁。
 一帯が住宅地のようだが、ところどころに商業施設も混じって、いい雰囲気の場所だ。金を貯めたらここに住んでもいいかもしれない。
「まあ、手始めにあの店主にじんも…じゃなくて聞き込みをするわよ!」
 どんな言い間違えだ。

「いらっしゃい!」
 パン屋だ。焼きたてなのか、辺りに香ばしい匂いが立ち込めている。
 やべえ、よだれ出てきた。
「ちょっと協力してもらえないかしら?」
「ライカじゃねえか。どうした?」
 知り合いだろうか?
「ちょっと猫を探しててね。白い猫」
「見てねえなぁ」
 しばらく考え込んでいたが、俺に気付いたのかハッと目を開けて
「そいつは?」
「助手よ」
「…あ、山城カズキです」
「お前雇う金あったか?」
 コイツの金の無さはここら一帯に知れ渡ってんのかよ。
「ないわ。その代わり住み込みで働いてもらってる」
「ほぉ…」
 まじまじと俺の顔を見つめると、いきなりニコッとした。
「ライカを頼むよ」
 遠くを見つめるその顔は知り合いというよりむしろ父親のように見える。
「コイツ片付けねえし、人付き合いもあんまりよくねえんだ」
「あぁ…」
 確かに。
「何納得してんのよ」
「ま、とにかく。お前とは長い付き合いになりそうだな」
「じゃあ、またいつか買いに来るわ」
「おうよ」
 そう言って店を出た。

作者メッセージ

来週はちょっと休むかもです

2025/12/05 21:49

ゐぬい
ID:≫ 18yayKY/7LFxA
コメント

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探偵推理異世界転生ギャグコメディ魔法

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