見るとそこには金髪の頭頂部。てことは……。
目線を下の方にやると少女が立っていた。
「こんばんは…。あの、ビラを見てここに来たのですが……」
俺は恐る恐る聞く。依頼人は本当にこの家だろうか?しばらくの無言で心配になる。
「ま、とりあえず中に入って」
ぶっきらぼうに言い放つと少女は中へ戻ってしまった。俺も失礼のないようにお邪魔させてもらう。
応接室のような部屋に案内してもらうと、そこのソファに座ってと、やっぱり愛想のない声で言われたので言う通りに座った。これは心象がいいとは言えないな。
ソファは膝ほどの机を挟んでもう一個ある。そこに雇用主が座るとみた。
一体どんな人なのだろうか、とかなんとか浮かれた気分でいたら目の前にどかっと座ったのはその少女だった。
「で?なんの用?」
冷えてんなあ。
「雇われにきました。ギルドに貼ってあったビラを見てきたんです」
「ああ、あれね。いいわ、採用」
「ヱ?」
「聞こえなかった?採用よ。さ、い、よ、う」
……理解が追いつかない。まず、いきなり採用ってなんだ?まだ面接らしい面接もしてない。え?罠?これ罠?
あと、目の前の子は本当になんなのだろう。早いところ家主を出してほしい。まさかままごとに付き合わされてるわけじゃないよな?
「あの、家主はいらっしゃらないんですか?」
「ここにいるわ」
「ここ?」
「ここ」
そういって自分自身の顔を指差す少女。
「え?君が?」
「何度も言わせんじゃないわ!私がれっきとしたここの家主よ!悪かったわね小さくて!!」
バァンッと見事なまでの台パン。息を荒くして睨みつけてくる。もしかしなくても怒らせてしまったらしい。
「失礼…しました…」
「フンッ!わかればいいわ。じゃあ説明するわよ」
話がどんどん進んでいく。相変わらず声に温度がない。
「まず私の名前ね。このエベルレイ探偵事務所を運営するライカ・エルベレイよ」
ああ、ここは私立探偵事務所な訳か。それで手伝いってことは大方片づけとか事務作業全般だろう。
「ビラの方には手伝いとは書いたけれど、実際のところは私の助手よ」
「助手?」
「安心しなさい。ちゃんと酷使するから」
なんも安心できない。
「残念だけど、福利厚生は期待しない方がいいわ。給料も出るかわからないし」
「…給料が出ない?」
「そうよ」
コイツ、自分で何言ってんのかわかってんのか?堂々と言うものじゃない。無償労働はもはや仕事じゃねえだろ。
「それなら話は別ですね。給料が出ないようであれば他をあたりますが」
「……」
雇用契約の原則は給料だろ。それがないっていうなら俺は迷わずに帰る。帰る家はないが。
「……そうね。正直言って今の状況で給料を払うのは難しいわ。なにせほとんど赤字経営なのよ」
まあ、私立探偵にそこそこの収入が入るのは大きく名が出ることが最低条件だろう。
助手を一人も雇っていないのはそこに経済的余裕がないからと見受けられる。しかしながら、現実は残酷なもので、現にこの部屋の散らかりようはひどいとしか言えない。雑に端に追いやられた本や書類は、きっとさっきまで散乱していたのだろう。これは確かに助手、元い手伝いが必要なわけだ。
「わかりました。では、代わりの案があるのですが、それでもいいでしょうか?」
「まあ内容次第ね」
「実は私自身、今現在家がないんです。給料がちゃんと振り込めるまででいいので、この家に居候してもいいですかね?」
正直、これは命運を賭けた取引だ。強気な姿勢でいかなければならない。我ながら大胆な提案をしたものだが、もうこれ以上の仕事は見つからなさそうだし、手元の数枚の銀貨であと何日生きていけるのかわかったもんじゃない。
しばらくの沈黙。手汗がすごくて思わず拳を強く握ってしまう。
「いいわ」
……マジか。
いや、てっきり断られるかと思ったわ。それがセオリーだし。
「ただし条件があるわ。朝昼晩の食事と、部屋の片づけはやってもらうわ」
「それだけ?」
「それだけ」
悪くはない。そこまでブラックじゃなかった。
「寝る場所は今はないからこのソファで寝てちょうだい。じゃあ早速働いてもらうわ」
早速か。
「晩御飯を作って。食材は冷蔵庫にあるわ」
「何か食べたいものはあります?」
「なんでもいいわ。食材がたくさんあるわけでもないし」
料理がある程度できてよかった。ありがとう前世の俺。
「ああ、それからもう一個。タメ口でいいわ」
「タメ口?」
「そう。私堅苦しいの嫌いなのよ」
いきなりと言われても困る。
「わかった。まあ少しずつそうさせてもらうよ」
まあ、そんなこんなで俺は晴れて、今日から私立探偵事務所の助手(雑用)になった。
目線を下の方にやると少女が立っていた。
「こんばんは…。あの、ビラを見てここに来たのですが……」
俺は恐る恐る聞く。依頼人は本当にこの家だろうか?しばらくの無言で心配になる。
「ま、とりあえず中に入って」
ぶっきらぼうに言い放つと少女は中へ戻ってしまった。俺も失礼のないようにお邪魔させてもらう。
応接室のような部屋に案内してもらうと、そこのソファに座ってと、やっぱり愛想のない声で言われたので言う通りに座った。これは心象がいいとは言えないな。
ソファは膝ほどの机を挟んでもう一個ある。そこに雇用主が座るとみた。
一体どんな人なのだろうか、とかなんとか浮かれた気分でいたら目の前にどかっと座ったのはその少女だった。
「で?なんの用?」
冷えてんなあ。
「雇われにきました。ギルドに貼ってあったビラを見てきたんです」
「ああ、あれね。いいわ、採用」
「ヱ?」
「聞こえなかった?採用よ。さ、い、よ、う」
……理解が追いつかない。まず、いきなり採用ってなんだ?まだ面接らしい面接もしてない。え?罠?これ罠?
