俺は一体何をしているんだろう。
住宅街の中にあるがためかたたでさえ狭い貴重なグラウンドの一部を、気さくな陸部部長が貸してくれてまですることなのだろうか。
「自転車持ってきたぞ。」
「え、おま。どっから持ってきた?」
用意良すぎやしないか?
「用務員から借りた。」
「そんな素直に貸してくれるものなのか?」
「なんでも、今倉庫の整理をしているらしくてな。ボロっちいからどう使っても構わないって。」
”どう”って、どう使うのかわかっているのだろうか。
「で、誰か財布は?」
和義が意気揚々と聞いてくる。が、
『…………』
「普通貸すわけ無いだろ」
「石とかでもいいだろ。」
「頭いいなお前!」
「それほどでもあるな。」
あるのかよ。まあ事実だが。
「おし、やるぞ!!」
「誰がチャリ乗るんだ?」
「そりゃ、お前だろ」
俺?
「むしろお前以外誰がいるんだよ」
「拓弥いるじゃん」
「あいつはデバッガーだから」
拓弥がニヤニヤとこちらを見てきた。ムカつくな。というか、和義はデバッガーの意味分かってんのか。
「わかったよ、しゃーねーな」
俺は石を持って自転車に乗ると、貸してもらった50メートルトラックの反対側まで行った。
「じゃあ、行くぞー」
俺はペダルをグイと踏み込むと、向かいから和義が歩いてきた。タイミングを見計らって、理想は和義が横を過ぎた後だ。
我関せずといった表情を横目に通り過ぎると、俺は小石をポトッと落とした。実際は物理法則に従って落ちるはずなんだが、スローモーションに見える。全ての音がゆっくりに。
チャリは急には止まれない。しかし人間はできる。
和義は首を悪くしそうなほどの勢いで振り返ると、俺が落とした小石めがけて、カタパルトで発射されたかのように飛んでくる。
俺も慌てて小石を拾いに戻る。あれを取らせてしまえば、あいつが次に何をするか大体想像がつく。俺らの後を追って落としたタイミングで……。
しかしながら、和義の言ったとおり自転車には小回りが利かない。すぐに戻ろうとしてもどうしても時間がかかってしまう。無理に回ろうとすると、自転車がバランスを崩して倒れそうになるから、慎重に大回りでUターンするしかない。
やっとこさ和義の姿を正面で捉えられたと思いきや、あいつは既に小石を獲得し、次のフェーズ…交番へ届けるスタートダッシュを切ろうとしている。
交番は拓弥と決めてある。そこに間に合わせないように全力でチャリをこぐ。明日の俺のふくらはぎがどうなろうが、明日以降の和義の企みに比べればなんともないんだ。
風が耳元で鋭く唸る。そして和義と俺との差はみるみる縮んでいく。勝てる…!
が、俺は一つ忘れていた。
こいつは確かに言っていた。『急旋回する』と。
住宅街の中にあるがためかたたでさえ狭い貴重なグラウンドの一部を、気さくな陸部部長が貸してくれてまですることなのだろうか。
「自転車持ってきたぞ。」
「え、おま。どっから持ってきた?」
用意良すぎやしないか?
「用務員から借りた。」
「そんな素直に貸してくれるものなのか?」
「なんでも、今倉庫の整理をしているらしくてな。ボロっちいからどう使っても構わないって。」
”どう”って、どう使うのかわかっているのだろうか。
「で、誰か財布は?」
和義が意気揚々と聞いてくる。が、
『…………』
「普通貸すわけ無いだろ」
「石とかでもいいだろ。」
「頭いいなお前!」
「それほどでもあるな。」
あるのかよ。まあ事実だが。
「おし、やるぞ!!」
「誰がチャリ乗るんだ?」
「そりゃ、お前だろ」
俺?
「むしろお前以外誰がいるんだよ」
「拓弥いるじゃん」
「あいつはデバッガーだから」
拓弥がニヤニヤとこちらを見てきた。ムカつくな。というか、和義はデバッガーの意味分かってんのか。
「わかったよ、しゃーねーな」
俺は石を持って自転車に乗ると、貸してもらった50メートルトラックの反対側まで行った。
「じゃあ、行くぞー」
俺はペダルをグイと踏み込むと、向かいから和義が歩いてきた。タイミングを見計らって、理想は和義が横を過ぎた後だ。
我関せずといった表情を横目に通り過ぎると、俺は小石をポトッと落とした。実際は物理法則に従って落ちるはずなんだが、スローモーションに見える。全ての音がゆっくりに。
チャリは急には止まれない。しかし人間はできる。
和義は首を悪くしそうなほどの勢いで振り返ると、俺が落とした小石めがけて、カタパルトで発射されたかのように飛んでくる。
俺も慌てて小石を拾いに戻る。あれを取らせてしまえば、あいつが次に何をするか大体想像がつく。俺らの後を追って落としたタイミングで……。
しかしながら、和義の言ったとおり自転車には小回りが利かない。すぐに戻ろうとしてもどうしても時間がかかってしまう。無理に回ろうとすると、自転車がバランスを崩して倒れそうになるから、慎重に大回りでUターンするしかない。
やっとこさ和義の姿を正面で捉えられたと思いきや、あいつは既に小石を獲得し、次のフェーズ…交番へ届けるスタートダッシュを切ろうとしている。
交番は拓弥と決めてある。そこに間に合わせないように全力でチャリをこぐ。明日の俺のふくらはぎがどうなろうが、明日以降の和義の企みに比べればなんともないんだ。
風が耳元で鋭く唸る。そして和義と俺との差はみるみる縮んでいく。勝てる…!
が、俺は一つ忘れていた。
こいつは確かに言っていた。『急旋回する』と。