あと、目の前の子は本当になんなのだろう。早いところ家主を出してほしい。まさかままごとに付き合わされてるわけじゃないよな?
「あの、家主はいらっしゃらないんですか?」
「ここにいるわ」
「ここ?」
「ここ」
そういって自分自身の顔を指差す少女。
「え?君が?」
「何度も言わせんじゃないわ!私がれっきとしたここの家主よ!悪かったわね小さくて!!」
バァンッと見事なまでの台パン。息を荒くして睨みつけてくる。もしかしなくても怒らせてしまったらしい。
「失礼…しました…」
「フンッ!わかればいいわ。じゃあ説明するわよ」
話がどんどん進んでいく。相変わらず声に温度がない。
「まず私の名前ね。このエベルレイ探偵事務所を運営するライカ・エルベレイよ」
ああ、ここは私立探偵事務所な訳か。それで手伝いってことは大方片づけとか事務作業全般だろう。
「ビラの方には手伝いとは書いたけれど、実際のところは私の助手よ」
「助手?」
「安心しなさい。ちゃんと酷使するから」
なんも安心できない。
「残念だけど、福利厚生は期待しない方がいいわ。給料も出るかわからないし」
「…給料が出ない?」
「そうよ」
コイツ、自分で何言ってんのかわかってんのか?堂々と言うものじゃない。無償労働はもはや仕事じゃねえだろ。
「それなら話は別ですね。給料が出ないようであれば他をあたりますが」
「……」
雇用契約の原則は給料だろ。それがないっていうなら俺は迷わずに帰る。帰る家はないが。
「……そうね。正直言って今の状況で給料を払うのは難しいわ。なにせほとんど赤字経営なのよ」
まあ、私立探偵にそこそこの収入が入るのは大きく名が出ることが最低条件だろう。
助手を一人も雇っていないのはそこに経済的余裕がないからと見受けられる。しかしながら、現実は残酷なもので、現にこの部屋の散らかりようはひどいとしか言えない。雑に端に追いやられた本や書類は、きっとさっきまで散乱していたのだろう。これは確かに助手、元い手伝いが必要なわけだ。
「わかりました。では、代わりの案があるのですが、それでもいいでしょうか?」
「まあ内容次第ね」
「実は私自身、今現在家がないんです。給料がちゃんと振り込めるまででいいので、この家に居候してもいいですかね?」
正直、これは命運を賭けた取引だ。強気な姿勢でいかなければならない。我ながら大胆な提案をしたものだが、もうこれ以上の仕事は見つからなさそうだし、手元の数枚の銀貨であと何日生きていけるのかわかったもんじゃない。
しばらくの沈黙。手汗がすごくて思わず拳を強く握ってしまう。
「いいわ」
……マジか。
いや、てっきり断られるかと思ったわ。それがセオリーだし。
「ただし条件があるわ。朝昼晩の食事と、部屋の片づけはやってもらうわ」
「それだけ?」
「それだけ」
悪くはない。そこまでブラックじゃなかった。
「寝る場所は今はないからこのソファで寝てちょうだい。じゃあ早速働いてもらうわ」
早速か。
「晩御飯を作って。食材は冷蔵庫にあるわ」
「何か食べたいものはあります?」
「なんでもいいわ。食材がたくさんあるわけでもないし」
料理がある程度できてよかった。ありがとう前世の俺。
「ああ、それからもう一個。タメ口でいいわ」
「タメ口?」
「そう。私堅苦しいの嫌いなのよ」
いきなりと言われても困る。
「わかった。まあ少しずつそうさせてもらうよ」
まあ、そんなこんなで俺は晴れて、今日から私立探偵事務所の助手(雑用)になった。
- 1.1話 ようこそ御都合主義者の天界へ 1
- 2.1話 ようこそ御都合主義者の天界へ 2
- 3.1話 ようこそ御都合主義者の天界へ 3
- 4.1話 ようこそ御都合主義者の天界へ 4
- 5.1話 ようこそ御都合主義者の天界へ 5
- 6.2話 とある女神の休憩時間 1
- 7.2話 とある女神の休憩時間 2
- 8.2話 とある女神の休憩時間 3
- 9.2話 とある女神の休憩時間 4
- 10.2話 とある女神の休憩時間 5
- 11.3話 死は混沌の至誠也 1
- 12.3話 死は混沌の至誠也 2
- 13.3話 死は混沌の至誠也 3
- 14.3話 死は混沌の至誠也 4
- 15.4話 見知らぬ、街道 1
- 16.4話 見知らぬ、街道 2
- 17.4話 見知らぬ、街道 3
- 18.5話 ゆく猫くる猫 1
- 19.5話 ゆく猫くる猫 2
- 20.5話 ゆく猫くる猫 3
- 21.5話 ゆく猫くる猫 4
- 22.5話 ゆく猫くる猫 5